この記事で分かること
- 波力発電とは:、波のエネルギーを利用して発電する技術です。風力や太陽光と異なり、波は常に存在するため、安定した発電が期待できるクリーンな再生可能エネルギーとして注目されています。しかし、設置コストや維持管理の費用が高いことが課題です。
- グローバルエナジーハーベストとは:慶應義塾大学発のベンチャー企業で、「エネルギーハーベスティング」という、身の回りの微小なエネルギーを電力に変える技術を開発しています。
- 高コストとなる要因:海洋という過酷な環境での設置・維持管理に費用がかかるためです。設備の耐久性向上や、量産体制の確立、また既存の防波堤などを活用することで、コスト削減を図っています。
グローバルエナジーハーベストによる波力発電の実用化
グローバルエナジーハーベストは、波力発電の実用化を目指し、これまでに複数回にわたる第三者割当増資で資金を調達しています。
これには、株式会社安藤・間、大和ハウス工業株式会社、ENEOS株式会社、そして株式会社メタルワンなど、複数の大手企業が投資家として名を連ねています。
、同社は国土交通省のスマートアイランド事業にも参加し、小型波力発電の実証実験を行っており、2024年度内の製品化を目指しています。この実証では、港内に設置した装置で蓄電を行い、LED街路灯を一晩中稼働させることに成功しています。
波力発電とは何か
波力発電とは、波のエネルギーを利用して発電する技術です。
風力発電や太陽光発電と異なり、波は天候に左右されにくいため、安定した発電が期待できるクリーンな再生可能エネルギーとして注目されています。
仕組みと種類
波力発電の方式には、主に以下の3種類があります。
- 振動水柱型(OWC): 装置内の空気室に波が入ると、水面の上下動で空気が圧縮・膨張します。この空気の流れでタービンを回して発電します。
- 可動物体型: 海面に浮かぶ装置が波によって揺れる動きを、油圧ポンプなどで回転エネルギーに変換して発電します。
- 越波型: 沖合や防波堤に貯水池を設け、波がこの貯水池を乗り越えて入ることで生じる海面との高低差を利用し、水車を回して発電します。
メリットと課題
メリット
- 安定したエネルギー源: ほぼ常に波があるため、天候に左右されず安定的に発電できます。
- 高効率: 空気よりも密度の高い水を利用するため、高い発電効率が期待できます。
- CO2排出ゼロ: 発電時に二酸化炭素を排出しません。
課題
- 高コスト: 設置や維持・メンテナンスにコストがかかります。海上・海中での作業や、塩害・生物付着への対策が必要です。
- 過酷な環境: 台風などの荒波に耐えうる強固な設備が求められます。
- 漁業への影響: 設置場所が漁場と重なることがあり、漁業関係者との調整が必要です。

波力発電は、波のエネルギーを利用して発電する技術です。風力や太陽光と異なり、波は常に存在するため、安定した発電が期待できるクリーンな再生可能エネルギーとして注目されています。しかし、設置コストや維持管理の費用が高いこと、また台風などの自然災害に耐えうる強度が求められることが課題とされています。
振動水柱型構造とは
振動水柱型(OWC)構造は、海面を貫通する空気室を持ち、この空気室内の水面が波の上下動によって振動する仕組みです。
仕組み
- 空気室: 装置は、下部が海に開いた中空のコンクリートや金属製の構造物で、内部に空気が閉じ込められた「空気室」があります。
- 水柱の上下: 波がこの構造に入ると、空気室内の水面(水柱)が波に合わせて上下します。
- 空気の流れ: 水柱が上昇すると、空気室内の空気が圧縮されて外部に押し出され、下降すると、空気が吸い込まれます。この空気の往復運動が生まれます。
- タービンの回転と発電: 空気室の上部に設置されたタービンは、この空気の往復の流れによって常に一方向に回転し、発電機を回して電力を生み出します。特に、往復気流の中でも効率的に回転できるウェルズタービンなどが用いられます。
特徴
- シンプルさ: 可動部が少なく、主要な発電設備(タービンや発電機)が水面上に配置されているため、塩害や腐食、海中生物の付着による故障リスクが少ないのが利点です。
- 設置場所: 陸上に固定する「固定式」と、海上に浮かせる「浮体式」があり、航路標識ブイなどの電源として実用化が進んでいます。

振動水柱型は、波の上下動を利用して発電する方式です。 装置内の空気室に波が入ると、水面の上昇と下降によって空気が押し出されたり吸い込まれたりします。この空気の往復運動でタービンを回して発電します。シンプルで、海水に直接触れる可動部が少ないため、腐食や故障に強いのが特徴です。
グローバルエナジーハーベストはどんな企業か
株式会社グローバルエナジーハーベストは、慶應義塾大学発のベンチャー企業で、「エネルギーハーベスティング」技術、特に波力発電の実用化に注力している企業です。元々は「株式会社音力発電」という社名でしたが、2022年に現在の社名に変更しました。
主要な事業内容
- 波力発電:
- 同社の主力事業であり、波のエネルギーを位置エネルギーに変換して発電する「循環型波力揚水発電」技術を開発しています。
- この技術は、高波や海洋生物の付着、漁業との兼ね合いといった従来の波力発電が抱える「三大課題」を解決することを目指しています。
- 国土交通省のスマートアイランド事業にも採択されるなど、国家プロジェクトとも連携して開発を進めています。
- 振動力発電:
- 人の歩行や車の走行時に発生する振動を電気に変換する「発電床」や、ボタンを押す力で発電する「振力電池」などを開発・提供しています。
- これらは、電源が不要なIoT機器や照明の電源など、様々な用途での活用が期待されています。
- その他の発電技術:
- 音の振動を利用する「音力発電」や、温度差を利用する「温度差発電」など、身の回りの様々な微小なエネルギーを電力に変換する技術を幅広く研究開発しています。
これらの技術を通じて、グローバルエナジーハーベストは、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

グローバルエナジーハーベストは、慶應義塾大学発のベンチャー企業で、「エネルギーハーベスティング」という、身の回りの微小なエネルギーを電力に変える技術を開発しています。特に、波のエネルギーを利用する波力発電の商用化に力を入れています。
なぜ、高コストなのか
波力発電のコストが高い主な理由は、設置と維持管理の費用が陸上の発電設備に比べて格段にかかるためです。
高コストとなる理由
- 設置費用の高さ: 発電設備は海上や海中に設置する必要があるため、陸上での作業よりも時間と費用がかかります。特殊な船舶や重機が必要となり、天候にも左右されやすいです。
- 維持管理費の高さ: 海洋という過酷な環境下では、発電設備が塩害によって腐食したり、海洋生物(フジツボなど)が付着したりする問題が発生します。これらを防ぐための定期的な点検やメンテナンスは必須となり、その費用が陸上設備よりも高くなります。また、台風や嵐などの荒波に耐えうる強固な構造にする必要があり、そのための設計や資材にもコストがかかります。
- 技術的な課題: 開発の歴史が浅く、まだ確立された技術や量産体制が十分に整っていません。そのため、個々の設備の製造コストが高くなりがちです。
これらの理由から、現状では他の再生可能エネルギー(太陽光や風力)に比べて発電コストが高く、普及への大きな課題となっています。
対策
コスト削減のための具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- 設備の簡素化と耐久性向上: 複雑な構造を避け、シンプルな設計にすることで製造コストを抑えます。また、腐食や海洋生物の付着に強い素材(例:複合材料)を用いることで、メンテナンス費用を削減します。
- 量産化と標準化: 部品や構造体を規格化・標準化することで、大量生産によるコストダウンを目指します。例えば、同じ設計の装置を複数設置するプロジェクトを推進することで、1基あたりの製造コストを下げることが可能です。
- 既存施設との連携: 既存の防波堤や護岸に発電装置を組み込むことで、構造体の一部を代替し、設置費用を大幅に圧縮できます。
- 用途の拡大: 発電だけでなく、消波ブロックとしての機能を持たせたり、漁場での水質改善に役立てたりするなど、複数の役割を持たせることで、経済的なメリットを高める取り組みも進められています。
- AIやIoTの活用: センサーやAIを用いて波の状態を予測し、発電効率を最大化する制御システムを開発することで、設備の稼働率と発電量を向上させ、投資対効果を高めます。
これらの対策を通じて、波力発電は徐々に発電単価を下げ、実用化と普及に向けた取り組みが進められ ています。

波力発電の高コストの原因は、海洋という過酷な環境での設置・維持管理に費用がかかるためです。具体的な対策としては、設備の耐久性向上や、量産体制の確立、また既存の防波堤などを活用することで、コスト削減を図っています。
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