サンマ漁が近年稀に見る豊漁 豊漁の要因は何か?海流はどう変化したのか?

この記事で分かること

  • 24時間休漁の目的:「24時間休漁」は、豊漁により大量の水揚げが発生した際、サンマの鮮度保持と品質劣化を防ぐため、また供給過多による価格の暴落を抑制し、漁業経営を安定させることを目的とした自主的な調整措置です。
  • 豊漁の理由:日本の漁場に戻ってきたサンマの群れと、海洋環境の変化が主な要因とされています。また、近年漁獲を競っていた中国漁船がイカ漁に移行したことも影響していると考えられています。
  • 海流はどのように変化したのか:親潮の南下が強まり、日本の沿岸に冷たい水が流れ込んだため、サンマが日本の近海に近づきやすくなり、豊漁につながったと考えられています。

サンマ漁が近年稀に見る豊漁

 現在、サンマ漁が近年稀に見る豊漁となっており、その結果として「24時間休漁」という措置が取られています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB047OS0U5A900C2000000/

 「24時間休漁」は、豊漁という喜ばしい状況の裏で発生した課題に対応するための、漁業者や関係団体による自主的な取り組みです。持続的な漁業と、安定した流通を目的とした、漁獲量の調整策と言えます。

24時間休漁を行う理由は何か

 この措置は、主に以下の理由で行われています。

1. 処理能力の限界

  • 豊漁のため、一度に大量のサンマが水揚げされます。
  • その結果、水揚げ港の加工場や市場で、サンマの選別、箱詰め、冷凍保存といった処理が追いつかなくなり、発泡スチロールや氷が不足する事態が発生しています。
  • 処理能力を超えた水揚げは、鮮度の低下や品質の劣化につながるため、漁獲量を調整する必要が出てきました。

2. 魚価の暴落を防ぐため

  • 供給が需要を大幅に上回ると、魚の価格は暴落します。
  • 漁師の収入が減少し、漁業経営が成り立たなくなるのを防ぐため、価格の安定化を図る目的で漁獲量を調整しています。

3. 持続的な漁業のため

  • 過度な漁獲は資源の乱獲につながる恐れがあります。
  • 将来にわたって安定した漁獲を確保するため、漁獲量を適切に管理することが重要です。

豊漁の要因は何か

 サンマの豊漁には、複数の要因が複合的に影響していると考えられています。主な要因として挙げられるのは以下の点です。

1. 中国漁船の動向

  • これまで日本の排他的経済水域(EEZ)外の公海で、サンマを乱獲していると指摘されてきた中国の漁船が、サンマ漁を切り上げて南米沖のイカ漁に向かったことが大きな要因の一つとされています。
  • これにより、漁場での競合が減少し、日本の漁船が効率的にサンマを漁獲できる環境が整いました。

2. 海洋環境の変化

  • サンマの回遊ルートや生息地は、海流や海水温に大きく左右されます。
  • 近年、不漁が続いていた原因の一つに、サンマが日本の近海に回遊してこなかったことが挙げられていましたが、今年の豊漁は、太平洋の西側に良好な漁場が形成されたこと、また日本のEEZ内に漁場が現れたことが理由として指摘されています。
  • これは、海流(特に親潮)の流れの変化が影響していると考えられます。

3. 資源量の増加の可能性

  • 近年、資源量の減少が懸念されていましたが、2023年の後半に日本のEEZ内で0歳魚(生まれたばかりのサンマ)が多く確認されており、これらのサンマが成長して今年の漁場に現れた可能性も指摘されています。

 これらの要因が重なったことで、過去数年の歴史的な不漁から一転し、サンマの豊漁が実現したと考えられています。ただし、今後の漁獲量や資源の動向については、引き続き注視していく必要があります。

日本の漁場に戻ってきたサンマの群れと、海洋環境の変化が主な要因とされています。また、近年漁獲を競っていた中国漁船がイカ漁に移行したことも影響していると考えられています。

海流の流れの変化がどのように変化したのか

 今年のサンマ豊漁は、海流の変化、特に「親潮」と「黒潮」の流れ方が大きく関係しています。

親潮の南下

 サンマは冷たい海水域を好む魚です。近年の不漁は、親潮(千島海流)の南下が弱まり、日本の近海に冷たい水が流れ込んでこなかったことが一因とされていました。

 しかし、今年は親潮が日本近海まで南下し、サンマの回遊ルートが日本の沿岸に近づいたため、漁獲量が増加したと考えられています。

黒潮大蛇行の終息

 もう一つの要因は、長期間続いていた「黒潮大蛇行」が終息したことです。黒潮が大きく蛇行すると、沿岸の水温や流れが不安定になり、サンマの回遊ルートや餌の環境に影響を与え、漁場が形成されにくい状況が続いていました。

 この大蛇行が終息したことで、日本の近海にサンマが集まりやすい海況になったとみられています。

 これらの海流の変化が複合的に影響し、サンマの群れが日本の漁場に近づくという好条件が揃ったことが、今年の豊漁につながったと言えます。

これまでのサンマの不漁は、親潮が南下せず、黒潮大蛇行により沿岸の水温が上昇したことが一因とされていました。しかし今年は、親潮の南下が強まり、日本の沿岸に冷たい水が流れ込んだため、サンマが日本の近海に近づきやすくなり、豊漁につながったと考えられています。

稚魚が増えた理由は何か

 サンマの稚魚が増えた要因については、複数の見解がありますが、最も有力な説は、ここ数年の厳しい資源管理と、それに伴う漁獲圧の低下です。

 長年にわたる不漁が続いたことで、サンマの資源量が激減しました。この状況を受け、国際的な枠組みである「北太平洋漁業委員会(NPFC)」などで漁獲量の上限(漁獲枠)が設定され、日本や台湾、中国などがこのルールに沿った漁業を行うようになりました。

 漁獲量が抑制されたことで、これまでは獲られていたはずの親魚が生き残り、産卵することができたと考えられています。特に、日本近海で漁獲を競っていた中国漁船がサンマ漁からイカ漁に移行したことも、漁獲圧の低下に拍車をかけたとみられています。

 この結果、生き残った親魚が順調に産卵し、生まれた稚魚が成長して今年の豊漁につながった、というのが現在の見方です。ただし、稚魚の資源量調査は行われていますが、稚魚の増加が直接的に確認された具体的なデータはまだ少ないため、今後も調査が続けられる予定です。

 また、サンマはほぼ一年中産卵を行いますが、特に冬に盛んに行われます。この冬から春にかけての産卵状況が、その後の稚魚の数に大きく影響していると考えられています。

過去数年にわたる資源の激減に対し、国際的な漁獲規制が導入されました。これにより、生き残った親魚が産卵する機会が増え、稚魚が順調に育ったためだと考えられています。

ここ数年のサンマの漁獲量と消費量の推移は

 近年の日本のサンマ漁獲量と消費量は、共に大幅に減少傾向にありました。

サンマ漁獲量

  • 大幅な減少: 2008年頃には年間30万トン以上を記録していたサンマの漁獲量は、その後急激に減少し、2019年以降は数万トン規模にまで落ち込みました。2022年には、過去最低となる1.8万トンを記録しました。
  • 背景: 海洋環境の変化(親潮の弱体化や漁場の沖合化など)、そして日本だけでなく、台湾や中国などによる国際的な漁獲量の増加が、日本の漁獲量の減少に拍車をかけました。

サンマ消費量

  • 漁獲量の減少と連動: 漁獲量の減少とそれに伴う価格の高騰は、消費量の減少に直接的に繋がっています。
  • 世帯あたりの消費量減少: 具体的なデータとしては、2009年の1世帯あたりのサンマ消費量(全国平均2,360g)が、2012年から2016年の平均値では1,411gと、40%以上も減少しています。

 このように、ここ数年のサンマは「庶民の味」から「高級魚」へと位置づけが変わり、消費者の食卓に上る機会が減っていました。しかし、今年の豊漁により、価格が安定し、再びサンマが食卓に並ぶ機会が増えることが期待されています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました