三菱電機のFAシステム FAシステムとは何か?三菱電機の強みはどこか?

この記事で分かること

  • FAシステムとは:ファクトリーオートメーション(Factory Automation)の略です。工場内の生産工程を、ロボットや機械で自動化するシステム全体を指します。
  • FAシステムの需要増加の理由:FAシステムの需要は、世界的な人手不足と人件費の高騰が主な理由です。また、多品種少量生産や高品質な製品へのニーズ、そしてAIやIoT技術の進歩による「スマート工場」化の流れも、FAシステム導入を加速させています。
  • 三菱電機の強み:三菱電機は、FAの主要機器(PLC、サーボなど)を自社で一貫して開発・製造しており、高い信頼性と品質が強みです。また、製品だけでなく、工場全体のデジタル化を支援する総合的なソリューション提案力も強みです。

三菱電機のFAシステム

 三菱電機は、事業構造の変革や人員構成の若返りを図るため、「ネクストステージ支援制度特別措置」として、退職金に特別加算金を上乗せする時限制度を実施すると発表しました。

 https://jp.reuters.com/business/XMYI6TG2I5JXRNI4IZUDKQJJOQ-2025-09-08/

 この制度は、2026年3月期に過去最高益を予想する中での「黒字リストラ」として注目されています。

 三菱電機は、将来の事業環境の変化への対応や高コストな中高年層を減らして組織の若返りを図るために黒字リストラを行い、集中分野への重点投資を行うとしています。

 前回の記事では、黒字リストラの内容についての解説でしたが、今回は重点分野としているFAシステムについての記事となります。

FAシステムとは何か

 FAシステムとは、ファクトリーオートメーション(Factory Automation)の略で、工場内の生産工程を自動化するためのシステムや技術の総称です。

FAシステムの目的

 FAシステムの最大の目的は、人件費の削減、生産性の向上、品質の安定化です。人手不足が深刻化する現代において、製造業の競争力を維持・強化するために不可欠なものとなっています。

FAシステムを構成する主な要素

 FAシステムは、様々な機器やソフトウェアを組み合わせて構築されます。主要な要素は以下の通りです。

  • 産業用ロボット: 部品搬送、組み立て、溶接、塗装など、様々な作業を自動で行います。
  • PLC(プログラマブルロジックコントローラ): 生産ライン全体の機器を制御する「頭脳」の役割を果たします。
  • インバータ・サーボ: モーターの回転速度や位置を正確に制御し、ロボットや機械を精密に動かします。
  • センサー: 物体の有無や位置、温度、圧力などを検知し、情報をPLCに送ります。
  • HMI(ヒューマンマシンインターフェース): 生産ラインの状況を監視・操作するための表示器やパネルです。
  • ソフトウェア: これらの機器を統合的に制御・管理し、生産データを分析・可視化します。

三菱電機とFAシステム

 三菱電機は、このFAシステム分野において世界的なリーディングカンパニーです。特に、PLCやインバータ、サーボ、産業用ロボットなどの製品群は、高い技術力と信頼性を誇ります。

 同社は、FA機器の単体販売だけでなく、これらの製品を組み合わせた総合的なソリューションとして提供することで、顧客企業の「スマート工場」化を支援し、高い収益を上げています。

FAシステムに力を入れる理由

 FAシステムは、人件費高騰や人手不足といった世界的な課題を解決する手段として需要が拡大しています。

 三菱電機は、この分野で培ってきた高い技術力とブランド力を活かし、単なる機器の提供に留まらず、工場のデジタル化や自動化を包括的に支援するソリューション事業を強化しています。これは、価格競争に巻き込まれにくく、高い収益率を維持できるビジネスモデルです。

 また、今後もEV(電気自動車)や半導体といった新産業分野で自動化投資が活発化すると見込んでおり、持続的な成長が見込めるため、FAシステムを最重要事業と位置付けています。

FAシステムは、ファクトリーオートメーション(Factory Automation)の略です。工場内の生産工程を、ロボットや機械で自動化するシステム全体を指します。人件費の削減、生産性向上、品質安定化が主な目的です。

プログラマブルロジックコントローラとは何か

 プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)は、略してPLCと呼ばれ、日本の産業界では三菱電機がこの分野で製品名として使用している「シーケンサ」という名称で広く知られています。

 PLCは、工場や機械の制御を自動で行うためのコンピュータです。

役割と仕組み

  • 「機械の頭脳」の役割: センサーやスイッチなどの入力機器から信号を受け取り、あらかじめ書き込まれたプログラムに従って、モーターやランプなどの出力機器を制御します。
  • シーケンス制御: 「Aという条件になったらBを動かす」「時間が経ったらCを止める」といった、特定の順序や条件に基づいて機械を動かす「シーケンス制御」を効率的に実現します。
  • プログラムで制御: 従来の機械制御は、多くの電気リレーを物理的に配線して回路を組んでいました。しかし、PLCはプログラムで制御するため、回路変更や機能追加が容易になり、省スペース化とコスト削減に大きく貢献します。

身近な例

 FA(ファクトリーオートメーション)の中心的な役割を担うだけでなく、私たちの身近なところでも使われています。

  • エレベーター: ボタンを押すと指定の階に移動したり、扉が閉まろうとするときに人が通ると再び開いたりする制御。
  • 自動ドア: センサーが人を検知すると扉が開き、一定時間後に閉まる制御。
  • 交通信号機: 決まった時間で信号の色が変わる制御。

 PLCは、過酷な工場環境でも安定して動作するように設計されており、高い信頼性を持っています。三菱電機は、このPLC分野で世界的に高いシェアを誇り、同社のFA事業の主力製品となっています。

プログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、工場などの機械を自動制御する専用のコンピュータです。センサーからの信号を受けて、あらかじめ組まれたプログラムに従い、ロボットやモーターを動かします。これにより、生産ラインの自動化や効率化を実現します。

産業用ロボットにはどのようなものがあるのか

 産業用ロボットには、主に4つの種類があり、それぞれ異なる得意な動きや用途があります。


垂直多関節ロボット

 人の腕に最も似た構造をしており、複数の関節で複雑な動きが可能です。溶接、塗装、組み立て、搬送など、幅広い作業に利用される汎用性の高さが特徴で、産業用ロボットの中で最も広く普及しています。軸の数は4軸から7軸以上と多様で、軸数が多いほど自由度が高まります。

水平多関節ロボット(スカラロボット)

 水平方向の動きに特化したロボットで、「Selective Compliance Assembly Robot Arm」の頭文字をとってSCARA(スカラ)と呼ばれます。平面的な動きが非常に速く、上下の押し込み作業も得意です。主に部品の組み立て、ねじ締め、物のピック&プレース(つまんで置く)などの作業に使われます。

パラレルリンクロボット

 複数のアーム(リンク)で先端部を制御する構造をしており、非常に高速かつ精密な動作が可能です。アームが天井から吊り下げられているものが多く、ベルトコンベア上を流れてくる製品を素早くつかんで仕分けする作業を得意とします。主に食品や医薬品、電子部品などの高速なピッキング・整列・包装に利用されます。

直交ロボット

 直交する3つのスライド軸(X, Y, Z軸)で構成されており、直線の動きに特化しています。構造がシンプルで制御が容易なため、安価で導入しやすいという特徴があります。製品の搬送、検査、単純な組み立てなどに利用されます。

産業用ロボットには、人の腕に似た垂直多関節ロボット、水平方向の動きが速いスカラロボット、高速なピッキングが得意なパラレルリンクロボット、直線的な動きをする直交ロボットなどがあります。それぞれ得意な作業が異なります。

FAシステムでの三菱電機の強みとライバルは

 三菱電機のFAシステム事業は、製品のラインナップの豊富さと、それらを組み合わせた総合的なソリューション提案力に強みがあります。一方で、世界市場ではドイツやスイスなどの巨大企業がライバルとして存在します。


三菱電機の強み

  • 幅広い製品群: FAの頭脳であるPLC(シーケンサ)や、モーターを制御するサーボ、産業用ロボットなど、FAに必要な主要機器を自社で開発・製造している点が大きな強みです。これにより、機器間の連携がスムーズで、安定したシステムを構築できます。
  • 「e-F@ctory」によるソリューション提案: 単に製品を売るだけでなく、FA技術とIT技術を融合させたソリューション「e-F@ctory」を提供しています。これは、生産現場のデータを収集・活用して、生産性向上やエネルギー効率改善を支援するもので、顧客の課題解決に深く関わることで高い付加価値を生み出しています。
  • グローバルなサポート体制: 世界中にFAセンターを設置し、技術的な問い合わせやアフターサービスを提供することで、海外の顧客にも高品質なサービスを提供しています。

主要なライバル

 FAシステム市場における三菱電機のライバルは、国内外に多岐にわたります。

  • シーメンス(ドイツ): 世界最大の産業オートメーション企業であり、特にデジタル化やクラウド連携において強みを持っています。
  • ABB(スイス): ロボットやパワーエレクトロニクス分野でグローバルに事業を展開しており、特に欧州市場で大きな存在感を持っています。
  • オムロン、キーエンス(日本): 国内市場では、PLCやセンサー、制御機器などで高いシェアを誇るオムロンや、直接販売と高収益体質が強みのキーエンスが強力なライバルです。

 三菱電機は、これらの競合に対して、製品の信頼性や総合的なソリューション提案力で差別化を図り、FA事業の成長をけん引しています。

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