この記事で分かること
- 再生可能エネルギーの種類:太陽光発電、洋上風力発電、バイオマス発電、地熱発電、水力発電といった分野で構成されます。特に太陽光が市場の中心ですが、今後は大規模開発が可能な洋上風力が成長を牽引する見込みです。
- 洋上風力拡大の理由:日本の広い排他的経済水域を活用でき、陸上より風が安定して効率的な発電が可能であり、大規模化でコストも下がり、騒音や景観への影響も抑えられるなどのメリットから拡大が見込まれています。
- 洋上風力の課題:建設・維持管理コストの高さ、電力系統の容量不足、漁業関係者との調整、そして海洋生態系への影響です。台風や地震の多い日本の厳しい自然条件への対応も求められます。
再生可能エネルギー市場の拡大
富士経済の調査によると、2025年度における日本の再生可能エネルギー発電システムの国内市場は、2兆円を超える規模になると予測されています。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00760428?gnr_footer=0083535
政府も系統整備への投資計画を発表するなど、政策的な支援を強化しています。今後も、市場規模はさらに拡大し、2040年度には約2.9兆円にまで達すると予測されています。
再生可能エネルギー市場にはどんな分野があるのか
再生可能エネルギー市場2兆円規模を構成する主要な分野は、主に以下の通りです。
1. 太陽光発電
これまで日本の再生可能エネルギー市場を牽引してきた中心的な存在です。導入量が最も多く、住宅用からメガソーラーと呼ばれる大規模なものまで幅広く普及しています。
- 特徴:
- 技術開発が進んでおり、コストが比較的安価になっています。
- 導入が比較的容易で、個人宅への設置も進んでいます。
- 今後の動向:
- 既存のFIT(固定価格買取制度)から、FIP(市場連動型固定価格買取制度)への移行が進み、市場価格に左右されるビジネスモデルが増加しています。
- 土地の確保が難しくなり、屋根上や遊休地、水上などに設置する新しいモデルも増えています。
2. 洋上風力発電
今後の市場成長の最大の牽引役として期待されている分野です。日本は四方を海に囲まれており、洋上風力発電の大きなポテンシャルを秘めています。
- 特徴:
- 陸上風力に比べて大規模な発電が可能で、安定した風力を得やすいというメリットがあります。
- 1つのプロジェクトの事業規模が数千億円に上ることもあり、市場全体を大きく押し上げる要因となります。
- 今後の動向:
- 日本では近年、大規模な洋上風力発電所の稼働が始まっており、今後も開発が加速すると見られています。
- 着床式(海底に基礎を設置)だけでなく、より深い海域でも可能な浮体式(海上に浮かせた構造物)の技術開発・実証が進められています。
3. バイオマス発電
木材、食品廃棄物、農業残渣などの生物資源を燃料として発電する分野です。
- 特徴:
- 太陽光や風力とは異なり、天候に左右されず安定した電力供給が可能です。
- 廃棄物の有効活用にもつながるため、環境に優しい側面も持っています。
- 今後の動向:
- 燃料となるバイオマス資源の安定的な確保や、収集・運搬コストの課題をどう解決していくかが重要となります。
4. 地熱発電
火山の多い日本では、豊富な地熱資源を活用した地熱発電も重要な分野です。
- 特徴:
- 24時間365日安定して発電できるベースロード電源として期待されています。
- 今後の動向:
- 開発に時間がかかり、初期投資も大きいという課題があります。
- 温泉地との共存も重要なテーマです。
5. 水力発電
日本で古くから利用されてきた再生可能エネルギーの代表格です。
- 特徴:
- 発電コストが安価で、供給が安定しています。
- 今後の動向:
- 大規模な新規開発は難しいため、今後は既存設備の改修や小水力発電の導入が進められると見られています。
これらの発電システムに加えて、蓄電池や送配電網のデジタル化(スマートグリッド)といった関連技術やサービスも、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、市場を構成する重要な要素となっています。
特に蓄電池は、不安定な再エネの供給を補完し、電力の安定化に不可欠な技術として、今後大きな市場成長が見込まれています。

再生可能エネルギー市場は、太陽光発電、洋上風力発電、バイオマス発電、地熱発電、水力発電といった分野で構成されます。特に太陽光が市場の中心ですが、今後は大規模開発が可能な洋上風力が成長を牽引する見込みです。
洋上風力が拡大する理由は
洋上風力が拡大する主な理由は、以下の5つの点に集約されます。
1. 豊富な導入ポテンシャル
日本は四方を海に囲まれた島国であり、広大な排他的経済水域(EEZ)を有しています。陸上に比べて、洋上は風力発電に適した強い風が安定して吹く場所が多く、国土面積が限られる日本にとって、洋上風力はエネルギー供給の新たな「フロンティア」として大きなポテンシャルを秘めているからです。
2. 発電効率の高さと安定性
陸上に比べて洋上は風の障害物が少なく、風が安定して吹きます。風速が1m/s上昇すると発電出力は約1.6倍になるとも言われており、洋上では陸上よりも効率的で安定した発電が期待できます。
3. 大規模な発電が可能
洋上は陸上のような土地や道路の制約がないため、発電量の大きな大型風車の導入が容易です。大規模な設備を集中して設置することで、発電コストの低減にもつながります。洋上風力発電所の事業規模は、数千億円に達することもあります。
4. 環境・社会的なメリット
陸上風力発電で課題となる騒音や景観への影響を最小限に抑えられます。陸地から離れた場所に設置されるため、地域住民とのトラブルが起こりにくく、大規模開発が進めやすいというメリットがあります。
5. 技術革新とコスト削減
着床式(海底に基礎を設置)に加えて、水深の深い海域でも設置可能な浮体式(海上に浮かせる)の技術開発が進んでいます。これにより、日本の急峻な海底地形でも洋上風力発電の導入が可能になります。また、風車の大型化や量産化、デジタル技術を活用したメンテナンスの効率化などにより、発電コストの低減が進んでおり、経済的な競争力が高まっています。
これらの理由から、洋上風力は日本のエネルギー自給率向上、脱炭素社会の実現、そして新たな産業創出の切り札として、官民一体で開発が加速しています。

日本の広い排他的経済水域を活用でき、陸上より風が安定して効率的な発電が可能です。大規模化でコストも下がり、騒音や景観への影響も抑えられるため、脱炭素化の切り札として官民一体で開発が加速しています。
洋上風力の課題は何か
洋上風力発電は大きな可能性を秘めている一方で、克服すべき複数の課題も存在します。実際に、三菱商事と中部電力が洋上風力発電計画からの撤退するニュースも報じられています。
主な課題は以下の通りです。
1. 高いコスト
- 建設コスト: 海底に基礎を設置する工事や、風車を洋上へ輸送・組み立てる作業は、陸上に比べてはるかに難易度が高く、コストがかかります。また、発電した電気を陸地へ送るための海底ケーブルの敷設にも多額の費用が必要です。
- 維持管理コスト: 海上は塩害や強風による設備劣化が早く進むため、頻繁な点検・メンテナンスが必要です。また、メンテナンス作業員の往復や特殊な船舶の手配など、陸上よりも維持管理費用が高くなります。
2. 電力系統の制約
洋上で発電した大量の電力を送電するためには、既存の送配電網を大幅に増強する必要があります。しかし、現状では系統容量が不足している場所が多く、洋上風力発電所の建設・稼働が計画通りに進まないケースが見られます。
3. 環境への影響と地域社会との共生
- 海洋生態系への影響: 建設時の海底掘削や騒音、稼働後の騒音や振動が、魚類や海洋哺乳類に影響を与える可能性があります。また、渡り鳥の飛来ルートと重なる場合、鳥との衝突リスクも懸念されます。
- 漁業との調整: 漁場や航路と重なる海域での開発は、地元漁業者や関係者との調整が不可欠です。円滑な合意形成には時間を要することが多く、事業計画に遅れが生じる一因となります。
4. 厳しい自然条件
台風や地震が多い日本では、こうした厳しい自然条件に耐えうる、高耐久性の設備の開発が不可欠です。また、陸上に比べて水深が深い海域が多いため、着床式だけでなく、より高度な技術を要する浮体式の技術開発とコストダウンが求められます。
これらの課題を解決するため、政府や企業は、送電網の整備計画や技術開発、地域との連携強化などに積極的に取り組んでいます。

洋上風力の主な課題は、建設・維持管理コストの高さ、電力系統の容量不足、漁業関係者との調整、そして海洋生態系への影響です。台風や地震の多い日本の厳しい自然条件への対応も求められます。
市場の今後の予測は
今後の日本の再生可能エネルギー市場は、引き続き拡大していくと予測されています。特に、洋上風力発電が市場成長の主要な牽引役となる見込みです。
今後の市場予測のポイント
- 市場規模の拡大:
- 株式会社富士経済の調査によると、2025年度に2兆円を超えると予測されている市場規模は、その後も長期的に拡大し、2040年度には約2.9兆円に達すると見られています。
- この拡大は、政府の「2050年カーボンニュートラル」目標達成に向けた導入促進策が背景にあります。
- 洋上風力発電の急成長:
- 陸上風力の適地が減少する中、開発の中心は洋上風力へと移行します。
- 2030年度前後に、数百MW規模の大型プロジェクトが複数運転開始する予定であり、市場全体を大きく押し上げます。
- 2040年度には、洋上風力が再生可能エネルギー発電システム市場の約3割を占めるまでになると予測されています。
- 太陽光発電の安定的な拡大:
- 太陽光発電は今後も市場の約6割を占める主要な電源であり続けると見られています。
- 住宅向けでは、電気料金削減を目的とした自家消費用途での導入が堅調に推移します。
- 非住宅向けでは、FIT(固定価格買取制度)期間満了後の設備の更新や、企業の脱炭素化を目的としたコーポレートPPA(電力購入契約)が増加すると予測されています。
- ペロブスカイト太陽電池のような次世代技術の開発も、新たな需要を創出する可能性があります。
- その他の電源の動向:
- 水力発電: 大規模な新規開発が難しいため、今後は既存設備の改修や小水力発電が中心となり、市場規模は縮小傾向をたどると予測されています。
- バイオマス発電: FIP制度への移行に伴う駆け込み需要があるものの、長期的には輸入材を利用する大規模案件が減少し、市場は縮小すると見られています。
- 地熱発電: 開発のボトルネックから導入ペースは緩やかですが、未開発エリアの開発促進や技術革新により、着実に導入が進むと期待されています。
全体として、脱炭素化という世界的な潮流の中で、日本の再生可能エネルギー市場は今後も成長を続ける見通しです。特に、洋上風力発電が新たな成長ドライバーとして、市場の構造を大きく変えていくことが予測されます。

今後、日本の再生可能エネルギー市場は拡大を続け、2040年度には約2.9兆円規模に達する見込みです。洋上風力が成長を牽引し、市場の約3割を占めるまでになります。太陽光発電は自家消費型やPPAモデルでの導入が進み、引き続き市場の中心的な存在であり続けると予測されています。
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