この記事で分かること
- ヒンジとは:二つの物体を連結し、回転させるための機械部品です。日本語では蝶番とも呼ばれます。折りたたみスマートフォンにおいては、画面の開閉を可能にし、好きな角度で固定する重要な役割を果たします。
- 使用される素材:軽量で耐久性の高いアルミニウム合金や、さらに強度の高いチタン合金が使用されています。Appleはより高強度な液体金属の採用も噂されています。
- 液体金属とは:非晶質金属は、原子が不規則に並んだ「ガラスのような」構造を持つ特殊な金属です。結晶粒界という弱点がないため、従来の金属よりはるかに高い強度と弾性を両立し、耐食性や耐摩耗性にも優れています。
折りたたみ型スマホにおけるヒンジ
複数の情報源によると、Appleは2026年に折りたたみ式iPhoneを市場に投入する準備を進めており、2026年9月に「iPhone 18」シリーズの一部として発表・発売されると予測されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM175180X10C25A9000000/
これらの情報はあくまで噂やアナリストの予測であり、Appleが公式に発表したものではありません。しかし、複数の信頼できる情報源が同様の時期を指摘しており、2026年の登場は現実味を帯びてきていると言えるでしょう。
今回は折りたたみ型の採用で需要が増えると見込まれるヒンジについての記事となります。
ヒンジとは何か
ヒンジ(Hinge)とは、ドアや蓋などの2つの物体を連結し、一方をもう一方に対して特定の軸を中心に回転させるための機械部品です。日本語では「蝶番(ちょうつがい)」とも呼ばれます。
ヒンジの主な役割は以下の通りです。
1. 連結と支持
ヒンジは、2つの物体をしっかりとつなぎ、開閉動作を可能にします。ドアや蓋の重さを支え、安定した状態を保つ役割も担います。
2. スムーズな回転
軸(ピン)を中心に、摩擦が少なく滑らかな回転運動を提供します。これにより、力を入れずに扉や蓋を開閉できます。
3. 位置の固定
一部のヒンジは、任意の角度で物体を保持する「フリーストップ機能」や、自動で開閉する「ダンパー機能」などを持ちます。例えば、ノートパソコンのディスプレイや、折りたたみスマートフォンの画面を好きな角度で固定できるのは、この機能があるからです。
ヒンジは、ドアや窓、家具の扉、車のボンネットなど、私たちの身の回りのあらゆる場所に利用されています。折りたたみスマートフォンにおいては、デバイスの開閉動作や、画面の耐久性を左右する極めて重要な部品となっています。

ヒンジとは、二つの物体を連結し、回転させるための機械部品です。日本語では「蝶番(ちょうつがい)」とも呼ばれます。折りたたみスマートフォンにおいては、画面の開閉を可能にし、好きな角度で固定する重要な役割を果たします。耐久性と滑らかさが求められる、製品の要となる部品です。
ヒンジにはどのような素材が使われるのか
折りたたみスマートフォンのヒンジには、主に軽量で耐久性の高い金属素材が使われています。特に重要なのは、何十万回もの開閉に耐える強度と、端末全体の重量を抑える軽さを両立させることです。
主な素材と特徴
- アルミニウム合金: 多くのメーカーが採用している主流の素材です。特に、従来のアルミニウムよりも強度を高めた「アーマーアルミニウム」などの特殊な合金が開発・使用されています。軽量で加工しやすいため、複雑なヒンジ構造に適しています。
- チタン合金: 強度と軽量性を兼ね備えた高級素材です。アルミニウムよりも高価ですが、より薄くても高い耐久性を確保できるため、ハイエンドモデルで採用される傾向があります。
- ステンレススチール: 高い強度と耐食性を持つ素材です。ヒンジのピンや特定の部品など、特に高い強度が必要な部分に用いられることがあります。
- 液体金属(Liquidmetal): Appleが折りたたみ式iPhoneのヒンジに採用する可能性が噂されている特殊な合金です。ガラスに似た原子構造を持つ非晶質(アモルファス)金属で、非常に高い強度、耐傷性、耐食性を持っています。これにより、ヒンジの小型化と耐久性の向上が期待されています。
これらの素材は単体で使われるだけでなく、複数の素材を組み合わせたり、表面に特殊なコーティングを施したりすることで、耐久性や滑らかさ、デザイン性を高める工夫が凝らされています。

ヒンジには主に、軽量で耐久性の高いアルミニウム合金や、さらに強度の高いチタン合金が使われます。これらの金属は、何十万回もの開閉に耐えるために重要です。Appleはより高強度な液体金属の採用も噂されています。
ヒンジの性能を高める方法は
ヒンジの耐久性、開いた時の平坦性、スムーズな開閉動作を高めるためには、主に以下の技術が採用されています。
1. ヒンジの内部構造の工夫
ヒンジの耐久性と開閉動作の鍵は、内部の複雑な機構にあります。
- カム・ギア構造: 複数の小さなカム(回転軸)や歯車(ギア)を組み合わせることで、開閉動作の摩擦を制御し、スムーズな動きを実現します。この構造は、画面を任意の角度で止める「フリーストップ機能」にも不可欠です。
- 水滴型ヒンジ: 閉じたときにヒンジ内部に隙間ができないように、画面が水滴のようにゆるやかなカーブを描いて収納される構造です。これにより、開いた時の折り目が目立たず、画面の平坦性が高まります。また、内部へのホコリやゴミの侵入も防ぎます。
2. 特殊な素材の採用
ヒンジの素材自体も重要な要素です。
- 高強度・軽量金属: アルミニウム合金やチタン合金など、軽量でありながら高い強度を持つ素材が使われます。これにより、何十万回もの開閉に耐える耐久性を確保し、端末全体の重量増加も抑えられます。
- 液体金属: 噂されているAppleの折りたたみiPhoneでは、通常の金属よりも高強度で耐摩耗性に優れた液体金属(非晶質金属)がヒンジに採用される可能性があります。これは、ヒンジをより薄く、より強くする技術として期待されています。
3. その他
- 清掃機構: ヒンジ内部に繊維(スイーパー)を内蔵し、開閉時にヒンジに侵入しようとするホコリやゴミを自動でかき出す仕組みを採用しているメーカーもあります。
- 防塵・防水加工: ヒンジ部分の隙間を最小限に抑えたり、特殊なコーティングを施したりすることで、液体や微細な粒子の侵入を防ぎ、故障リスクを低減します。

ヒンジの性能向上には、内部構造の工夫、素材の選定、そして独自の技術が組み合わされています。具体的には、画面を水滴のように収納し折り目をなくす「水滴型ヒンジ」や、複数の歯車を組み合わせた「カム・ギア構造」が滑らかな開閉と平坦性を実現。また、軽量で高強度なアルミニウムやチタン、特殊な液体金属などの新素材が耐久性を高めます。
液体金属とは何か
「液体金属」という言葉は、大きく分けて2つの意味で使われます。
1. 室温で液体の状態にある金属
これは一般的な意味での液体金属です。
- 例: 水銀(融点-38.8℃)、ガリウム(融点29.8℃)など。
- 特徴: 水のように流動性があり、同時に金属としての高い熱伝導性や電気伝導性も持っています。CPUの冷却材や、水銀を使用しない体温計などに利用されます。
2. 非晶質金属(アモルファス金属)
一般的に「液体金属」がハイテク素材として言及される場合、この「非晶質金属(アモルファス金属)」を指すことが多いです。
- 特徴:
- 非結晶構造: 通常の金属は原子が規則正しく並んだ結晶構造を持っていますが、非晶質金属は原子がランダムに配列しています。ガラスに似た構造であることから「バルク金属ガラス」とも呼ばれます。
- 超高強度と高弾性: 非常に硬く、同時に高い弾性(バネのようにしなやかに変形して元に戻る性質)を持っています。ステンレス鋼やチタン合金よりも強いとされています。
- 優れた耐食性・耐摩耗性: 表面が滑らかで腐食しにくく、傷にも強いです。
- 精密成形が可能: 融点が低く、熱を加えるとプラスチックのように型に流し込んで精密な形状に成形できます。
この非晶質金属としての液体金属は、高い強度と弾性が求められるヒンジや、耐傷性が重要なスマートフォン筐体、時計のケースなどに採用が検討されています。Appleがヒンジに採用すると噂されているのは、この非晶質金属の「Liquidmetal®」という商標を持つ合金シリーズです。
非晶質金属が強度と弾性が高い理由は
非晶質金属が高い強度と弾性を持つ主な理由は、原子が不規則に配列された非晶質構造(アモルファス構造)にあります。通常の金属のような規則正しい結晶構造を持たないため、以下のような特徴が生じます。
1. 結晶粒界がない
通常の金属は、多数の小さな結晶が集合してできており、その境界を「結晶粒界」と呼びます。この結晶粒界は、外部から力が加わった際に変形や破壊が始まる弱点となりやすいです。
しかし、非晶質金属は原子がランダムに並んでいるため、そもそも結晶粒界が存在しません。この構造的な欠陥がないことが、非常に高い強度をもたらします。
2. 均質な原子配列
原子が不規則ながらも均質に配置されているため、外部からの力を分散させることができます。力が一点に集中しにくく、全体で力を受け止めることができるため、破壊されにくいです。
3. 高い弾性
非晶質金属は、原子が密に詰まっているにもかかわらず、結晶構造のような固定された並びがないため、加わった力に対して柔軟に変形し、力を取り除くと元の形状に戻る高い弾性を持っています。例えるなら、ランダムに積み上げられたジェンガのブロックが、力を加えても崩れずにしなやかに歪むようなイメージです。
これらの特性により、非晶質金属は「金属でありながらガラスのような構造」というユニークな性質を持ち、従来の金属よりも高い強度と弾性を両立しています。

非晶質金属は原子が不規則に配列されているため、通常の金属にある結晶粒界という弱点が存在しません。この均質な構造により、力が加わった際に全体で力を分散できるため、高い強度と、しなやかに変形して元に戻る優れた弾性を両立しています。
非晶質金属にはどのような種類があるのか
非晶質金属は、主成分となる金属によって分類され、その種類ごとに異なる特性を持ちます。主な種類は以下の通りです。
1. 鉄(Fe)基アモルファス合金
鉄を主成分とし、ケイ素(Si)やホウ素(B)などを加えた合金です。
- 特徴: 優れた軟磁性(磁化しやすく、磁気を失いやすい性質)を持ちます。
- 用途: 変圧器の鉄心(コア)、インダクタ、磁気ヘッドなど、電気機器の効率を向上させる目的で広く利用されています。
2. ニッケル(Ni)基、コバルト(Co)基アモルファス合金
ニッケルやコバルトを主成分とした合金です。
- 特徴: 鉄基アモルファス合金と同様に軟磁性が優れており、特にニッケル基は耐食性が高いという特徴もあります。
- 用途: 磁気シールド材、センサー、高周波トランスなどに使われます。
3. ジルコニウム(Zr)基アモルファス合金
ジルコニウムを主成分とし、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などを添加した合金です。
- 特徴: 非常に高い強度と硬度、優れた弾性を持つことが大きな特徴です。
- 用途: ゴルフクラブのヘッド、時計のケース、精密なマイクロギア、そしてスマートフォンなどの高級機器の筐体やヒンジなど、高強度・高弾性が求められる部品に利用されます。AppleがiPhoneのヒンジで採用する可能性があると噂されている「Liquidmetal®」は、このジルコニウム基のアモルファス合金です。
4. その他の種類
- 銅(Cu)基アモルファス合金: 優れた強度と展延性を持つことから、装飾品などに使われることがあります。
- チタン(Ti)基アモルファス合金: 医療分野での利用が期待されており、生体適合性の高さが注目されています。
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