三菱ケミカルのアクリル樹脂リサイクル アクリル樹脂とは何か?どのようにリサイクルされるのか?

この記事で分かること

  • アクリル樹脂とは:高い透明性と耐衝撃性を持つプラスチックの一種です。ガラスより軽く、割れにくい特徴があります。
  • ドアバイザーに使用される理由:アクリル樹脂は、高い透明性で視界を確保し、軽量性で燃費向上に貢献します。さらに、耐衝撃性で安全性を高め、耐候性で長期間の使用に耐えるため、ドアバイザーのような部品に適しています。
  • リサイクルの方法:使用済み樹脂を熱分解し、その原料であるメチルメタクリレート(MMA)モノマーに戻すことでリサイクルを行います。

三菱ケミカルのアクリル樹脂リサイクル材

 三菱ケミカルが、Hondaと共同で開発したアクリル樹脂リサイクル材が、新型軽乗用EV「N-ONE e:」のドアバイザーに採用されました。これは自動車用品業界で初めての事例です。

 https://www.mcgc.com/news_release/02434.html

 この技術をさらに発展させ、自動車のドアやフェンダーといった大型外装部品への適用も目指しています。リサイクルアクリル樹脂の利用を拡大することで、自動車業界全体の環境負荷低減に貢献することを目指しています。

アクリル樹脂とは何か

 アクリル樹脂とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを重合させて作られる熱可塑性プラスチックの一種です。特にポリメタクリル酸メチル(PMMA)が代表的で、その優れた特性から「プラスチックの女王」とも呼ばれています。


特徴

 アクリル樹脂の主な特徴は以下の通りです。

  • 高い透明性: ガラスよりも光線透過率が高く(約93%)、高い透明性を持っています。水族館の大型水槽や飛行機の窓などに利用されています。
  • 軽量性: ガラスの約半分以下の重さです。
  • 耐衝撃性: ガラスの約10〜16倍の強度があり、割れにくいです。万が一割れても、ガラスのように破片が飛び散りにくい安全性があります。
  • 高い加工性: 切断、穴あけ、曲げ加工、接着などが容易で、様々な形状に成形できます。
  • 優れた耐候性: 紫外線や雨風に強く、屋外で長期間使用しても劣化しにくいです。

用途

 これらの優れた特性から、アクリル樹脂は多岐にわたる分野で活用されています。

  • 建築・インテリア: 飛沫防止パーテーション、窓、照明カバー、浴槽、看板
  • 自動車・乗り物: 自動車のランプレンズ、パトカーの赤色灯、飛行機の窓(キャノピー)
  • 日用品・雑貨: スマートフォンのカバー、フォトフレーム、食器、フィギュアケース
  • 光学部品: メガネやコンタクトレンズ、カメラのレンズ
  • その他: 塗料や接着剤の原料としても使われます。

アクリル樹脂とは、高い透明性と耐衝撃性を持つプラスチックの一種です。ガラスより軽く、割れにくい特徴があります。窓や水槽、看板、自動車のランプなど、幅広い用途で使われています。加工しやすく、屋外での使用にも強い耐候性を持ちます。

ドア部品に使われる理由は

 アクリル樹脂が車のドア部品(特にドアバイザー)に使われる主な理由は、その優れた特性が要求される役割に合っているためです。

1. 高い透明性

 ドアバイザーは運転者の視界を遮らないことが重要です。アクリル樹脂はガラスを上回る光線透過率を持つため、クリアな視界を確保できます。

2. 軽量性

 自動車の軽量化は、燃費向上や電費向上に直結します。アクリル樹脂はガラスの半分以下の軽さであり、車体全体の軽量化に貢献します。

3. 高い耐衝撃性

 ドアバイザーは走行中の小石や異物の飛来、衝撃に耐える必要があります。アクリル樹脂はガラスに比べて割れにくく、万が一破損しても破片が飛び散りにくいため、安全性が高いです。

4. 優れた耐候性

 ドアバイザーは常に屋外にさらされる部品です。アクリル樹脂は紫外線や雨風に強く、長期間使用しても黄変したり劣化したりしにくいという耐候性を持っています。これにより、透明性や強度を維持できます。

5. 成形加工性の良さ

 アクリル樹脂は熱で軟化し、複雑な形状にも成形しやすいという特性があります。これにより、車種ごとのドアの形状に合わせて、デザイン性の高いドアバイザーを効率的に製造できます。

 これらの特性に加え、三菱ケミカルが開発した「ケミカルリサイクル」によって、廃車になったアクリル樹脂を新品同様の品質で再生できるようになったことで、環境負荷低減という新たな付加価値も加わりました。

アクリル樹脂は、高い透明性で視界を確保し、軽量性で燃費向上に貢献します。さらに、耐衝撃性で安全性を高め、耐候性で長期間の使用に耐えるため、ドアバイザーのような部品に適しています。

ケミカルリサイクルの方法は

 アクリル樹脂のケミカルリサイクルは、熱分解という化学的な手法を用いて行われます。

熱分解リサイクルのプロセス

  1. 原料への分解: 回収された使用済みアクリル樹脂に熱を加えることで、その原料であるメチルメタクリレート(MMA)モノマーに戻します。アクリル樹脂は熱によって分解されやすい特性があるため、このリサイクル方法に適しています。
  2. 精製: 分解して得られたMMAモノマーには不純物が含まれるため、これを精製して高純度の状態にします。
  3. 再重合: 精製されたMMAモノマーを再び重合させることで、新品(バージン材)とほぼ同等の品質を持つアクリル樹脂として再生します。

 この方法の最大の利点は、不純物が含まれていても高純度な原料に戻せることです。これにより、複数のプラスチックが混ざった状態や汚れたプラスチックでもリサイクルが可能となります。

 三菱ケミカルは、この熱分解プロセスにマイクロ波を利用する技術を開発しました。これにより、外部からの間接的な加熱ではなく、アクリル樹脂そのものを直接、効率的に加熱・分解することが可能となり、より高純度なMMAモノマーの生成を実現しています。

アクリル樹脂のケミカルリサイクルは、使用済み樹脂を熱分解し、その原料であるメチルメタクリレート(MMA)モノマーに戻す方法です。これを精製し、再び重合させることで、新品と同等の品質を持つアクリル樹脂として再利用します。

精製はどのように行われるのか

 アクリル樹脂を熱分解して得られたメチルメタクリレート(MMA)モノマーの精製には、主に蒸留が用いられます。


蒸留による精製プロセス

  1. 熱分解: 使用済みのアクリル樹脂を熱分解炉で加熱し、気体状のMMAモノマーと、顔料や不純物を含む残渣に分離します。
  2. 凝縮: 気体となったMMAモノマーを冷却して液体に戻します。
  3. 蒸留: 液体となったMMAモノマーを蒸留塔に送り込み、沸点の違いを利用して精製します。このプロセスにより、MMAモノマーよりも沸点の低い不純物や高い不純物を分離し、純粋なMMAモノマーを取り出します。
  4. 再重合: 精製された高純度のMMAモノマーは、再び新しいアクリル樹脂の製造原料として使用されます。

特徴

 このケミカルリサイクルにおける精製方法は、物理的な精製(粉砕、洗浄、異物除去など)に比べて、より広範な不純物に対応でき、新品と同等の品質を再現できる点が大きな利点です。 

 回収されるアクリル樹脂が異物を含んでいたり、着色されていたりしても、最終的に化学的に純粋な原料に戻すことができるため、リサイクルの適用範囲が広がります。

アクリル樹脂を熱分解して得たメチルメタクリレート(MMA)モノマーは、蒸留によって精製されます。熱分解で発生した気体MMAを冷却・液化後、沸点の違いを利用して不純物を分離し、高純度な原料に戻します。

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