この記事で分かること
- 株価の上昇している企業:アップル関連で株価が上昇しているのは、主に日本の電子部品メーカーです。積層セラミックコンデンサで世界シェアの高い村田製作所や太陽誘電、バッテリーなどを供給するTDKなどが代表的です。また、iPhoneのカメラ用イメージセンサーを供給するソニーグループや、フレキシブル基板のフジクラなども、業績拡大への期待から買われています。
- 村田製作所の強み:独自のセラミックス技術と一貫生産体制により、積層セラミックコンデンサなどで圧倒的な世界シェアを誇っています。
新型iPhoneの生産拡大による日本メーカーの株価上昇
アップルが新型iPhoneの生産を拡大すると報じられたため、主要サプライヤーである村田製作所や太陽誘電、TDKなどの日本の電子部品メーカーの業績拡大期待が高まり、株価が上昇しています。
https://jp.reuters.com/markets/japan/P7ORJTUF25ICHMURY7QSLOM7KY-2025-09-22/
これらの動向は、アップル製品の需要の高さと、それを支える日本の電子部品メーカーの技術力が改めて市場で評価されていることを示しています。
日本株が上昇している背景
1. iPhoneの生産拡大報道
最新の報道によると、アップルが新型「iPhone 17」の購入予約が好調であるため、生産委託先の企業に対し、エントリーモデルの生産を最低30%拡大するよう指示したと伝えられています。これを受けて、iPhoneに部品を供給している村田製作所などの株価が上昇しています。
2. アップル株の上昇
iPhone 17の発売後、アップルの株価も3%を超える上昇を記録しました。アップル社の株価が好調なことは、サプライヤー企業にとってもプラスの材料となり、買い安心感につながっています。
3. 日本のサプライヤー企業の存在感
村田製作所は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)をはじめ、通信モジュールやコネクターなど、iPhoneに不可欠な電子部品を幅広く提供しています。スマートフォンが高性能化するにつれて、搭載されるMLCCの数も増える傾向にあるため、アップルの増産は村田製作所の業績に直接的に寄与すると期待されています。
どんなアップル関連企業が上がっているのか
アップル関連の株価上昇は、主に日本の電子部品メーカーが中心となっています。具体的な企業としては、以下の銘柄が挙げられます。
主要な電子部品メーカー
- 村田製作所 :積層セラミックコンデンサ(MLCC)で世界トップシェアを誇り、iPhoneには欠かせない部品を供給しています。
- 太陽誘電 :村田製作所と並ぶMLCCの大手であり、iPhone向けに供給していると見られます。
- TDK :二次電池や電子部品を供給しており、iPhoneのバッテリー関連でも重要な役割を担っています。
その他の関連企業
- ソニーグループ :iPhoneのカメラ用イメージセンサーを供給しており、アップルのティム・クックCEOもその技術力を高く評価しています。
- アルプスアルパイン:センサーやコネクターなどの電子部品を手掛けています。
- 日本メクトロン :フレキシブルプリント基板(FPC)の製造・販売を手掛けており、iPhoneの配線部品として重要な役割を担っています。
- フジクラ :こちらもFPCを製造しており、iPhoneのサプライヤーの一つとして知られています。
これらの企業は、iPhoneの増産による売上・利益の増加が期待されるため、アップル株の上昇に連動して株価が上昇する傾向にあります。特に、iPhoneの高機能化が進むにつれて、搭載される電子部品の数や性能が向上するため、サプライヤーの業績に与える影響は大きくなっています。
積層セラミックコンデンサの役割は何か
積層セラミックコンデンサ (MLCC) は、電子機器に不可欠な受動部品で、主に以下の3つの重要な役割を果たします。
- 電気の一時的な蓄電と供給: 電気を一時的に蓄え、必要な時に安定した電流を供給します。例えば、スマートフォンのプロセッサーが一時的に多くの電力を必要とする際に、MLCCに蓄えた電気を供給することで、電圧の変動を防ぎ、回路の安定した動作を助けます。
- ノイズ除去: 回路内の不要なノイズ(高周波の交流成分)を除去し、信号の安定性を高めます。MLCCは、高周波のノイズを吸収してグラウンド(基準電圧)に流すことで、信号の品質を保つ「フィルター」として機能します。
- 小型化・高機能化への貢献: 誘電体層と電極層を何百層も重ねる「積層」構造により、小型でありながら大容量を実現します。これにより、スマートフォンなどの限られたスペースに多数の部品を実装することが可能となり、機器の小型化と多機能化に大きく貢献しています。

積層セラミックコンデンサ (MLCC) は、電子機器の回路内で電気を一時的に蓄え、安定した電流を供給する役割を担います。また、ノイズを除去して信号の品質を高め、機器の小型化と多機能化に貢献しています。
村田製作所の強みはなにか
村田製作所の強みは、主に以下の3点に集約されます。
1. 独自のセラミックス技術と一貫生産体制
村田製作所は、セラミックスをベースとした電子部品の開発・製造・販売を専門としています。原材料の材料開発から製品の設計、製造までを一貫して自社で行う「垂直統合型」の生産体制を構築している点が大きな強みです。
これにより、他社が簡単に模倣できない独自の製品を迅速に市場に投入し、高い競争力を維持しています。
2. 世界トップシェアの製品群
特に、積層セラミックコンデンサ(MLCC)では世界トップシェアを誇ります。その他にも、SAWフィルタ(表面弾性波フィルタ)、Wi-Fiモジュール、EMIフィルタ、ショックセンサーなど、多くの製品で世界トップクラスのシェアを獲得しています。
これらの製品はスマートフォンや自動車、家電など、あらゆる電子機器に不可欠な部品であり、幅広い分野で圧倒的な存在感を示しています。
3. 高い研究開発力とグローバル展開
売上高に占める研究開発費の比率が高く、常に新しい製品や技術への先行投資を大胆に行っています。この技術力と「誰も作っていないものを作ろう」という創業者の精神が、同社を業界のリーディングカンパニーに押し上げています。
また、海外売上比率が90%以上と高く、世界中に販売・生産拠点を展開するグローバルな体制も強みの一つです。これにより、世界中の顧客のニーズに迅速に対応できる体制を整えています。

村田製作所は、独自のセラミックス技術と一貫生産体制により、積層セラミックコンデンサなどで圧倒的な世界シェアを誇ります。高い研究開発力とグローバルな事業展開力も強みです。
太陽誘電の強みと村田製作所との違いは何か
太陽誘電も村田製作所と同様に、積層セラミックコンデンサ(MLCC)で高い技術力を持つ大手電子部品メーカーであり、両社は主要な競合関係にあります。
太陽誘電の強み
- 小型・大容量MLCCにおける技術力: 太陽誘電は、スマートフォンなどの小型機器に搭載される超小型で大容量のMLCC開発に強みを持っています。世界最小クラスの製品を数多く生み出し、特に「0402(0.4mm×0.2mm)」といった超小型サイズや、大容量品で高い技術力を誇ります。
- 材料開発からの一貫生産: 村田製作所と同様に、材料開発から生産設備までを自社で一貫して行う体制を構築しており、これが独自の製品を生み出す源泉となっています。
- 特定のニッチな分野での優位性: 自動車や情報インフラ・産業機器向けなど、高信頼性が求められる分野で、独自の技術を生かした製品を供給しています。
村田製作所との違い
太陽誘電と村田製作所の主な違いは、事業の規模と製品ポートフォリオの広さです。
- 事業規模と製品の多様性: 村田製作所は、MLCCだけでなく、SAWフィルタ、モジュール製品、センサなど、非常に多岐にわたる製品群を扱っており、事業規模も太陽誘電を大きく上回ります。村田製作所は「事業の多様性」において優位性があります。
- 技術開発のアプローチ: 両社とも高い技術力を誇りますが、一説には、村田製作所が会社全体で多様な技術分野をカバーする「集団ベース」でのイノベーションを志向する一方、太陽誘電は個々の技術者が幅を広げる「個人ベース」での技術蓄積に強みがあると言われることもあります。

太陽誘電は超小型・大容量MLCCに強みを持つ一方、村田製作所はMLCCに加え多岐にわたる製品群と圧倒的な事業規模が強みです。両社は競合しつつも、村田製作所が業界をリードする存在です。
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