この記事で分かること
- synvert社とは:ドイツを拠点とするデータコンサルティング企業です。データ戦略の策定からAIを活用したデータプラットフォームの構築・運用まで、データ活用の全体を支援することに強みを持っています。
- 買収の理由:デジタルエンジニアリング子会社GlobalLogicとデータコンサル企業synvert社の専門性を融合させ、日立が開発する、自律的なAIや実世界に作用するAIを活用したソリューションであるHMAXの強化とグローバル展開を加速するためです。
- デジタルソリューション事業を強化する理由:ITとOTの融合で社会課題を解決するLumada事業を拡大することで、グローバルな競争力を高め、企業価値を向上させます。
日立製作所のデータコンサルティング企業synvert社の買収
日立製作所は、ドイツのデータコンサルティング企業であるsynvert社を買収することで合意しました。この買収は、日立の米国子会社であるGlobalLogicを通じて行われます。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-23/T318WUGOT0JU00
この買収は日立がITとOT(Operational Technology)の融合を通じて、グローバルな社会インフラソリューションを強化していく方針の一環です。
synvert社はどんな企業か
synvert社は、ドイツを拠点とするデータコンサルティング企業です。その主な事業内容は、顧客のデータ活用を支援するためのコンサルティングとソリューションの提供です。
具体的には、以下のようなサービスに強みを持っています。
- データ戦略策定: 顧客のビジネス目標に合わせたデータ活用のロードマップを策定します。
- データプラットフォームの構築・運用: AIを活用した分析基盤や、クラウドベースのデータウェアハウス(Databricks、AWSなど)の設計・開発・運用を行います。
- AI・機械学習の導入: 顧客の課題解決に特化したAIユースケースを設計・実装します。
- データエンジニアリング: 複雑なデータを分析可能な形に整理し、持続可能な「データバリューチェーン」を構築します。
同社は、複数のデータアナリティクスコンサルティング会社が合併して設立された経緯があり、高い技術力と専門知識を有しています。特に、金融(保険・銀行)、通信、小売、製造業といった幅広い業界での実績があります。
今回の買収は、日立の米国子会社であるGlobalLogicが、synvert社のもつ欧州でのデータ・AIコンサルティングの専門性を獲得し、日立グループ全体のデジタルソリューション事業を強化することを目的としています。

synvert社は、ドイツを拠点とするデータコンサルティング企業です。データ戦略の策定からAIを活用したデータプラットフォームの構築・運用まで、データ活用の全体を支援することに強みを持っています。日立はGlobalLogicを通じて同社を買収し、HMAXのグローバル展開を加速させます。
日立が買収する理由は何か
日立がsynvert社を買収する主な理由は、デジタルソリューション事業の強化とグローバル展開の加速にあります。特に、日立の社会イノベーション事業の中核であるLumada事業を世界規模で成長させる狙いです。
買収の主な目的
- HMAXソリューションの強化: 日立が開発する、自律的なAIや実世界に作用するAIを活用したソリューション「HMAX」のグローバル展開を加速します。synvert社の持つデータ戦略やAIに関する専門知識を、日立のデジタルエンジニアリング子会社であるGlobalLogicと融合させることで、顧客への提供価値を高めます。
- 欧州市場での顧客基盤拡大: synvert社はドイツ、スイス、スペイン、ポルトガルなどに拠点を持ち、金融、通信、小売、製造業といった幅広い顧客基盤を持っています。これらの地域における顧客獲得や、日立レール、日立エナジーといったグループ企業の事業との連携強化を目指します。
- データ活用力の獲得: データ戦略からAIプラットフォームの運用まで、データ活用のバリューチェーン全体にわたるsynvert社の専門性を獲得することで、顧客の課題を深く理解し、より高度なソリューションを提供できる体制を構築します。
過去に買収したGlobalLogic社がソフトウェア開発におけるデジタルエンジニアリング力を補完したように、今回のsynvert社の買収は、データ・AIコンサルティングという側面から日立のデジタル事業をさらに強化する戦略的な動きと言えます。

日立は、デジタルエンジニアリング子会社GlobalLogicとデータコンサル企業synvert社の専門性を融合させ、HMAXソリューションの強化とグローバル展開を加速するためです。これにより、ITとOTを融合した社会イノベーション事業を強化します。
日立のデジタルソリューション事業の内容は何か
日立のデジタルソリューション事業は、Lumada(ルマーダ)というプラットフォームを中心に、顧客のデータとAI技術を活用して課題を解決する事業です。
具体的には、IT(情報技術)、OT(制御・運用技術)、プロダクト(製品)の3つを組み合わせることで、社会インフラや企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。
事業の主な内容と特徴
- Lumada: “illuminate”(照らす)と”data”を組み合わせた造語で、顧客のデータに光を当てて価値を創出するという意味が込められています。Lumadaは、日立が長年培ってきた社会インフラ分野の知見(OT)と、ITのデジタル技術を融合させることで、様々な業界の課題に対応するソリューションを提供しています。
- 例: 製造現場の生産性向上、鉄道の運行最適化、エネルギーインフラの効率化など。
- GlobalLogicによるデジタルエンジニアリング: 2021年に買収した米国企業GlobalLogicは、デジタル製品の設計から開発までを一貫して行うデジタルエンジニアリングに強みを持っています。日立はGlobalLogicの技術をLumada事業と組み合わせることで、顧客のニーズに合わせた柔軟かつ迅速なソリューション開発を可能にしました。
- HMAXソリューション: 日立がNVIDIAと共同で開発を進める、自律的なAI(Agentic AI)や実世界に作用するAI(Physical AI)を活用したソリューションです。鉄道やエネルギー分野での運用最適化、安全性向上などを目的としており、今回のsynvert社の買収もこのHMAXのグローバル展開を加速させる一環です。
買収がもたらす価値
日立は、今回のsynvert社買収により、GlobalLogicのデジタルエンジニアリング力にデータコンサルティング力を加え、顧客の課題発見からソリューションの実現、運用までをワンストップで支援する体制をさらに強化します。これにより、日立のデジタルソリューション事業は、より顧客の事業に深く関わり、付加価値の高いサービスを提供できるようになります。

日立のデジタルソリューション事業は、Lumadaというプラットフォームを中核とし、IT(情報技術)とOT(制御・運用技術)を組み合わせ、AI技術を活用して顧客の課題解決を支援するものです。デジタルエンジニアリングやデータコンサルティングを通じて、社会インフラのDXを推進します。
デジタルソリューション事業を強化する理由は何か
日立がデジタルソリューション事業を強化する最大の理由は、持続的な企業成長を実現するためです。特に、ITとOT(制御・運用技術)という日立ならではの強みを掛け合わせ、収益性の高い事業にシフトしていくことを目指しています。
主な理由
- 事業ポートフォリオの変革: 従来の製造業中心から、デジタルを核とした「社会イノベーション事業」へと軸足を移しています。収益性の高いLumada(ルマーダ)事業を拡大することで、企業価値を向上させ、長期的な成長を目指します。
- 社会課題解決への貢献: 脱炭素社会の実現や人々のウェルビーイング向上といった、グローバルな社会課題の解決にデジタル技術で貢献することを掲げています。社会インフラ分野における顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の高まりに対応し、事業機会を拡大します。
- グローバル競争力の向上: 米国のGlobalLogicのようなデジタルエンジニアリング企業や、今回のsynvert社のようなデータコンサル企業を買収することで、デジタル技術力や専門人財を迅速に獲得し、グローバル市場での競争力を高めています。これにより、地域ごとの課題に即したソリューションを効率的に提供できる体制を構築しています。

日立がデジタルソリューション事業を強化する理由は、収益性の高い事業へ転換し、持続的な成長を実現するためです。ITとOTの融合で社会課題を解決するLumada事業を拡大することで、グローバルな競争力を高め、企業価値を向上させます。
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