JSRとラムリサーチのライセンス契約および協業 ライセンス契約の内容と結ぶ理由は何か?

この記事で分かること

  • ライセンス契約の内容:JSRと米ラムリサーチはEUVリソグラフィーの発展に向けたクロスライセンス契約を締結しています。
  • ライセンス契約を結ぶ理由:半導体製造の複雑化に対応するため、お互いの技術を結びつけるためです。JSRの材料開発力と、ラムリサーチの製造装置・プロセス技術を組み合わせることで、次世代のEUVリソグラフィーに必要な革新的なソリューションを迅速に開発します。
  • EUVリソグラフィーの発展の内容:高NA(開口数)化とドライレジスト技術の導入により進化しています。これにより、より微細な回路の形成が可能となり、チップ性能の向上と製造コストの削減が進んでいます。

JSRとラムリサーチのライセンス契約および協業

 JSRは、子会社のInpria社とともに、米国の半導体製造装置大手であるラムリサーチ(Lam Research)と、半導体製造技術に関するクロスライセンス契約および協業に合意しました。

 この契約の主な目的は、次世代の半導体製造技術、特にEUVリソグラフィーの発展を加速させることです。

ライセンス契約の内容は

 JSR、子会社のInpria、そして米国のラムリサーチが締結したクロスライセンス契約は、主に次世代の半導体製造技術、特にEUVリソグラフィーの進化を加速させることを目的としています。この合意は、両社の技術的な強みを組み合わせることで、半導体製造プロセスにおける課題を解決することを目指しています。


ライセンス供与の主な内容

  1. EUVドライレジスト技術:
    • JSR/Inpriaが持つ金属酸化物フォトレジスト(MOR)などの先端材料技術と、ラムリサーチのドライレジスト成膜・プロセス技術(Aether®)を統合します。
    • これにより、従来のウェットプロセスよりも製造コストと複雑性を削減し、歩留まりとスループットの向上を目指します。
  2. 次世代材料の開発:
    • 半導体チップのさらなる微細化に対応するため、高NA(高開口数)EUVリソグラフィー向けの材料を共同で開発します。
    • JSRの最新材料技術と、ラムリサーチの成膜(ALD)やエッチング(ALE)に関する深い知見を組み合わせ、より高性能な半導体製造プロセスの確立を目指します。

協業の背景

 この提携は、両社間の係争中の訴訟を取り下げることにも合意し、互いの技術を認め合う形で成立しました。

 これは、AI時代に求められる高性能チップの製造において、半導体材料メーカーと製造装置メーカーが連携することの重要性が高まっていることを示しています。これにより、技術革新のスピードを上げ、業界全体の発展に貢献することが期待されています。

JSRと米ラムリサーチは、EUVリソグラフィーの発展に向けたクロスライセンス契約を締結しました。JSRの先端材料技術と、ラムリサーチのドライレジスト成膜技術を組み合わせ、次世代半導体製造プロセスのコスト削減と性能向上を目指します。

ドライレジスト成膜技術とは何か

 ドライレジスト成膜技術とは、半導体製造において、チップの回路を形成する際に使用するフォトレジスト(感光性樹脂)を、従来の液体ではなく気体(ガス)の状態で薄膜として成膜する技術です。この技術は、特に回路の微細化に不可欠なEUV(極端紫外線)リソグラフィーと組み合わせて使用されます。

仕組みとメリット

 この技術では、感光材料を含むガスを真空チャンバー内で基板に供給し、化学反応によって薄く均一なフォトレジスト膜を形成します。

  • 性能向上: 従来の液状レジストと比較して、より薄く均一な膜を形成できるため、パターン形成の精度が向上し、より微細な回路の形成が可能になります。
  • コスト削減: 液状レジストのように現像液が不要なため、使用する薬品の量が減り、廃液処理のコストや環境負荷を軽減できます。
  • EUVリソグラフィーとの親和性: EUV光に対する感度が高く、少ない露光量でパターン形成が可能なため、製造効率が向上します。

ドライレジスト成膜技術とは、半導体製造において、回路を形成する感光材料を液体の塗布ではなく、気体(ガス)で薄膜として形成する技術です。これにより、製造コストの削減と、より高精度な微細パターンの形成が可能になります。

EUVリソグラフィーの進化の内容は

 EUVリソグラフィーの進化は、主により微細な回路を形成する能力の向上生産性の改善に焦点を当てています。これは、半導体チップの性能向上に不可欠な要素です。

1. 高NA(High-NA)EUVリソグラフィー

最も重要な進化は、High-NA(High Numerical Aperture)EUVリソグラフィーの開発です。

  • NAとは: 開口数(Numerical Aperture)の略で、光学系の解像度を示す指標です。NAの数値が大きいほど、より細かいパターンを形成できます。
  • 進化の内容: 従来のEUV露光装置のNAが0.33であるのに対し、次世代のHigh-NA EUV露光装置はNAが0.55に拡大します。これにより、回路の線幅をさらに微細化し、1nm台の半導体ノードの実現を目指します。

2. ドライレジスト技術

 従来の液状フォトレジストを使用するウェットプロセスに代わり、ドライレジスト技術が導入されつつあります。

  • 特徴: ガス化した感光材料で薄膜を形成するため、より均一な膜厚が実現し、パターンの精度が向上します。また、現像液が不要になるため、製造コストの削減と環境負荷の低減にも繋がります。

3. 光源出力の向上

 EUVリソグラフィーの生産性を高めるためには、より強力な光源が必要です。

  • 進化の内容: EUV光源の出力は年々向上しており、これにより露光時間を短縮し、製造のスループット(単位時間あたりのウェハ処理枚数)を向上させています。

 これらの技術革新は、EUVリソグラフィー装置の製造元であるASML社を中心に進められており、半導体メーカー各社が次世代チップの量産に向けて導入を進めています。

EUVリソグラフィーは、高NA(開口数)化ドライレジスト技術の導入により進化しています。これにより、より微細な回路の形成が可能となり、チップ性能の向上と製造コストの削減が進んでいます。

EUVリソグラフィーの進化で必要となるフォトレジストは

 EUVリソグラフィーの進化、特に高NA(High-NA)化に対応するため、従来のフォトレジストとは異なる特性を持つ金属酸化物フォトレジスト低分子レジストが必要となります。

なぜ新しいフォトレジストが必要か?

 従来のフォトレジストは主に有機高分子を主成分としていますが、高NA EUVのような超微細なパターンを形成する際には、以下のような課題が生じます。

  • LWR(線幅ラフネス)の増大: 高分子材料の分子サイズがパターンの微細化の限界に近づき、線幅のばらつき(LWR)が大きくなります。
  • 感度の低下: 微細化には高い露光エネルギーが必要となり、従来のレジストでは生産効率が低下します。

次世代フォトレジストの種類と特徴

 次世代のEUVリソグラフィーには、主に以下の2種類のフォトレジストが開発されています。

1. 金属酸化物フォトレジスト(MOR)

酸化スズなどの金属酸化物を主成分とします。

  • 高感度: 金属元素がEUV光を効率的に吸収するため、少ない露光量でパターンを形成でき、生産効率が向上します。
  • 低LWR: 分子サイズが小さいため、線幅のばらつきが抑えられ、微細なパターンをより高精度に形成できます。

2. 低分子レジスト

 従来の高分子レジストに代わり、分子サイズが小さい低分子化合物を主成分とします。

  • 高解像度: 高分子の絡まりによる影響が少ないため、微細なパターン形成に適しています。
  • LWRの改善: 分子サイズが小さくなることで、線幅のばらつきを抑えることができます。

 JSRは、EUVリソグラフィーの進化に合わせて、これらの新世代フォトレジストの開発・提供に注力しています。

EUVリソグラフィーの進化には、従来の有機高分子レジストに代わる金属酸化物フォトレジスト低分子レジストが必要です。これらは、分子サイズが小さいため、線幅のばらつきを抑え、より微細なパターンを形成できます。

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