この記事で分かること
- 安川電機とは:安川電機は、「メカトロニクス」のパイオニアです。産業用ロボットや、高精度なACサーボモータ・インバータで世界的なシェアを持っています。
- メカトロニクスとは:モーションコントロールセグメント(ACサーボなど)における付加価値の改善と、間接費の抑制による収益性の向上です。
- 上方修正の理由:サーボモータやインバータなどの機器を使い、機械の「動き」(位置・速度・軌跡)を正確かつ高速に制御する技術です。
安川電機、営業利益予想の上方修正
安川電機は2026年2月期(国際会計基準)の連結営業利益予想を、従来の予想から上方修正しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5516150fee7d83c92e525b1b1d51f04a5b130c2c
同時に、最終利益の予想も上方修正し、12%の増益を見込んでいます。売上高予想も従来の5,150億円から5,250億円に上方修正されています。
安川電機はどんな企業か
安川電機は、メカトロニクスの世界的なリーディングカンパニーです。
特に、工場の自動化(FA:ファクトリーオートメーション)に不可欠な基幹部品やロボットにおいて、高い技術力と世界シェアを誇っています。
事業の3つの柱
安川電機の事業は、主に以下の3つのセグメントで構成されています。
- モーションコントロール
- ACサーボモータ・コントローラ: 機械の正確な位置や速度を精密に制御する部品です。半導体製造装置や電子部品実装装置など、高い精度が求められる生産機器に組み込まれ、世界シェアトップクラスを誇ります。
- インバータ: モータの回転数を自在に制御し、機械の生産性向上や省エネルギー化に貢献します。大型空調、エレベーターなどの社会インフラでも使用されています。
- ロボット
- 産業用ロボット「MOTOMAN(モートマン)」: 溶接、塗装、組立、搬送など、様々な用途の垂直多関節ロボットを主力としており、自動車関連市場を中心に幅広く活用されています。産業用ロボット市場でも世界有数のシェアを持っています。
- 近年は、人と同じ空間で作業ができる人協働ロボットや、食品・バイオメディカル分野のロボットにも注力しています。
- システムエンジニアリング
- 鉄鋼プラント、水処理プラント、大型クレーンなど、大規模な社会インフラ向けの電気システムや制御システムを提供しています。
- また、太陽光発電用のパワーコンディショナ(PCS)などの環境・エネルギー分野の製品も扱っています。
強み・特徴
メカトロニクスのパイオニア:
「メカトロニクス(Mechatronics)」という言葉を造った企業として知られ、創業以来、「電動機(モータ)とその応用」を事業領域の中心に置いています。
技術力と世界シェア:
ACサーボモータや産業用ロボットといったコア技術・製品で、長年にわたり世界最高水準の性能と高い世界シェアを維持しています。
グローバル展開:
売上高の海外比率が高く、世界各地に生産・販売拠点を展開することで、グローバル市場で強力なプレゼンスを確立しています。
「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」の提唱:
IoT(モノのインターネット)技術を活用し、従来のメカトロニクス製品から収集したデータを分析・活用することで、工場の自動化をさらに進化させるソリューションコンセプトを推進しています。

安川電機は、「メカトロニクス」のパイオニアです。産業用ロボット「MOTOMAN」や、高精度なACサーボモータ・インバータで世界的なシェアを持ち、工場の自動化(FA)や社会インフラを支える企業です。
上方修正の理由は何か
安川電機が2026年2月期通期の営業利益予想を上方修正した主な理由は、以下の通りです。
- モーションコントロールセグメントの収益性改善:
- 付加価値の改善が大きく寄与し、このセグメントで増益を見込んでいます(具体的な改善額として43億円と報じられています)。
- 経費の抑制と効率化:
- 間接費の抑制など、コスト削減努力が増益に貢献しています。
- 上期の実績が堅調に推移:
- 第2四半期累計(3~8月)の連結営業利益が前年同期比で1.8%増の233億円と、堅調に推移しました。新規受注を確実に売上につなげたことが寄与しています。
- 為替影響の相殺:
- モーションコントロールセグメントの改善などが、為替のマイナス影響やその他の経費増加を相殺し、全体として利益を押し上げる見通しとなったためです。
売上高自体は前年比でほぼ横ばいの予想ですが、上記のような収益構造の改善やコスト管理により、利益予想を引き上げました。

上方修正の主な理由は、モーションコントロールセグメント(ACサーボなど)における付加価値の改善と、間接費の抑制による収益性の向上です。これにより、為替影響などを上回る利益確保を見込みました。
メカトロニクスとは何か
「メカトロニクス(Mechatronics)」とは、機械工学(Mechanism/Mechanics)と電子工学(Electronics)を融合させた技術分野を指す和製英語です。
安川電機の技術者が1960年代に考案した造語であり、その後世界共通語として広まりました。
メカトロニクスの基本
メカトロニクスは、機械の物理的な動きを、電子回路やコンピュータ、情報工学の力で高度に制御し、従来よりも高精度、高速、高機能なシステムを実現することを目的としています。
構成要素 | 役割(例) |
メカニクス(機械) | 骨格・動作機構:ロボットアーム、ギア、ベアリングなど、物理的な動きを生み出す部分。 |
エレクトロニクス(電子・制御) | 神経・筋肉:モータ(アクチュエータ)を動かす力となり、センサから情報を得て、動きを精密にコントロールする回路やソフト。 |
具体的な応用例
現在、メカトロニクスは非常に幅広い分野で活用されています。
- 産業用ロボット: 複雑な関節の動きを精密に制御する技術。
- FA機器: CNC工作機械、半導体製造装置、電子部品実装装置など、ナノメートル単位の正確な動きを必要とする装置。
- 家電製品: デジタルカメラのオートフォーカス、自動掃除機、プリンターなど。
- 自動車: パワーステアリング、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、エンジン制御など。
安川電機が注力するモーションコントロール(サーボモータやコントローラ)は、このメカトロニクスの心臓部を担う技術です。

メカトロニクスは、機械工学(メカニクス)と電子工学(エレクトロニクス)を融合させた技術分野です。電気制御で機械の動きを高精度・高機能化し、ロボットやFA機器の自動化に不可欠な技術です。
モーションコントロールとは何か
「モーションコントロール(Motion Control)」とは、機械の「動き」(位置、速度、軌跡、力など)を正確かつ高速に制御する技術や製品の総称です。
安川電機におけるモーションコントロール事業の主要製品は以下の通りです。
- ACサーボモータ・コントローラ
- サーボモータ: 指示した位置や速度に素早く、正確に追従させる高性能なモータです。
- コントローラ: 複数のサーボモータを同期・協調させて、複雑で滑らかな動き(例:曲線軌跡、精密な位置決め)を実現するための司令塔となる制御装置です。
- 用途: 半導体製造装置、電子部品実装装置、工作機械、産業用ロボットなど、高度な精度が求められるあらゆる生産機器の中核として使われます。
- インバータ
- モータに供給する電源の周波数を変えることで、モータの回転速度を効率良く制御する装置です。
- 用途: 工場の生産性向上に加え、エレベーター、大型空調、ポンプなどで使用され、省エネルギーに大きく貢献します。
安川電機は、このモーションコントロール技術において世界トップクラスのシェアと技術力を誇っています。

モーションコントロールとは、サーボモータやインバータなどの機器を使い、機械の「動き」(位置・速度・軌跡)を正確かつ高速に制御する技術です。半導体装置やロボットの精密な動作に不可欠です。
モーションコントロールの付加価値の改善の内容は
安川電機が言及する「モーションコントロールの付加価値の改善」とは、単に製品の数を多く売ることによる増益ではなく、製品の質の向上や、顧客への提案強化によって、売上高に対する利益率(収益性)が高まったことを指します。
1. 製品の高機能化と高価格化(新製品への切替効果)
- 新製品の投入: 最新の高性能ACサーボモータ・コントローラ(例:Σ-Xシリーズなど)への切り替えが進んだことで、旧製品よりも高い販売価格を設定できるようになりました。
- 性能向上: モータの分解能や応答速度などを向上させることで、顧客(半導体製造装置メーカーなど)の生産効率を大きく上げられるようになり、その価値に見合った価格設定が可能になっています。
2. ソリューション提案の強化
- 単なる部品の販売に留まらず、安川電機が提唱する「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」コンセプトに基づいた、データ活用やシステム全体の最適化を提案することで、より高額なソリューションとして提供できるようになりました。
- これにより、従来の部品単体での取引よりも利益率の高いビジネスを獲得しています。
3. 製造・生産効率の改善(内製化・現地生産効果)
- 製造工程の見直しや部品の内製化を進めたこと、また中国などでの現地生産効果により、製品一つあたりの製造コストが下がり、粗利率が向上しました。
「付加価値の改善」とは、より高機能な製品を、より効率的なコストで製造し、顧客の課題解決に繋がる高付加価値なソリューションとして販売できた結果、利益率が向上したことを意味します。

モーションコントロールの付加価値改善とは、高性能サーボモータやインバータの新製品投入、およびi³-Mechatronicsによるソリューション提供で、顧客の生産性向上に貢献し、製品の販売価格と収益性を高めたことです。
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