この記事で分かること
- 網入りガラスとは:造過程でガラス内部に金属製のワイヤーを挿入したガラスです。火災時の熱で割れてもワイヤーがガラスの飛散・脱落を防ぎ、開口部に穴が空くのを抑制することで、延焼を防ぐ防火性能を持ちます。
- 使用されるワイヤー:網入りガラスには、主に鉄でできたワイヤー(金網)が使用されます。
- 製造方法:ロールアウト法で作られます。高温で溶けたガラスをロールで圧延して板状にする際、金属製のワイヤーメッシュをガラス生地の中央に挿入し、そのまま冷却・固化させることで一体化させます。
網入りガラス
ガラスの用途は多岐にわたります。主な用途は、建物の窓ガラスや自動車のフロントガラスなどの建築・輸送機器です。また、ビール瓶や食品容器などの包装材、テレビやスマホのディスプレイ基板、光ファイバーなどのエレクトロニクス分野でも不可欠な素材です。
そのためガラス製造市場の規模は非常に大きく、2024年時点で2,350億米ドル(約35兆円)を超えると推定されており、今後も年平均成長率(CAGR)5%以上で着実に拡大すると予測されています。
この成長は主に、世界的な建設・建築分野での需要増加や、包装(リサイクル可能なガラス瓶の需要増)および自動車分野での用途拡大に牽引されています。
前回は型板ガラスとすりガラスに関する記事でしたが、今回は網入りガラスとは何かに関する記事となります。
網入りガラスとは何か
網入りガラスとは、ガラスの製造過程で、金属製のワイヤー(金網)をガラスの内部に挿入して一体化させた板ガラスのことです。別名で「ワイヤー入りガラス」とも呼ばれます。このガラスの最大の目的は、火災時の延焼防止です。
1. 防火性能(延焼防止)
網入りガラスは、建築基準法で定められた防火設備用ガラスとして、防火地域や準防火地域などの建物に設置が義務付けられています。
- ガラスの飛散・脱落防止: 火災の熱でガラスが割れても、内部のワイヤーが破片をしっかりと支えるため、ガラスが崩れ落ちて開口部に穴が空くのを防ぎます。
- 火や火の粉の侵入抑制: 穴が開かないため、外部からの炎や火の粉が侵入したり、内部の炎が外に吹き出したりするのを抑え、火事の延焼・類焼を防ぐ効果があります。
2. 飛散防止効果
火災時だけでなく、台風や地震などの災害、あるいは物がぶつかった衝撃でガラスが割れた場合でも、ワイヤーが破片の飛散や脱落を抑えるため、破片による二次的な怪我を防止する効果もあります。
3. デメリット(熱割れしやすい)
網入りガラスには、通常のガラスにはない「熱割れ」という現象が起こりやすいというデメリットがあります。
- 熱割れの原因: ガラスと内部のワイヤー(金属)は、熱膨張率が異なります。直射日光などでガラスの一部が急激に熱せられると、熱を吸収したワイヤーとその周辺のガラスとの間に大きな温度差と引っ張る力が生じ、その力に耐えられずヒビが入ってしまうことがあります。
- 強度・防犯性: ワイヤーが入っていますが、ガラス自体の強度は通常のガラスとほとんど変わらず、防犯ガラスほどの強度はありません。ワイヤーも工具で切断できるため、防犯目的で使われるガラスではありません。

網入りガラスは、製造過程でガラス内部に金属製のワイヤーを挿入したガラスです。火災時の熱で割れてもワイヤーがガラスの飛散・脱落を防ぎ、開口部に穴が空くのを抑制することで、延焼を防ぐ防火性能を持ちます。
どんな金属が使用されるのか
網入りガラスの内部に使用される金属は、主に鉄でできたワイヤー(金網)です。具体的なワイヤーの形状には、以下のような種類があります。
- ヒシワイヤ(菱形): ワイヤーが菱形(ひし形)の格子状に組まれたもので、最も一般的なタイプです。
- クロスワイヤ(交差型): ワイヤーが縦横に直交する格子状に組まれたものです。
- 線入り(縦線): 縦方向にワイヤーが並んでいるもので、網入りガラスの一種として扱われることがあります。
これらの鉄製ワイヤーがガラスに封入されていることで、火災の熱でガラスが割れても、ワイヤーがガラスの破片を支え、崩れ落ちるのを防いで延焼を食い止める役割を果たしています。
しかし、鉄とガラスの熱膨張率の違いが、網入りガラスに特有の熱割れという現象を引き起こす原因ともなっています。

網入りガラスには、主に鉄でできたワイヤー(金網)が使用されます。これは、ガラスが火災の熱で割れた際に、ワイヤーが破片を支え、開口部の崩落を防ぐための役割を果たしています。
網入りガラスの製造方法は
網入りガラスの製造には、主にロールアウト法という製造方法が用いられます。これは、型板ガラスを作る際と同じ手法を応用したものです。
溶けたガラス生地をローラーで板状に成形する過程で、金属製のワイヤー(金網)を挿入し、ガラスと一体化させます。
ロールアウト法による製造工程
- ガラスの溶解: ガラスの原料(珪砂、ソーダ灰、石灰石など)を高温の溶解炉で溶かし、溶融ガラスを作ります。
- ワイヤーの準備と供給: 鉄製のワイヤーメッシュ(金網)を準備し、メッシュ供給装置やガイドロールを使って、溶融ガラスが流れるラインに向けて巻き出します。
- ロールアウト(圧延・挿入): 溶融ガラスを、水冷された2本の強力なカレンダーローラー(圧延ロール)の間に通して板状に引き伸ばします。
- このとき、2本のローラーの間にワイヤーが正確な位置に来るように挿入されます。
- ワイヤーは溶融ガラスと一体化し、ガラスの中央付近に封じ込められます。
- ローラーの片側に模様が彫刻されていれば「霞」などの型板(模様)の網入りガラスに、両方とも平滑であれば「磨き(透明)」の網入りガラスになります。
- 徐冷と切断: ワイヤーが封入された板ガラスは、徐冷窯(じょれいがま)を通り、ゆっくりと冷やされて内部のひずみが取り除かれます。その後、規定のサイズに切断されて製品となります。
この手法により、防火目的で必要とされるワイヤーが内部にしっかりと固定された網入りガラスが連続的に生産されます。

網入りガラスは、ロールアウト法で作られます。高温で溶けたガラスをロールで圧延して板状にする際、金属製のワイヤーメッシュをガラス生地の中央に挿入し、そのまま冷却・固化させることで一体化させます。

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