この記事で分かること
- カレーライス指数とは:家庭でカレーライス1食分を作るのに必要な原材料(米、具材、ルーなど)と光熱費のトータルコストを示す指標です。
- 上昇の理由:コメの取引価格急騰と、タマネギ・ジャガイモなどの主要野菜の価格高騰が主因です。これに輸入牛肉や人件費の上昇が加わり、総コストを押し上げています。
- 今後の見通し:コメの価格高騰が継続し、主要野菜も高値で推移しているため、再び上昇基調に転じています。
カレーライス物価指数15カ月連続の2ケタ上昇
株式会社帝国データバンクが独自に試算・公表している「カレーライス物価指数」について、直近のデータでは、2025年9月の指数が前年同月比で15カ月連続の2ケタ上昇となった、という発表がありました。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2511/12/news082.html
カレーライス物価指数の動向は、現在の日本全体で続いている原材料価格の高騰や円安による輸入コスト増などの影響が、一般家庭の食費にも大きく影響している状況を反映していると言えます。
カレーライス物価指数とは何か
「カレーライス物価指数」は、日本の家庭料理の定番であるカレーライスの調理にかかる総コストを基に、物価の変動を身近に、直感的に把握するために開発された独自の経済指標です。
これは、株式会社帝国データバンクが独自に試算し、毎月公表しています。
カレーライス物価指数の概要
1. 目的:食卓への影響を可視化
政府が公表する「消費者物価指数(CPI)」は様々な品目を含むため一般の人には分かりにくい側面がありますが、この指数は「カレーライス1食分の価格がどれだけ変わったか」という非常に身近な指標に落とし込むことで、物価高が一般家庭の食卓にどれだけ影響しているかを分かりやすく示します。
2. 算出方法:1食あたりのトータルコスト
総務省が公表する「小売物価統計調査」の全国平均価格を基に、以下のコストを合算して「カレーライス物価(1食あたりの価格)」を算出します。
- 原材料費
- ごはん(米)
- 具材(じゃがいも、にんじん、たまねぎ、肉類など)
- カレールー、食用油
- 調理にかかる費用
- 水道光熱費(電気・ガス・水道料金:炊飯や調理のエネルギー使用量を配分)
この「カレーライス物価」を基に、2020年平均を100として指数化したものが「カレーライス物価指数」です。
3. 特徴:生活密着型のバロメーター
食料品の中でも、米や野菜、肉、加工品(カレールー)など、多岐にわたる品目の価格変動をまとめて反映するため、幅広い物価動向を反映する「生活密着型の経済バロメーター」として注目されています。
まとめ
| 項目 | 内容 |
| 発表主体 | 株式会社帝国データバンク |
| 指数の基準 | 2020年平均 = 100 |
| 示すもの | 家庭でカレーライス1食を調理する際の原材料費と光熱費のトータルコストの推移 |
| 主な役割 | 一般家庭の食卓への物価高の影響を分かりやすく示すこと |
現在の連続2ケタ上昇は、特に米(ごはん)や野菜の価格高騰が大きく影響しており、家計を圧迫している実態を示しています。

帝国データバンクが独自に算出する、家庭でカレーライス1食分を作るのに必要な原材料(米、具材、ルーなど)と光熱費のトータルコストを示す指標です(2020年平均=100)。物価高が一般家庭の食卓に与える影響を分かりやすく可視化することを目的としています。
上昇の理由は何か
「カレーライス物価指数」が15カ月連続で2ケタ上昇している主な理由は、カレーライスを構成する主要な国産食材の記録的な価格高騰です。
特に以下の2つの要因が、継続的な上昇を強く牽引しています。
上昇を牽引する主な要因
1. ごはん(ライス)の価格高騰
- 背景: 2024年の猛暑によるコメの生育不良や、流通在庫の減少により、コメの取引価格が大幅に高騰しています。
- 影響: カレーライス1食分のコストにおいて、「ごはん(ライス)」の価格が前年同月比で約5割増となるなど、記録的な高値水準で推移しており、指数全体を大きく押し上げています。
2. 野菜類(特に主要具材)の価格高騰
- 背景: タマネギ、ジャガイモ、ニンジンといったカレーの主要具材が、天候不順や猛暑の影響による作柄の悪化により、平年を大きく上回る高値で推移しています。
- 影響: カレー具材(肉・野菜)は、カレーライスのコスト全体の約6割を占めるため、野菜の価格上昇は指数に直結します。特に直近ではタマネギなどが高値圏にあります。
その他の影響要因
- 円安の影響: カレー具材に含まれる輸入牛肉など、輸入に頼る原材料の価格は、円安の影響で高止まり傾向にあります。
- 人件費・物流コストの上昇: 賃上げによる人件費の上昇や、「2024年問題」などに起因する物流コストの上昇も、最終的な小売価格を押し上げる要因となっています。
これらの要因が複合的に作用し、日本の消費者物価指数全体の高騰傾向を反映する形で、「カレーライス物価指数」の記録的な上昇が続いています。

猛暑によるコメ(ごはん)の取引価格急騰と、タマネギ・ジャガイモなどの主要野菜の価格高騰が主因です。これに輸入牛肉や人件費の上昇が加わり、総コストを押し上げています。
今後の見通しはどうか
「カレーライス物価指数」の今後の見通しについては、一時的に下落傾向が見られたものの、再び上昇基調に転じ、過去最高水準で推移するという予想がされています。
特に、指数を大きく左右する米(ごはん)と野菜の価格動向に、不安定な要素が多いためです。
1. 短期的な見通し:過去最高値の更新へ
帝国データバンクの直近の予測(2025年9月発表分)では、以下のような見通しが示されています。
| 項目 | 予測/見通し |
| 2025年10月の予測 | 1食あたり460円台に到達し、比較可能な2015年以降のデータで過去最高値を更新する可能性が高い。 |
| 今冬にかけて | 過去最高水準での推移が継続する。 |
| 全体的な傾向 | 2025年5月をピークに緩やかな低下傾向が見られたが、現在は再び上昇傾向に転じつつある。 |
2. 上昇傾向が続く背景となる不安定要素
上昇を牽引した主要因が、今後も高止まり、あるいは再上昇するリスクがあります。
- ごはん(ライス)の価格高騰の継続
- 2024年の猛暑による作柄不良の影響が長期化しており、コメの取引価格が依然として高い水準にあります。
- 一部では備蓄米の放出などで価格安定の動きも見られましたが、銘柄米を含め、店頭価格が再び全体を押し上げる要因となっています。
- 野菜類価格の再上昇リスク
- 主要具材であるタマネギ、ジャガイモなどの野菜は、天候や作柄に左右されやすく、特にタマネギなどは北海道産を中心に記録的高値が見込まれています。
- 値下がり要因に乏しく、野菜類が再び指数を押し上げる可能性があります。
- 中長期的な物価高の継続
- 輸入原材料価格の高止まり、円安の継続、および人件費や物流費の上昇(2024年問題など)といった構造的なコスト増は解消されておらず、カレー物価が2023年以前の低水準(200円台)まで低下する可能性は低いとみられています。
一時的な価格安定の局面はありましたが、足元のコメと野菜の価格動向により、カレーライス物価指数は再び高値を更新し、中長期的に記録的な高値圏で推移すると予想されます。

一時安定の動きが見られましたが、コメの価格高騰が継続し、主要野菜も高値で推移しているため、再び上昇基調に転じています。今冬にかけて過去最高水準での推移が続く見通しです。

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