この記事で分かること
- 扱っている製品:DRAM(HBM含む)やNAND型フラッシュメモリ(SSDなど)といったメモリー半導体が柱です。その他に、スマートフォン向けExynosプロセッサ、イメージセンサ(ISOCELL)などのシステムLSI、およびファウンドリ(受託生産)も展開しています。
- 回復の理由:AI需要によるHBM3Eなど高付加価値メモリーの販売急増と、市場回復によるメモリー価格の上昇、および費用の減少が利益を大きく押し上げました。
サムスン電子の半導体部門の回復
サムスン電子の半導体(DS:Device Solutions)部門は、2025年第3四半期(7月~9月)の業績で、売上高と利益が大幅に回復しました。
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2511/18/news042_2.html
半導体部門は、以前の市場低迷期には赤字を計上していましたが、2024年第1四半期に5四半期ぶりに黒字に転換し、その後も市況の回復とともに業績を急速に伸ばしています。直近の2025年第3四半期には、メモリー事業の売上高が過去最高を記録するまでに至っています。
サムスン電子の半導体にはどのような製品があるのか
サムスン電子の半導体(DS:Device Solutions)部門は、大きく分けて「メモリー半導体」と「システムLSI(非メモリー半導体)」の2つの分野で非常に幅広い製品を提供しています。
特にメモリー半導体は世界トップシェアを誇り、同社の業績を牽引する柱です。
1. メモリー半導体 (Memory)
データを保存したり、一時的に処理したりするために使われる半導体で、AIやサーバー需要の拡大により特に注目されています。
| 製品名 | 主な種類と用途 |
| DRAM (Dynamic Random Access Memory) | 一時的なデータ処理に使用される主記憶装置。DDR5、LPDDR5X (PC、モバイル、サーバー向け) 、 HBM (High Bandwidth Memory): 特にAI/高性能コンピューティング (HPC) 向けの高付加価値製品 (例: HBM3E) |
| NAND型 フラッシュメモリ | データの永続的な保存に使用される。SSD (Solid State Drive): PC、データセンター、エンタープライズ、車載用ストレージ。 UFS (Universal Flash Storage): スマートフォンなどのモバイル機器向け内蔵ストレージ。 メモリーカード、USBメモリなど。 |
| CXLメモリ (Compute Express Link) | 次世代のインターフェースを使用した、サーバーのメモリー容量を拡張・共有するための技術。 |
2. システムLSI (System LSI / 非メモリー半導体)
特定の機能を実現するために設計された半導体で、主にスマートフォンや家電などの電子機器の「頭脳」や「感覚器官」として機能します。
| 製品名 | 主な種類と用途 |
| プロセッサ (SoC) | Exynosシリーズなどが有名。モバイル、ウェアラブル、車載用などのアプリケーションプロセッサ (AP) やモデム、RFチップなど、機器全体の動作を制御する中核チップ。 |
| イメージセンサ | デジタルカメラやスマートフォンなどのカメラ機能に使われる。ISOCELLシリーズが有名で、モバイル向け超高解像度センサなどを展開。 車載用、ToFセンサ(距離測定)なども。 |
| ディスプレイIC (DDI) | ディスプレイの画素を制御し、映像を表示させるためのチップ。モバイルDDIやパネルDDIなど、様々なディスプレイ向けに提供。 |
| セキュリティソリューション | 決済用チップ、指紋認証ソリューション、モバイル・IoT向けのセキュアエレメント (SE) など、機器のセキュリティと認証を担う。 |
| 電源IC (PMIC) | モバイル機器やメモリなどに安定した電力を供給するためのチップ。 |
ファウンドリ事業(半導体受託生産)
サムスン電子は、自社製品だけでなく、他社から設計図を受け取って半導体を製造するファウンドリ事業も行っています。
- 最先端の微細化技術(例: GAA技術)を用いたロジック半導体の受託生産で、QualcommやNVIDIAなどの大口顧客を抱えています。
サムスン電子は、データの記憶(メモリー)から処理(プロセッサ)、感知(イメージセンサ)、表示(ディスプレイIC)に至るまで、電子機器の根幹をなす非常に多岐にわたる半導体製品を開発・製造しています。

サムスン電子の半導体は、DRAM(HBM含む)やNAND型フラッシュメモリ(SSDなど)といったメモリー半導体が柱です。その他に、スマートフォン向けExynosプロセッサ、イメージセンサ(ISOCELL)などのシステムLSI、およびファウンドリ(受託生産)も展開しています。
売上高と利益の急回復理由は何か
サムスン電子の半導体(DS)部門が売上高と利益の両方で急回復した主な理由は、AI市場の急成長に伴う高付加価値メモリー製品の需要爆発と、それに伴う価格環境の好転です。具体的には、以下の要因が複合的に寄与しました。
1. HBM3Eなどの高付加価値製品の販売拡大
- AI向けHBMの需要爆発: HBM(高帯域幅メモリー)、特に最新世代のHBM3Eの販売が急速に拡大しました。AIサーバーや高性能コンピューティング(HPC)向けに不可欠なこの製品の量産体制が整い、収益に大きく貢献しています。
- サーバー用メモリーの需要増加: DDR5など、サーバー向け高容量・高性能なDRAMや、サーバー用SSDの需要も、データセンターの設備投資再開により回復しました。
2. メモリー価格の好転と市況改善
- 価格の上昇: 市場全体の在庫水準が正常化に向かい、特にDRAMとNANDフラッシュメモリーの両方で価格が上昇基調に転じました。これにより、製品あたりの収益性が大幅に改善しました。
- 費用減少: 前期の市況悪化時に計上されていた在庫評価損などの一時的な費用が減少し、利益を押し上げました。
AIブームという追い風に乗って、高収益な最新メモリー製品の販売を拡大できたことが、急回復の最大の要因です。

AI需要によるHBM3Eなど高付加価値メモリーの販売急増と、市場回復によるメモリー価格の上昇、および費用の減少が利益を大きく押し上げました。
CXLメモリとは何か
CXLメモリとは、CXL (Compute Express Link)という次世代の高速インターフェース規格を用いて、CPUやGPUと接続・通信するメモリーのことです。特にAIやデータセンターなど、大容量メモリーを必要とする高性能コンピューティング環境での課題を解決するために開発されました。
CXLとCXLメモリの役割
CXLは、従来のメモリー接続方法の限界を打破し、コンピューティングシステムに「メモリーの拡張性」と「リソース共有」をもたらします。
1. CXLとは
CXLは、CPU、GPU、メモリーデバイスなどを高速かつ低遅延で接続するためのオープンスタンダードなインターフェースです。
- PCI Express (PCIe) を利用: 物理層にはPCIeが使われており、既存のPCIEスロットに差し込む形で追加できるため、拡張が容易です。
2. CXLメモリとは
CXLインターフェースを介してホストCPUに接続されるDRAMや不揮発性ストレージのことです。CXLメモリを使用する主なメリットは以下の通りです。
- 大容量の拡張: 従来のDDRメモリー接続ではスロット数や容量に制限がありましたが、CXLを使用することで、サーバーのメモリー容量をテラバイトレベルまで大幅に拡張できます。
- メモリープーリング (CXL 2.0以降): サーバープラットフォーム上の複数のCXLメモリを一つの大きなプールとしてまとめ、必要に応じて各CPUやデバイスに動的に割り当てて共有できます。これにより、メモリーの利用効率が最大化されます。
- 低遅延アクセス: CPUからホストDRAMと同様にCXLメモリへアクセスできるよう設計されており、データ集約型ワークロードの性能を向上させます。
3. 将来性
AIや機械学習のデータ量爆発に伴い、HBM(高帯域幅メモリー)と並ぶ次世代メモリー技術として注目されており、2028年頃にはメモリー業界の主流になるとも予測されています。
サムスン電子も業界初のCXLベースDRAM(CMM-Dなど)を開発・提供するなど、この分野のエコシステム拡大に積極的に取り組んでいます。

CXL (Compute Express Link)という高速インターフェース規格で接続されるメモリーです。従来の制約を超えてサーバーのメモリー容量を大幅に拡張し、リソースを動的に共有(プーリング)することで、AIやデータセンターの性能向上に貢献します。

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