ラピダスの1.4ナノ半導体 1.4ナノ半導体とは何か?TSMCへの対抗策は?

この記事で分かること

  • 1.4ナノ半導体とは:1.4nm(ナノメートル)という極めて微細な製造技術世代でつくられる次世代ロジック半導体です。従来以上の高密度での実装を可能にし、処理性能を向上させるとともに、消費電力を大幅に削減する、最先端のチップ技術です。
  • 微細化が消費電力を減少させる理由:トランジスタの動作電圧が低下し、スイッチングに必要な負荷容量も減少します。消費電力は電圧の二乗に比例して減るため、少ない電力で高速に動作でき、大幅な省エネルギー化につながります。
  • TSMCへの対抗策:最先端技術(2nm/1.4nm)をIBM/imecと連携し、超短納期で開発・製造します。TSMCの大量生産と異なり、地政学的リスクを避ける顧客に向けた少量・高付加価値チップで差別化を図ります。

ラピダスの1.4ナノ半導体

 ラピダス株式会社は、2ナノメートル(nm)以下の最先端ロジック半導体の開発・量産を目指しており、そのロードマップとして、2nm世代の量産開始後に、1.4nm世代、さらに1.0nm世代へと進む計画を立てています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC222FQ0S5A121C2000000/

 現在、最先端の高性能半導体のほとんど(約92%)は台湾などで生産されており、日本国内では40nm程度の製造に留まっています。海外からの供給が絶たれるリスクを回避するため、次世代半導体の国内生産実現が国策として推進されています。

1.4ナノ半導体とは何か

 「1.4ナノ半導体」とは、1.4ナノメートル(nm)という極めて微細な製造プロセス技術を用いて作られる、次世代のロジック半導体チップを指します。

 これは、現在主流となっている半導体よりもさらに高性能で、省エネルギー性に優れるチップを実現するための最先端の技術世代(プロセスノード)です。


1. ナノメートル(nm)とは?

 ナノメートル(1nm= 10-9m、10億分の1メートル)は、半導体チップの内部にあるトランジスタ(スイッチの役割をする極小の電子部品)の微細さを示す単位です。

  • この数値は、かつてはトランジスタのゲート長(電流の通り道を制御する部分の幅)の物理的な寸法を表していました。
  • しかし、技術の進化により、現在ではその物理的な寸法と一致しないことが多くなり、主に半導体製造技術の世代名(プロセスノード)として使われています。

2. 数値が小さいことの意味

 プロセスノードの数値が小さいほど、以下の利点があります。

特徴効果
微細化チップ上により多くのトランジスタを詰め込むことができる。
処理性能向上トランジスタ間の距離が縮まり、信号伝送が速くなるため、処理速度が向上する。(最大15%程度の向上見込み)
省電力化トランジスタのスイッチングに必要な電力が少なくなるため、消費電力が削減される。(約30%程度の削減見込み)

 このため、1.4nmは、AI、高性能コンピューティング(HPC)、次世代スマートフォンなど、膨大な計算能力と電力効率が求められる分野の核となる技術です。


ラピダスと1.4nm

 ラピダス株式会社は、最先端の2nm半導体の量産化を最初の目標としていますが、その後のロードマップとして、1.4nm世代、さらにその先の1.0nm世代への技術開発・量産化を目指しています。

  • 現在の最先端: 2025年現在、世界のファウンドリ(半導体受託製造企業)の最先端は3nm2nmの量産を目指している段階です。
  • ラピダスの目標: 2nmのパイロットラインを2025年4月に稼働させ、2027年度後半に量産を開始。その数年後、おおよそ2029年度頃に1.4nm世代の量産開始を目指すとしています。

 1.4nmは、現在、TSMCやIntelといった世界の半導体大手も開発競争を繰り広げている「夢の工程」とも呼ばれる技術水準です。ラピダスがこの技術を確立し量産化することは、日本の半導体産業にとって極めて重要な目標となっています。


 1.4nm半導体の製造には、極端紫外線(EUV)露光装置などの最先端の製造装置や、高い技術力が必要となります。この技術が実現することで、AIチップやスーパーコンピューターなどの性能が飛躍的に向上することが期待されます。

1.4ナノ半導体とは、1.4nm(ナノメートル)という極めて微細な製造技術世代でつくられる次世代ロジック半導体です。

これは、トランジスタを従来の半導体より高密度に集積し、処理性能を向上させるとともに、消費電力を大幅に削減する、最先端のチップ技術です。ラピダスなどが2029年頃の量産を目指しています。

なぜ、微細化が省エネルギー性につながるのか

 半導体の微細化(プロセスノードの数値が小さくなること)が省エネルギー性につながる主な理由は、トランジスタを動かすために必要な電力量が大幅に減少するからです。

これは、トランジスタが小さくなることで、主に以下の2つの要因が変化するためです。


1. 動作電圧(電源電圧)の低下

 トランジスタが小さくなると、そのスイッチング(オン・オフの切り替え)に必要な電界強度を維持するために、低い電圧で動作させることができます。

  • 消費電力の削減: デジタル回路における動的な消費電力は、主に(負荷容量)×(動作周圧)×(動作電圧)2という式で計算されます。動作電圧(V)が低くなればなるほど、消費電力は電圧の二乗に比例して大きく減少するため、電力効率が飛躍的に向上します。

2. 負荷容量(キャパシタンス)の減少

 トランジスタが小さくなると、そのトランジスタや配線が持つ電気を蓄える能力である負荷容量(C)が小さくなります。

  • 充電・放電エネルギーの減少: トランジスタがオン・オフする際、この容量を充電・放電する必要があります。容量が小さくなれば、スイッチングの際に必要な充電・放電エネルギーが少なくなり、その結果、消費電力が削減されます。

その他の付随的な効果

  • 信号伝達距離の短縮: トランジスタ間の配線距離が短くなるため、信号伝達にかかる時間が短縮され、これに伴うエネルギー損失が減少します。
  • 発熱の抑制: 消費電力が減少すると、発熱量も抑えられます。これにより、システム全体を冷却するための空調設備(ファンなど)の電力消費も削減できるため、データセンターなどでは特に大きな省エネ効果が得られます。

注意点:微細化が進むと、「漏れ電流(リーク電流)」が増加しやすくなるという物理的な課題も生じます。これは、トランジスタがオフの状態でも微弱な電流が流れてしまう現象で、これが消費電力増加の原因になるため、FinFETやGAA(Gate-All-Around)といったトランジスタ構造の改良により対策が施されています。

微細化により、トランジスタの動作電圧が低下し、スイッチングに必要な負荷容量も減少します。消費電力は電圧の二乗に比例して減るため、少ない電力で高速に動作でき、大幅な省エネルギー化につながります。

ラピダスのTSMCへの対抗策は

 ラピダス株式会社は、世界最大手のファウンドリ(半導体受託製造企業)であるTSMCに対抗するため、主に以下の3つの戦略で差別化を図っています。


1. 「地政学的価値」と「安全保障」による差別化

 ラピダスは、単なる価格競争ではなく、供給の安定性地政学的な価値を最大の武器としています。

  • 集中リスクの回避: 最先端半導体の生産が台湾のTSMCに集中している現状は、世界の多くの顧客にとって地政学的なリスク(災害、国際情勢の緊張などによる供給途絶のリスク)となっています。
  • 「信頼できるサプライヤー」の確立: ラピダスは、日本という安全で安定したサプライチェーンの中で、最先端のチップを製造・供給することで、このリスクを回避したい顧客からの受注を目指します。
  • 国家的な支援: 日本政府は巨額の資金援助を通じてこの戦略を支援しており、「政府のお墨付き」という形で信頼性を高めています。

2. 世界最速の「超短納期」開発

 ラピダスは、顧客の要望に合わせたカスタムチップを世界最速のスピードで開発・製造することを目指しています。

  • RUMS(Rapid-turnaround Manufacturing Services): 顧客との設計・製造を密接に連携させ、チップ開発のサイクルタイムを大幅に短縮するサービスを目標としています。
  • 少量・多品種のニッチ戦略: TSMCのような巨大な量産規模を追うのではなく、AIスタートアップクラウド大手など、最先端で少量・高利益率のカスタムチップの受注に狙いを定め、ニッチな市場から顧客基盤を固めます。
  • 枚葉式(バッチ処理ではなく一枚ずつ処理)の採用: 大量生産ではなく、製品一個一個の品質とカスタマイズ性を高める製造手法の採用を検討しているとされています。

3. 技術的なパートナーシップ

 最先端の半導体製造技術を迅速に獲得し、競争に追いつくために、国際的な技術提携を最大限に活用しています。

  • IBMとの提携: 2nm世代の鍵となるGAA(Gate-All-Around)トランジスタ技術のライセンス供与と共同開発を米国のIBMと進めています。
  • imecとの連携: 欧州トップレベルの半導体研究開発エコシステムであるベルギーのimecとも連携し、EUV露光などの最先端製造技術の知見を獲得しています。

 TSMCはすでに2nm世代の量産準備を進めており、1.6nm/1.4nmのロードマップも発表するなど先行していますが、ラピダスは上記の戦略で「技術的な遅れ」「安全性の価値」と「開発の速さ」で補い、世界市場に参入することを目指しています。

ラピダスは、最先端技術(2nm/1.4nm)をIBM/imecと連携し、超短納期で開発・製造します。TSMCの大量生産と異なり、地政学的リスクを避ける顧客に向けた少量・高付加価値チップで差別化を図ります。

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