アメリカ株式市場の続伸 続伸の理由は何か?

この記事で分かること

  • 続伸の理由:トランプ政権によるエヌビディアの対中輸出規制の緩和方針と、マイクロン・テクノロジーの好決算などによるハイテク・半導体セクターの躍進が主な要因です。
  • 消費関連株下落の理由;:ナイキが中国市場の不振や「コンバース」ブランドの低迷を受け、10%超急落してセクター全体を冷やしたことやら米消費者態度指数が予想を下回り、買い控えへの警戒感が強まったことが要因です。

アメリカ株式市場の続伸

 2025年12月19日(金)の米国株式市場は、主要3指数が揃って続伸しました。ハイテク株が相場を牽引し、年末特有の買い(サンタクロース・ラリー)への期待感も高まっています。

 https://jp.reuters.com/markets/japan/LIM4DQ57RJIX7IIUABYPHT3YTM-2025-12-19/

 来週からは本格的なクリスマス休暇に入り、市場参加者が減少する「薄商い」が予想されます。例年、この時期は「サンタクロース・ラリー」と呼ばれる上昇傾向が見られます。

ハイテク・半導体セクターの躍進に理由は何か

 2025年12月19日の米市場で、ハイテク・半導体セクターが大きく上昇した背景には、主に3つの具体的な要因があります。

 特にエヌビディアの対中輸出規制の緩和や、マイクロンの驚異的な決算オラクルのTikTok関連の大型合意といった、個別材料がセクター全体を強力に押し上げました。


1. エヌビディア(NVDA):対中輸出規制の緩和検討

 トランプ政権が、中国へのAIチップ輸出規制を一部緩和する方針を示したことが、市場に大きなサプライズをもたらしました。

  • 緩和の内容: President Trumpが、NvidiaのAIチップ(H200)の中国向け輸出について、1年間の時限的な適用除外を認める意向を表明しました。
  • メリット: 中国市場という巨大な需要へのアクセスが再び確保されることで、Nvidiaだけでなく、AMDなどの競合他社にも業績拡大の期待が広がりました。なお、この取引により米政府は売上の25%を「手数料」として徴収する仕組みが報じられています。

2. マイクロン・テクノロジー(MU):過去最高の決算と「完売」宣言

 メモリ大手のマイクロンが前日に発表した2026年度第1四半期決算が、市場の期待を遥かに上回る極めて強い内容でした。

  • 2026年分まで完売: AIサーバーに不可欠なHBM(高帯域幅メモリ)の供給が、2026年分まで「完売(Sold out)」状態であると発表しました。
  • 市場への波及: 「AI需要は本物であり、供給が追いついていない」ことが実証されたことで、AIインフラを支える半導体全体への買い安心感が強まりました。

3. オラクル(ORCL):TikTok米国事業の存続合意

 オラクルがTikTokの米国事業を巡る新合弁会社(TikTok USDS Joint Venture)の主要株主(15%保有)になるという報道が、株価を7%近く押し上げました。

  • クラウド契約の維持: TikTokはオラクルのクラウド部門(OCI)にとって年間約8億ドル(売上の約5%)を占める大口顧客です。事業継続が決まったことで、懸念されていた売上減少のリスクが消滅し、AIデータセンターへの投資継続を裏付けるプラス材料となりました。

その他のセクター別要因

押し上げ要因具体的な影響
金利の安定11月のインフレ指標(CPI)の鈍化を受け、金利が落ち着いたことで、成長株(ハイテク)に資金が戻りやすくなりました。
SQ(決済日)「クアドルプル・ウィッチング」により、先物やオプションの買い戻しが活発化し、上昇に拍車がかかりました。

 この上昇は「AIブームの第2波」とも呼ばれる実需(マイクロンの完売など)に裏打ちされたものです。一方で、ナイキのように中国市場の景気減速の影響を受けて急落している銘柄もあり、セクターごとの明暗がはっきり分かれています。

主要因は、トランプ政権によるエヌビディアの対中輸出規制の緩和方針と、マイクロン・テクノロジーの好決算です。AI向けメモリの完売報道で実需が裏付けられ、AI・半導体セクター全体へ強気な買いが波及しました。

消費関連株下落の要因は

 2025年12月19日の市場で、ハイテク株が続伸する一方で消費関連株(一般消費財セクターなど)が軟調だった主な要因は、個別企業の決算悪化と、関税やインフレによる消費マインドの冷え込みにあります。主な理由は以下の3点に集約されます。

1. ナイキ(NKE)の急落による連鎖安

セクターの代表格であるナイキが、前日発表の決算を受けて10%を超える大幅下落となりました。これが消費関連全体の重石となりました。

  • 要因: 中国市場での苦戦、主力ブランド「コンバース」の低迷、直販(DTC)売上の未達。
  • 将来不安: 新政権による関税コストの上昇が利益率をさらに圧迫するとの懸念が示されました。

2. インフレと景気不透明感による「買い控え」

 米国の消費者マインドが慎重になっています。

  • K字型消費: 富裕層は消費を維持していますが、中低所得層が「必需品」を優先し、衣料品やレジャーなどの「不要不急の支出」を削る傾向(節約志向)が強まっています。
  • Lululemon(LULU)などの苦戦: 高価格帯のヨガウェアを展開するルルレモンも、米国需要の減速と安価な代替品(デュープ)との競争激化により、通期予想を下方修正するなど厳しい状況です。

3. 「関税」と「政府閉鎖」の影響

 トランプ政権下の通商政策が消費財メーカーのコストを直撃しています。

  • コスト転嫁への不安: 輸入関税の引き上げにより、原材料や製品の輸入コスト増が避けられない状況です。企業が価格転嫁を行えばさらなる需要減を招き、行わなければ利益が削られるという板挟み状態が嫌気されました。
  • 政府閉鎖によるデータの歪み: 米政府閉鎖の影響で経済統計が不透明になり、雇用や所得に対する消費者の先行きの不安が強まったことも要因に挙げられます。

 市場では「AI・半導体(成長期待)」に資金が集中する一方で、「消費関連(実体経済の鈍化)」から資金が流出する二極化が鮮明になっています。

ナイキが中国市場の不振や「コンバース」ブランドの低迷を受け、10%超急落してセクター全体を冷やしたことやら米消費者態度指数が予想を下回り、買い控えへの警戒感が強まったことで消費関連株下落が起きています。

今後の見通しはどうか

 米国株式市場の今後の見通しは、年末特有の上昇への期待と、政策変化による不透明感が入り混じる展開が予想されます。

1. 短期的見通し:サンタクロース・ラリーへの期待

 12月の最終5営業日から翌年最初の2営業日にかけて株価が上昇する「サンタクロース・ラリー」が注目されています。

  • 上昇要因: FRBによる12月の追加利下げが追い風となり、市場の流動性が高まっています。また、年末に向けた機関投資家のポートフォリオ調整(買い戻し)も株価を下支えする見込みです。
  • リスク: 2025年は季節性に乏しい動きが続いており、一部の専門家はボラティリティ(変動幅)が再び高まる可能性を警告しています。

2. 中長期的見通し(2026年に向けて):二極化と分散

 2026年にかけては、これまでのハイテク一辺倒から、より幅広いセクターへ投資が分散する「物色の広がり」が予想されています。

  • ハイテク株: AI需要は引き続き堅調ですが、割高感も指摘されており、今後は業績成長が株価を維持できるかが焦点となります。
  • 非ハイテク株: 利下げの効果が浸透し、景気が緩やかに加速することで、中小型株やこれまで出遅れていたセクターに資金が回る可能性があります。
  • 指数の目標: 複数の金融機関は、S&P500指数が2026年末までに7,200〜7,700ポイント程度まで上昇する強気な予測を立てています。

注意すべき3つのリスク要因

 今後の相場を左右する主な不確定要素は以下の通りです。

  1. 関税政策の動向: トランプ政権の関税導入がサプライチェーンに与える影響や、コスト増による消費冷え込みが最大のリスクです。
  2. インフレの再燃: 利下げが進む一方で、景気が強すぎるとインフレが再び加速し、FRBの姿勢がタカ派に転じる恐れがあります。
  3. 地政学リスク: 中国との通商摩擦や、中東・ウクライナ情勢の急変が突発的な売り材料になる可能性があります。

短期的には、年末特有の買い(サンタクロース・ラリー)が相場を下支えし、S&P500が7,000の大台を試す強気展開が予想されます。ただし、週明けはクリスマス休暇で市場参加者が減り、閑散相場となる見込みです。中長期的には、FRBの追加利下げとAIによる企業収益の拡大が追い風となる一方、新政権の関税政策によるコスト増がリスクとなります。

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