HBMとは何か?どのようにDRAMチップを積み重ねるのか?

この記事で分かること

  • HMMとは:DRAMを垂直に積み重ね、データ転送の「道幅」を劇的に広げた超高速メモリです。 計算装置(GPU)のすぐ隣に配置し、膨大なデータを一瞬で送れるため、生成AIなどの高度な処理には不可欠な技術となっています。
  • どのようにDRAMを積み重ねるのか:チップに数千の微細な穴を開けて垂直な電極を通す「TSV(シリコン貫通電極)」技術で直結します。
  • チップの接着方法:「TC-NCF」はチップ間に絶縁フィルムを挟み、熱と圧力で溶かしながら1層ずつ接着します。 一方、主流の「MR-MUF」は一気にチップを積んだ後、液体樹脂を流し込んで隙間を埋める方法で、放熱性と生産性に優れています。

HBM

 半導体チップは、「産業のコメ」と呼ばれるほど現代社会の基盤となっています。AIの普及やデジタル化の加速などのもあり、AIそのますます重要性が増しています。

 ただ、一口に半導体チップといっても、その中には様々な種類が存在します。今回は半導体チップにはどのような種類があるのかの記事となります。

 今回は、メモリ半導体のHBMに関する記事となります。

HBMとは何か

 HBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)とは、「DRAMを縦に何層も積み上げ、データをやり取りする道(帯域)を極限まで広げた、超高速な次世代メモリ」のことです。

 ChatGPTなどの生成AIブームにおいて、膨大なデータを一瞬で処理するために欠かせない「AIの心臓部」として注目を集めています。


1. 構造と仕組み:ビルのような積層構造

 これまでのDRAM(メインメモリ)が「平屋の家」だとすれば、HBMは「高層ビル」です。

  • 3D積層技術: 複数のDRAMチップを垂直に積み重ね、TSV(シリコン貫通電極)という垂直な電極で直結しています。
  • 道幅の拡大: 従来のメモリが数十本の「細い道」でデータを送っていたのに対し、HBMは数千本もの「超広大な道路」で一度に大量のデータを送ります。
  • 近接配置: 計算を担当するプロセッサ(GPUなど)のすぐ隣に配置されるため、通信の遅延(タイムラグ)が極めて少なくなっています。

2. なぜAIにHBMが必要なのか?

 AI(特に生成AI)は、一度に数千億個ものパラメータという巨大なデータを計算する必要があります。

 どんなに計算速度が速いGPU(頭脳)を持っていても、メモリ(机)からのデータ供給が遅いと、GPUが「待ちぼうけ」を食らって性能を発揮できません。この「メモリの壁」を壊し、GPUのフルパワーを引き出すのがHBMの役割です。


DRAMを垂直に積み重ね、データ転送の「道幅」を劇的に広げた超高速メモリです。 計算装置(GPU)のすぐ隣に配置し、膨大なデータを一瞬で送れるため、生成AIなどの高度な処理には不可欠な技術となっています。

DRAMチップはどのように積み上げられるのか

 HBMなどのメモリでDRAMチップを積み上げるには、「TSV(シリコン貫通電極)」という革新的な技術が使われています。

 これまでの半導体は、横に並べて「ワイヤー(金線)」でつなぐのが一般的でしたが、積層メモリではチップに直接「穴」を開けて垂直につなぎます。

1. 積み上げの核心技術:TSV (Through Silicon Via)

 TSVは、シリコンチップを貫通する垂直な通り道(ビア)のことです。

  • 穴を開ける: DRAMチップに数千個の微細な穴を開けます。
  • 電極を通す: その穴に銅などの導電性物質を流し込み、垂直な電極(エレベーターのような通路)を作ります。
  • 直結する: チップを重ねる際、この電極同士を直接つなぐことで、上下のチップ間で最短距離の通信を可能にします。

2. チップを接着する2つの主な方法

 チップ同士をどうやってくっつけるかについては、現在2つの主要な手法が競っています。

① マイクロバンプ方式(TC-NCF / MR-MUF)

チップの間に小さな「はんだの粒(バンプ)」を挟んで熱で溶かし、接着する方法です。

  • TC-NCF: フィルム状の絶縁材を挟んで熱圧着する。
  • MR-MUF: チップを積んだ後に樹脂を隙間に流し込む(SK Hynixが採用し、放熱性に優れるとされる)。

② ハイブリッドボンディング(次世代技術)

 バンプを使わず、銅(Cu)の端面同士を直接ペタッとくっつける究極の技術です。

  • メリット: 接着面を極限まで薄くできるため、同じ高さにより多くのチップを積め、通信速度もさらに上がります。HBM4などの次世代規格での採用が期待されています。

チップに数千の微細な穴を開けて垂直な電極を通す「TSV(シリコン貫通電極)」技術で直結します。 チップ間に「はんだの粒」を挟んで熱圧着するか、次世代の「ハイブリッドボンディング」で直接接合することで、ビルのような多層構造を実現しています。

TSVにどうやって導電性物質を流し込むのか

 TSV(シリコン貫通電極)に導電性物質(主に銅)を流し込むプロセスは、単に流し込むのではなく、「電解めっき」という化学反応を利用して、底から積み上げるように埋めていきます。


具体的な3つのステップ

  1. 下準備(バリア層とシード層)穴を開けただけでは銅がシリコンに染み込んで壊れてしまうため、まず絶縁膜とバリア層を作ります。その上に、電気が流れるきっかけとなる薄い銅の膜(シード層)を蒸着させます。
  2. 電解メッキ(ボトムアップ充填)ウェハをめっき液に浸し、電気を流します。このとき、めっき液に含まれる特殊な添加剤が重要な働きをします。
    • 抑制剤: 穴の「入り口」付近に付着して、銅が盛り上がるのを防ぎます。
    • 促進剤: 穴の「底」に集まり、優先的に銅を成長させます。これにより、入り口が塞がる前に底から隙間なく銅が埋まる「ボトムアップ」という現象が起きます。
  3. 余分な銅の除去(CMP)表面に盛り上がった余分な銅を、研磨剤(CMP:化学機械研磨)で平らに削り落として完成です。

「電解メッキ」を用い、特殊な添加剤で入り口の成長を抑えつつ、穴の底から銅を優先的に積み上げる「ボトムアップ方式」で埋めます。 事前に絶縁膜とシード層を作り、最後は不要な銅を研磨(CMP)して平坦化します。

TC-NCFとは何か

 TC-NCF(Thermal Compression Non-Conductive Film)とは、HBMなどの積層メモリを製造する際に使われる、「非導電性フィルムを用いた熱圧着」技術のことです。

仕組みと役割

  1. フィルムを挟む: チップの間に、絶縁性のある特殊な樹脂フィルム(NCF)をあらかじめ貼り付けておきます。
  2. 熱と圧力をかける: 上から熱を加えながらプレスします。
  3. 接合と封止: フィルムが熱で溶けて隙間を埋めると同時に、チップ間の「はんだ(マイクロバンプ)」が溶けて電気的につながります。

なぜ重要なのか

 DRAMを12層、16層と高く積み上げる際、チップが非常に薄くなるため、熱で反りやすくなります。TC-NCFはフィルムが支えになるため、チップの変形を抑えやすいというメリットがあり、主にSamsungなどがこの方式を採用しています。

 一方で、ライバルのSK Hynixが採用している「MR-MUF(液体樹脂を後から流し込む方式)」とのシェア争いが激化しています。この2つの方式の違いについて、さらに深掘りしてみますか?

チップの間に絶縁フィルムを挟み、熱と圧力で溶かしながら接着する技術です。 フィルムが隙間を埋める「封止」と、電極同士をつなぐ「接合」を同時に行います。チップが薄くなっても反りを抑えて安定して積層できるのが強みです。

MR-MUFとは何か

 MR-MUF(Mass Reflow-Molded Underfill)とは、HBMなどの積層メモリにおいて、「チップを積み上げた後に、液体状の保護材を一気に流し込んで隙間を埋める」技術のことです。

 SKハイニックスが採用し、HBM市場での躍進を支えた革新的な手法として知られています。

仕組み

  • 積み上げ: チップ間に「はんだの粒(バンプ)」を挟んで先に重ねます。
  • 加熱: 熱を加えて、すべてのチップのバンプを一斉に溶かして接合します(マス・リフロー)。
  • 流し込み: チップの隙間に、保護と放熱を兼ねた樹脂(MUF)をサラサラの状態で流し込み、固めます。

なぜ注目されているのか

  • 放熱性: AI処理で高温になるHBMにとって、熱伝導率の高い樹脂を隙間なく流せるこの方式は非常に有利です。
  • 生産性: 1層ずつ圧着するのではなく、まとめて一気に固めるため、製造スピードが上がります。

チップを積み重ねた後、液体状の保護樹脂を一気に流し込んで隙間を埋める技術です。 フィルムを挟む方式(TC-NCF)に比べ、隙間なく埋めやすく、熱が逃げやすいため放熱性に優れています。生産効率も高く、AI向けメモリの製造に不可欠な技術です。

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