三井化学の宇宙生活市場参入 どんな製品で参入しているのか?

この記事で分かること

  • 三井化学の参入内容:抗菌・消臭技術を活かした洗濯不要の衣類など「THINK SPACE LIFE」への参画を通じ、宇宙での衛生・快適性の向上という「生活」の質に直結する領域で強みを発揮しています。
  • 洗濯不要になる方法:抗菌・消臭機能を持つ特殊繊維が菌の繁殖とニオイを根本から抑え、蓄積した汚れは少量の洗浄液を含んだ専用シートで拭き取ります。これにより、水を使わずに数日間、新品に近い清潔感と快適さを保つことが可能です。

三井化学の宇宙生活市場参入

 レゾナック(旧・昭和電工)や三井化学といった日本の大手化学メーカーが、従来の「衛星パーツ」としての素材供給を超えて、宇宙での「生活」や「製造」を見据えた市場にいち早く手を打っています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC291P10Z21C25A1000000/

 宇宙環境で一度採用された素材や技術は、高い信頼性の証明となり、将来のデファクトスタンダード(事実上の標準)になる可能性が高いため早期に市場での定着を図っています。

 前回は宇宙生活市場全般に関する記事でしたが、今回は三井化学の取り組みについての記事となります。

三井化学はどんな内容で参入しているのか

 三井化学は、素材技術を活かして「宇宙での暮らし(QOL)」を快適にするという切り口で参入しています。

 特に、地上で培った「生活を豊かにする素材技術」を宇宙環境へ転用・応用しているのが特徴です。

1. 宇宙での「衛生・生活」を支える素材

 水が貴重で洗濯もできない宇宙船内での課題を、化学の力で解決しようとしています。

  • 抗菌・消臭素材: JAXAのプロジェクト「THINK SPACE LIFE」に参画し、洗濯不要でも清潔・快適に過ごせる衣類用の消臭・抗菌技術を提供しています。
  • ヘルスケア製品: 長期滞在による身体的ストレスを和らげるための、高機能な衛生用品や健康管理に関連する素材の検討を進めています。

2. 三井グループとしての「街づくり」連携

 単体での素材供給にとどまらず、「三井の宇宙ビジネス」としてグループ連携を強めています。

  • 三井不動産(居住施設)、三井物産(インフラ・輸送)などと連携し、将来の月面基地や宇宙ホテルといった「宇宙の街づくり」において、内装材や構造材、生活用品をパッケージで提案することを目指しています。

三井化学は、抗菌・消臭技術を活かした洗濯不要の衣類など「THINK SPACE LIFE」への参画を通じ、宇宙での衛生・快適性の向上という「生活」の質に直結する領域で強みを発揮しています。

なぜ洗濯不要でも清潔・快適にできるのか

 「洗濯なしでも清潔・快適」というのは、我慢するのではなく、「菌の増殖とニオイの発生を物理的に抑え込み、汚れを拭き取る」という複数の技術の組み合わせで実現されています。

 宇宙では水が極めて貴重なため、以下の3つのステップで清潔さを保ちます。

1. 「菌」を増やさない(抗菌・制菌)

 三井化学やゴールドウイン(JAXA共同開発)などの素材技術が活躍しています。

  • 銀イオンやナノ技術: 繊維に銀イオンなどの抗菌剤を練り込んだり、ナノレベルで繊維の表面を加工したりします。
  • 効果: 汗をかいても、ニオイの元となる雑菌が繁殖できない環境を作るため、数日間着続けても「臭わない」状態を維持します。

2. 「ニオイ」を化学的に分解・吸着(消臭)

  • カルボキシル基などの活用: 繊維自体にニオイ分子(アンモニアなど)を吸着・中和する化学的な性質を持たせます。
  • 宇宙下着の技術: かつて「宇宙下着」として話題になった技術では、強力な消臭機能により、長期間着用しても不快感がほとんど出ないことが実証されています。

3. 「汚れ」はシートで拭き取る(洗浄)

 洗濯機の代わりに、「Space Laundry Sheet(スペース ランドリー シート)」のような製品が使われます。

  • 仕組み: 洗浄液を含んだ不織布シートで、衣類の皮脂汚れや気になる部分を直接拭き取ります。
  • メリット: 洗濯機のように大量の水を使わず、水滴が飛び散るリスクもないため、無重力空間に最適です。

抗菌・消臭機能を持つ特殊繊維が菌の繁殖とニオイを根本から抑え、蓄積した汚れは少量の洗浄液を含んだ専用シートで拭き取ります。これにより、水を使わずに数日間、新品に近い清潔感と快適さを保つことが可能です。

ヘルスケア製品にはどんなモノがあるのか

 宇宙でのヘルスケア製品は、「病気の予防」「身体機能の維持」、「衛生管理」の3つのカテゴリーで多くの製品が登場しています。特に日本のメーカーが、地上の技術を「宇宙仕様」にアップデートして参入しているのが特徴です。


1. 衛生・スキンケア(水を使わないケア)

 宇宙ではシャワーが使えないため、水なしで清潔を保つ製品が中心です。

  • 宇宙用歯磨き・マウスウォッシュ: 飲み込んでも安全な成分で作られた「オーラルピース」や、タブレット型のハミガキなど。
  • ドライシャンプー・ボディシート: 拭き取るだけで頭皮や体の汚れ・ニオイを落とす専用シート。マンダム(ギャツビー)などが開発しています。
  • 高保湿スキンケア: 宇宙船内は非常に乾燥するため、極限環境でも肌を守る高機能なクリームや化粧品。

2. 身体機能の維持(筋力・骨のケア)

 無重力による老化現象(筋力低下や骨密度の減少)を防ぐための製品です。

  • 宇宙用トレーニング機器: 重力がない代わりにゴムの負荷などを使う「エルゴメーター」や「トレッドミル」。
  • ウェアラブルデバイス: 心拍、血圧、睡眠の質を24時間監視する「スマートシャツ」や「パッチ型センサー」。カナダの「Bio-Monitor」などが有名です。
  • 骨密度保持薬: 骨がもろくなるのを防ぐための専用のサプリメントや医薬品。

3. メンタルケア・生活リズム

 閉鎖環境でのストレスを和らげるための製品です。

  • サーカディアンリズム照明: 太陽光を模して、体内時計を整える照明システム。
  • リラックスウェア: 締め付けが少なく、かつ抗菌・消臭機能で精神的ストレスを減らす衣類。

水不要の「口腔ケア」や「ドライシャンプー」、乾燥から肌を守る「宇宙化粧品」といった衛生用品から、筋力低下を防ぐ「トレーニング機器」、バイタルを常時監視する「スマートウェア」まで多岐にわたります。

三井グループとしての街づくりとは何か

 三井グループが目指す宇宙での「街づくり」とは、「地上での都市開発ノウハウを、そのまま月面や宇宙ステーションに展開する」という壮大なプロジェクトです。

 単に施設を作るだけでなく、三井不動産を核として、グループ各社の強みを掛け合わせて「持続可能な居住圏」を構築することを目指しています。


1. 居住・インフラ(三井不動産・三井住友建設)

  • 月面拠点の構築: 居住モジュールの開発や、月の砂(レゴリス)を活用した建築技術を検討。
  • 日本橋を拠点としたエコシステム: 地上の「日本橋」を宇宙ビジネスのハブ(NIHONBASHI SPACE HUB)とし、多くのベンチャー企業と連携して宇宙都市の設計図を描いています。

2. 物流・サプライチェーン(三井物産)

  • 輸送と資材調達: 地球から宇宙へ、あるいは月面での資材移動を担う物流網の構築。
  • エネルギー供給: 居住に必要な電力や水の循環システムの管理。

3. 素材・生活環境(三井化学)

  • 空間の快適化: 先述の抗菌・消臭素材や、高機能な内装材を提供し、閉鎖空間での「生活の質」を向上させます。

4. リスク管理(三井住友海上)

  • 宇宙保険: 事故や故障に対する保険を提供し、民間企業が安心して「街づくり」に投資できる環境を整えます。

三井不動産を中心に、グループの総合力を結集して「宇宙での生活圏」を創出する取り組みです。居住施設の建設、物資の輸送、生活を支える高機能素材、さらに宇宙保険までをパッケージ化し、月面に都市インフラを築くことを目指しています。

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