この記事で分かること
- 好調の理由:AIサーバー向け需要の爆発的増加が最大の要因です。米エヌビディアのパートナーとして最新のAIインフラ製品の出荷が急増し、売上高は四半期として過去最高を記録しています。
- 鴻海のAIサーバー製造の強み:部品から組み立てまで自社で完結する「垂直統合」が最大の強みです。構成部品の約4割を内製化し、エヌビディアとの密な連携で最新チップ搭載機を迅速に供給しています。
- 今後の見通し:2026年もAIサーバー需要が牽引し、極めて明るい見通しです。例年1〜3月は閑散期ですが、最新チップ「Blackwell」搭載機の本格量産により、前年同期を大幅に上回る高水準の業績を維持する見込みです。
鴻海精密工業の売上好調
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が発表した2025年10〜12月期(第4四半期)の売上高は、市場の予想を大きく上回り、四半期ベースで過去最高を記録しました。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-05/T8DWCRKJH6V500?srnd=jp-technology
背景には、世界的なAIブームによるインフラ需要が強く影響しており、同社が「iPhoneの組み立て会社」から「AIインフラの巨人」へとシフトしている象徴的な決算と言えます。
好調の要因は何か
鴻海(ホンハイ)が2025年10〜12月期に過去最高の売上高を記録した主な要因は、「AIインフラへの爆発的な需要」と「主要パートナーとの強力な連携」に集約されます。
1. AIサーバー製品の爆発的成長
今回の好決算の最大のエンジンは、AIサーバーを中心とした「クラウド・ネットワーク製品」部門です。
- AIサーバーの比率拡大: かつてはiPhoneなどの消費者向け製品が主軸でしたが、現在はサーバー売上の50%以上をAI関連が占めるまでになっています。
- ラック出荷の急増: 単体のサーバーだけでなく、複数のサーバーを統合した「サーバーラック」の出荷が前期比で数倍規模に拡大し、単価と利益率の両面で業績を押し上げました。
2. エヌビディアとの強力なパートナーシップ
鴻海は、AI半導体で独占的なシェアを持つエヌビディア(NVIDIA)の最優先パートナーとしての地位を確立しています。
- 最新チップ「Blackwell」の受託: エヌビディアの最新世代AIチップ(GB200など)を搭載したシステムの組み立てを主導しており、テック大手(Microsoft、Google、Amazon等)によるデータセンター投資の資金を直接的に取り込んでいます。
- 垂直統合の強み: チップ以外の冷却システムや筐体、マザーボードなどの部品も自社グループで供給できるため、供給網の混乱に強く、需要に即応できました。
3. iPhoneなど「消費者向け製品」の底堅さ
AIが成長を牽引する一方で、従来の柱であるスマートフォン事業も安定していました。
- 季節的需要の獲得: 第4四半期は新型iPhoneの出荷ピークと重なるため、AIサーバーの急成長に加えて、これまでの主力事業も「土台」としてしっかりと売上を支えました。
市場関係者は、今回の結果を「鴻海がスマートフォンの組み立て会社から、AIインフラの巨人へと完全に脱皮した象徴」と見ています。2026年もAIサーバーの出荷はさらに増える見通しであり、勢いは当面続くと予想されています。

AIサーバー向け需要の爆発的増加が最大の要因です。米エヌビディアのパートナーとして最新のAIインフラ製品の出荷が急増し、売上高は四半期として過去最高を記録しています。iPhone等の消費者向け製品の堅調さも支えとなりました。
鴻海のAIサーバーの強みは何か
鴻海(ホンハイ)がAIサーバー市場で圧倒的な強みを持つ理由は、単なる組み立て業者を超えた「垂直統合の実行力」にあります。主な強みは以下の3点です。
1. 圧倒的な「垂直統合」と内製化率
鴻海は、サーバーの心臓部となる基板(GPUベースボード)から、筐体(ケース)、電源ユニット、冷却システムに至るまで、構成部品の約40%を自社グループ内で製造しています。
- メリット: 供給網を自社でコントロールできるため、部品不足に強く、他社よりも短期間で大量納品が可能です。
2. エヌビディアとの蜜月関係(最優先供給)
エヌビディアの最新AIチップ(GB200など)を搭載したシステムの組み立てにおいて、鴻海は最大のシェアを確保しています。
- 共同開発: 単に指示通り作るだけでなく、設計段階からエヌビディアと連携しており、最新技術の市場投入(タイム・トゥ・マーケット)で競合をリードしています。
3. 先進的な冷却技術
AIサーバーは膨大な熱を発するため、冷却が最大の課題です。鴻海は従来の空冷だけでなく、液冷(リキッドクーリング)システムの技術に注力しています。
- 実績: 日本では三菱電機と提携し、省エネ性能の高い次世代データセンター向けの冷却ソリューションを開発するなど、付加価値の高い「熱対策」を強みとしています。
鴻海は「部品(モジュール)→システム(組み立て)→データセンター全体(ラック)」という全てのレイヤーを垂直にカバーできる世界で唯一の企業と言われています。

部品から組み立てまで自社で完結する「垂直統合」が最大の強みです。構成部品の約4割を内製化し、エヌビディアとの密な連携で最新チップ搭載機を迅速に供給しています。高度な冷却技術も備え、一括供給できる唯一無二の存在です。
Blackwellとは何か
「Blackwell(ブラックウェル)」とは、米エヌビディア(NVIDIA)が開発した次世代のAI向けGPU(画像処理半導体)の名称(アーキテクチャ)のことです。現在、世界中のデータセンターで奪い合いになっている「世界最強のAIチップ」と言えます。
Blackwellのすごさ(前世代Hopperとの比較)
これまでの主力だった「H100(Hopper世代)」に比べ、性能が飛躍的に向上しています。
- 処理速度: AIの学習性能は4倍、推論(AIが回答を出す処理)性能は最大30倍に向上しました。
- 省エネ性能: 同じ処理を行うのに必要な電力を最大25分の1に削減でき、運用コストを劇的に下げられます。
- 巨大な構造: 2080億個という天文学的な数のトランジスタを搭載しており、もはや単なるチップではなく、巨大なコンピューティング・システムのような構造をしています。
鴻海(ホンハイ)との関係
鴻海が好調なのは、このBlackwellを搭載したサーバーの製造を一手に引き受けているからです。
- 主要製品「GB200」: Blackwell GPUと高性能CPUを組み合わせた超高性能ボード(GB200)の組み立てにおいて、鴻海は世界最大のシェアを持っています。
- 巨大工場の建設: 鴻海はメキシコなどに「世界最大級のBlackwell専用工場」を建設しており、エヌビディアのジェンセン・フアンCEOも、鴻海を「欠かせないパートナー」と公言しています。

「Blackwell」とは、米エヌビディアが開発した次世代AI向けGPU(半導体)の設計規格です。前世代比でAI学習性能が4倍、推論性能は30倍に向上。2000億個超のトランジスタを搭載し、生成AIの進化を支える「世界最強のAIチップ」と目されています。
今後の見通しはどうか
鴻海(ホンハイ)の今後の見通しは、下記に示すようにAIサーバー市場の拡大を背景に、2026年も非常に明るいとされています。
1. 2026年第1四半期(1〜3月)の強気見通し
通常、1〜3月はiPhoneなどの電子機器は閑散期(需要が落ち着く時期)に入ります。しかし鴻海は、AIサーバーの需要がそれを補って余りあるほど強く、「前年同期を大幅に上回る」との見通しを公式に発表しています。
2. 「Blackwell」の本格量産と出荷
エヌビディアの最新チップ「Blackwell」を搭載したサーバーの出荷が、2025年末から2026年にかけて本格化します。
- 鴻海はメキシコなどの巨大工場でこれらを大量生産する体制を整えており、2026年の収益の柱になると期待されています。
- 市場では、AIサーバー部門が鴻海の全売上高の大きな割合(将来的には4割以上との予測も)を占めるようになると見られています。
3. 日本国内でのAIインフラ支援
2026年度、日本政府が「ラピダス」「ソフトバンク」と並び、「鴻海のAIサーバー計画」を日本のAIサプライチェーンの三本柱の一つとして支援する方針であることが報じられています。日本国内でのデータセンター需要を取り込む動きも加速しそうです。
リスク要因
好調な一方で、以下の点には注意が必要です。
- 部材コストの上昇: TSMCによる半導体製造価格の値上げが予測されており、利益率を圧迫する可能性があります。
- 米中対立の影響: 供給網の分散(中国以外への生産拠点移動)を急いでいますが、地政学的リスクは依然として残ります。

2026年もAIサーバー需要が牽引し、極めて明るい見通しです。例年1〜3月は閑散期ですが、最新チップ「Blackwell」搭載機の本格量産により、前年同期を大幅に上回る高水準の業績を維持する見込みです。

コメント