この記事で分かること
- 四国化成とは:タイヤ用添加剤や電子基板用防錆剤などで世界高シェアを誇り、独創的な技術による高収益体質が特徴です。スマホから建築まで、ニッチな分野で生活を支えています。
- 上方修正の理由:スマートフォンやサーバー向け等の高利益な電子材料用化学品(ファインケミカル)の販売が想定超に好調だったことが主因です。加えて、想定以上の円安進行も輸出収益の押し上げに寄与しました。
- プリント基板向けの防錆剤とは:プリント配線板の銅回路を酸化(錆)から守る薬剤です。部品を実装する直前まで銅の表面を保護し、加熱されるとはんだと馴染んで消える特殊な性質を持ちます。四国化成はこの分野で世界シェアトップを誇ります。
四国化成の純利益上方修正
四国化成ホールディングスは、2026年1月15日に、2025年12月期の連結最終利益(純利益)予想を従来の70億円から83億円へ上方修正しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC156CE0V10C26A1000000/
当初は前期比で減益の計画でしたが、今回の修正により2期連続で過去最高益を更新する見通しとなりました。
四国化成はどんな企業か
四国化成ホールディングス(旧:四国化成工業)は、香川県丸亀市に本社を置く、「化学品」と「建材」の2つの柱を持つユニークな研究開発型企業です。
一見、関連が薄そうに見える「化学」と「建材」ですが、同社はどちらの分野でも世界シェア上位のニッチな製品を複数持っており、非常に収益性が高く、筋肉質な経営を行っているのが特徴です。
1. 「化学品事業」:世界トップクラスのシェアを誇る
売上の約7割を占める主力事業です。特に以下の製品で世界的な存在感を示しています。
- タイヤ用不溶性硫黄(ミュークロン): 世界シェア2位。自動車や航空機のラジアルタイヤの製造に不可欠な添加剤です。
- 電子基板用防錆剤(タフエース): 世界シェア約50%。スマートフォンやPCなどのプリント配線板のはんだ付け性を高める薬剤で、AppleなどのグローバルIT機器にも貢献しています。
- プール・浄化槽用殺菌剤(ネオクロール): 国内外のプールや公衆浴場の消毒に使われる「あの塩素タブレット」のトップメーカーです。
2. 「建材事業」:デザインと機能性に定評
売上の約3割を占めます。化学メーカーとしての知見を活かした、独自性の高い製品が揃っています。
- 内装・外装材: 珪藻土を利用した「塗り壁材」で知られ、消臭・調湿機能を持つ高機能な壁材を展開しています。
- エクステリア: アコーディオン式の「伸縮門扉」を日本で初めて開発したのは同社です。カーポートやフェンスなど、デザイン性の高い景観製品に強みを持ちます。
3. 四国化成の「強み」と「社風」
- 企業理念「独創力」: 「他社と同じものは作らない」という姿勢が徹底されており、研究開発に非常に力を入れています。
- 高収益体質: ニッチな市場で高いシェアを握っているため、営業利益率が15%前後と、化学業界の中でも極めて高い水準を維持しています。
- 地元愛とグローバル展開: 香川から世界へ製品を送り出しており、地域への貢献とグローバル市場での競争力を両立させています。
「スマホからタイヤ、プールの消毒、家の壁まで、目立たないけれど私たちの生活に欠かせない『世界シェアNo.1・No.2』の製品を次々と生み出す、香川発の超優良企業」です。

香川県に本社を置き、化学品と建材を二本柱とする研究開発型企業です。タイヤ用添加剤や電子基板用防錆剤で世界高シェアを誇り、独創的な技術による高収益体質が特徴です。スマホから建築まで、ニッチな分野で生活を支えています。
今回の上方修正の要因は何か
今回の上方修正(純利益70億円→83億円)の主な要因は、大きく分けて「高付加価値製品の販売増」と「為替の追い風」の2点です。
1. ファインケミカル製品の絶好調
同社の稼ぎ頭である化学品部門の中でも、特に利益率の高い「ファインケミカル(電子材料用化学品など)」の販売が想定を大きく上回りました。
- 背景: スマートフォンやサーバー、車載向けなどのプリント配線板に使われる「防錆剤」などの需要が堅調だったことが利益を押し上げました。
- 効果: 汎用品に比べて利益幅が大きいため、売上の伸び以上に利益を押し上げる要因となりました。
2. 円安による収益性の向上
輸出比率が高い同社にとって、想定以上の円安進行がプラスに働きました。
- 輸出利益の増加: 外貨建てで販売している製品の円換算額が増え、収益性が改善しました。
- 為替差益の発生: 期末にかけての為替相場により、営業外利益(経常利益の押し上げ要因)も増加しました。
その他の要因と構造
- 建材事業のカバー: 住宅市場の低迷で苦戦している建材事業のマイナス分を、絶好調な化学品事業が完全にかき消した形です。
- 効率的な経営: 原材料価格の高騰分を製品価格へ転嫁できたことや、コスト削減の取り組みも寄与しています。
「スマホや半導体関連の高級な薬剤が想定以上に売れ、さらに円安が利益を大きく上乗せした」ことが一転して過去最高益を見込む要因となりました。

主力の化学品事業において、スマートフォンやサーバー向け等の高利益な電子材料用化学品(ファインケミカル)の販売が想定超に好調だったことが主因です。加えて、想定以上の円安進行も輸出収益の押し上げに寄与しました。
プリント配線板に使われる防錆剤とは何か
プリント配線板に使われる「防錆剤」とは、基板の材料である銅(回路部分)が酸化して錆びるのを防ぐための特殊な薬剤のことです。
四国化成の製品は「タフエース」というブランド名で知られており、業界では「水溶性プレフラックス(OSP)」と呼ばれます。
1. どんな役割をしているのか
プリント配線板の回路は「銅」でできていますが、銅は空気に触れるとすぐに酸化して表面に膜(錆)ができてしまいます。
- 問題点: 銅が錆びていると、電子部品を載せる際の実装(はんだ付け)がうまくできません。
- 解決策: 部品を載せる直前まで、銅の表面をこの防錆剤で薄いバリア(有機皮膜)を張って守ります。
2. 四国化成の技術の「すごさ」
ただの錆止めではなく、以下の高度な技術が詰まっています。
- 熱に強い: 部品を載せる際は高温で加熱(リフロー)されますが、タフエースの膜は熱に強く、加熱されても銅を守り続けます。
- はんだ付けの瞬間だけ消える: いざ「はんだ」を流し込むと、その熱とはんだの性質によって膜がサッと分解・除去され、綺麗な銅の表面にはんだがしっかり密着します。
- 金めっきの代わりになる: 以前は金めっきで錆を防いでいましたが、四国化成の防錆剤は安価で環境負荷も低いため、スマートフォンの基板などで広く採用されています。

プリント配線板の銅回路を酸化(錆)から守る薬剤です。部品を実装する直前まで銅の表面を保護し、加熱されるとはんだと馴染んで消える特殊な性質を持ちます。四国化成はこの分野で世界シェアトップを誇ります。
どのように銅を保護しているのか
四国化成の防錆剤「タフエース」は「分子レベルで銅と結合し、目に見えないほど薄くて強固な『有機の壁』を作る」という仕組みです。
1. 分子レベルの「吸着」と「整列」
この防錆剤の主成分は「イミダゾール誘導体」という化合物です。
- 銅と結びつく: 基板を薬液に浸すと、成分が銅の表面にある銅原子と化学的に結合します。
- 並んで壁を作る: 結合した分子が、まるでレンガを積み上げるように規則正しく整列し、厚さわずか 0.1〜0.5ミクロン(髪の毛の太さの数百分の1)という極薄の皮膜を形成します。
2. 「酸素」をシャットアウト
この整列した分子の壁が、空気中の酸素や湿気が銅に触れるのを物理的に遮断します。
- これにより、時間が経っても銅が黒ずんだり(酸化銅)、はんだを弾く原因になる錆が発生したりしません。
3. 「熱」に耐える力
スマートフォンの製造工程では、電子部品を載せる際に250度以上の高温にさらされます。
- 四国化成の技術は、この高温下でも皮膜が壊れない(揮発したり変質したりしない)のが最大の強みです。部品を載せるその瞬間まで、銅の表面を「新品の状態」に保ち続けます。
4. はんだ付け時の「自己消失」
ここが最も不思議で優れたポイントです。
- 役目を終えた皮膜は、はんだ(溶けた金属)やフラックス(洗浄剤)が触れると、その瞬間に分解して溶け込みます。
- 皮膜がサッと消えることで、露わになった「ピカピカの銅」とはんだが直接結合し、完璧な電気接続が完了します。
この「薄いのに熱に強く、最後はサッと消える」という絶妙なバランスが、世界中のスマホメーカーに選ばれている理由です。

主成分の分子が銅の表面に化学結合し、規則正しく整列することで酸素を遮断する「有機皮膜」を形成します。 この膜は熱に非常に強く、部品を載せる高温工程まで銅を守り続け、はんだ付けの瞬間にだけ分解・消失する性質を持っています。

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