この記事で分かること
- エリクソンとは:スウェーデンに本社を置く世界最大級の通信機器メーカーです。5Gなどのモバイルネットワークインフラで世界屈指のシェアを誇り、高度な技術力と膨大な特許を武器に、世界中の通信環境を支えています。
- 好調の理由:好調の主な理由は、①徹底したコスト削減、②利益率の高いソフトウェア事業の成長、③資産売却による現金増の3点です。
- エリクソンのクラウド・ソフトウェアの特徴:汎用サーバー上で通信機能を動かす「クラウドネイティブ」な設計が特徴です。AIによる運用自動化や、ソフトウェアの迅速な更新により、コスト削減と柔軟な拡張性を両立します。
エリクソンの好調決算
スウェーデンの通信機器大手エリクソンが2026年1月23日に発表した2025年第4四半期(10〜12月)決算と株主還元策は非常にポジティブな内容で、市場でも大きな注目を集めています。
https://jp.reuters.com/markets/world-indices/L2K7O7OO45OP7IS5B5ARKTAK3Y-2026-01-23/
この発表を受け、同社の株価はストックホルム市場や米国市場(ADR)で一時7〜9%近く急騰しました。通信インフラ業界全体が停滞する中で、エリクソンの収益性の高さが際立った形です。
エリクソンはどんな企業か
エリクソン(Ericsson)を「私たちがスマホでインターネットを使うための『道路(インフラ)』を作っている世界最大級の会社」で、スウェーデンに本社を置く、140年以上の歴史を持つ通信の巨人です。
1. 5G・ネットワークの基盤
私たちが普段使っているスマートフォンが基地局とつながるための、アンテナやサーバー、ソフトウェアを提供しています。
- 世界シェア: 中国のファーウェイ(Huawei)、フィンランドのノキア(Nokia)と並ぶ「通信インフラ御三家」の一角です。
- 5Gの先駆者: 世界で最初に5Gを商用化した企業の一つであり、現在も世界中の通信キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、米ベライゾンなど)に技術を提供しています。
2. ビジネスモデルの変化
昔は「巨大な通信機器(ハードウェア)を売る」のがメインでしたが、最近は中身が大きく変わっています。
- ソフトウェアとサービス: 通信網を効率よく動かすためのAIやクラウド技術に注力しており、今回の好決算もこの「目に見えない技術」の利益率が高かったことが要因です。
- エンタープライズ(企業向け): 5Gを工場や港湾、軍事など、一般消費者以外で活用する「プライベート5G」市場に力を入れています。
3. 歴史と信頼
1876年に電信機の修理店としてスタートしました。
- かつての携帯電話大手:「ソニー・エリクソン」という携帯電話ブランドを展開していました。現在は端末事業からは撤退し、その裏側のインフラに専念しています。
- 知財の宝庫: 通信に関する膨大な特許を持っており、他社が通信技術を使う際のライセンス料も大きな収益源です。
エリクソンの立ち位置まとめ
| 項目 | 特徴 |
| 本社 | スウェーデン(ストックホルム) |
| 主要製品 | 5G基地局、通信用ソフトウェア、クラウドインフラ |
| ライバル | ファーウェイ、ノキア、サムスン電子 |
| 強み | 高い技術信頼性と、欧米市場における圧倒的なシェア |

エリクソンはスウェーデンに本社を置く世界最大級の通信機器メーカーです。5Gなどのモバイルネットワークインフラで世界屈指のシェアを誇り、高度な技術力と膨大な特許を武器に、世界中の通信環境を支えています。
モバイルネットワークインフラの製品例は
エリクソンが提供するモバイルネットワークインフラ製品は、スマートフォンの電波を拾う「アンテナ」から、データを処理する「サーバー」、それらを制御する「ソフト」まで多岐にわたります。
1. 無線アクセスネットワーク (RAN)
私たちが目にする「基地局」の本体やアンテナ部分です。
- AIRシリーズ (Antenna Integrated Radio): アンテナと無線機が一体化した主力製品。
- AIR 3255: 2025年末にドコモが導入を開始した最新鋭の5G無線機。軽量で省電力性能に優れています。
- AIR 1281: ミリ波(非常に速い5G電波)に対応した小型アンテナ。日本の主要キャリアで採用されています。
- 埋設型アンテナ: 景観を損なわないようマンホールのように地面に埋めるタイプ。KDDIなどに提供されています。
2. コアネットワーク
基地局のさらに奥にある、ネットワークの「脳」にあたる部分です。
- 5G Core (5GC): 誰がどこで通信しているかを管理し、適切な場所にデータを振り分けるソフトウェア基盤。
- クラウド・パケット・コア: 通信データを高速で処理するサーバー群。最近は汎用的なクラウドサーバー上で動く「クラウドネイティブ」な製品が主流です。
3. 管理・最適化ソフトウェア
AIを使ってネットワークを賢く運用するためのツールです。
- Ericsson Cognitive Software: AIがトラフィック(通信量)を予測し、自動で基地局の設定を最適化して「パケ止まり」などを防ぎます。
- ネットワーク・スライシング: 「自動運転用には遅延のない回線」「動画視聴用には大容量回線」というように、1つの網を用途別に切り分けて提供する技術。
製品の役割イメージ
| 階層 | 製品例 | 役割の例え |
| 末端(アンテナ) | AIR 3255 など | スマホと直接話す「耳と口」 |
| 中継(ベースバンド) | RAN Compute | 言葉をデータに翻訳する「翻訳機」 |
| 中枢(コア) | 5G Core | どこに届けるか決める「指令本部」 |

主な製品は、電波を送受信する「アンテナ一体型無線機(AIRシリーズ)」や、通信データを高速処理する「ベースバンドユニット」、ネットワーク全体を制御する「5Gコア」などのソフトウェア基盤です。
好調の理由は何か
エリクソンが2025年第4四半期に好決算を収め、巨額の自社株買いを発表できた理由は、主に「稼ぐ力の向上」と「まとまった現金の確保」の2点に集約されます。
1. 収益性の高い事業へのシフト
通信機器(ハードウェア)だけでなく、利益率の高いクラウド・ソフトウェア事業が好調でした。
- Cloud Software and Services部門: 有機的売上高が前年同期比で12%成長しました。
- AIを活用したネットワークの自動化など、単価の高いサービスが利益を押し上げました。
2. 事業売却によるキャッシュの急増
米子会社のアイコネクティブ(iconectiv)を売却したことで、多額の売却益と現金が入りました。
- これにより、2025年末の純現金(ネットキャッシュ)は612億クローナ(約68億ドル)という極めて強固な水準に達しました。これが150億クローナの自社株買いを支える「軍資金」となっています。
3. コスト削減の成果
過去数年にわたり実施してきた大規模な人員削減や、業務の効率化が実を結びました。
- 全世界で約5,000人の人員を削減するなど、固定費を徹底的に抑えた結果、売上高が微減しても利益が残りやすい体質に変わりました。
4. 成長市場でのシェア拡大
RAN(無線アクセスネットワーク)市場全体は横ばいでしたが、特定の地域や分野で成長を確保しました。
- 地域別: 欧州・中東・アフリカ(13%増)や、東南アジア・インド(19%増)で大幅な伸びを記録しました。
- 分野別: 防衛向けやミッションクリティカルなネットワークなど、5Gの応用分野への多角化が成功しています。
決算の全体像まとめ
| 要因 | 内容 | 効果 |
| 事業ミックス | ソフトウェアとAIへの注力 | 粗利益率が48.0%に向上 |
| 資産整理 | iconectiv社の売却 | 純現金が前年比で大幅増 |
| 効率化 | 約5,000人の人員削減 | 9四半期連続の利益率改善 |
エリクソンは今、「ただの通信屋」から「AI・ソフト・インフラを統合したテック企業」への脱皮に成功しつつあります。だからこそ、市場も今回の還元策を「一時的なボーナス」ではなく「経営の自信」と受け止めたようです。

不採算事業の整理や人員削減が実を結び、利益率が大幅に向上しました。さらに、米子会社アイコネクティブ(iconectiv)の売却により、ネットキャッシュが約612億クローナ(前年比で約1.6倍)まで急増したことが、史上初の巨額還元を支えています。
エリクソンのクラウド・ソフトウェアの特徴は何か
エリクソンのクラウド・ソフトウェア(Cloud Software and Services)は、従来の「専用の箱(ハードウェア)」に頼らず、汎用的なサーバーやクラウド上で通信機能を動かす「クラウドネイティブ」設計が最大の特徴です。
1. 「クラウドネイティブ」による柔軟性とコスト削減
ネットワークの機能を細かな部品(マイクロサービス)に分解して提供しています。
- メリット: 必要な機能だけを柔軟に拡張・更新できるため、運用の手間が減り、インフラコストを最大30%削減できるとしています。
- ベアメタル対応: 仮想化レイヤーを挟まずにサーバー上で直接ソフトを動かす技術により、処理の遅延を抑えつつ高速な通信を実現します。
2. AIによる「運用ゼロタッチ」の追求
AIと機械学習を活用して、ネットワークの運用を自動化しています。
- 自動最適化: 混雑状況をAIが予測し、自動で電波の調整や電力消費の最適化を行います。
- CI/CD(継続的導入): スマホアプリの更新のように、通信網の機能アップデートをサービスを止めることなく頻繁に行える仕組みを導入しています。
3. 「オープン化」への対応
特定のメーカーに縛られない「Open RAN」などの標準規格を積極的に取り入れています。
- 他社連携: デル(Dell)やグーグル(Google Cloud)といったIT大手と提携し、一般的なITインフラ上で高品質な5Gコアネットワークを構築できる環境を提供しています。
クラウド化による変化のイメージ
| 項目 | 従来のネットワーク | エリクソンのクラウド・ソフト |
| ハードウェア | 専用機(高価・重い) | 汎用サーバー(安価・柔軟) |
| アップデート | 数ヶ月に一度(大がかり) | 毎日〜毎週(自動・高速) |
| 運用 | 人の手による調整 | AIによる自動制御(ゼロタッチ) |
エリクソンのこの部門は、今回の好決算を牽引した「稼ぎ頭」でもあります。ハードを売るだけでなく、継続的なライセンスや保守サービスで利益を出すビジネスモデルへの転換を象徴しています。

エリクソンのクラウド・ソフトは、汎用サーバー上で通信機能を動かす「クラウドネイティブ」な設計が特徴です。AIによる運用自動化や、ソフトウェアの迅速な更新により、コスト削減と柔軟な拡張性を両立します。

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