積水化学工業の利益率減少 なぜ利益率が減少したのか?

この記事で分かること

  • 積水化学工業の事業内容:「住宅」「環境・ライフライン」「高機能プラスチックス」「メディカル」の4事業を柱とする大手素材メーカーです。セキスイハイム等の住宅事業から、世界シェアの高い中間膜、医療用検査薬、インフラ資材まで幅広く展開しています。
  • 利益率が減少したのか:利益率は、バイオリファイナリー事業の清算に伴う約149億円の特別損失計上が主因で大幅低下しました。また、国内住宅市場の低迷や欧州での一過性費用、EV市場減速による車載向け部材の苦戦も利益を圧迫しました。
  • 今後の見通し:バイオリファイナリー事業の清算によって一時的な損失を出し切り「本業の回復」と「次世代事業の収益化」に注力するフェーズとしています。

積水化学工業の利益率減少

 積水化学工業が2025年4〜12月期(第3四半期累計)決算を発表しています。売上高は過去最高を更新したものの、純利益が大幅に減少しています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC292TP0Z20C26A1000000/

 本業が崩れたというよりは、不採算事業の整理や減損処理といった「膿を出し切る」動きが利益を押し下げた形です。

積水化学工業の主な事業内容は何か

 積水化学工業は、大きく分けて「住宅」「環境・ライフライン」「高機能プラスチックス」「メディカル」の4つのカンパニー(事業軸)を展開しています。

 元々はプラスチック(樹脂)の加工技術からスタートした企業ですが、現在は「住まい」から「先端医療」まで、非常に幅広い領域をカバーしているのが特徴です。


1. 住宅カンパニー

ブランド名:セキスイハイム

売上の大部分を占める主力事業です。

  • 新築住宅: 工場であらかじめ部屋のユニットを組み立てる「ユニット工法」による地震に強い家づくり。
  • リフォーム・不動産: 既存住宅の改修や、売買・賃貸管理。
  • まちづくり: 防災や環境に配慮したスマートシティの開発。

2. 環境・ライフラインカンパニー

ブランド名:エスロン

社会インフラを支えるプラスチック製品を展開しています。

  • 管材事業: 上下水道用の塩化ビニル管やポリエチレン管(国内トップクラスのシェア)。
  • インフラ更生: 古くなった下水管を掘り起こさずに内側から補修する技術。
  • 建築資材: 雨といやユニットバス、耐火・断熱材料など。

3. 高機能プラスチックスカンパニー

 世界トップシェア製品を多数保有する、利益率の高い高機能材料事業です。

  • エレクトロニクス: スマートフォンや半導体に使用される導電性微粒子や液晶用シール材。
  • モビリティ: 自動車のフロントガラスに挟む「合わせガラス用中間膜」(世界トップシェア)や、EV向けの放熱材料。
  • インダストリアル: 工業用テープ、包装用フィルム、プラスチックコンテナなど。

4. メディカル事業(積水メディカル)

 医療の質向上に貢献するヘルスケア分野です。

  • 検査事業: 血液検査などで使われる臨床検査薬や分析装置、真空採血管。
  • 創薬支援・医薬: 製薬会社向けに新薬開発の試験を受託したり、医薬品の原薬(成分)を製造。

注目の新規事業

 最近ニュースになっていた「純利益30%減」の原因にも関連しますが、同社は「バイオリファイナリー(ゴミをエタノールに変える技術)」や、次世代太陽電池として期待される「ペロブスカイト太陽電池」の実用化など、環境・エネルギー分野の次世代事業にも注力しています。

  積水化学は「セキスイハイム」のイメージが強いですが、実は自動車のフロントガラスの中間膜で世界シェアの約半分を握っているなど、世界的な素材メーカーとしての顔も持っています。

積水化学工業は、「住宅」「環境・ライフライン」「高機能プラスチックス」「メディカル」の4事業を柱とする大手素材メーカーです。セキスイハイム等の住宅事業から、世界シェアの高い中間膜、医療用検査薬、インフラ資材まで幅広く展開しています。

プラント撤収の内容は

 積水化学工業が今回の決算で多額の特別損失を計上した「プラント撤収(事業清算)」の主な内容は、岩手県久慈市で進めていた「バイオリファイナリー(BR)事業」の実証プラントの解体・清算です。


1. 事業の内容:ゴミをエタノールに変える

 このプロジェクトは、米国のLanzaTech社と共同で進めていた革新的な試みでした。

  • 技術: 収集された「燃えるゴミ」を分別せずにガス化し、微生物の力を使ってエタノールに変換します。
  • 目的: 化石燃料に頼らないプラスチックの原料生産や、持続可能な航空燃料(SAF)への活用を目指していました。

2. なぜ撤収(清算)するのか

 2022年から岩手県久慈市に実証プラントを建設し稼働させていましたが、以下の判断から今回の処理に至りました。

  • 商用化への戦略変更: 実証プラントでのデータ収集は完了し、次のステップである「商用プラント(大規模運用)」へ移行する段階に入りました。
  • 資産の整理: 商用化にあたって、役割を終えた旧実証プラントの設備を減損(価値をゼロにする処理)し、会社を清算することで、将来の不確実なコストを今のうちに切り離すという経営判断です。

3. 経営への影響

  • 特別損失の計上: このプラントの解体・清算に関連して、約149億円を損失として計上しました。これが純利益を30%押し下げた直接的な原因です。
  • 今後の継続: 事業そのものを完全に諦めたわけではなく、今後は商用化に向けたパートナー企業との連携など、より効率的な体制での事業化を模索すると見られています。

 「実験用の巨大な施設が役割を終えたので、赤字覚悟で一気に片付けて、次のビジネス段階へ進むための身軽さを手に入れた」という内容です。

岩手県久慈市で進めていた、「ごみをエタノールに変換する」実証プラントの解体・清算です。実証期間の終了に伴い、関連資産の減損損失など約149億円を特別損失として計上。次なる商用化段階へ進むための事業整理です。

どのようにゴミをエタノールに変えるのか

 積水化学が開発したこの技術は、「微生物による発酵」を軸にした、まさに「ゴミ箱を油田に変える」ような画期的なプロセスです。


1. ガス化(ゴミをバラバラにする)

 収集されたゴミ(生ゴミ、プラスチック、紙など)を細かく分別せず、そのまま高温で蒸し焼きにします。これにより、ゴミを一酸化炭素(CO)水素(H₂)を主成分とするガスに分解します。

2. ガス精製(不純物の除去)

 発生したガスには、微生物に有害な物質(タールや硫黄など)が含まれているため、独自の技術でこれを取り除き、綺麗なガスにします。

3. 微生物発酵(エタノールを生成)

ここが技術の核心です。精製されたガスを、特殊な「嫌気性微生物」が入った培養槽(発酵槽)に送り込みます。この微生物がガスを食べて、体内でエタノールを作り出し、排出します。


従来の技術と何が違うのか

  • 分別の手間が不要: 従来のバイオ燃料はトウモロコシなど「食べ物」が原料でしたが、この技術は雑多なゴミをそのまま使えるのが最大の特徴です。
  • 熱効率が良い: ゴミを燃やして発電するよりも、化学原料(エタノール)として回収する方が、資源としての価値を高く維持できます。

ゴミを高温で蒸し焼きにして一酸化炭素と水素のガスに分解し、それを独自の微生物に食べさせて発酵させることでエタノールを生成します。雑多なゴミを分別せずに原料化できる、画期的な「都市油田」技術です。

今後の見通しは

 積水化学工業の今後の見通しについては、今回のプラント撤収による一時的な赤字を乗り越え、「主力事業の回復」「次世代事業の収益化」の両輪で成長を目指すフェーズに入ります。


1. 2026年3月期の通期予想は「据え置き」

 今回の4〜12月期決算で純利益が30%減となりましたが、通期の業績予想(純利益820億円など)は変更していません。

  • 理由: 特損は織り込み済みであり、第4四半期(1〜3月)に高機能プラスチックスやエレクトロニクス分野での需要回復を見込んでいるためです。
  • 株主還元: 利益減に関わらず、300億円規模の自社株買い16期連続の増配を予定しており、経営陣の先行きに対する自信が伺えます。

2. 次世代の柱「ペロブスカイト太陽電池」の事業化

 今回撤収したバイオリファイナリー事業に代わり、新たな成長の期待を担っているのが次世代太陽電池です。

  • 2025年度中に事業化: フィルムのように軽く曲がる「ペロブスカイト太陽電池」の販売開始を予定しています。
  • 量産体制の構築: 2027年には100MW級の製造ラインを稼働させ、2030年にはさらに大規模な量産を目指す計画です。政府の脱炭素戦略とも合致しており、同社の将来を占う最重要事業となります。

3. 中期経営計画の達成に向けた構造改革

 2025年度(2026年3月期)を最終年度とする中期経営計画では、売上高1兆4,100億円、営業利益1,150億円という高い目標を掲げています。

  • 住宅事業の変革: 国内の新築需要減に対し、リフォームや「まちづくり」事業、さらに海外(タイ等)での展開を強化し、安定した収益基盤を維持する方針です。
  • 膿を出し切った効果: 今回のプラント清算により、不採算リスクが軽減されました。今後は利益率の高いエレクトロニクスやモビリティ向け高機能材料にリソースを集中させやすくなります。

 短期的には「清算コスト」で数字が落ち込みましたが、中長期的には「目的を達成した実証プラントを整理し、ペロブスカイト太陽電池という大本命に勝負をかける」という、攻めの姿勢が明確になっています。

今後の見通しは、一時的な損失を出し切り「本業の回復」と「次世代事業の収益化」に注力するフェーズです。

 通期利益予想を据え置き、16期連続増配や300億円の自社株買いなど強い還元姿勢を維持しています。2025年度中のペロブスカイト太陽電池の事業化を控え、脱炭素領域での成長加速を目指しています。

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