イギリス1月、製造業PMIの上昇 製造業PMIとは何か?なぜ好調だったのか?

この記事で分かること

  • 製造業PMIとは:製造業の購買担当者にアンケートを行い、景況感を数値化した指標です。50を分岐点に、上回れば「景気拡大」、下回れば「景気後退」と判断します。速報性が高く、経済の先行きを占う重要な先行指標として注目されます。
  • なぜ好調だったのか:在庫調整の一巡による国内外の需要回復、特に輸出受注が4年ぶりに増加したことが大きな要因です。インフレ沈静化に伴う利下げ期待から企業心理が改善し、設備投資や生産活動が活発化したことで、17ヶ月ぶりの高水準を記録しました。
  • 好調な業種:産業用機械などの「投資財」、衣類や食品などの「消費財」、そして部品類を扱う「中間財」の全主要セクターで生産が拡大しました。特に投資財と消費財において海外需要の回復が顕著で、約4年ぶりとなる新規輸出受注の増加を力強く牽引しました。

イギリス1月製造業PMIの上昇

 2026年2月2日に発表された英国(イギリス)の1月製造業PMI(購買担当者景気指数)改定値は、前月の50.6から51.8へと上昇しました。

 https://jp.reuters.com/markets/japan/D5WCCQO7SRLSBLXWO27VVZHIDE-2026-02-04/

 これは速報値の51.6を上回るだけでなく、過去17ヶ月で最高水準を記録しており、英国の製造業が2026年を非常に力強いスタートで切ったことを示しています。

製造業PMIとは何か

 製造業PMI(Purchasing Managers’ Index)は、日本語で「製造業購買担当者景気指数」と呼ばれます。

 現場の責任者にアンケートを取って、今の景気が上向きか下向きかを数値化したものです。世界中の経済指標の中でも、景気の先行きを予測する「先行指標」として非常に重要視されています。


1. どうやって算出するのか

 企業の購買担当者(資材の調達などを担当する人)を対象に、アンケート調査を行います。彼らは、会社の生産状況や注文の入り具合を最も早く把握できる立場にいるからです。

 主に以下の5つの項目について「前月より良くなったか、悪くなったか」を聞き、指数化します。

  • 新規受注(新しい注文は増えたか?)
  • 生産量(製品をたくさん作っているか?)
  • 雇用(人を増やしているか?)
  • サプライヤーの納期(部品の到着は早いか、遅れているか?)
  • 在庫(在庫はたまっているか?)

2. 数字の読み方(「50」が境界線)

 PMIの数値は、50を基準として判断します。

数値判断意味
50超拡大前月よりも景況感が良くなっている(好況)
50ちょうど不変前月と変わらない
50未満縮小前月よりも景況感が悪くなっている(不況)

 今回のイギリスの例で言うと、51.8という数値は「50をしっかり上回っているので、製造業の現場は活気づいている」というサインになります。


3. なぜ投資家や専門家が注目するのか

  • 速報性が高い: GDP(国内総生産)などの統計は発表までに数ヶ月かかりますが、PMIは月が終わるとすぐ発表されるため、「今現在の景気」をいち早く知ることができます。
  • 景気の予測に役立つ: 製造業が活発になると、その後に物流やサービス業も潤うことが多いため、経済全体の将来を占うヒントになります。
  • 金利や為替に影響する: PMIが良いと「景気が強いから金利が上がるかも(通貨高)」、悪いと「景気が冷え込んでいるから金利が下がるかも(通貨安)」といった予測の材料になります。

製造業の購買担当者にアンケートを行い、景況感を数値化した指標です。50を分岐点に、上回れば「景気拡大」、下回れば「景気後退」と判断します。速報性が高く、経済の先行きを占う重要な先行指標として注目されます。

なぜ高水準となったのか

 今回のイギリス製造業PMIが17ヶ月ぶりの高水準(51.8)となった主な理由は、以下の3つのポジティブな変化が重なったためです。


1. 内外両面での需要の回復

 これまで低迷していた国内需要に加え、輸出受注が約4年ぶりに増加に転じました。

  • 米国や欧州、中国などの主要取引先で在庫調整が一巡し、新たな注文が入り始めたことが大きな要因です。
  • 特に「投資財(機械や設備など)」の受注が伸びており、企業が将来に向けて投資を再開している兆しが見えます。

2. インフレ圧力の緩和と金利低下への期待

 イギリスでは一時期深刻だったインフレが落ち着きを見せ、イングランド銀行(英中央銀行)による利下げへの期待が高まりました。

  • 金利が下がれば企業の借入コストが減るため、製造業者が強気の生産計画を立てやすくなりました。
  • 消費者のマインドも改善し、消費財への支出が増え始めています。

3. サプライチェーンの安定化

 一時期混乱していた物流や部品調達が正常化に向かっています。

  • 納期が安定したことで、メーカーは計画通りの生産が可能になり、生産効率が向上しました。
  • 将来の増産を見越して、原材料の買い入れを増やす動き(先行投資)も指数を押し上げました。

 「世界的に景気が底を打った安心感」と「イギリス国内の金利低下期待」が合わさり、現場の担当者たちが「今年は攻めの姿勢でいける」と判断したことが、数字に表れたといえます。

国内外の需要回復、特に輸出受注が4年ぶりに増加したことが大きな要因です。インフレ沈静化に伴う利下げ期待から企業心理が改善し、設備投資や生産活動が活発化したことで、17ヶ月ぶりの高水準を記録しました。

どのような業種の輸出受注が好調だったのか

 2026年1月の英国製造業PMIにおいて、輸出受注を牽引した主な業種は以下の通りです。特に「投資財(Capital Goods)」セクターが力強い伸びを見せました。

  1. 投資財セクター(機械・設備など)
    • 工場で使用される産業用機械や輸送設備などが含まれます。世界的な設備投資の再開や、製造現場の自動化需要などが追い風となりました。
  2. 中間財セクター(部品・原材料など)
    • 他製品の製造過程で使われる半製品や部品です。欧米や中国などの主要市場で在庫調整が終わり、生産が活発化したことで、英国からの部品供給が増加しました。
  3. 消費財セクター
    • 衣類や食品、家庭用品などです。これらも成長しましたが、特に「投資財」の伸びが今回の全体指数を大きく押し上げる原動力となりました。

 米国、欧州、中国といった主要な輸出先で需要が回復したことに加え、これら全てのセクターで新規輸出受注が2022年初期以来、約4年ぶりに増加に転じたことが、今回の統計の大きな特徴です。

2026年1月は、産業用機械などの「投資財」、衣類や食品などの「消費財」、そして部品類を扱う「中間財」の全主要セクターで生産が拡大しました。特に投資財と消費財において海外需要の回復が顕著で、約4年ぶりとなる新規輸出受注の増加を力強く牽引しました。

物流や部品調達が混乱していたのはなぜか

 物流や部品調達が混乱していた主な理由は、「紅海情勢による地政学的リスク」「貿易環境の変化(関税・ブレグジット)」の2点に集約されます。

1. 紅海情勢(海上物流の断絶)

 2024年から2025年にかけて、イエメンのフーシ派による商船攻撃が相次ぎ、スエズ運河を通る主要航路が使えなくなりました。

  • ルートの変更: アジアからの貨物船がアフリカ南端(喜望峰)への迂回を強いられ、輸送期間が10日〜20日ほど長期化しました。
  • コストと部品不足: 輸送費や保険料が跳ね上がると同時に、自動車部品などの到着が遅れ、イギリス国内の工場で一時的な生産停止が起こるなどの影響が出ました。

2. 貿易障壁と関税の影響

 2025年後半から、世界的な貿易政策の変化(特に米国の関税強化の動き)がイギリスの製造業にプレッシャーを与えました。

  • 関税対策の混乱: 新たな関税が導入される前に輸出入を急ごうとする駆け込み需要が発生し、港湾や物流網に一時的な負荷がかかりました。
  • ブレグジット後の複雑化: EUとの間の検疫や通関手続きの煩雑化も、慢性的な「国境での遅延」として背景に残り続けていました。

 こうした物流の「目詰まり」がようやく解消に向かい、生産がスムーズになったことが、今回の1月PMIの上昇を後押ししています。

紅海での商船攻撃により海運ルートがアフリカ迂回となり、輸送期間が大幅に延びたことが最大の原因です。これに米国の関税導入に伴う駆け込み輸送や、慢性的な労働力不足が重なり、部品の供給遅延とコスト増を招きました。

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