キヤノンの新発売魚眼レンズ 魚眼レンズとは何か?なぜ広い画角を持つのか?

この記事で分かること

  • 魚眼レンズとは:中心から離れるほど大きく湾曲する「歪み」を活かし、180度以上の極めて広い範囲を写す特殊レンズです。魚が水面を見上げたような独特な円形の描写や、ダイナミックなデフォルメ表現が楽しめます。
  • なぜ広い画角を持つのか:前玉を半球状に突き出すことで、真横に近い方向からの光までかき集めています。さらに、直線を真っ直ぐ直す補正をせず、あえて丸く「圧縮」してセンサーに詰め込む設計により、180度以上の超広角を実現しています。

キヤノンの新発売魚眼レンズ

 キヤノンから、魚眼レンズ(フィッシュアイ)の約15年ぶりとなる刷新が発表されました。2011年発売「EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM」の後継として、「RF7-14mm F2.8-3.5 L FISHEYE STM」2026年2月20日に発売されます。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00773233

魚眼レンズとは何か

 魚眼レンズ(フィッシュアイレンズ)は、「あえて歪ませることで、人間の視界を遥かに超える広い範囲を写し出す特殊な超広角レンズ」のことです。

 魚が水中から水面を見上げたとき、水の屈折によって空が円形に歪んで見える(魚眼石=スネルの窓)現象に由来して、その名がつきました。


1. 独特の「歪み(ゆがみ)」

 普通の広角レンズは、建物の柱などがまっすぐ写るように設計されていますが、魚眼レンズは逆に「中心から離れるほど大きく湾曲する」ように作られています。

  • 効果: 画面の端にある直線が、まるでボールのように丸く膨らんで写ります。
  • 面白さ: 被写体にぐっと近づいて撮ると、デフォルメされたユニークでダイナミックな写真になります(鼻の大きな犬の「THE DOG」のような写真が有名です)。

2. 圧倒的な「画角(写る範囲)」

 一般的な広角レンズの画角は90°〜110°程度ですが、魚眼レンズは180°(あるいはそれ以上)という、ほぼ真横まで写し込むことが可能です。

  • 全周魚眼: 画面の中に円形の像が浮かび上がるタイプ(丸い写真)。
  • 対角線魚眼: 写真の四隅まで画像で埋まり、対角線方向に180°の画角があるタイプ。

3. 深い「被写界深度」

 魚眼レンズはピントが合う範囲が非常に広く、手前から奥までくっきりと写りやすいのが特徴です。そのため、ピント合わせに神経質にならずに、直感的にシャッターを切るスナップ撮影にも向いています。


主な用途

  • 風景・星景: 地平線をわざと丸く曲げて地球の丸さを表現したり、空全体の星を一枚に収めたりします。
  • 建築・インテリア: 狭い室内をあえて歪ませて、空間全体を表現するアート的な手法に使われます。
  • VR・360度映像: 前述の通り、一度に広い範囲を撮れるため、VRコンテンツの素材撮影に必須のレンズです。
  • アクション・スポーツ: スケートボードやBMXなどで、選手に超至近距離まで近づき、迫力あるアングルで周囲の景色と一緒に捉える際によく使われます。

 「広く撮る」目的は同じですが、「真っ直ぐなものを真っ直ぐ写したい」なら広角レンズ「歪みを利用してダイナミックに表現したい」なら魚眼レンズ、という使い分けになります。

魚眼レンズとは、中心から離れるほど大きく湾曲する「歪み」を活かし、180度以上の極めて広い範囲を写す特殊レンズです。魚が水面を見上げたような独特な円形の描写や、ダイナミックなデフォルメ表現が楽しめます。

なぜ画角が広いのか

 魚眼レンズがこれほど広い範囲を写せる理由は、主に「レンズの形状」「あえて歪ませる設計」にあります。

1. 強く突き出した「出目金」レンズ

 魚眼レンズを横から見ると、前玉(一番前のレンズ)が半球状に大きく突き出しています。この形状が、真横や背後に近い方向から届く光まで「かき集める」役割を果たします。

2. 歪曲(わいきょく)を許容する設計

 普通の広角レンズは、直線を真っ直ぐ写すために、無理やり光を外側に引き伸ばして補正します。しかし、これには限界があり、無理に広げると端の方が暗くなったり画質が落ちたりします。

 一方、魚眼レンズは「直線が曲がっても構わない」という設計思想で作られています。

  • 普通のレンズ: 光を平面(センサー)に「正確な形」で投影しようとする。
  • 魚眼レンズ: 光を無理に伸ばさず、丸く「圧縮」してセンサーに詰め込む。

 この「無理に伸ばさない(=歪みをそのままにする)」という割り切りによって、180°以上という驚異的な広範囲を1枚の写真に収めることが可能になっているのです。


前玉を半球状に突き出すことで、真横に近い方向からの光までかき集めています。さらに、直線を真っ直ぐ直す補正をせず、あえて丸く「圧縮」してセンサーに詰め込む設計により、180度以上の超広角を実現しています。

なぜピントの範囲がひろいのか

 魚眼レンズのピントが合う範囲(被写界深度)が広い理由は、主に「焦点距離が極端に短いこと」にあります。

 レンズには「焦点距離が短い(広角である)ほど、ピントの合う範囲が深くなる」という光学的な性質があります。

1. 焦点距離の影響

 魚眼レンズの焦点距離は数mm(今回の新製品なら7mm)と非常に短いです。焦点距離が短いと、光がセンサーに集まる角度が緩やかになるため、ピント位置が多少前後しても像がボけにくくなります。

2. 像の「圧縮」

 魚眼レンズは広大な景色を小さなセンサーにギュッと凝縮して写します。遠くのものが非常に小さく写るため、多少のボケが目立たず、結果として画面全体にピントが合っているように見えるのです。


焦点距離が数mmと極端に短いため、光学的に「被写界深度」が非常に深くなるからです。広い範囲を凝縮して写すことで、手前から奥までボケにくくなり、画面全体にピントが合ったパンフォーカス状態を作りやすくなります。

新製品の特徴は何か

 新製品「RF7-14mm F2.8-3.5 L FISHEYE STM」は、以下のような特徴を持つ「ハイブリッド時代の魚眼レンズ」と言えます。


1. 世界初「全周190°」の超広角

 従来の魚眼レンズ(180°)を超え、世界で初めて190°の画角を実現しました。

  • 真横よりもさらに後ろ側まで写り込むため、VR(仮想現実)映像の制作時に、画像を繋ぎ合わせる「のりしろ」を十分に確保でき、より高品質な360度コンテンツが作れます。

2. 「Lレンズ」ならではの明るさと高画質

 最高級の証である「L(Luxury)」を冠し、光学性能が大幅に底上げされました。

  • 明るいF値: 前モデルのF4から、広角端でF2.8まで明るくなりました。星景写真や暗い室内での撮影が圧倒的に有利になります。
  • 最短撮影距離 0.15m: 被写体にレンズがぶつかるほど近づけるため、魚眼特有のデフォルメを強調した迫力あるクローズアップ撮影が可能です。

3. 動画撮影への最適化

 写真だけでなく、Vlogや映像制作を意識した設計が目立ちます。

  • ドロップインフィルター: 物理的にフィルターが付けられなかった魚眼レンズですが、マウント側にフィルターを差し込めるようになり、NDフィルター(減光)等を使った高度な動画表現が可能になりました。
  • ブリージング抑制: ピント位置を動かした際の画角変化を抑えており、映像が安定します。

4. 驚きの軽量・コンパクト化

 性能は大幅に上がりましたが、重さは旧モデル(約540g)より軽い約476gです。

  • ミラーレス専用設計(RFマウント)の恩恵で、取り回しが非常に良くなっています。

世界初「190°」の超広角化を実現し、VR制作にも最適です。前モデルより明るいF2.8-3.5を達成しつつ、約476gへ軽量化。動画向けのフィルター対応やピント調整時の画角変化抑制など、最新性能を凝縮しています。

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