古河電気工業のデータセンター向け冷却装置の増産 データセンター向け冷却装置とは何か?なぜ増産するのか?

この記事で分かること

  • データセンター向け冷却装置とは:AI用GPUなどの高発熱な演算装置から熱を奪い、システムを安定稼働させる装置です。従来のファンによる空冷に加え、現在は熱伝導率の高い液体を用いて直接冷却する「液冷方式」が主流になりつつあります。
  • なぜ増産するのか:生成AIの普及でサーバーの発熱量が空冷の限界を超えたため、液冷用部品の需要が世界的に激増しているからです。古河電工は強みの放熱技術でこの需要を取り込み、2028年までの安定供給とシェア拡大を狙います。

古河電気工業のデータセンター向け冷却装置の増産

 古河電気工業は生成AIの普及に伴うデータセンターの熱対策需要に応えるため、フィリピンの製造拠点拡張やタイでの新工場などを中心に約550億円を投じて水冷モジュールなどの冷却装置を増産します。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC305BY0Q6A330C2000000/

 高電力なAI用GPUの冷却に不可欠となっており、同社は2028年1月からの量産開始を目指して供給体制を大幅に強化する方針です。

AIデータセンター冷却装置とは何か

 AIデータセンター冷却装置とは、大規模な言語モデルの学習や推論を行う際に、サーバー内のGPU(画像処理装置)から発生する膨大な熱を効率的に除去するためのシステムです。

 従来のデータセンターでは空冷方式が主流でしたが、AI用サーバーは1ラックあたりの消費電力が飛躍的に増大しており、ファンによる送風だけでは冷却能力が限界に達しています。そのため、熱伝導率の高い液体を利用して直接熱を奪う「液冷(リキッドクーリング)」への移行が急速に進んでいます。

冷却の仕組み

 チップに直接金属製の受熱板を当てる「コールドプレート方式」や、サーバー全体を特殊な絶縁液体に沈める「液浸冷却」があります。

 これらの装置は、ヒートパイプや受熱板、熱交換器などを組み合わせて構成され、チップの過熱による性能低下(サーマルスロットリング)を防ぎ、システムの安定稼働を支える重要なインフラとなっています。

冷却装置の重要性

 冷却装置の進化は単なる温度管理にとどまらず、データセンター全体の消費電力削減(PUEの向上)にも直結します。

 空冷に必要な大型ファンの電力を削減できるほか、温水排熱を再利用する技術も注目されています。

 古河電工をはじめとする素材・電装メーカーは、長年培った放熱技術を応用し、より小型で高効率な冷却モジュールの量産体制を整えることで、次世代AIインフラの熱課題解決に取り組んでいます。

AIデータセンター冷却装置とは、膨大な計算処理で高熱を発するAI用GPUを効率よく冷やすシステムです。従来のファンによる空冷では限界があるため、受熱板や液体冷媒を用いた「液冷」方式が主流となりつつあります。

なぜ増産するのか

 増産背景には、生成AIの急速な普及に伴い、従来型の空冷システムでは対応不可能なレベルまでサーバーの発熱量が増大していることがあります。

 AI学習に不可欠な高性能GPUは、1個あたりの消費電力が1000Wを超えるものも登場しており、これらを高密度に搭載したラックを効率よく冷やすには、空気よりも熱輸送能力が圧倒的に高い液体を用いた冷却装置が不可欠になっています。 

データセンター市場の変化

 データセンター市場では、従来の空冷から液冷方式への構造転換が加速しており、冷却用部品の需要が世界的に急増しています。古河電工は、長年培ってきたヒートパイプや受熱板(コールドプレート)などの高度な放熱技術を強みとしており、フィリピンや国内拠点の生産能力を強化することで、この旺盛な需要を取り込み、世界シェアの拡大と安定供給を目指しています。

 今回の550億円という大規模な投資により、2028年度には現在の数十倍規模の供給体制を整える計画です。

生成AIの普及で高性能GPUの発熱量が急増し、従来の空冷では冷却が困難なため、熱輸送能力の高い液冷方式への転換が加速しています。古河電工は強みの放熱技術を活かし、世界的な需要増に応えるため増産します。

古河電気工業のデータセンター冷却装置の特徴は何か

 古河電工の冷却装置は、長年培った素材技術を活かした「高い熱伝導性」と「多様な冷却方式への対応力」が特徴です。ヒートパイプやベーパーチャンバーを用いた空冷から、最新の液冷まで幅広い技術を保有しています。

主な技術的特徴

  • 高度な熱拡散技術: 平面方向に熱を逃がす「ベーパーチャンバー」や、高さ方向にも熱を広げる「3Dベーパーチャンバー」により、局所的な高熱を瞬時に分散させます。
  • 液冷(水冷)ソリューション: GPUに直接密着させて熱を奪う「コールドプレート」や、サーバーを液体に沈める「液浸冷却」向けの部品を展開。空冷では困難な1000W級の超高発熱にも対応可能です。
  • 一貫した生産・環境体制: 日本の平塚(開発)とフィリピン(量産)の2拠点体制で供給責任を果たしつつ、フィリピン工場では再生可能エネルギー100%での製造を実現しています。

特徴の比較

方式主な技術特徴
空冷ヒートパイプ、3Dベーパーチャンバー既存設備で導入しやすく、独自の均熱技術で効率を最大化
液冷コールドプレート、水冷モジュールAIサーバーの超高熱に直結して冷却。省エネ・高密度化に最適
液浸ボイラープレートサーバー全体を液体に浸す次世代方式。究極の冷却効率を追求

 これらの技術が、同社の「2030年度に売上1,000億円」という高い目標を支える強みとなっています。

独自の「3Dベーパーチャンバー」や液冷用「コールドプレート」など、高効率な放熱・均熱技術が強みです。空冷から最新の液冷まで幅広く対応し、生成AI用GPUの超高発熱を精密に制御する高い信頼性を備えています。

コールドプレートとは何か

 コールドプレートとは、発熱体であるGPUやCPUに直接密着させ、内部に流れる冷却水によって熱を吸収・輸送する金属製の受熱板のことです。空冷のヒートシンクに代わる、液冷システムの心臓部といえるコンポーネントです。

主な仕組みと特徴

  • 直接冷却: チップの表面にサーマルインターフェース材料(TIM)を介して固定され、発生した熱を最短距離で液体(水やクーラント)に伝えます。
  • マイクロチャネル構造: 内部には髪の毛ほどの細い溝(フィン)が無数に刻まれており、液体との接触面積を極限まで広げることで、空気の数千倍近い熱輸送効率を実現します。
  • 素材: 熱伝導率が極めて高い銅やアルミニウムが主に使われ、古河電工などは独自の加工技術でこの内部構造を高度化しています。

 1000Wを超える次世代AIチップの冷却には、このコールドプレートを用いた液冷方式が不可欠となっています。

コールドプレートとは、GPU等の発熱体に密着させ、内部に流れる冷却液で熱を吸収する金属製の受熱板です。微細な流路(マイクロチャネル)により空気の数千倍の効率で除熱でき、高出力AIチップに不可欠な部品です。

なぜコールドプレートが不可欠なのか

 コールドプレートが不可欠な理由は、AI用GPUの消費電力が1,000Wを超える「超高発熱」時代に突入し、従来の空気による冷却(空冷)が物理的な限界を迎えたためです。

不可欠な3つの理由

  1. 圧倒的な熱輸送効率: 水などの液体は空気の約25倍の比熱を持ち、熱を運ぶ能力(熱輸送効率)は数千倍に達します。これにより、小さな面積から膨大な熱を瞬時に奪うことができます。
  2. サーバーの高密度化: 空冷では巨大なヒートシンクと強力なファンが必要で場所を取ります。コールドプレートは薄型のため、サーバーをより高密度に積み重ねることができ、データセンターの設置効率を劇的に高めます。
  3. 電力消費(PUE)の改善: 巨大なファンを回し続ける電力は膨大です。液冷に切り替えることで冷却用電力を大幅に削減でき、データセンター全体の省エネ性能が向上します。

 このように、演算性能を最大限に引き出しつつ、安定稼働と省エネを両立させるために、コールドプレートを用いた液冷システムは「AIインフラの心臓部」として欠かせない存在となっています。

AI用GPUは1,000W超の熱を発するため、空気では冷却が物理的限界に達しています。水などの液体は空気より熱輸送能力が圧倒的に高く、小型のコールドプレートで効率よく除熱できるため、安定稼働に不可欠です。

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