AI vs教科書が読めない子供たち 新井紀子 東洋経済新報社 まとめ

本の概要、感想

シンギュラリティなどでAIが過剰に持ち上げられている。AIはディープランニング等でたしかに性能は上がっているが、計算機に過ぎないため、人間の知的活動をすべて数式で表現できなければシンギュラリティが起こることもAIが意思を持つようになることもない。

とはいっても計算だけを行う部分では大きく人の仕事を代替することができる。そのため、人間はAIの苦手な分野で能力を発揮する必要がある

しかし、中高生はAIの得意な暗記や計算などの勉強に偏っており、AIの苦手な文章の意味を理解することは中高生も苦手としている

このままAIの苦手な分野は人間も苦手となれば、企業は人手不足にもかかわらず、失業率が高い状態が続いてしまう

シンギュラリティに代表されるような完全なAIは今の技術の延長線上では完成できない 

だからこそAIの苦手な分野を人間が担えばよい。そこまでは希望の持てる部分でしたが、今の教育制度ではAIの苦手なことは人間も苦手というのは驚きでした。理解する、考える 柔軟性を発揮することが重要というのはよく言われる結論と同じですが、それを発揮するために読解力がどれほど重要であるかが再認識できます

新しい技術によって仕事が代替されることは過去何度か見られたことだが、AIによる代替はそのスピードが今までに比べ大きく早いという点も気になりました。短時間であれば対策が追いつかない可能性がるのもAIとこれまでとの違いであることが理解できます。

はじめにー私の未来予想図

AIは当面の間、神に代わって人類をユートピアにもたらすことも、能力が人智を超えて人類を滅ぼすことはない

AIはコンピューターで計算機でしかない 今の数学に人間の知的活動すべてを数式で表現することができないため、意思を持つことはなく、人間の仕事をすべて代替できるわけではない

しかし、現在の中高生は表層的な知識はあっても、教科書の意味を理解することは苦手 これはAIの傾向と同じ

つまりAIが代替不可能な仕事やAIによって新しい仕事が生まれたとしても人間にとっても苦手である可能性が高い

第1章 MARCHに合格

真のAI(人工知能)は人間の知的活動を四則演算で表現するか、表現できていると人間が感じる程度に近づけたもの。ディープランニング等では真のAIの実現は難しい

現在AIと呼ばれているものは真のAIではなく、AIを実現するために開発されたAI技術。

東ロボプロジェクトはAI技術を用いて、東大合格を目指すプロジェクト

AIにどこまでできて何が出来ないのかを知るために筆者が初めたプロジェクト

実際にMARCHに合格できるレベルにまで達している

初期のAIは推論と探索を用いて限定された条件下では力を発揮できたが、条件の限定出来ない状況では無力になってしまう(=フレーム問題)ことで期待がしぼんでしまった

第2次ブームでは、ある分野の知識を学習させたうえで推論と探索でその分野のエキスパートのように振る舞うようにした

しかし、明文化しにくい常識や客観的に測定しにくいものの入力が難しく、実用には耐えられなかった

現在のAIブームは第3次 機械学習によってデータのパターンや重要度を自律的に認識可能になる 

ビックデータと合わさることで大きく進化したが、数値化しにくいことを目標に据えることは依然困難

データか目標を人間が準備する必要性は変わっていない

東ロボは現在、受験生上位20%の学力を持つまでになっている

多くのホワイトカラー職がAIに奪われる可能性がある

新技術が職を奪うことは歴史上無数に見られてきたが、AIによる代替は過去の例に比べても多くの職を短時間で奪う可能性が高い

100年かけて起こった工場の自動化による変化と同じような変化が、ホワイトカラーでも20年に圧縮されておこる

第2章 桜散る-シンギュラリティはSF

東ロボは東大への合格の見通しはたっていない。AIの限界もありこれ以上の学力UPは困難

AIの能力限界はハードウェアによるものではないため、スパコンの性能があがっても量子コンピュータが実現しても直接AIを実現できるわけではない

数学は論理、確率、統計の3つの表現方法で計算を行っている 3つの表現方法で計算を行っているだけで意味を理解することはできない

AIには意味を理解することは出来ない 真のAI実現の大きな壁

真のAIの実現には意識的、無意識的問わず脳で認識しているすべてを数式に置き換える必要があるが、現状では不可能 

第3章 教科書が読めない

AIはホワイトカラーの仕事を多く代替できるが、全ての仕事を代替できるわけではない       ➡AIに出来ない仕事を人間ができるかが重要になる

AIが苦手なのは読解力、柔軟性、発想力などだが、多くの中高生で読解力は危機的な状況になっている

評論文を読んで訴えたいことや小説の行間を読むなどの難しいことではなく、教科書の文章の意味を理解することができない

基本的な読解力は全ての勉強の基礎となる、仕事でもマニュアルなどを理解するなど基本に関わってくる

読解力を上げる具体的な手法や読解力を悪くする原因は分かっていない

多読ではなく精読にヒントがあるかもと筆者は感じている

第4章 最悪のシナリオ

現在の技術の延長にあるAIでは意味の理解や常識を持つことは出来ない

生産性を上げるだけで、新しいサービスを生み出したり問題を解決することができない

本来AIを使用すればコストを圧縮できる部分でAIを使用しない企業は淘汰されてしまう AIの普及は情報の非対称性をなくし、一個のモノはどこでも同一価格となる力が強くなるため、最安値を探すのはより簡単になる

AIが苦手とする意味を理解する読解力を多くの人が持たない場合、AIに代替できない仕事で人手不足があるにもかかわらず、能力がない人が多く失業者となってしまう

基本的な読解力を高め、AIが得意な暗記や計算ではなく柔軟になり、困ったことを探す能力を高めることが必要になる

コメント

タイトルとURLをコピーしました