BRAIN DRIVEN 青砥瑞人 Discover 要約 前編

神経科学の分野は大きく発展している

 脳にはまだ未知のものが広がっていて、それは可能性の宝庫。脳を知ることは自分を含めた人間理解を深め、生きていくうえでの智恵になるはず。

 脳を知るためには、無数の因子が存在する環境を捉え、全身の神経を捉え脳の役割を探求する必要がある。ヒトの神経はブラックボックスとして扱われ、なかなか研究が進まなかったが、技術の進歩によってブラックボックスが開かれはじめ、神経科学の論文は2010年以降急増している。

 本書の役割は神経科学が新たに示した叡智と哲学や心理学で育まれてきた叡智を照らし合わせること。

 神経科学の観点からモチベーション、ストレス、クリエイティビティについて脳の中でなにがおきているのか、なぜ起きているのかについての知識を深めていく。

自分を客観視するメタ認知が自分について知るために欠かせない

 どんな分野であれ、自分を高めるという命題を持っており、そのためにはメタ認知が重要になる。メタ認知とは自分自身を客観視、俯瞰視した状態。脳は見えているすべてを記憶することはなく、注意を向けたものしか記憶しない。これは自分の情報にもあてはまり、自分に意識的に注意を向けないと脳には自分の情報は書き込まれない。多くの人は自分のことを知っていると錯覚しているため、ほとんどの人は意識的に自分を見ようとはしない。

 自分に注意向けること=自分を持つことになる。

 自分を俯瞰視しているときには前頭前皮質のrlPFCと呼ばれる箇所が活用されていることがわかってきた。

 脳の神経細胞の結びつきは使えば結ばれ、使わなければ失われていく。メタ認知に感知する脳意識的に使うことで結びつきは強化されていく。

モチベーションとは行動を誘発する原因のこと

 モチベーションの定義は様々ではあるが、共通して言えるのはモチベーションが行動の原因でその結果である行動を誘引されるという関係性。

 モチベーションを捉えるには

1.原因となる刺激があり

2.それを受けて関連する脳や体内環境が変化を催し

3.行動に移る

という流れを明確分けて整理することが重要となる。

 神経科学では原因となる刺激をモチベータ、行動を誘引する脳内の状態をモチベーション・メディエーター、脳内の状態を認識した状態をモチベーションと呼ぶ。やる気になった状態とその状態を認識する脳機能は別のもの。

 モチベーションを感じるにはメタ認知が重要。他人のモチベーションを上げる方法が自分にも当てはまるとは限らない。

モチベーションを高めるにはドーパミンを利用するのが良い

 人間の行動の多くは報酬回路にコントロールされていると思われてきたが、モチベーションには他のシステムも影響しており、その相互関係を理解することがモチベーションの理解につながる。

 脳は表層部に近いほど高次の機能を司っている。脳の下部の脳幹では呼吸や体温調節といった無意識かつ自動で行われる生存に必須な機能が多い。その外には食欲、睡眠、快感と関わる大脳基底核が存在している。

 モチベーションに関わる腹側被蓋野は中脳の領域に存在し、ドーパミンを放出する。さらに上部の大脳辺緑系や大脳新皮質などに影響するため、その関係を知ることがモチベーションを捉える上で非常に重要。

 脳の機能は古くからある機能、脳下部の構造がモチベショーンとして優先される。睡眠不足や呼吸や体温が乱れた状態では学習や仕事のモチベーションどころではないのは、脳下部が優先されているため。

 モチベーションが上がらない人はまずは脳下部が感じやすい欲求にこたえるために、生活リズムを整えると良い。

 脳の下部の欲求は回路が出来上がっており、エネルギー効率もよい。一方で上部の欲求を満たすためには回路が出来上がっていないため、多くのエネルギーを使い回路を作る必要がある。

 下部の脳のモチベーションを利用する方法もある。モチベーションの種類を問わず、脳内ではドーパミンが作られているため、低位の欲求のために作られたモチベーションを上位の欲求につかうことで高効率を上げることができる。空腹状態のほうが勉強や仕事の効率が良い感覚はこのメカニズムによる。

 自分の高まるモチベーターを探すことも有効。自分の高まるものを見つけておき、ドーパミンを誘発してもよい。アスリートが音楽で気分を高揚させるのもこの効果による。

ノルアドレナリンとドーパミンが適切に出た状態が学習の効果が高い

 脳の中で合成される神経伝達物質の中でも、ドーパミンとノルアドレナリンがモチベーションには重要となる。ドーパミンは探索時に、ノルアドレナリンは逃走か闘争かを果たす交感神経と連動して放出される。

 ドーパミンが高く、ノルアドレナリンが低い状態では新しい状態に向かう力が強い。新しい状態に向かう人は実際よりも自分は出来たと見積もる傾向にある。これは自己認識能力の低さとされてきたが、未熟な状態の能力を高く見積もる仕組みがあるからこそ、新しいものにトライできる。しかし、ドーパミンによる行動だけでは徐々に認識との差異に気づき行動や学びをやめてしまう。

 ノルアドレナリンとドーパミンが適切に出ている状態では、学習の効果が高い。ノルアドレナリンはストレスの起点となるコルチゾールを生成するが、対象に対する認知性をたかめる効果がある。ただし新しいことを学ぶ際にはうまくいかないことが多く、コルチゾールが多く放出され過ぎると、やめてしまう。失敗を認識しても成長の糧と考え、ネガティブな感情をポジティブに書き換えるようにするとストレスが過剰にならず、学習効果の高い状態を維持できる。

脳に安全と感じさせることがモチベーションを学習に向かわせる

 脳は危険を感じると考えている場合ではなく、逃げよと命令するため、心理的危機状態では学習へのモチベーションは生まれにくい。脳が危機を感じるのは恐怖や不安以外にも脳内に記憶がない新しい情報も危機を感じさせやすい。目的の設定は情報の無い曖昧な状態を回避し、脳を安全な状態に持っていきやすい。

 自分がわからないかもわからないよりは、未熟であることを理解した状態のほうが、脳は危機を感じにくい。

自分がどのような時にドーパミンが出るかを知っておくとよい

 ドーパミンは好奇心を持ったり、何かをやってみたいと思っているときに出やすい。ドーパミンの放出される状態はある情報に興味があり、脳が知ろう、学習しよう反応している状態なため、このようなときに覚えたことは記憶に残りやすい。自分がどのような場面でドーパミンが出ているかを知っておくとモチベーションを高める上でも有効。モチベーションが高い状態の自分に気づき思い返すことでモチベーションを高めやすい脳にするトレーニングとして欠かせない。

ポジティブな面に目を向けることもモチベーションに重要

 ポジティブな面を見つける意識を受動的ではなく、能動的に持つことが重要。人ができないことに目が行きやすいのは本能的なため、良いところを見つけるのは重要なトレーニングとなる。できた部分に目を向ければ自己肯定感が高まり、モチベーションにつながる。

予測と結果の差が大きいとドーパミンが放出される

 ドーパミンは予測との差が大きいときに放出され、予想を上回った時は長続きする傾向にある。そのため自分の予測や期待値を下げておくと差分が生まれやすくなり、ドーパミンが出やすくなる。苦しい思いをした後には喜びを大きく感じやすいため、自分を多少追い込んで苦痛を与えるのも有効な方法。ただし、他人に強要されると過剰なストレスでパフォーマンスを下げる可能性が高い。

 お金は先天的に価値があるものと脳にインプット背れているわけではなく、後天的に学習されるもの。様々な経験を経ることでポジティブなエピソードと感情記憶が結びつきセットの価値記憶で保存される。

結果だけでなく過程の体験をモチベーターとすると長く続く

 価値記憶がお金以外で代替できることは少ないため、脳にとってお金は非常に得意な刺激物。ただしお金は定量化されやすく予測が立てやすい場合が多い。給料など決まったお金では徐々にドーパミンの放出は少なくなる。短期的なモチベーターにしかならないため、お金以外の部分をモチベーターにする方が良い。結果のみではなく、プロセスの中にある快の体験をモチベーターとすると長く利用することができる。

モチベーションの発露は個人差が大きい

 人のモチベーションの在り方は体験とそれに伴う感情が大きく影響するため、一人一人のモチベーションの発露には違いがある。モチベーションを高めるヒントは外ではなく、内=脳の記憶にある。

 曖昧な状態は不安や恐怖を高め、脳の機能を低下させるため、何のために何をやろうとしているのかを明確しておくことは重要となる。目の前やることと自分の記憶と関連つけることで自分事化することができる。他の人に言われてやるよりも自分で考えたほうが、脳のイメージと結果に差分が生まれ、ドーパミンを誘発し学習効率を高めてくれる。

非言語的な感覚をうまく拾い上げるべき

 脳内に入った情報が脳内にある情報とずれていると感じる時に、非言語的な感覚として脳に違和感が生まれる。違和感を感じるときには自分の大切にしてきた考え、目的差を感じており、論理的でないと排除するのではなくうまく拾い上げることが重要。

 葛藤も脳内で複雑な処理が行われており、成長に必要な要素。考えること=脳内の予測となるため差分を生みやすくなる。

 根拠のない自信が無ければ、新しいことには挑戦できない。結果ではなくプロセスに価値を感じること合わせると根拠なき領域に挑戦と挑戦から得たものにドーパミンを誘発し、挑戦を続けることができる。

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