BRAIN DRIVEN 青砥瑞人 Discover 要約 後編

ストレスとうまく付き合うためにも脳の仕組みを知る必要がある

 ストレスとうまく付き合うことは気持ちが楽になるだけでなく、モチベーションを高める上でも重要になる。人間の脳はストレスによってパフォーマンスが下がることもあれば,高まることもある。

人によってストレスの感じ方も異なるため,自分のストレス反応を俯瞰することは自分自身を守り,高いパフォーマンスを維持し,他人との円滑なコミュニケーションするために欠かせない。

ストレスの原因には直接的なものと間接的なものがある。ストレスの原因は外界の情報や圧力など人のせいにされることが多いが,直接的な原因と間接的な原因に分ける必要がある。

ストレスは生存に有利となるため,人類が持っている機能。受けとった情報が危険な場合にストレス反応によって回避したり,必要な情報を記憶しやすくし、直感力を高めることで生存しやすくなった。

成功体験の過程にあったストレスであれば振り返りやすい

人間の脳には3つのモードがある。

無意識に近い状態の時に作動するデフォルトネットワークモード、思考や意識的に注意を向けたさいに働くセントラル・エグゼクティブ・ネットワーク。そしてそれらを切り替えるサリエンネットワークの3つ。サリエントネットワークは近年重要視されており、自分の内部環境の変化に気づく働きをしている。

ストレス反応を認識することがストレスに対応する第一歩。自分のストレスを考えるのは気が進まない。成功体験の過程で起きたストレス体験であれば、最終的にポジティブな例であるため振り返りやすい。ポジティブな感情が芽生えているときにその家庭にあるネガティブな面と向き合うと脳は辛い経験の先に喜びがあると学習し、レジリエンス(折れない心)を育てることにつながる。

また、人間はネガティブな面よりもポジティブな面に目が向きやすいため、成功体験に潜むポジティブな面に目を向けることも重要。これを繰り返すことで結果だけでなく、プロセスにも意味があることを脳に覚えさせることができ,挑戦を続けることができるようになる。

ストレス反応は悪いばかりではない

脳内では内外の情報からさまざまな予測を立てており、その予測がネガティブに裏切られるとストレス反応となる。ストレス反応にともなって放出されるコルチゾール、ノルアドレナリン、ドーパミンは注意力や集中力を高める機能もあるためある程度のストレスはパフォーマンスを高める。

これらを理解しておくと、ストレス反応が悪いことばかりでないこと考えられるようになっていく。

 ただし、集中したいことと関係ないことから受けるストレス(勉強中の悪環境)や前頭前脂質を停止させ、考えるよりも逃げろとなるような過剰なストレス、慢性的なストレスは避けるべき。

ストレスを避けるだけでなく、心理的安全性を生むスキルも重要。ストレス解消法をストレスのない段階で探しとけば,いざストレスを感じたときに対応しやすくなる。

ストレスとうまく付き合うためには様々な方法がある。

 高すぎる予測をすると結果とネガティブな差分になるためうまく調整する,決めつけを止める,ポジティブな感情に目を向ける,言語化できない違和感やモヤモヤに耳を傾ける,ことなどが挙げられる。

ストレスの本来の役割である学習効率の上昇や生産性,集中力を高める機能が日常を豊かにし,成長を加速させる。意図しないストレスや過度,慢性的なストレスをOFFにし,力を与えるストレスと付き合っていくべき。

クリエイティビティを神経科学で語る動きも活発化している

クリエイティビティを神経科学で語ることは非常に難しかったが,近年さまざまなことが明らかになり、研究対象となることも増え,論文数も増加している。

脳のある部分の機能を明らかにしようとするマクロや細胞や分子の気候から読み解くミクロだけでは、クリエイティビティを捉えることはできず,脳の系を捉えることが非常に重要となる。脳の様々な機能が関連し合いネットワークとして行動や感情を動かしていることがわかり始めている。

同じような行為でもクリエイティビティを発揮しているときとそうでない時で,脳の使われ方に違いがみられる。

人工知能とヒトの脳の情報の取り扱い方法の違いがクリエイティビティに影響している

人工知能と人の脳はの情報の取り扱い方が異なっている。人工知能は図書館で該当するテーマを片っ端から集めて机で作業するイメージに対し,人間の脳は該当する本棚に向かって該当するテーマに関連しそうな本を立ち読みしたり,周囲の棚に気を取られてなかなか机に戻ってこないような状態。

この違いがクリエイティビティに大きく影響していると考えられている。

人間の脳は数字を用いた符号的な処理も可能だが,非言語的で符号化できない感覚知的な情報も処理可能だが,その反面人工知能に比べ再現性に劣る傾向。それぞれの特性を活かすようにすることが必要となる。

挑戦を繰り返すことのできる人がクリエイティビティが高い

アイディアを創造するときと評価するときには異なる脳の部位を活用している。想像する人にも評価する人にとっても新しいものを想像することは難しいが,評価する人にとって新しくなくても創造する人の脳がクリエイティビティを発揮する脳を使用した事実に変わりはない。

クリエイティブな発想はいきなり天から降って来るものではなく,悶々と堂々巡りを繰り返して初めて閃くもの。思考にどっぷり浸かった後のボーッとした状態はクリエイティビティに非常に重要。

 内部の情報に目を向けることも重要。普段から自己の感情や感覚を意識しないと刹那的に消えてしまう。違和感を大事にする,新しいことを能動的に見出す意識が必要になる。

挑戦を繰り返す人こそがクリエイティビティが高いため,挑戦に対する価値を脳に認めさせる必要がある。挑戦は成功できるか不確かで,脳は不確かなことを避ける傾向にある。できない理由ではなく,できる理由にフォーカスし、不確かなことでも楽しめるマインドセットが重要。

非言語的な要素にも目を向けることが大事

クリエイティビティを発揮するにはファクトや数値情報だけでなく,映像的想像,感覚,感情,思い出,勘違いなどが要素になりうる。

言語化は便利であるが,脳がおこなう情報処理は圧倒的に非言語的な物が多いため,言葉は無数の情報をカットしている可能性もある。カットされた部分に目を向けることで新しいものの見方や表現につながると考えられている。

クリエイティビティを発揮する能力は偶然や才能ではなく,脳の後天的な成長によるもの。見知らぬ世界を想像するためにはどうなっていくかわからないことを積極的に楽しめる脳である必要がある。

明らかになりつつある脳の機能を知れば学びは加速する

神経科学は比較的新しい学問で,これまでブラックボックス化していた脳の機能や仕組みが少しづつ明らかにされていくはず。明らかになった脳の機能は人々の幸福と成長,学びに応用できるようになっていくだろう。

自分のやりたいことに素直になり,ドーパミンドリブンの状態になれば学びは加速する。学びを深め人の役に立てば,人生はもっと楽しく豊かになる。

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