FACTFULNESS ハンス・ロスリング まとめ 日経BP社

本の概要

 脳は本能的に世界をドラマチックに見る傾向がある。これらの本能は我々の祖先が生き延びるのには役に立ったが、事実に基づいて世界の現状を把握するためには本能を抑える必要がある。

 これらの本能は頭の良さ、地位などに関係なく見られるため、本能を抑えて物事を見るのは難しいと認識する謙虚さ、正しいデータを見る力、新しいデータを入手する好奇心を持つことが得に重要となる。

 脳の持つ本能は10個に分類される。

1.分断本能 物事に二つのグループに分け、その間には埋まることのない溝があると考える

2.ネガティブ本能 ポジティブな面よりもネガティブな面に注目しやすい

3.直線本能 グラフの書かれていない部分を想像するとき、ただグラフを延長してしまう

4.恐怖本能 恐怖に包まれると判断力が鈍る。物語の形式の場合は頭に入りやすい

5.過大視本能 物事の大きさ比較や割合を考慮せず、数字そのものから判断してしまう。

6.パターン化本能 何か考えずにパターン化し、それにすべてにあてはめてしまう。

7.宿命本能 ヒト、文化の行方が生まれた宿命で決まると思いこんでしまう

8.単純化本能 様々な問題に一つの原因と一つの回答が当てはまると思いこんでしまう

9.犯人捜し本能 悪いことが起こると、犯人を見つけて満足し、本当の問題に気づけない

10.焦り本能 時間に追われ最悪なケースが浮かぶと、冷静に分析できなくなる。

 メディアや活動家はこれらの本能に訴えかけるような報道や伝え方をする。

  • データを正しく見る
  • 本能があることを知り、本能を抑え、真実を正しく見ることは難しいと謙虚さを持つ
  • 好奇心を持ち新しい情報を積極的に受け入れる。

 ことで事実に基づいて世界を見れるようになる。

 事実に基づいて世界を見れば、人生の役に立ち、心が穏やかになる。

この本で学べること

  • なぜ学歴や国際問題に興味がある人でも世界についても知識がすくないのか
  • 10個の本能はどのようなもので、なぜ真実に基づいて世界を見るのが難しいのか
  • 本能に邪魔されないためにはどうすればいいのか

イントロダクション

 世界についての知識は学歴の高い人や国際問題に興味がある人たちでも、とても少ない。3択のクイズを出しても、ランダムで答えを選ぶチンパンジー以下の正解率となってしまう。

 知識のアップデートが足りていないためではなく、ドラマチックすぎる世界の見方を脳が本能的に行っていることが原因。

 狩猟時代には必要だった本能だが、現在ではある程度本能を抑えないと、ありのままの世界を見ることができない。

第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思いこみ

  私たちはみな、ドラマチックな本能を10種類持っている。

 「分断本能」とは

  • 物事を2つのグループに分けなければ気が済まない。
  • 2つのグループの間には決して埋まることのない溝があると思いこんでいる。

 途上国と先進国で子供の数と死亡率のデータを比較すると、1965年は確かに先進国が子供の数が少なく、死亡率が低く、途上国の子供の数は多く、死亡率は高かった。

 しかし、2017年のデータでは、ほとんどの国が1965年の先進国といわれた国の水準に達している。それでも人々は先進国と途上国に埋めがたい差があると思っている。

 他にも

  • 低所得国に暮らす女子の初等教育の修了割合
  • 世界の人口の何%が低所得国に住んでいるか

 等の問題でも実際よりはるかに低い数値を選んでしまう。

 良いか悪いか、正義か悪か、自国か多国か、世界を2つに分けるのはシンプルで直感的。対立していればなおドラマチックとなる。

  • 世界には極度の貧困層もいれば、億万長者もいる
  • 世界の大半は少しづつだが、良い暮らしをし始めている

 後者は前者に比べ伝わりにくい。だからこそジャーナリストは分断本能に訴えかけるような情報の伝え方をする。

 分断法能を抑えるには大半の人がどこにいるか探すことが重要。

第2章 ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思いこみ

 人は誰しも物事のポジティブな面よりもネガティブな面に注目しやすい。

 小さな進歩が世界中で起き、積み重なることで数々の奇跡が起きている。しかし一つ一つの変化はゆっくりで細切れだから、ニュースになりにくい。

  • 過去20年で世界の極度の貧困の人の割合(約半分になっている)
  • 世界の平均寿命(70才まで伸びている) 

 これらの問題も数値を低く答えてしまう。

 ネガティブな面に注目しやすい本能は下記のようなことで刺激される。

  • あやふやな記憶(思い出の美化)
  • 偏った報道
  • 状況がまだまだ悪いときに以前に比べてよくなっていると言いにくい空気

 現在の悪い状態を無視していいわけではない。悪いと良くなっている状態は両立する。人類のこれまでの進歩を見れば、さらなる進歩が可能と考えられる。

 悪いニュースのほうが広まりやすいことに築くことも本能を抑えることになる。

第3章 直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思いこみ

 私たちは視覚を頼りに何かの軌道を反書的に予測する。

 自分にあたるかもしれないものを避けるのには役に立つが、グラフを読む際には邪魔になる。

 グラフの書かれていない部分を想像してしまう。想像で作られるグラフはその後の変化を考慮に入れず、ただグラフを延長したものになる。

 多くのデータは直線的に変化しないと覚えていくことが重要。

第4章 恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと思ってしまう思いこみ

 ヒトはな恐怖に包まれると判断力が鈍る。

 人の頭の中にすんなり入ってくるのは物語形式で伝えられる情報。

 メディアはそれを利用し、報道するためドラマチックすぎる世界の見方は減りにくい。恐怖本能を刺激するかを判断基準にするメディアを多い。

 実際に自然災害でなくなる人の数は過去100年で25%になっている。これは多くの国が災害対策を打てるほど裕福になったため。

 恐怖と危険は違う。恐怖はリスクがあるように見えるだけ。危険には確実にリスクがある。現実のデータをみて比較することが重要。

第5章 過大視本能 目の前の数字が一番重要だという思いこみ

 ヒトはみなモノゴトの大きさを判断するのが苦手。

 数字を見て、なんて大きいor小さいと勘違いする。

 一つの実例を重要視しすぎてしまう。

 過大視本能を抑えるには「比較」と「割り算」。

 例えば、2016年の赤ちゃんの死亡者数は420万。この数字だけをみると非常に多く感じる。しかし、1950年は1440万で、年々減少している。

 何を優先すべきかを決めるのはそれぞれの選択肢の効率を、落ち着いて計算しなければならない。

 80:20ルールに従って全体の8割を占める数値に注目するして、チェックするようにすれば大きな間違いを防ぐことができる。

第6章 パターン化本能 一つの例がすべてに当てはまるという思いこみ

 偏見や意識とは関係なく、ヒトは何も考えずにパターン化してそれをすべてにあてはめてしまう。

 パター化すること自体は必要。いつも自分の分類の仕方に疑いを持って、適切な分類を見つけるこが重要。

 他国の生活用意識の違いを見ると、文化や宗教の違いと思いがちだが、ほとんどは所得の影響に過ぎない。

第7章 宿命本能 すべてはあらかじめ決まっているという思いこみ

 宿命本能はヒトや国の宗教、文化の行方は持って生まれた宿命によって決まるというい思いこみ。

 アフリカの国が西洋諸国に追いつくことはない。イスラム世界とキリスト世界が根本的に違う。などが宿命本能の典型的な現れ。

 宿命本能を抑えるためには積極的に知識をアップデートすること、過去の話をおじいさんやおばあさんから聞き、価値観がどれほど変化するかを知ることが重要。

第8章 単純化本能 世界は一つの切り口で理解できるという思いこみ

 我々はシンプルなものの見方に惹かれるが、様々な問題に一つの原因と一つの回答を当はめてしまうと実情を理解することは出来ない。

 専門家は自分の専門知識は他分野でも役立つと思いこんでしまう。

 政治思想のおかげで民主主義や公的な健康保険を受けられるようになった。その一方で一つの考えや解決策にとらわれて、社会に害になることも。

 社会主義制度での中央政府がすべてを解決できる、自由主義の市場がすべての問題を解決できる、どちらも一つの見方にとらわれてしまった例

第9章 犯人捜し本能 誰かを責めれば物事は解決するという思いこみ

 何か悪いことが起きたときに、単純明快な理由を見つけたくなる傾向が、犯人捜し本能。

 犯人捜しでは犯人を見つけたことで思考が停止し、本当の問題点には気づけない。システムを疑うほうが解決には重要。悪いことだけでなく、良いことが起きたときでも犯人捜し本能は利用される。

 犯人捜し本能はよくも悪くも個人の影響力を実際よりも大きく見せる。

 良いことが起きたときは社会基盤とテクノロジーのシステムのおかげの場合が多い。

 メディアが嘘をついている、ゆがんだ世界を植え付けているなどと考えるのも犯人捜し本能。

第10章外 焦り本能 今すぐ手を打たないと大変なことになるという思いこみ

 今すぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み

 恐れに支配され時間に追われて最悪のケースが浮かぶと、冷静に分析する力が失われ、人は愚かな判断をしてしまう。

 遠い昔、草むらにライオンが隠れている可能性があれば、情報不足でも隠れる必要がある。多少判断が間違っていても、焦り本能が人間をまもってくれた。

 根拠に乏しい仮説でも、人々の焦りを引き出すために使われることがある。近年では、温暖化なとで多く見られる。

 落ち着いて、正確で重要なデータだけを取り入れることが重要となる。

第11章 ファクトフルネスを実践しよう

ファクトフルネスをどう実践するか。それぞれの分野で対応が必要

教育

 最新の事実に基づく世界の見方を教えることで子供たちに、謙虚さと好奇心を持たせることが必要。

 謙虚さは本能を抑え事実を正しくみることが難しいことに気づき、好奇心は新しい情報を積極的に探して受け入れられる。

ビジネス

 未来の市場はアフリカやアジアにある。メディアの作るアフリカのイメージを消し去る必要がある。

ジャーナリスト、活動家、政治家

 彼らもドラマチックな世界の見方に囚われている。ドラマチックでない世界の姿を伝えるのは退屈で、メディアが退屈な方向に行くことはない。

 ファクトフルネスな視点でニュースを受け取れるかは消費者しだい。

 事実に基づいて世界を見ることは、人生の役に立ち、心が穏やかになる。

 ドラマチックな見方はあまりに後ろ向きで心が冷えてしまう。

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