この記事で分かること
- 丹銅とは:銅を主成分とし、亜鉛の含有量が少ない(3~20%未満)銅合金です。亜鉛が少ないため、赤みを帯びた美しい色が特徴です。
- 黄銅との違い:黄銅と丹銅は、どちらも銅と亜鉛の合金ですが、亜鉛の含有量で区別されます。黄銅(真鍮)は亜鉛が20%以上で黄色または金色。強度と硬度が高い一般的な真鍮です。一方、丹銅は亜鉛が20%未満で銅の赤みが強く、展延性に優れ、楽器や装飾品に多く使われます。
- 亜鉛が少ないため、原子の「滑り」が妨げられにくく、破壊せずに薄く延ばしたり、細く引き延ばしたりしやすいからです。
丹銅
合金は、2種類以上の金属、または金属と非金属を混ぜ合わせて作られた物質です。
この混合物は、元の成分とは異なる新しい特性を持ち元の金属にはない、より優れた強度、硬度、耐食性といった特性を持つことがあります。身近な例として、鉄に炭素を混ぜた鋼や鉄にクロムなどを混ぜたステンレス鋼があり、様々な用途で利用されています。
今回は銅と亜鉛の合金である丹銅に関する記事となります。
丹銅とは何か
丹銅(たんどう)は、銅と亜鉛の合金の一種です。
主な特徴は以下の通りです。
- 組成: 銅(Cu)の割合が高く、亜鉛(Zn)の含有量が少ないです(一般的に亜鉛が3~20%未満、Cu:Zn = 96:4 ~ 88:12 程度の銅合金)。
- 色: 亜鉛の少ない割合により、赤みを帯びた色をしています。この色から「丹銅」という名前が付けられました。英語では「レッドブラス (Red Brass)」や「ゴールドブラス (Gold Brass)」とも呼ばれます。
- 性質: 展延性(薄く伸ばせる性質)・絞り加工性(深く絞り込む加工のしやすさ)・耐食性に優れています。
- 用途: その色合いや加工のしやすさから、建材、装身具(アクセサリー)、金管楽器(トランペットなど)などに広く用いられます。
同じく銅と亜鉛の合金である黄銅(真鍮/しんちゅう)と比較すると、黄銅は亜鉛の含有量が20%以上と多く、黄色っぽい金色をしています。丹銅は黄銅よりも赤みが強いのが特徴です。

丹銅は、銅(Cu)を主成分とし、亜鉛(Zn)の含有量が少ない(3~20%未満)銅合金です。亜鉛が少ないため、赤みを帯びた美しい色が特徴です。展延性や耐食性に優れ、金管楽器や装飾品、建材などに使われます。
黄銅との違いは何か
丹銅と黄銅(真鍮)は、どちらも銅と亜鉛の合金ですが、亜鉛の含有量によって明確に区別されます。この成分比の違いが、色や性質、主な用途の違いを生んでいます。
丹銅と黄銅の主な違い
特徴 | 丹銅(たんどう) Red Brass | 黄銅(おうどう)/ 真鍮(しんちゅう) Brass |
亜鉛含有量 | 20%未満(一般的に5~20%程度) | 20%以上(種類によるが、30~40%が多い) |
色 | 赤みが強い(銅に近い色、レッドブラスと呼ばれる) | 黄色または金色(真鍮色、イエローブラスと呼ばれる) |
性質 | 展延性・絞り加工性・耐食性が優れている。比較的柔らかい。 | 亜鉛の増加により硬度・強度が増す。加工性や鋳造性も良い。 |
主な用途 | 金管楽器、装飾品、建築用部品、メダル | 金具、機械部品、ボルト・ナット、五円硬貨、仏具、一般の真鍮製品 |
1. 成分(亜鉛の含有量)
最も決定的な違いは、合金に含まれる亜鉛(Zn)の割合です。
- 丹銅:亜鉛の含有量が20%未満(例:銅90%、亜鉛10%)。銅の割合が高いため、純銅に近い性質を持ちます。
- 黄銅(真鍮):亜鉛の含有量が20%以上(例:銅70%、亜鉛30%の七三黄銅など)。亜鉛の割合が多くなるにつれて色が薄くなります。
2. 色と名称
亜鉛の含有量によって色調が変わります。
- 丹銅:銅の赤みが強く残り、赤褐色を帯びます。英語では「レッドブラス(Red Brass)」と呼ばれます。
- 黄銅:亜鉛が増えることで黄色や金色の光沢を帯びるため、「黄銅」や「真鍮(しんちゅう)」と呼ばれます。
3. 性質と用途
成分の違いが、金属の特性と使われ方を分けます。
- 丹銅:展延性(延ばしやすさ)や絞り加工性に優れ、美しい赤色を持つため、金管楽器のベルや、装飾性の高い建材・装身具に利用されます。
- 黄銅:丹銅よりも硬度と強度が増すため、機械部品、配管金具、ボルトなど、一般に「真鍮」として広く使われる工業材料となります。
亜鉛が少ないほう展延性に優れる理由は何か
丹銅のように亜鉛が少ない銅合金が展延性に優れるのは、合金の主成分である銅の性質が強く保たれるためです。
展延性に優れる主な理由
丹銅(亜鉛20%未満)は、純粋な銅が持つ高い展延性の特性を多く引き継いでいます。
1. 銅の結晶構造による特性
純粋な銅は、原子が最も密に詰まった面心立方格子(FCC構造)と呼ばれる結晶構造を持っています。
- 滑りやすさ: FCC構造は原子が規則正しく並び、力を加えた際に原子の層が互いにスムーズに滑りやすい(すべり面が多い)という特徴があります。
- 変形の容易さ: この「滑りやすさ」が、金属が割れることなく薄く延びる(展性)ことや、細く伸びる(延性)ことを可能にしています。
2. 亜鉛の添加が少ないこと
合金に添加される亜鉛は、銅原子の規則正しい配列の間に侵入することで、原子の滑り」を妨害する不純物として作用します。
- 亜鉛が少ない場合(丹銅): 銅原子の配列が比較的乱されず、原子層が滑りやすいため、高い展延性が維持されます。
- 亜鉛が多い場合(黄銅): 亜鉛の量が増えると、原子の滑りが強固に妨げられるため、硬度や強度は増しますが、その分、展延性(特に深絞り加工性)は低下します。
丹銅は、強度を高めるために必要最低限の亜鉛を添加しつつ、銅本来の優れた加工性(展延性)を活かした合金と言えます。

展延性に優れるのは、主成分である銅の原子配列(面心立方格子)が強く保たれるためです。亜鉛が少ないため、原子の「滑り」が妨げられにくく、破壊せずに薄く延ばしたり、細く引き延ばしたりしやすいからです。
トムバックとは何か
「トムバック」(英語表記: Tombac または Tombak)は、銅と亜鉛の合金、すなわち黄銅(真鍮)の一種を指す名称です。
特に、銅の含有量が高く、亜鉛の含有量が少ない種類の合金に使われる名称で、日本の分類では丹銅(たんどう)に相当します。

トムバック(Tombac)は、銅と亜鉛の合金で、日本の丹銅に相当します。亜鉛の含有量が少なく(5~20%程度)、赤みを帯びた美しい金色が特徴です。高い加工性を持ち、装飾品や金管楽器の材料として用いられます。
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