電子部品:ダイオードの概略 ダイオードとは何か、整流機能がなぜ重要なのか?

この記事で分かること

  • ダイオードとは:電流を一方向にだけ流し、逆方向には通さない「整流作用」を持つ半導体素子です。電源の整流や、光るLED、電圧安定化のツェナーダイオードなど、多様な種類があり、電子回路の基礎を支える重要な部品です。
  • 整流機能が需要な理由:家庭用電源などの交流(AC)を、電子機器が動作するのに必要な直流(DC)に変換するために極めて重要です。

ダイオードの概略

 日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46

日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。

 今回は能動部品であるダイオードに関する記事となります。

ダイオードとは何か

 ダイオードとは、電流を一方向にだけ流し、逆方向にはほとんど流さないという性質(整流作用)を持つ電子部品です。電気の「逆流防止弁」や「チェックバルブ」のような働きをします。

ダイオードの基本的な構造と動作

一般的なダイオードは、P型半導体とN型半導体を接合した「PN接合」でできています。

  • P型半導体: 正孔(プラスの電荷を持つキャリア)が多い。端子をアノード(Anode)と呼びます。
  • N型半導体: 自由電子(マイナスの電荷を持つキャリア)が多い。端子をカソード(Cathode)と呼びます。

この2つの半導体をくっつけることで、以下のような動作をします。

  1. 順方向(電流が流れる方向):
    • アノードにプラスの電圧を、カソードにマイナスの電圧を印加すると、P型半導体の正孔とN型半導体の自由電子がPN接合面に向かって移動し、再結合しながら電流が流れます。
    • このとき、ダイオード内部でごくわずかな電圧降下(シリコンダイオードでは約0.7V、ゲルマニウムダイオードでは約0.3Vなど)が生じますが、それを超えると電流がスムーズに流れます。
  2. 逆方向(電流が流れない方向):
    • アノードにマイナスの電圧を、カソードにプラスの電圧を印加すると、P型半導体の正孔はマイナス側に、N型半導体の自由電子はプラス側に引き寄せられ、PN接合面から遠ざかります。
    • これにより、PN接合部にはキャリア(正孔や自由電子)がほとんど存在しない「空乏層」が広がり、電気的な抵抗が非常に高くなります。そのため、ほとんど電流は流れません(ごく微小な漏れ電流は存在します)。

ダイオードの主な種類と用途

 ダイオードには様々な種類があり、それぞれ異なる特性と用途を持っています。

  1. 整流ダイオード:
    • 特徴: 電流を一方向に流す基本的な特性を利用。交流を直流に変換する(整流作用)。
    • 用途: 電源回路(ACアダプターなど)のブリッジ整流回路、逆接続保護回路。
  2. 発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode):
    • 特徴: 順方向に電流が流れる際に光を発する。
    • 用途: 照明(LED電球)、ディスプレイ(LEDディスプレイ)、表示灯、リモコン、光通信。
  3. ツェナーダイオード:
    • 特徴: 逆方向に一定以上の電圧(ツェナー電圧)が加わると、それ以上電圧が上がらずに電流が流れる性質(降伏現象)を利用。
    • 用途: 定電圧回路、過電圧保護回路、電圧基準。
  4. ショットキーバリアダイオード(SBD):
    • 特徴: 金属と半導体を接合して作られ、順方向電圧降下が低く、高速でスイッチングできる。
    • 用途: スイッチング電源の高効率化、高速スイッチング回路、太陽電池の逆流防止。
  5. フォトダイオード:
    • 特徴: 光を浴びると、その光の量に応じた電流を流す。
    • 用途: 光センサー(光検出器)、太陽電池、光通信の受光素子。
  6. 可変容量ダイオード(バラクタダイオード):
    • 特徴: 逆方向電圧によって静電容量が変化する。
    • 用途: 無線通信機器の周波数調整回路(VCOなど)、同調回路。

 ダイオードは、非常に単純な構造ながら、電子回路の基本的な機能を実現するために不可欠な部品であり、私たちの身の回りにあるあらゆる電子機器に組み込まれています。

ダイオードは、電流を一方向にだけ流し、逆方向には通さない「整流作用」を持つ半導体素子です。電源の整流や、光るLED、電圧安定化のツェナーダイオードなど、多様な種類があり、電子回路の基礎を支える重要な部品です。

なぜ、整流作用が重要なのか

 ダイオードの「整流作用」が重要である理由は、現代の電子機器のほとんどが直流(DC)で動作するのに対し、家庭やオフィスに供給される商用電源が交流(AC)であるため、交流を直流に変換するプロセスが不可欠だからです。

ほとんどの電子機器が直流で動作する

 スマートフォン、パソコン、テレビ、LED照明、家電製品、自動車の電子制御ユニットなど、私たちの身の回りにあるほとんどの電子機器やその内部の集積回路(IC)は、電圧と電流の向きが一定の直流でしか正常に動作しません。デジタル回路は「0」と「1」の安定した電圧レベルを必要とし、バッテリーも直流で充電・放電されます。

商用電源は交流である

 発電所から各家庭・事業所への電力供給は、電圧の変換が容易であるという特性から、主に交流で行われています。高圧で送電し、変電所で段階的に電圧を下げて供給するのに交流は非常に効率的です。

交流から直流への変換(AC-DC変換)

 この「交流で供給される電力」と「直流で動作する機器」というギャップを埋めるのが、ダイオードの整流作用です。

 ダイオードを適切に配置した整流回路(例えば、ブリッジ整流回路)を使うことで、交流のプラスとマイナスのサイクルを一方の向きに揃え、直流に近い状態(脈流)に変換できます。さらに、この脈流をコンデンサで平滑化することで、より安定した直流電圧を得ることができます。

 身近な例では、スマートフォンの充電器やパソコンのACアダプターは、内部にダイオードを使った整流回路が必ず搭載されています。

機器の保護

 整流作用は、意図しない逆方向の電流から回路を保護する役割も果たします。例えば、電池の逆接続防止や、モーターなどの誘導性負荷がオフになった際に発生する逆起電力から他の部品を保護するために使われます。

 このように、整流作用は、現代社会を支える電子機器が安定して動作するための「電源」を供給する上で、まさに基礎中の基礎となる、極めて重要な役割を担っています。

整流作用は、家庭用電源などの交流(AC)を、電子機器が動作するのに必要な直流(DC)に変換するために極めて重要です。これにより、スマートフォン充電器やPCのACアダプターなど、身の回りのあらゆる電子機器に安定した電力を供給し、正常な動作を可能にしています。

ダイオードは単品で使用されるのか

 ダイオードもトランジスタと同様に、単体(ディスクリート部品)で使われることもあれば、IC(集積回路)の中に組み込まれて使われることもあります。用途や回路の特性によって使い分けられます。


単体(ディスクリート部品)としてのダイオード

 独立した部品としてパッケージされ、回路基板に直接取り付けられます。

  • 主な用途:
    • 電源の整流: ACアダプターや電源回路など、交流から直流への変換(ブリッジ整流など)を行う際に、大電流を扱うため、個別の整流ダイオードが使われます。
    • 逆流防止・保護: バッテリーの逆接続保護、モーターやリレーなどの誘導性負荷がオフになった際に発生する逆起電力からの回路保護など、特定の方向への電流の流れを制限する目的で広く使われます。
    • LED(発光ダイオード): 照明用や表示用など、光を発生させる目的で単体またはアレイ(複数個の集合体)として使われます。
    • 特定の特性を活かす: ツェナーダイオード(定電圧)、ショットキーバリアダイオード(高速スイッチング、低順方向電圧)、フォトダイオード(光検出)など、それぞれの特殊な特性を活かしたい場合に、ディスクリート部品として利用されます。

IC(集積回路)内部のダイオード

 ICの内部にも、回路の機能を実現するために多数のダイオードが組み込まれています。これらのダイオードは、ICチップ上にトランジスタや抵抗などと一緒に微細な形で形成されます。

  • 主な用途:
    • ESD(静電放電)保護: ICの入出力端子に、過大な静電気が加わった際に内部回路が破壊されるのを防ぐための保護ダイオードが内蔵されています。
    • クランプ回路・保護回路: 信号が特定の電圧範囲を超えないように制限したり、誤動作を防ぐために使われます。
    • 論理回路・アナログ回路の一部: IC内部の複雑な論理ゲートやアナログ信号処理回路の一部として、電流の流れを制御したり、電圧をシフトさせたりする目的でダイオードが利用されます。
    • バイアス回路: トランジスタを適切に動作させるための電圧を生成する回路の一部として使われることもあります。

ダイオードは、比較的シンプルな機能でありながら、電源回路から信号処理、保護に至るまで幅広い用途があるため、ディスクリート部品としても、ICの構成要素としても、非常に汎用的に使われています。

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