5Gアドバンストと6G それぞれの特徴と違いは何か?5Gアドバンスト実現に必要な技術は何か?

この記事で分かること

  • 5Gアドバンスとは:現在の5Gを強化した次世代規格です。AI(機械学習)技術を通信ネットワークに導入し、高速化・低遅延をさらに向上させます。
  • 6Gとは:2030年頃の実用化を目指す次世代通信規格です。超高速(1Tbps級)・超低遅延を実現し、AIネットワークや通信とセンシングの融合により、全感覚通信やユビビタス接続を可能にする社会基盤となります。
  • 5Gアドバンストに必要な技術は何か:AI/ML(機械学習)を全面的に導入し、ネットワークを自律的に最適化します。また、通信とセンシングの統合、上り通信の強化、超低消費電力デバイス(REDCap)のサポートが主要技術です。

5Gアドバンストと6G

 米半導体大手のエヌビディアが、フィンランドの通信機器メーカーであるノキアに10億ドル(約1500億円)の株式投資を行う計画を発表しました。

 https://jp.reuters.com/markets/global-markets/DWLW56V4Y5LWDHEVQ4APRGLYVU-2025-10-28/

 これは、両社がAI(人工知能)ネットワークの分野で戦略的協業を行うための一環であり、AI時代に向けたネットワークインフラの進化において重要な動きと見られています。

 前回は投資内容やエヌビディアの狙いに関する記事でしたが、今回は両社の狙う次世代通信規格に関する記事となります。

投資の内容と狙い

 ノキアは、携帯電話事業から撤退し、通信インフラとAI技術に注力しています。エヌビディアはノキアに10億ドルを出資し、約2.9%の株式を取得しています。

 これにより、ノキアの持つ通信インフラの土台と、自社のAI半導体の力を組み合わせて、次世代のネットワーク時代をリードしていく狙いがあります。

5Gアドバンストは何か

 「5Gアドバンスト(5G-Advanced)」とは、現在の5G(第5世代移動通信システム)をさらに高度化・強化した通信規格で、「6Gへの橋渡し」となる位置づけです。

 国際標準化プロジェクトである3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)の「Release 18」以降の仕様がこれにあたります。

5G-Advancedの主な特徴と進化

 5Gが持つ「高速大容量」「低遅延・高信頼」「多数同時接続」という特性をさらに発展させ、特に以下の分野で大きな技術革新が図られます。

特徴的な進化詳細エヌビディアとの関連性
ネットワークAI/MLの導入AI(機械学習)技術をネットワーク制御に全面的に適用。トラフィックの最適化、基地局の効率的なチューニング、電力消費の予測などを自律的に行います。最重要点。エヌビディアのGPU技術がこのAI処理のコアとなります。
高速化・大容量化さらなる通信速度の向上(5G比で最大10倍とも)。特に上り通信(アップリンク)が大幅に強化され、高精細映像の送信やIoTセンサーデータの収集が容易になります。高度なRANソフトウェア処理にGPUが貢献します。
超低遅延・安定化遅延を1ミリ秒以下に安定化させる技術が進展。リアルタイム性が求められる遠隔手術自動運転などの領域での活用が現実味を帯びます。低遅延を実現するRAN処理の効率化に貢献します。
通信とセンシングの統合通信用電波を使って、同時に物体の位置や形状を検出するセンシング(検知)機能を統合。ドローンや自動運転車の測位精度向上などが期待されます。

 5G-Advancedは「AIがネットワークを賢く制御する時代」への第一歩であり、6Gに向けた基盤技術を確立する役割を担っています。 エヌビディアとノキアの提携は、まさにこの「AIネットワーク」領域を共同でリードするためのものです。

5Gアドバンストは、現在の5Gを強化した次世代規格です。AI(機械学習)技術を通信ネットワークに導入し、高速化・低遅延をさらに向上させます。6Gへの橋渡しとして、自律的なネットワーク最適化や、通信とセンシングの統合を目指します。

6Gとは何か

 「6G(第6世代移動通信システム)」とは、現在の5Gに続く次世代の無線通信システムであり、「Beyond 5G」とも呼ばれます。


6Gの概要と目標

 6Gは、2030年頃の商用化を目指して世界中で研究開発が進められており、5Gの性能を大幅に超えることを目標としています。

項目5G(現行規格)6G(目標性能)
最大通信速度約10 Gbps100 Gbps〜1 Tbps以上
通信遅延約1ミリ秒0.1ミリ秒以下(超低遅延)
同時接続数1km²あたり約100万台1km²あたり1,000万台以上
主な周波数帯Sub-6 GHz / ミリ波(〜30 GHz)テラヘルツ(THz)帯(100 GHz〜10 THz)

6Gで実現が期待される社会

 6Gは、単なる通信速度の向上に留まらず、社会のインフラ全体を変革する「超空間・超リアル・超知能な社会基盤」を支える役割が期待されています。

  • 全感覚インターネット(全感覚通信): 視覚、聴覚に加え、触覚嗅覚などの人間の五感をリアルタイムで伝送・共有する技術が実現します。
  • AIとの融合(AI-RAN): AI技術をネットワーク制御に最大限活用し、ネットワークの運用保守の自動化や、AIの学習・推論を効率化します。
  • ユビキタス接続性: 衛星、ドローン、高高度プラットフォームなどが連携し、地球上のどこでも途切れることなく安定した高速通信が可能になります。
  • 通信とセンシングの融合 (JCAS): 通信用の電波を利用して、同時に物体の検知・測位も行うことで、自動運転やIoT機器の精度を向上させます。

 この6Gの実現には、エヌビディアとノキアが進めているような、AIと通信技術の融合が不可欠となります。

6Gは2030年頃の実用化を目指す次世代通信規格です。超高速(1Tbps級)・超低遅延を実現し、AIネットワーク通信とセンシングの融合により、全感覚通信ユビビタス接続を可能にする社会基盤となります。

5Gアドバンストに必要な技術は何か

 5Gアドバンスト(5G-Advanced)に必要な主要技術は、ネットワークに知能(AI)を組み込む技術と、通信性能を向上させる高度化技術の二つに大別されます。

 特に重要なのは、AI/ML(機械学習)技術を通信システムに適用することです。


1. AI/ML(機械学習)技術の導入

 5G-Advancedの最も重要な柱は、ネットワーク運用にAIや機械学習を本格的に導入し、ネットワークを自律的に最適化することです。

  • RAN(無線アクセスネットワーク)の最適化:
    • カバレッジとキャパシティの最適化: AIがトラフィック状況や電波環境を予測し、基地局のカバレッジや容量をリアルタイムで自動調整します。
    • 電力消費予測と省エネ: AIがトラフィックの増減を予測し、不要な時は基地局やコンポーネントの電力消費を抑える省電力化を実現します。
    • モビリティ管理の高度化: AIがユーザーの移動やハンドオーバー(基地局の切り替え)の失敗を予測し、通信の安定性を向上させます。
  • ネットワークスライシングの高度化: サービスごとに仮想的にネットワークを分割する「スライシング」を、AIがより効率的かつ柔軟に管理・最適化します。

2. 通信性能と機能の高度化

 5Gの基本性能(高速・低地縁・他接続)をさらに高め、新機能を追加するための技術です。

  • センシングと通信の統合(ISAC: Integrated Sensing and Communication):
    • 通信に用いる電波を、同時に物体の検知や測位にも利用する技術です。これにより、高精度な位置情報サービスや、自動運転、ドローンの自律飛行などをサポートします。
  • アップリンク(上り通信)の強化:
    • IoTデバイスやAR/VRデバイス、監視カメラなど、端末側からデータを送信する上り方向の通信速度と容量を大幅に強化します。
  • 低帯域幅UE(REDCap)のサポート:
    • 低消費電力で超簡易なIoTデバイス(Reduced Capability, REDCap)の接続を効率化し、電池寿命の長期化や低コスト化を実現します。
  • 高度なアンテナ技術の進化:
    • **高度なMIMO(Multi-Input Multi-Output)**や、全二重アンテナアレイなどの技術進化により、データ伝送効率とネットワーク容量を最大化します。

 これらの技術、特にAI/MLの適用を進めるため、エヌビディアとノキアは戦略的協業を行っています。

5Gアドバンストは、AI/ML(機械学習)を全面的に導入し、ネットワークを自律的に最適化します。また、通信とセンシングの統合上り通信の強化超低消費電力デバイス(REDCap)のサポートが主要技術です。

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