生成AIの理科三類の合格水準到達 どの教科が得意でどの強化が苦手なのか?人間との違いはあるのか?

この記事で分かること

・AIの得意な教科:英語、物理

・AIの苦手な教科:数学、国語

・AIと人間で違いが見えた点:AIは膨大な知識を持っていますが、流れを理解したり、組み合わせて理解することが特委ではありません。そのため「流れ・因果関係・ストーリー」で覚える人間からするとありえないようなミスをすることがあります。

生成AIの理科三類の合格水準到達

 ​2025年4月5日、AIベンチャー企業のライフプロンプト(東京)は、生成AIを用いて2025年実施の東京大学入学試験問題を解答させた結果、最難関の理科三類の合格水準に達したと発表しました。

AIが最難関、東大理科3類に“合格” 2次試験で最低点上回る 英語得意も数学国語は弱点露呈 - 社会 : 日刊スポーツ
生成人工知能(AI)に2025年実施の東大の入学試験問題を解かせると、主に医学部に進学する最難関の理科3類の合格水準に達したとAIベンチャーのライフプロンプト… - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)

この試験では、米オープンAIの「o1」と中国の新興企業「DeepSeek」の「R1」を使用し、大学入学共通テストと東大の二次試験前期日程を解答させました。

AIによる各科目の成績はどのようなものか

英語:​得意科目で、高得点を記録。​

数学・国語:​弱点が見られ、成績は振るわなかった。

物理:​難解な問題も解答し、高評価を得た。​

世界史:​人間なら間違えにくいミスを犯した。

 過去には、国立情報学研究所が「東ロボくん」プロジェクトでAIの東大合格を目指しましたが、2016年に断念しています。 当時のAIは英語や国語の成績が伸び悩み、特に文章の意味理解が課題とされていました。

 今回も国語も他の強化と比較すると成績こそ振るわなかったものの、合格水準に達するほどの点数を取ることが可能になりました。

英語や物理が高得点になる理由は何か

 AIが英語や物理で高得点を取れる理由は、それぞれの科目の特性と、現代の生成AIの得意分野がかみ合っているためです。


【英語で高得点が取れる理由】

  1. 大量の英文データで訓練されている
    → ChatGPTのようなAIは、ネット上のニュース記事、論文、書籍など、大量の英文テキストで学習しているため、英語の文法・語彙・読解力が非常に高いレベルにあります。
  2. 文法や語法の規則性に強い
    → 英文法は比較的ルールに則っており、AIは文法問題に正確に対応できます。
  3. 読解スピードが非常に速い
    → AIは何千語の長文でも一瞬で分析し、要点を正確に把握することができます。
  4. 記述問題にも対応可能
    → 要約や自由英作文も、自然な英語を出力できるよう訓練されているため、高得点を取れる構成力があります。

【物理で高得点が取れる理由】

  1. 物理法則や公式が明確で再現性がある
    → 物理は基本法則(ニュートンの運動法則など)や公式に基づいて解くため、AIが覚えやすく、応用しやすい分野です。
  2. 論理的思考が得意
    → 問題を段階的に解くプロセス(条件整理→式変形→計算)はAIの得意領域です。
  3. 過去問から傾向を学習できる
    → 多くの類似問題を学習しているので、「見たことのあるパターン」に素早く対応できます。
  4. 計算ミスが少ない
    → 人間とは違って、計算処理をミスなく実行できるのも強みです。

英語はデータ数も多く、英文法・語彙・読解力が非常に高いレベルにあるため高得点を取りやすくなっています。

物理は法則や公式が明確である点や計算ミスが少ないことで高得点となります。

数学が苦手な理由は何か

【AIが数学を苦手とする理由】

1. 複数の思考ステップを必要とする問題に弱い

  • 数学の難問(特に東大の数学)は、「解法のひらめき」や「複数の概念を組み合わせた解法」が必要。
  • AIは一つひとつの公式や定理は知っていても、それらを“どの順でどう使うか”の戦略を立てるのが苦手な場合があります。

2. 図形問題や可視化が難しい

  • 図形問題では空間把握や視覚的直感が必要。AIは図を「イメージ」として処理するのが苦手で、見た目からの直観的理解が人間に劣る。

3. 計算式の途中処理でミスしやすい

  • 複雑な代数計算や式変形の途中で、小さな記述ミスや誤解釈を起こすことがある(例:括弧の扱いや変数のミスなど)。
  • 特に記述式では、途中式の整合性も問われるため不利になる。

4. 問題文の条件の「意図」を読み取るのが難しい

  • 数学では、問題文に隠されたヒントや前提を“行間から読む”必要がある。
  • 例えば、「整数解を求めよ」といった条件が見落とされることがある。

5. 記述答案の論理性が問われる

  • 東大数学は答えだけでなく、論理的な記述の流れが採点される。
  • AIが書く答案は論理の飛躍があったり、逆に不自然に冗長になったりすることがある。

数学は「知識を知っているか」だけでは足りず、「どう組み立てていくか」「なぜその手法が使えるか」を柔軟に考える必要がある分野です。柔軟な思考”が求められる分野であり、AIの今の限界を示すポイントでもあります。

世界史の人間ではしにくいミスはどんなミスか

 AIが世界史で犯す「人間ではしにくいミス」は、知識は持っていても、それを使う文脈や時系列を取り違えるようなミスです。


【AIが世界史でやりがちなミス例】

1. 時代や順番の取り違え

  • 例:「フランス革命がナポレオン戦争の後に起きた」と答える
     → 個々の出来事は知っていても、正しい歴史の流れ(前後関係)を把握し損ねることがあります。

2. 同名・類似語の混同

  • 例:「アレクサンドロス大王」と「アレクサンダー2世」を混同する
     → 名前が似ているだけで全く異なる時代・地域の人物を取り違えることがある。

3. 地域の取り違えや誤適用

  • 例:「アステカ帝国はアフリカにあった」といった地理的なミス
     → 知識が断片的に結びついて、ありえない地域の組み合わせが起こる。

4. 複数の出来事を“ごちゃまぜ”にする

  • 例:「ルネサンス時代に産業革命が起きた」とする
     → 違う時代の出来事を同じ文脈で語ってしまう。これは人間なら常識的に違和感を持つところ。

5. 用語の定義や背景を“浅く”使う

  • 例:「三十年戦争はナポレオンが起こした戦争」と答える
     → 単語は知っていても、その背景や関係人物・国の理解が曖昧。

【なぜ人間はしないのか?】

  • 人間は学校や受験勉強で「流れ・因果関係・ストーリー」で覚えるため、自然に順序や背景を理解している。
  • AIは膨大な情報を知っていても、それが“歴史の地図”として体系化されていないため、突拍子もないつなげ方をしてしまうことがある。

AIは膨大な知識を持っていますが、流れを理解したり、組み合わせて理解することが特委ではありません。

そのため「流れ・因果関係・ストーリー」で覚える人間からするとありえないようなミスをすることがあります。

国語が苦手な理由は何か

 AIが国語を苦手とする理由は、「言葉の奥にある意味」や「人間の感情・文化的背景」を読み取る力が、まだ完全には備わっていないからです。


【AIが国語を苦手とする理由】

1. 行間や文脈の“微妙なニュアンス”を読み取りづらい

  • 国語では、明示されていない「作者の意図」「心情の変化」「文章のトーン」などを読み取る必要があります。
  • AIは表面的な意味は理解できても、感情の揺れや、皮肉・暗喩・文化的文脈などを深く汲み取るのが難しい。

2. 記述問題での“自然な論理の流れ”が苦手

  • 記述問題では、「なぜそう思うのか」「どうつなげるのか」といった論理構成が問われる。
  • AIは文法的に正しい答えは書けても、文脈に沿った一貫した論理展開を自然に表現するのが難しい場合がある。

3. 複数の意味を持つ語句の判断に迷う

  • 国語では「この“それ”は何を指すか?」「この“表現”の意味は?」という設問がよく出る。
  • AIは文章全体を見て推測はできるけど、曖昧な代名詞や語句の正確な解釈に弱い面がある。

4. 文学的・文化的背景への理解が浅い

  • 古文・漢文では、背景にある時代性や価値観を知らないと正しい解釈ができない。
  • 現代文でも、「人間とは何か」といった哲学的・思想的テーマに触れる文章は、単純な知識では対応しにくい。

5. “問いに対してズレた答え”を出すことがある

  • 例えば「筆者の主張を30字以内で述べよ」という問題に対して、本文の一部をそのままコピーしてしまったり、主張と根拠を混同した答えを書くこともある。

AIは「意味が通る答え」を作るのは得意でも、「正しく深く読み取った上で適切に表現する」という国語の本質部分では、まだ人間の読解力に追いついていません。

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