この記事で分かること
- Apple不調の理由:生成AI分野での出遅れ懸念、iPhoneの売上成長鈍化(特に中国での苦戦)、そしてIT規制強化による逆風が主な理由です。
- Tesla不調の理由:EV市場の競争激化と販売鈍化、度重なる価格競争による利益率低下が主因です。イーロン・マスク氏の言動や新型車投入の遅れなどが要因となっています。
米国株式市場でのAppleとTeslaの不調
近年の米国株式市場では、主要な株価指数が最高値を更新する中で、これまで市場を牽引してきた一部のハイテク大手、特にAppleとTeslaがその勢いを失い、他の銘柄に後れを取る状況が見られます。

かつて「マグニフィセント・セブン(壮大な7社)」と呼ばれた主要テクノロジー企業グループから、AppleやTeslaなどが「脱落」し、「ファビュラス4」といった新たな表現が使われるようになるなど、投資家の注目が移っています。
マグ二フィットセブンとは何か
「マグニフィセント・セブン(Magnificent Seven)」とは、近年、米国の株式市場を牽引してきた特に巨大な7つのテクノロジー企業を指す言葉です。
「Magnificent」は「素晴らしい」「壮大な」といった意味を持つ英語で、1960年代に大ヒットした西部劇映画のタイトル『The Magnificent Seven(荒野の七人)』になぞらえて名付けられました。
構成銘柄
一般的に、以下の7社を指します。
- Apple(アップル): iPhoneなどの製品で知られるテクノロジー企業。
- Microsoft(マイクロソフト): Windowsなどのソフトウェアやクラウドサービスを展開。
- Alphabet(アルファベット): Googleの親会社で、検索エンジン、YouTubeなどを運営。
- Amazon(アマゾン): eコマースの巨人であり、クラウドサービス(AWS)も提供。
- Meta Platforms(メタ・プラットフォームズ): Facebook、InstagramなどのSNS、VR事業を展開。
- NVIDIA(エヌビディア): AI(人工知能)やデータセンター向けの半導体に強みを持つ。
- Tesla(テスラ): 電気自動車(EV)メーカーであり、エネルギー事業も手掛ける。
特徴と影響
- 市場牽引力: これらの7社は、それぞれが革新的な技術と圧倒的な市場支配力を持っており、米国の株式市場、特にS&P500指数全体のパフォーマンスに大きな影響を与えてきました。
- 時価総額の大きさ: わずか7銘柄でありながら、S&P500指数構成銘柄の時価総額の約3割を占めるなど、その存在感は絶大です。日本の代表的な株価指数であるTOPIX(東証株価指数)の時価総額を上回る規模とも言われています。
- 成長性への期待: AI、クラウドコンピューティング、EVなど、今後の経済成長を牽引すると期待される分野で主導的な役割を果たしています。
しかし、冒頭で述べたように、市場環境や各社の事業戦略の変化により、近年ではこれらの銘柄のパフォーマンスに差が出始めています。特にAppleやTeslaは、生成AI分野での出遅れやEV市場の競争激化といった課題に直面し、他のAI関連銘柄などに比べて勢いを失う場面も見られています。

「マグニフィセント・セブン」は、米国の株式市場を牽引する巨大テクノロジー企業7社(Apple, Microsoft, Alphabet, Amazon, Meta, NVIDIA, Tesla)の総称です。高い時価総額と成長性で市場に大きな影響を与えてきましたが、近年はAI分野の台頭などにより、各社のパフォーマンスに差が出ています。
Appleの株価が苦戦している理由は
Appleの株価が近年苦戦している主な理由は以下のようにいくつかあります。
生成AI分野での出遅れ懸念
- MicrosoftやGoogle、NVIDIAといった競合他社が生成AI分野で積極的な投資と成果を発表する中、AppleはAI戦略の具体的な内容や製品への統合が遅れているとの見方が強まっています。
- 特に、期待されていたSiriの大幅なAI刷新が延期されたことなどが、市場の失望を招いたと指摘されています。投資家は将来の成長ドライバーとしてAIを重視しており、Appleの出遅れは株価にネガティブに作用しています。
iPhone売上の伸び悩みと中国市場での苦戦
- Appleの売上の大部分を占めるiPhoneの販売が、特に重要な市場である中国で苦戦しています。Huaweiなどの競合他社の台頭により、中国でのシェアを奪われている状況です。
- グローバル全体でもスマートフォンの需要が落ち着きを見せる中、iPhoneの売上成長が鈍化していることが懸念されています。
一本足打法への懸念
- iPhoneへの売上依存度が高いことは、Appleの強みである一方で、課題でもあります。もしiPhoneの需要が大きく落ち込んだ場合、企業全体の業績に与える影響が大きくなります。サービス事業は成長しているものの、iPhoneの成長を補うほどのペースではないとの見方も存在します。
IT関連政策・規制の逆風
- 米国や欧州委員会による巨大テクノロジー企業に対する反トラスト法(独占禁止法)や規制強化の動きが強まっています。これにより、Appleのビジネスモデルや収益構造に影響が出る可能性が指摘されています。
ウォーレン・バフェット氏による売却
- 著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイがApple株の持ち分を縮小していることが報じられました。これは他の投資家にとって、Apple株に対する見方を再考するきっかけとなり、株価への下方圧力となることがあります。
これらの要因が複合的に作用し、AI関連銘柄が市場を牽引する中で、Appleの株価は相対的に苦戦している状況にあります。ただし、Appleは強固なブランド力、膨大な顧客ベース、そして高い収益性を維持しており、今後のAI戦略の具体化や新製品・サービスの投入によっては、再び評価を高める可能性も十分にあります。

Appleの株価苦戦は、生成AI分野での出遅れ懸念、iPhoneの売上成長鈍化(特に中国での苦戦)、そしてIT規制強化による逆風が主な理由です。投資家のAI重視傾向とウォーレン・バフェット氏の売却も影響しています。
テスラの株価が苦戦している理由は
テスラの株価が苦戦している主な理由は多岐にわたりますが、現状では以下の点が挙げられます。
EV市場の競争激化
- かつてはEV市場を独占していたテスラですが、中国のBYDをはじめとするEVメーカーの台頭や、フォルクスワーゲン、トヨタ、ルノーなどの既存自動車メーカーのEVシフト加速により、競争が激化しています。
- 特に中国市場では、価格競争が激化しており、テスラの販売台数が伸び悩み、市場シェアを失っています。
EV販売の鈍化と需要低迷
- 世界的にEV販売の伸びが鈍化しており、特に主要市場である米国、欧州、中国でテスラの販売が低迷しています。
- これに対応するため、テスラは積極的に価格引き下げを行っていますが、これが粗利益率の低下につながり、収益を圧迫しています。
イーロン・マスク氏の言動と経営への集中度:
- テスラのCEOであるイーロン・マスク氏のSNS(X)での頻繁な発言や、他社(SpaceX、Xなど)での活動が、テスラの経営に対する集中度への懸念を招くことがあります。
- 特に、最近ではドナルド・トランプ氏との関係悪化が株価に悪影響を与えているとの指摘もあり、政治的要因が株価に与える影響も大きくなっています。
新型車の投入遅れとラインナップの陳腐化
- テスラの主要モデルであるModel 3とModel Yは依然として人気がありますが、競合他社が多様なEVを投入する中で、テスラのラインナップが時代遅れになりつつあるとの見方もあります。
- 期待されている低価格EV(「モデルQ」などと呼ばれる)や、ロボタクシーの市場投入が遅れていることも、投資家の失望につながっています。
地政学的リスクと関税の影響
- 米国と中国間の関税協議や、中国のレアアース輸出規制などが、テスラのサプライチェーンや新技術開発に影を落とす可能性も指摘されています。
これらの複合的な要因により、テスラはかつてのような圧倒的な成長ペースを維持することが難しくなっており、それが株価の苦戦につながっています。ただし、テスラはバッテリー技術や自動運転技術、充電ネットワークといった強みも持ち合わせており、今後の新技術の投入や市場環境の変化によっては、再び株価が上昇する可能性も秘めています。

テスラの株価苦戦は、EV市場の競争激化と販売鈍化、度重なる価格競争による利益率低下が主因です。イーロン・マスク氏の言動や新型車投入の遅れも、投資家の不確実感を高めています。
コメント