荒川化学工業CCUS関連材料の受託・開発 CCUSとは何か?どのような材料が必要とされるのか?

この記事で分かること

  • CCUSとは:二酸化炭素回収・有効利用・貯留の略であり、発電所や工場から排出されるCO2を回収し、資源として活用するか、地中に貯留することで地球温暖化を防ぐ技術です。
  • CCUSに必要な材料:CO2を分離・回収する吸収材や分離膜、回収したCO2から化学品や燃料を造る触媒、そしてCO2を固定化するポリマーやコンクリート材料など多岐にわたります。

荒川化学工業CCUS関連材料の受託・開発

 荒川化学工業は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みの一環として、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素回収・有効利用・貯留)関連材料の受託・開発に注力しています。

 同社は、化学品の製造・販売を行う企業として、CO2排出量削減だけでなく、CO2を有効活用する技術開発にも貢献しようとしています。

CCUSとは何か

 CCUSとは、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・有効利用・貯留」と訳されます。

 これは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大気中に放出させないための技術と取り組みの総称です。

CCUSの工程

  1. 回収 (Capture):火力発電所や工場など、CO2を大量に排出する施設から、排ガス中のCO2を分離・回収する技術です。様々な方法がありますが、化学吸収法などが一般的です。
  2. 有効利用 (Utilization):回収したCO2をそのまま利用したり、別の物質に変換して有効活用する技術です。
    • 化学原料への利用: CO2をメタノールやプラスチック、燃料などの化学製品の原料として利用する(カーボンリサイクル)。
    • 石油増進回収 (EOR: Enhanced Oil Recovery): 古い油田にCO2を圧入することで、地中の残油を押し出し、石油の回収量を増やすと同時にCO2を貯留する。
    • 藻類培養: CO2を藻類の培養に利用し、バイオ燃料や飼料、食品などに変換する。
    • 農作物の生育促進: 温室栽培などでCO2を供給し、植物の光合成を促進する。
  3. 貯留 (Storage):回収したCO2を、地下深部の安定した地層(帯水層や枯渇した油田・ガス田など)に安全に封じ込める技術です。

CCUSの目的と意義

  • CO2排出量の削減: 化石燃料の使用を完全にゼロにすることが難しい現状において、排出されるCO2を大気中に放出させずに回収・処理することで、地球温暖化対策に大きく貢献します。
  • 炭素の循環利用: 回収したCO2を資源として有効活用することで、単なる廃棄物ではなく、新たな価値を生み出す「カーボンリサイクル」を実現し、持続可能な社会の構築に寄与します。
  • 再生可能エネルギーの普及加速: 再生可能エネルギーの出力が不安定な場合、余剰電力を利用してCO2から燃料を製造するなどの方法でエネルギー貯蔵が可能になり、再生可能エネルギーの導入を後押しします。

 CCUSは、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な技術として、世界中で研究開発や実証が進められています。

CCUSは「二酸化炭素回収・有効利用・貯留」の略です。発電所や工場から排出されるCO2を回収し、資源として活用するか、地中に貯留することで地球温暖化を防ぐ技術です。

CCUS関連材料にはどんなものがあるのか

 CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)に関連する材料は、その目的に応じて多岐にわたります。大きく「CO2回収(Capture)」、「CO2有効利用(Utilization)」、「CO2貯留(Storage)」の3つの分野に分けて考えることができます。

1. CO2回収(Capture)関連材料

CO2を排ガスなどから効率的に分離・捕捉するための材料です。

  • CO2吸収材:
    • アミン系吸収液: 現在最も普及している技術で、アミン化合物を含む水溶液がCO2を化学的に吸収します。モノエタノールアミン (MEA) などが代表的です。
    • 固体吸収材: ゼオライト、活性炭、金属有機構造体 (MOF)、アミン担持吸着材など、CO2を物理的または化学的に吸着する固体材料。再生時に必要なエネルギーを低減できる可能性があります。リチウムシリケートのようなセラミックス吸収材も開発されています。
  • CO2分離膜:
    • 高分子膜: CO2を選択的に透過させる高分子材料を用いた膜。分子ゲート膜なども含まれます。
    • 無機膜: ゼオライト膜など、耐熱性や耐久性に優れる無機材料を用いた膜。

2. CO2有効利用(Utilization)関連材料(カーボンリサイクル)

 回収したCO2を新たな製品やエネルギーに変換する際に用いられる材料です。

  • 触媒:
    • CO2水素化触媒: CO2と水素を反応させて、メタノール、エタノール、メタンなどの燃料や化学品を合成するための触媒。
    • CO2重合触媒: CO2を直接、またはCO2由来のモノマーを重合させてポリマーを生成するための触媒。
    • CO2電解触媒: CO2を電気化学的に還元して、CO(一酸化炭素)やギ酸、メタノールなどを生成するための触媒。
  • CO2を原料とする製品・材料:
    • ポリカーボネート: CO2、アルコール、フェノールなどを原料として作られるプラスチックで、CD、DVD、自動車部品、建材などに利用されます。
    • ポリウレタン: スポンジ、断熱材、塗料などに使われる樹脂で、CO2を原料とするポリオールから製造されるものがあります。
    • 合成燃料: CO2と水素から合成されるメタノール、エタノール、合成ジェット燃料、メタンなど。
    • コンクリート・セメント関連材料: CO2を吸収・固定化する性質を持つコンクリートや、セメント製造工程でCO2を利用する材料。炭酸カルシウムを生成するものなどがあります。
    • 藻類培養関連材料: 微細藻類がCO2を吸収して増殖し、バイオ燃料、飼料、食品などに利用されるため、その培養効率を高めるための培地成分や光反応性材料などが含まれます。

3. CO2貯留(Storage)関連材料

回収したCO2を地下に安全に貯留するために、貯留層の安定性やCO2の漏洩防止に関わる材料です。

  • 掘削・圧入用資材: 地下深部にCO2を圧入するためのパイプ、ケーシング、セメントなどの材料。CO2による腐食に耐えうる素材が求められます。
  • モニタリング技術・材料: 貯留されたCO2が漏洩していないか監視するためのセンサー、観測井戸の資材など。

 これらの材料は、CO2排出量削減だけでなく、CO2を資源として捉え、循環型社会を構築するための重要な要素となっています。各分野で、より高性能で低コスト、そして環境負荷の低い材料の開発が活発に進められています。

CCUS関連材料は、CO2を分離・回収する吸収材や分離膜、回収したCO2から化学品や燃料を造る触媒、そしてCO2を固定化するポリマーやコンクリート材料など多岐にわたります。

アミンや固体吸収材はどうやってCO2を吸着するのか

 アミンや固体吸収材がCO2を吸着するメカニズムは、それぞれ異なります。

アミン(化学吸収法)によるCO2吸着

 アミンは、その分子内に窒素原子を持つ有機化合物で、CO2と化学的に結合する性質があります。これは「化学吸収」と呼ばれます。

  1. 吸収(結合)メカニズム:
    • アミン(R-NH2など)を含む水溶液にCO2ガスが接触すると、CO2は水と反応して炭酸となり、さらにアミンと反応してカルバミン酸塩重炭酸塩などの安定な化合物(塩)を形成します。
    • 具体的には、アミン分子の窒素原子上の孤立電子対がCO2の炭素原子に攻撃し、共有結合を形成します。この反応は発熱反応です。
    • この化学反応によって、CO2は吸収液中に固定化され、排ガスから分離されます。
  2. 再生(脱離)メカニズム:
    • CO2を吸収したアミン溶液(リッチ液)を加熱すると、CO2とアミンとの間の化学結合が解離し、CO2がガスとして放出されます。この反応は吸熱反応です。
    • CO2が放出された後のアミン溶液(リーン液)は、再びCO2を吸収できるようになり、再利用されます。
特徴
  • CO2との結合力が強く、低濃度のCO2でも効率的に回収できる。
  • 化学反応を利用するため、選択性が高い。
  • 再生時に比較的高い温度(通常100℃以上)の熱エネルギーが必要となる。

固体吸収材によるCO2吸着

 固体吸収材には、大きく分けて「物理吸着」と「化学吸着」の2つのメカニズムがあります。

a) 物理吸着(例:ゼオライト、活性炭、MOF)

  1. 吸着メカニズム:
    • 固体吸収材の表面や内部に多数存在する微細な孔(細孔)に、CO2分子がファンデルワールス力静電相互作用などの比較的弱い力で吸着されます。これは「物理吸着」と呼ばれ、CO2分子自体が化学的に変化することはありません。
    • 多孔質な構造を持つ材料ほど、表面積が大きく、より多くのCO2を吸着できます。
    • 低温度・高圧力で吸着量が増加する傾向があります。
  2. 再生(脱離)メカニズム:
    • 温度を上げる(加熱)か、圧力を下げる(減圧)ことで、CO2分子が固体吸収材の表面から容易に脱離し、ガスとして放出されます。比較的少ないエネルギーで再生が可能です。
特徴
  • 吸着・脱着の繰り返しによる劣化が少ない。
  • 再生に必要なエネルギーが化学吸収に比べて少ない傾向がある。
  • 吸着力が弱いため、高濃度のCO2や高圧条件でより効率的。

b) 化学吸着(例:アミン担持吸着材、金属酸化物)

  1. 吸着メカニズム:
    • 固体吸収材の表面に導入された化学官能基(例:アミン基)とCO2が化学反応によって結合します。これは液体のアミン吸収液と同様の原理です。
    • 例えば、アミン担持吸着材では、多孔質担体(シリカ、活性炭、ポリマーなど)の表面にアミンを固定化することで、固体の状態でCO2を化学的に吸収させます。
    • 酸化カルシウム (CaO) などの金属酸化物も、CO2と反応して炭酸塩 (CaCO3) を形成することでCO2を吸着します(Caルーピングなど)。
  2. 再生(脱離)メカニズム:
    • 加熱することでCO2との化学結合が解離し、CO2が放出されます。液体アミンと同様、吸熱反応です。
    • CaOの場合、炭酸カルシウムをさらに高温で加熱することでCaOとCO2に分解します。
特徴
  • 固体でありながら、アミンと同様の強いCO2捕捉能力を持つ。
  • 液体の取り扱いが不要。
  • 再生には熱エネルギーが必要。アミン担持材の中には比較的低温で再生できるものもある。

 このように、アミンと固体吸収材は、それぞれ異なる原理(化学反応または物理吸着)を利用してCO2を吸着し、それぞれに適した方法で再生されることで、CO2回収プロセスに貢献しています。

アミンはCO2と化学反応し、化合物として取り込む「化学吸収」で吸着し、固体吸収材は、多孔質構造に物理的にCO2を閉じ込める「物理吸着」や、表面の化学官能基がCO2と結合する「化学吸着」で吸着します。

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