ビレン・テクノロジーの香港市場での上場 ビレン・テクノロジーの特徴は?

この記事で分かること

  • ビレン・テクノロジーとは:2019年に上海で設立された中国のAI半導体設計大手です。データセンター向けのハイエンドGPUを開発し、米エヌビディアに対抗できる高い技術力を持ってます。
  • 製造先:ビレン・テクノロジーは自社工場を持たないファブレス企業であるため、米国の制裁により世界最大手のTSMC(台湾)への委託が困難になった後は、中国最大のSMIC(中芯国際)などの国内メーカーへ製造を全面的にシフトしています。
  • なぜ、中国ではチップレット技術が重要なのか:アメリカの規制で「最先端の微細化装置(EUV露光装置など)」が手に入らなくても、国内にある既存の装置で作ったチップを複数つなぎ合わせることで、エヌビディアのような最先端チップに近い性能を実現しようとしているためです。

ビレン・テクノロジーの香港市場での上場

 中国のAI半導体(GPU)開発大手であるビレン・テクノロジー(Biren Technology / 璧靭科技)は、2026年1月2日、香港証券取引所のメインボードに新規上場(IPO)を果たしました。

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 ビレンの上場成功を皮切りに、2026年の香港市場ではAIや半導体関連企業のIPOラッシュが予想されています。

ビレン・テクノロジーはどんな企業か

 ビレン・テクノロジー(Biren Technology / 璧靭科技)は、「中国のエヌビディア」の筆頭候補と目される、中国で最も注目されているAI半導体(GPU)設計スタートアップです。

 米国の規制に対抗し、中国国内でAIインフラを自給自足するための旗振り役といえる企業です。

1. 設立と経営陣:華やかなバックグラウンド

  • 設立: 2019年9月、上海で設立。
  • 創業者: 張文(Zhang Wen)氏。彼は中国のAI大手「SenseTime(商湯科技)」の元総裁であり、ハーバード大学で法学博士号を取得した経歴を持つ非常に影響力のある人物です。
  • チーム: エヌビディア、AMD、インテルといった世界的な半導体巨頭の元幹部やシニアエンジニアが多数集結しており、設立当初から「技術者集団」として知られています。

2. 製品性能:エヌビディアに迫るスペック

 同社の主力製品である「BR100」シリーズは、発表時に大きな衝撃を与えました。

  • 高い計算能力: 理論上の性能数値において、エヌビディアの当時の主力チップ「A100」を上回ると主張し、中国国産GPUとしてトップクラスの処理能力を誇ります。
  • 用途: 主にデータセンターでの大規模言語モデル(LLM)の学習や、AI推論、クラウドコンピューティングなどのハイエンドな用途に特化しています。

3. 米国からの制裁と「不屈の象徴」

 その高い技術力ゆえに、米政府から強く警戒されています。

  • エンティティ・リストへの追加: 2023年10月、米商務省によって輸出管理対象(禁輸リスト)に追加されました。これにより、TSMCなどの高度な微細化プロセスを持つファウンドリへの製造委託が困難になるなど、大きな壁に直面しました。
  • 国内の期待: しかし、この制裁が逆に「半導体の国産化」を急ぐ中国政府や投資家からの支持を強める結果となり、巨額の政府系資金や民間投資を引き出す原動力となりました。

4. 2026年現在の立ち位置

 2026年1月に香港市場への上場を果たしたことで、同社は単なるスタートアップから、中国のAI産業を支えるインフラ企業へと脱皮しようとしています。

  • 資金力: IPOで得た巨額の資金を使い、米国の技術に依存しない独自の製造エコシステム(サプライチェーン)の構築と、次世代チップ「BR20X」の開発を加速させています。
  • GPU四小龍: 中国でGPU開発を牽引する4つの有力企業(ビレン、ムーア・スレッド、メタエックス、イリュバタ・コアエックス)の中でも、技術・資金の両面でリーダー格と見なされています。

ビレン・テクノロジー(璧靭科技)は、2019年に上海で設立された中国のAI半導体設計大手です。データセンター向けのハイエンドGPUを開発し、米エヌビディアに対抗できる高い技術力を持ってます。米国の制裁対象(エンティティ・リスト)に指定されていますが、中国政府の強力な支援を受け、半導体の「国産化」を牽引する重要企業として2026年1月に香港上場を果たしました。

製造はどこが行うのか

 ビレン・テクノロジー(Biren Technology)の製造パートナーについては、米国の輸出規制(エンティティ・リスト)の影響で大きな転換点を迎えています。結論から言うと、現在は中国国内のファウンドリ(半導体受託製造企業)への依存を強めています。

1. かつての主要パートナー:TSMC(台湾)

 設立当初、ビレンは世界最大のファウンドリであるTSMCに製造を委託していました。同社の高性能チップ「BR100」は、TSMCの7nm(ナノメートル)プロセスを採用し、高い性能を実現していました。

2. 現在の主要パートナー:SMIC(中芯国際集成電路製造)

 2023年10月に米国がビレンを禁輸リスト(エンティティ・リスト)に追加したことで、TSMCなどの海外メーカーでの高度な製造が事実上不可能となりました。これに伴い、製造拠点を中国国内に切り替えています。

  • SMIC: 中国最大のファウンドリ。ビレンは現在、SMICの高度なプロセス(N+1やN+2と呼ばれる、7nm相当の技術)を利用して製造を行っているとみられています。
  • サプライチェーンの国産化: 2026年1月の香港上場時にも、調達資金の多くを「国産サプライチェーンの構築」に充てることが明言されています。これは米国の規制を回避し、国内だけで製造を完結させる体制を整えるためです。

3. 今後の課題:さらなる微細化

 SMICでの製造は継続していますが、以下の課題が残っています。

  • 微細化の限界: エヌビディアが現在採用している4nmや3nmといった超微細プロセスを中国国内で実現するのは依然として難しく、性能面でいかに効率を上げるか(Chiplet技術の活用など)が焦点となっています。
  • 歩留まりの問題: 国内生産への切り替えにより、製造コストや良品率(歩留まり)が初期のTSMC時代に比べて課題になる可能性があります。

 かつてはTSMCで製造していましたが、現在は制裁の影響でSMICを中心とした中国国内メーカーでの製造にシフトしています。

ビレン・テクノロジーは自社工場を持たないファブレス企業であるため、米国の制裁により世界最大手のTSMC(台湾)への委託が困難になった後は、中国最大のSMIC(中芯国際)などの国内メーカーへ製造を全面的にシフトしています。

チップレット技術ではなぜ微細化が不要なのか

 チップレット技術(Chiplet)は、これまでのように「1枚の大きなチップにすべての機能を詰め込む」のではなく、「機能ごとに分けた小さなチップを、パズルのように組み合わせる」手法です。以下のような特徴から微細化だけに頼らずに、性能を向上させることが可能です。

1. 「適材適所」で古い製造ラインを使える

チップの中には、最新の微細化技術(5nmや3nmなど)を使っても性能があまり上がらない部分があります(例:入出力回路やアナログ回路)。

  • 従来: すべてを最新の5nmラインで作る必要があり、コストが高騰。
  • チップレット: 頭脳となる「演算部」だけを5nmで作り、それ以外は安価で安定した「14nmや28nm」などの古いラインで作ったチップを組み合わせます。これにより、最先端設備の負担を最小限に抑えられます。

2. 「数で勝負」して巨大な性能を作る

 1枚の大きなチップ(モノリシック)を作る場合、製造装置の物理的な限界(レチクルリミット)でサイズが決まってしまいます。

  • チップレット: 小さなチップを横や上に何枚も繋ぎ合わせることで、物理的な限界を超えた「巨大な仮想チップ」を作れます。微細化して密度を上げなくても、チップの「面積(数)」を増やすことで力技で性能を稼げるのです。

3. 「歩留まり(良品率)」が劇的に上がる

 大きなチップは、1カ所でも製造ミス(ゴミの付着など)があれば全体が不良品になります。

  • チップレット: 1つひとつが小さいため、ミスがあっても被害はその小さなパーツ1つだけで済みます。良品だけを選別して組み立てればよいため、製造の難易度が下がり、最新鋭の装置がなくても安定して高性能な製品を量産しやすくなります。

ビレン・テクノロジーとの関係

 ビレンのような中国企業にとって、この技術は極めて重要です。米国からの規制で「最先端の微細化装置(EUV露光装置など)」が手に入らなくても、国内にある既存の装置で作ったチップを複数つなぎ合わせることで、エヌビディアのような最先端チップに近い性能を実現しようとしているからです。

チップレット技術は、機能ごとに分けた小さなチップをパズルのように組み合わせる手法です。最先端技術が必要な演算部のみを微細化し、それ以外は旧世代の安価な設備で製造した部品を流用できるため、チップ全体を最新装置で一括製造する必要がありません。また、複数のチップを繋ぐことで物理的な面積を拡大し、力技で性能を底上げできるため、微細化への依存を大幅に軽減できます。

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