大胆な投資促進税制の創設 大胆な投資促進税制の特徴とおこなう理由は何か?

この記事で分かること

  • 大胆な投資促進税制とは:高付加価値化に資する大規模な国内設備投資を促すための5年間限定の税額控除などの措置です。
  • 投資優遇税制を行う理由:大規模な国内設備投資を促し、企業の「稼ぐ力」を向上させることで、賃上げを含む経済の好循環を形成し、国際競争力を強化するためです。

大胆な投資促進税制の創設

 経済産業省は2026年度の税制改正で「大胆な投資促進税制(仮称)」の創設、大規模な設備投資減税を要望しています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA253E80V21C25A1000000/

 これは、国内投資の拡大と産業構造の高付加価値化を強く促し、企業の「稼ぐ力」を向上させることを目的とした、5年間の時限措置として提案されています。

大胆な投資促進税制とは何か

大胆な投資促進税制(仮称)の主な特徴

項目内容補足事項
目的産業構造の高付加価値化に向けた大胆な国内設備投資を促進し、日本企業の「稼ぐ力」を向上させる。賃上げを含めた経済の好循環形成を目指す。
対象高付加価値化に資する設備投資。具体的には、生産性の向上やサプライチェーンの強靭化などに貢献する大規模な投資を想定。従来の税制よりも大規模な投資を念頭に置いていると見られます。
措置内容投資額の一定割合を法人税から差し引ける税額控除詳細は今後詰められますが、現行の優遇税制(7%や10%など)と比較して、大規模投資に対する優遇措置が検討されると予想されます。
適用期間5年間の時限措置(集中投資期間と位置づけ)。企業に早期の投資決断を促す狙いがあります。
その他取得した設備の減価償却費を一括計上できる措置(即時償却)なども、選択肢の一つとして検討されている模様です。即時償却は、投資年度の課税所得を大きく圧縮できる効果があります。

現行の優遇税制との関係

 この新しい税制は、主に大規模投資を行う大企業の設備投資をターゲットとしている点で、現行の主な設備投資優遇税制と異なります。

  • 中小企業投資促進税制/中小企業経営強化税制: 主に中小企業を対象とし、税額控除は7%または10%(資本金3,000万円以下は10%)。
  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制: 脱炭素化に資する投資が対象で、最大10%の税額控除など。

 経産省は、この「大胆な投資促進税制」を通じて、従来の枠組みでは対応しきれなかった高額・大規模な戦略的投資を強力に後押ししたい考えです。

経済産業省は2026年度税制改正で、大胆な投資促進税制(仮称)の創設を要望しています。これは、高付加価値化に資する大規模な国内設備投資を促すための5年間限定税額控除などの措置です。

大胆な投資促進税制を行う理由は何か

 経済産業省が「大胆な投資促進税制(仮称)」の創設を要望する主な理由は、日本企業の「稼ぐ力」を向上させ、賃上げを含む経済の好循環を形成することにあります。具体的には、以下の3つの主要な目的があります。


1. 国内投資の拡大と産業構造の高付加価値化

  • 大規模投資の促進: 従来の税制では後押ししきれなかった高額・大規模な戦略的設備投資を税制面で優遇し、企業に国内での投資を促します。
  • 「稼ぐ力」の強化: 高い生産性や競争力を持つ新しい設備を導入することで、日本企業全体の産業構造をより付加価値の高いものに変革し、「稼ぐ力」を抜本的に強化することを目指します。
    • 目標達成: 2030年度に135兆円、2040年度に200兆円という政府の新たな官民国内投資目標を達成するための重要な手段と位置づけられています。

2. 賃上げを含めた経済の好循環の形成

  • 税額控除や即時償却(検討中)により企業の初期負担が軽減され、手元資金(キャッシュフロー)に余裕が生まれます。
  • この余裕資金を新たな投資人材育成、そして賃上げに回すことで、企業成長と家計所得の増加が相互に作用する好循環を生み出すことを目指します。

3. 国際競争力の維持・強化

 国際情勢の不確実性が高まる中、この大胆な税制を時限措置(5年間を集中投資期間と位置づけ)として設けることで、国内投資の先送りを防ぎ、国際的な競争環境において日本の産業基盤を強固にする狙いがあります。

 現在、世界各国では企業誘致や投資促進のための税制優遇策(例:米国の即時償却制度など)が激化しています。

大胆な投資促進税制を行う理由は、大規模な国内設備投資を促し、企業の「稼ぐ力」を向上させることで、賃上げを含む経済の好循環を形成し、国際競争力を強化するためです。

世界の投資促進のための税制優遇策と比較はどうか

 経済産業省が創設を目指す「大胆な投資促進税制(仮称)」は、主に米国など、大規模な設備投資に対する強力な優遇策を導入している国々との国際競争力を意識した対抗策としての側面が強くなっています。

主要国の大規模投資優遇策との比較

 日本の現行税制は、主に中小企業特定の分野(環境・DXなど)に特化した優遇措置が多い一方、米国などは大規模な設備投資全般に対する優遇措置が強力で、企業の投資判断に大きな影響を与えています。

主な優遇策の形態措置の概要狙い/特徴
米国即時償却(ボーナス減価償却)設備投資額の全額を、投資した年に一括で費用(経費)として計上できる。キャッシュフローの劇的な改善早期の投資決断を促す。特に資本集約型産業に有利。
日本(現行の主力)税額控除または特別償却税額控除: 投資額の7~10%を法人税から直接差し引く。(主に中小企業向け)
特別償却: 投資額の一部を普通償却に上乗せして早期に費用化する。
中小企業の生産性向上や、特定の政策分野(CN、DXなど)への誘導が中心。
日本(経産省要望)税額控除(高率)または即時償却(検討中)大規模投資に対する税額控除(割合は今後詰める)や、米国と同様の即時償却を検討。大規模・戦略的投資を強力に促し、米国などに劣らない投資環境を整備する。
欧州各国研究開発(R&D)や特定の地域・分野への優遇が重点的。各国で異なるが、主に研究開発費の税額控除や、特定技術・産業の補助金・税制優遇が多い。イノベーションの促進や、国内特定の産業クラスターの育成。

「大胆な投資促進税制」創設の意図

 経産省の要望は、特に米国の「即時償却」のような強力なインセンティブに対抗し、大規模な国内投資を確保することを強く意識しています。

  1. 即時償却の強力な効果:
    • 米国などで導入されている即時償却は、設備投資額の全額を初年度に費用化できるため、その年度の課税所得が大幅に圧縮されます。これにより、企業の税負担が軽減され、手元の資金(キャッシュフロー)が劇的に改善し、次の投資や賃上げに回せる資金が増えます。
  2. 国際的な投資先としての魅力向上:
    • 日本が大規模投資先として選ばれるためには、他国と比較して遜色ない優遇措置が不可欠です。この新税制は、戦略的な大規模投資を行う大企業をターゲットとすることで、国際的なサプライチェーン再構築高付加価値生産体制の国内シフトを加速させる狙いがあります。

 この税制は、これまでの日本が持っていた「中小企業優遇」や「特定分野誘導」の税制から一歩踏み出し、大規模投資による成長戦略を強力に推進するための基軸となることが期待されています。

米国などの優遇策は、投資額を初年度に全額費用化できる即時償却など強力なものが多く、国際競争力の観点から、日本も大規模投資を促す対抗策として新税制を検討しています。

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