この記事で分かること
- カーボンフットプリントとは:そのモノやは活動が、「どれだけ地球温暖化に影響を与えるか」を見える化する指標で、脱炭素社会に向けた見える化のために重要なものになっています。
- スマートファクトリーとは:デジタル技術で「可視化・自動化・最適化」することで、より効率的・柔軟・高品質な生産を実現した生産現場のことです。
カーボンフットプリントとスマートファクトリー
電子情報技術産業協会(JEITA)は「第11版 電子部品技術ロードマップ」を3月末に発刊しました。
このロードマップは、日本のエレクトロニクス産業が2050年を見据えてどのような技術的進展や社会的課題に対応していくかを示したものになっています。
前回の記事では、工程表や重点分野である「グリーン×デジタル」の概略を解説しました。今回は「グリーン×デジタル」のカーボンフットプリントとスマートファクトリーの詳細の記事となります。
グリーン×デジタルの社会実装とは何か
「グリーン×デジタル」の項目は、これまでの技術開発と社会貢献の枠組みを大きく変える新しい視点として位置づけられ、ロードマップの重点分野の一つとされています。
グリーン×デジタルとは?
「グリーン×デジタル」とは、脱炭素社会(グリーン)とデジタル技術(デジタル)の融合を意味します。
- 環境負荷を減らす(グリーン)
- デジタル技術を使ってその実現を加速させる(デジタル)
という双方向の相乗効果を目指すアプローチです。
具体的な取り組み例(JEITAの工程表より)
- カーボンフットプリントの見える化(デジタル)
- 製品ごとのCO₂排出量をデジタルでトレーサビリティ管理
- ブロックチェーンやIoTを活用
- スマートファクトリー
- エネルギー使用量をリアルタイムで管理
- AIによるプロセス最適化と排出削減
- グリーン半導体・電子部品
- 低消費電力材料(GaN、SiCなど)の推進
- 高効率な製造プロセス
- 再エネとITの統合
- 電力の需給予測にAIを活用
- 分散型エネルギー管理(VPP)と連動

「グリーン×デジタル」とは、脱炭素社会(グリーン)とデジタル技術(デジタル)の融合を意味し、JEITAの工程表での重点分野の一つになっています。
カーボンフットプリントとは何か
カーボンフットプリントとはある製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(主にCO₂)の総量を、「CO₂換算(CO₂e)」で数値化したものです。
そのモノ(または活動)が、「どれだけ地球温暖化に影響を与えるか」を見える化する指標といえます。
どこからどこまでを測るのか?
一般的に、「LCA(ライフサイクルアセスメント)」の手法を用いて、次の全ての段階の排出を含みます。
- 原材料の採取・加工
- 製造(工場でのエネルギー使用など)
- 輸送
- 使用(消費者による電力など)
- 廃棄・リサイクル
これら全体をカウントするため、「製品の一生の足跡(フットプリント)」という意味で使われます。
どうやって測るのか?
企業や団体は、以下のような方法や規格を使ってカーボンフットプリントを計算します。
- ISO 14067:国際標準(CFPの定義と算出法)
- GHGプロトコル:Scope 1・2・3など温室効果ガスの分類
- PAS 2050(イギリス):製品CFPの先駆け規格
なぜ重要なのか?
- 脱炭素社会に向けた“見える化”
- 製品ごとのCO₂量がわかれば、削減の努力が評価されやすい
- 国際取引・調達の条件に
- EUでは「CBAM(炭素国境調整メカニズム)」などでCFP情報の提出が必要に
- 消費者の判断基準になる
- 商品にCFPラベルがついていれば、「環境に優しいか」が一目でわかる
JEITAの取り組みとの関係性
JEITAでは以下のような形で、「デジタル技術によるCFPの自動計算・共有」を目指しています。
- サプライチェーン全体で排出情報をリアルタイムで共有(ブロックチェーン、IoT、クラウドなど)
- 製品ごとに「デジタルプロダクトパスポート」として排出情報を管理
- 製造現場でAIがCFPを予測して排出の少ない工程を提案

カーボンフットプリントとは、そのモノやは活動が、「どれだけ地球温暖化に影響を与えるか」を見える化する指標で、脱炭素社会に向けた見える化のために重要なものになっています。
スマートファクトリーとは何か
スマートファクトリーとは、センサー、IoT、AI、ロボットなどの最新技術を活用して、「つながる」「見える」「最適化される」工場のことです。
これまでの“人の勘や経験”に頼っていた製造現場を、デジタル技術で「可視化・自動化・最適化」することで、より効率的・柔軟・高品質な生産を実現します。
スマートファクトリーの主な要素
技術 | 内容・役割 |
---|---|
IoT(モノのインターネット) | 機械・設備からリアルタイムでデータを収集・送信 |
センサー | 温度・振動・圧力などを検知し、異常や傾向を把握 |
AI(人工知能) | データを分析して、故障予知・工程最適化などを実現 |
ロボット・AGV | 自動で部品を運搬・組立・検査する |
クラウド・エッジコンピューティング | データを蓄積・分析し、工場全体を遠隔で管理 |
デジタルツイン | 仮想空間に「工場の双子」を作って、シミュレーションや最適化を行う |
なぜ今スマートファクトリーが注目されているのか?
- 労働力不足への対応
→ 少子高齢化で人手が足りない中、省人化・自動化が必要 - 脱炭素・環境負荷低減
→ エネルギー使用量や廃棄物をリアルタイムで最適化する技術が求められている(=グリーンファクトリー化) - 多品種少量生産への対応
→ 市場のニーズが多様化し、柔軟な生産体制が不可欠に - 国際競争力強化
→ 海外企業に負けない、デジタルによる高度な製造戦略が必要
スマートファクトリーの実例(国内外)
- トヨタ:生産ラインにAIで不良予測 → 止まらないラインへ
- ファナック:ロボット同士が会話しながら組立作業を自動化
- シーメンス(ドイツ):自社工場で100%デジタルツインを活用
- 村田製作所:省エネ工場として、使用電力とCO₂排出量を見える化
スマートファクトリー × カーボンニュートラル(JEITA視点)
JEITAでは、「グリーン×デジタル」の観点から、スマートファクトリーを以下のように位置づけています
- 電力・ガス・水などのエネルギー使用をリアルタイムで把握
- カーボンフットプリントを自動計測・共有(脱炭素の見える化)
- サプライチェーン全体でCO₂排出の最小化を実現
➡ 「データに基づく省エネ工場」がこれからの主流になっていきます。

スマートファクトリーとはデジタル技術で「可視化・自動化・最適化」することで、より効率的・柔軟・高品質な生産を実現した生産現場のことです。
多品種少量生産への対応が得意な理由は何か
スマートファクトリーが「多品種少量生産」に強いのは、以下のように、デジタル技術によって「柔軟性」と「自動切替え」ができるからです。
① 製造ラインの「自動切り替え」が可能
- 従来:品種ごとにラインを止めて、段取り替え(人手&時間が必要)
- スマートファクトリー:
→ IoT・センサー・AIを活用して、製品の種類や仕様を認識し、装置設定を自動で変更
→「段取り時間ゼロ」に近づける!
例:同じラインで、サイズや色の違う製品を自動で切り替えて生産できる。
② 生産計画がリアルタイムに最適化できる
- 需要の変化に合わせて、生産スケジュールやライン構成を「自動で再調整」できる。
- MES(製造実行システム)やAPS(高性能スケジューラ)がそれを実現。
例:急な小口注文にも即応できる →「売れる分だけ作る」が可能に。
③ 設備や工程の「再利用性・柔軟性」が高い
- ロボットや加工機が「汎用型」になっている
- プログラムを書き換えるだけで別製品に対応できる
例:ロボットアームが、今日まではスマホを組み立て、明日からは医療機器を製造することも可能
④ デジタルツインによる事前シミュレーション
- 新製品を「仮想空間」で試作・工程検討できる
- 実際のラインに影響を与えずに生産準備が可能
例:新しい製品の導入でも、「試して→即実行」が可能です。
⑤ トレーサビリティと個別管理ができる
- 製品ごとにバーコードやRFIDで管理
- 製造履歴、素材、工程などが個別に追跡可能
→ 品質管理も「一品ごと」に対応できるようになります。

デジタル技術によって「柔軟性」と「自動切替え」が可能になるため、スマートファクトリーは多品種少量生産に最適となっています。




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