電子部品:セメント抵抗器 耐熱性、不燃性に優れる理由は何か?大電流が流れてしまう理由は何か?

この記事で分かること

  • セメント抵抗器とは:高電力に耐えるために、抵抗体をセメント質のケースで固めた電子部品です。大電流が流れる回路でも、熱を効率よく放散して破損を防ぎます。
  • 耐熱性、不燃性に優れる理由:セメントは石灰石など無機質な原料からできているため、燃える成分を含まず不燃性です。また、多孔質構造が熱を溜め込まず効率的に放散するため、耐熱性にも優れています。
  • 大電流が流れてしまう理由:電源を入れた瞬間に流れる突入電流や、配線が接触するショート(短絡)、回路が許容量を超える電力を消費する過負荷によって発生します。

セメント皮膜抵抗器

 日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46

 日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。

今回は受動部品である抵抗器、特にセメント皮膜抵抗器についての記事となります。

 抵抗器は、電流の流れを妨げる電子部品です。この「流れにくさ」を示すのが抵抗値(単位:Ω)で、回路内の電流を制限したり、電圧を調整したりする役割があります。過剰な電流から他の部品を保護するためや、信号の調整などに使われます。

セメント抵抗器とは何か

 セメント抵抗器は、高電力に耐えられるように、抵抗体をセメント質のケースで固めた受動部品です。電気エネルギーを熱として効率よく放散する構造になっているため、大電流が流れる回路での利用に適しています。


構造と特徴

 セメント抵抗器は、主に以下の特徴を持っています。

  • 高電力耐性: 内部の抵抗体が酸化金属皮膜や巻線抵抗などでできており、その周りを耐熱性、不燃性のセメントで覆っています。これにより、抵抗器が発する熱を効率的に外部へ逃がし、大電力を扱っても抵抗器が破損しにくくなっています。
  • 安全性: 万が一、過大な電流が流れても、セメントケースが燃焼を防ぐため安全性が高いです。また、過電流が続くと抵抗体が溶断し、ヒューズの役割を果たす製品もあります。
  • 低コスト: 同等の高電力抵抗器と比較して安価な製品が多いです。

主な用途

 これらの特徴から、セメント抵抗器は特に大電流を扱う回路で用いられます。

  • 電源回路: 家電製品や産業機器の電源回路で、突入電流を制限したり、電圧を調整したりするために使用されます。
  • モータ制御: モータの始動時に流れる大電流を制限したり、停止時に発生する回生電流を消費したりする用途で使われます。
  • ヒートシンク(放熱器): 抵抗器が熱を発生させる性質を利用して、放熱器として使用されることもあります。

セメント抵抗器は、高電力に耐えるために、抵抗体をセメント質のケースで固めた電子部品です。大電流が流れる回路でも、熱を効率よく放散して破損を防ぎます。電源回路やモータ制御など、大電力を扱う用途で使われます。

セメントが耐熱性、不燃性に優れる理由は

 セメントが耐熱性、不燃性に優れるのは、その無機質な化学組成と、硬化のプロセスによるものです。


無機質材料であるため

 セメントは、石灰石や粘土などの無機物から作られています。これらの無機物は、有機物のように炭素を含まず、燃焼する成分がありません。そのため、熱が加わっても発火したり燃えたりすることがなく、不燃性に優れています。


熱を効率的に放出するため

 セメントは、多孔質(小さな穴がたくさん開いている)な構造をしています。この多孔質な構造が熱を溜め込みにくく、熱を外部に効率よく放散する役割を果たします。これにより、抵抗器が発熱しても内部の温度が急激に上昇するのを防ぎ、抵抗器自体の破損や周囲への熱影響を抑えることができます。


セメント抵抗器での応用

 セメント抵抗器は、このセメントの特性を活かし、抵抗体をセメントで固めることで、大電流が流れても発熱による破損や発火を防いでいます。特に、急激な電流(サージ電流)が流れるような過酷な状況下でも、安全に動作を続けることができます。

セメントは石灰石など無機質な原料からできているため、燃える成分を含まず不燃性です。また、多孔質構造が熱を溜め込まず効率的に放散するため、耐熱性にも優れています。

なぜ、過大な電流が流れることがあるのか

 過大な電流が流れる原因は様々ですが、主に以下のような状況で発生します。

1. 突入電流

 電子機器の電源を入れた瞬間に、一時的に非常に大きな電流が流れる現象です。

  • コンデンサの充電: 電源を入れた瞬間、空のコンデンサを充電するために短時間で大量の電流が流れます。
  • モーターの始動: モーターが停止している状態から動き出す際、大きなエネルギーを必要とするため、定常時よりもはるかに大きな電流が流れます。

2. 回路のショート(短絡)

 回路内の2つのポイントが、意図せず低抵抗な経路でつながってしまう状態です。

  • 配線の接触: 配線が剥き出しになっていたり、部品のリード線が接触したりすることで、電流が抵抗の少ない経路を流れます。
  • 部品の故障: 部品が内部で短絡すると、その部品を迂回して過大な電流が流れることがあります。

3. 過負荷

 回路に接続されている負荷(電球やモーターなど)が、設計された許容範囲を超えた電流を消費することです。

  • 複数の機器の接続: 電源タップに多くの電化製品を接続した場合など、全体の消費電力が許容範囲を超えることで過大な電流が流れます。

 これらの過大な電流は、回路の部品を損傷させたり、発火の原因になったりする危険性があるため、ヒューズや抵抗器などの保護部品を用いて対策がなされます。

過大な電流は、電源を入れた瞬間に流れる突入電流や、配線が接触するショート(短絡)、回路が許容量を超える電力を消費する過負荷によって発生します。これらの現象は、回路の部品を損傷させる危険性があるため対策が必要です。

ヒートシンクとは何か

 ヒートシンクは、電子機器などの発熱部品から発生する熱を吸収し、効率よく外部に放熱するための部品です。熱暴走による機器の誤動作や故障を防ぐ役割を担っています。


仕組みと特徴

 ヒートシンクは、熱伝導率の高いアルミニウムや銅などの金属でできています。この材料を、表面積を大きくするためにフィンと呼ばれる多数の薄い板やピン状の構造に成形します。この構造によって、以下の3つの熱伝達メカニズムを効率的に利用して冷却します。

  • 熱伝導: 発熱部品に密着したヒートシンクが、その熱を直接吸収します。
  • 対流: 表面積が広いフィンが熱を空気中に放出し、温められた空気が上昇することで、冷たい空気が流れ込み、冷却が促進されます。
  • 放射: 表面から赤外線として熱を放出します。

 この仕組みにより、ヒートシンクは発熱部品の温度を安全な範囲に保つことができます。コンピュータのCPUやGPU、パワー半導体、LEDライトなど、多くの発熱部品に利用されています。

種類

 ヒートシンクには、主に以下の2つの種類があります。

  • アクティブ型: ファンや水冷システムなどと組み合わせて、強制的に空気を流すことで冷却効果を高めるタイプです。高い発熱量を持つ部品の冷却に適しています。
  • パッシブ型: ファンなどの動力を使わず、自然な空気の流れだけで放熱するタイプです。

ヒートシンクは、電子機器などの発熱部品から発生する熱を効率よく空気中に放散するための部品です。熱伝導率の高い金属でできており、表面積を広げるためのフィン構造が特徴です。熱暴走による故障を防ぐ役割を担います。

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