中国の半導体生産能力世界トップ なぜ、中国が世界首位になったのか?他国はどうか対応するのか?

この記事で分かること

  • なぜ、中国が世界首位になったのか:米国からの先端技術規制を受け、中国は規制対象外である自動車・家電向けの汎用半導体に投資を集中させました。国家による巨額補助金で製造装置を爆買いし、世界最大の需要を背景に内製化を強行した結果、圧倒的な生産能力を獲得しました。
  • 有力企業:受託製造大手のSMICや華虹半導体が、国策により自動車・家電向けの汎用チップで世界的なシェアを確立しています。また、メモリ分野ではYMTCやCXMTが台頭し、外資系巨頭の中国工場と並び巨大な生産能力を支えています。
  • 他国の対応;中国によるレガシー半導体の市場独占を安保上の懸念と見なし対抗を強めています。不当な低価格攻勢を防ぐための追加関税や輸入制限の検討に加え、多額の補助金で自国供給網の再構築を急いでいます。

中国の半導体生産能力世界トップ

 2025年から2026年にかけて、中国は月間のウェハ生産能力で韓国や台湾を抜き、世界トップに立つと予測されています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC193O50Z10C26A1000000/

 中国が急速に生産能力を拡大した背景には、米国の輸出規制に対する「逆張りの戦略」があります。

なぜ中国が首位になったのか

 中国が半導体の生産能力(ウェハ容量)で世界首位に躍り出た理由は、単なる「物量作戦」だけでなく、米国の規制を逆手に取った「国家主導の徹底的な生存戦略」にあります。主な要因は、大きく分けて以下の4点です。


1. 「レガシー半導体」への戦略的シフト

 米国が先端プロセス(14nm以下など)の製造装置の輸出を規制したため、中国は規制対象外の「レガシー半導体(成熟ノード:28nm以上)」に投資を集中させました。

  • 市場の急所: AIなどの先端チップが注目されがちですが、実際には自動車、家電、軍事機器、産業ロボットの大部分はレガシーチップで動いています。
  • 圧倒的シェア: 中国はこの分野で世界の工場となることを目指し、2026年までに世界の28nm以上市場で圧倒的なシェア(一説には3分の1近く)を握る勢いです。

2. 巨額の国家補助金と「製造装置の爆買い」

 中国政府は「国家集積回路産業投資基金(通称:大基金)」を通じて、天文学的な金額の資金を投入しました。

  • コスト競争力: McKinseyの分析(2025年)によると、中国は補助金により、台湾などの他地域と比較して設備投資で最大40%、運営コストで20%もの優位性を持っています。
  • 装置の確保: 米国の規制がさらに厳格化することを予測し、2023年から2025年にかけてASML(オランダ)などの製造装置を世界中で「爆買い」し、工場のキャパシティを強引に引き上げました。

3. 国内サプライチェーンの「内製化」の強制加速

 米国の制裁が、皮肉にも中国国内の技術自立を促す「触媒」となりました。

  • 国内代替: 以前は外国産を使っていた中国のIT大手(Huawei、Alibaba、Tencentなど)が、生き残りのために国内メーカーのチップや製造装置を採用せざるを得なくなりました。
  • エコシステムの形成: これにより、国内の設計・製造・パッケージングの企業が急速に育ち、2026年には半導体自給率がさらに向上する見通しです。

4. 外資企業の中国拠点の維持

 「中国の生産能力」には、中国企業(SMICやCXMTなど)だけでなく、中国に工場を持つ外資企業(サムスン、SKハイニックス、TSMC等)の生産分も含まれます。

  • これらの企業が中国市場という巨大な顧客を失わないよう、規制の猶予を受けながら中国での生産活動を維持・拡張していることも、数字上の首位獲得を後押ししています。

 世界は「先端半導体は西側、汎用半導体は中国」という、中国に依存せざるを得ない新しいリスクに直面しています。

米国からの先端技術規制を受け、中国は規制対象外である自動車・家電向けの汎用半導体に投資を集中させました。国家による巨額補助金で製造装置を爆買いし、世界最大の需要を背景に内製化を強行した結果、圧倒的な生産能力を獲得しました。

どんな企業が生産量が多いのか

 中国で生産量が多い企業は、大きく分けて「中国国内の純粋な地場企業」と「中国に大規模な工場を持つ外資企業」の2グループに分かれます。

特に地場企業は、政府の強力な後押しを受けて急成長しています。

1. 中国国内の主要メーカー(地場企業)

生産キャパシティの大部分を占めるのは、以下の3社です。

  • SMIC (中芯国際集成電路製造)
    • 特徴: 中国最大の受託製造(ファウンドリ)企業。
    • 役割: 自動車、スマートフォン、家電向けの汎用チップを大量生産しており、中国半導体産業の司令塔的な存在です。
  • Hua Hong Semiconductor (華虹半導体)
    • 特徴: 中国第2位のファウンドリ。
    • 役割: 特に「パワー半導体(省エネ関連)」や「組み込みメモリ」に強く、スマートカードや電気自動車(EV)向けの生産で世界有数の規模を誇ります。
  • CXMT (長鑫存儲技術)
    • 特徴: メモリ半導体(DRAM)の専業メーカー。
    • 役割: パソコンやスマホのデータ保存に使われるDRAMの国産化を担っており、急速に生産能力を拡大して世界の大手メーカー(サムスンなど)を追随しています。
  • YMTC
    • 特徴: NANDフラッシュメモリ(スマホやPCのデータ保存、SSDなどに使われるメモリ)の専業メーカーです。
    • 役割 中国政府が主導する「大基金」から巨額の出資を受けており、中国国内のメモリ需要を自国製品で賄うための象徴的企業です。

2. 中国に巨大工場を持つ外資企業

 「中国の生産能力」の約半分は、実は以下の外資企業の中国工場によるものです。

  • サムスン電子 / SKハイニックス (韓国):西安や無錫に巨大なメモリ工場を持っており、世界のNANDフラッシュやDRAMのかなりの割合を中国で生産しています。
  • TSMC (台湾):南京などに工場を持ち、主に自動車向けなどのプロセスを生産しています。

 現在の中国の生産力は、「SMICやHua Hongによる汎用品の大量生産」と、「韓国勢によるメモリの大量生産」の二階建て構造になっています。

受託製造大手のSMICや華虹半導体が、国策により自動車・家電向けの汎用チップで世界的なシェアを確立しています。また、メモリ分野ではYMTCやCXMTが台頭し、外資系巨頭の中国工場と並び巨大な生産能力を支えています。

他国はどう対応しているのか

 中国がレガシー半導体(28nm以上の汎用品)で圧倒的なシェアを握りつつある事態に対し、米国、欧州、日本などの他国は「安全保障上の脅威」と捉え、急速に対抗策を強化しています。

主な対応は、「調査・規制」「自国生産の支援」です。


1. 依存度の調査と輸入制限(米国・欧州)

 中国製チップが自動車や国防などの重要インフラに浸透しすぎるのを防ぐため、厳しい姿勢をとっています。

  • 米国の動向: 2024年から重要産業(自動車、防衛など)における中国製レガシー半導体の使用状況について詳細な調査を開始しました。これを踏まえ、中国製チップを搭載した完成品に対する追加関税の引き上げや、将来的な輸入禁止も検討されています。
  • 欧州(EU)の動向: 同様に域内企業への調査を実施しており、中国の不当な補助金による「格安チップの大量流入」が市場を歪めているとして、制裁措置を検討しています。

2. 自国・同盟国での生産強化(日本・米国・EU)

 中国に依存しないサプライチェーンを作るため、巨額の補助金を投じています。

  • 日本: 経済安保推進法に基づき、最先端だけでなく、自動車や産業機器に不可欠なレガシー半導体の国内工場(ルネサスやロームなど)にも数千億円規模の支援を行い、国内供給能力を維持しようとしています。
  • フレンド・ショアリング: インド、ベトナム、マレーシアなど、友好国に生産拠点を分散させる動きを支援しています。

3. 製造装置の輸出管理(日本・オランダなど)

 先端だけでなく、一部のレガシー製造にも転用可能な中堅クラスの製造装置についても、中国への輸出を厳格化する方向で連携を強めています。


 他国が自国でレガシー半導体を作ろうとしても、中国の「圧倒的な低価格」にはコストで勝てません。そのため、「高くても安全な自国製・同盟国製を使うべきだ」という法的ルール作りが急ピッチで進んでいるのが2026年現在の大きな特徴です。

欧米や日本は中国によるレガシー半導体の市場独占を安保上の懸念と見なし対抗を強めています。不当な低価格攻勢を防ぐための追加関税や輸入制限の検討に加え、多額の補助金で自国供給網の再構築を急いでいます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました