この記事で分かること
・CCUSとは:二酸化炭素(CO₂)を回収し、利用または貯留する技術の総称。気候変動対策として注目されています。
・CO2の回収法:燃焼後回収、燃焼前回収、酸素燃焼回収などがあります。
・CO2の貯蔵法:地中深くの適切な地層にCO₂を圧入する地中貯留と海洋貯留が主な方法です。
千代田化工建設のCCUSへの取り組み
千代田化工建設は4日、オーストラリアの石油ガス開発会社、パイロットエナジーが計画する二酸化炭素(CO2)サプライチェーン(供給網)構築に向けた調査事業を同社から受注したと発表しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC043220U5A400C2000000/
同社はこれまでも、国内外でCO₂回収や資源化に関するさまざまな取り組みを行っています。
千代田化工建設はどんな会社か
千代田化工建設株式会社(Chiyoda Corporation)は、日本の総合エンジニアリング会社で、主に石油・ガス・化学・エネルギー分野のプラント設計・建設(EPC:設計・調達・建設)を手掛けています。
会社概要
- 設立:1948年
- 本社所在地:神奈川県横浜市
- 事業内容:
- LNGプラントの設計・建設(世界トップクラスの実績)
- 石油精製・石油化学プラントの設計・建設
- 再生可能エネルギー、CO₂回収・貯留(CCUS)、水素エネルギー関連事業
- 医薬品・食品プラントの設計・建設
- 海外拠点:中東、アジア、北米など世界各地
特徴と強み
- LNGプラントの豊富な実績
千代田化工建設は、LNG(液化天然ガス)プラントのEPCで世界的に有名で、中東や東南アジアで多数のプロジェクトを手掛けています。 - エネルギー転換・脱炭素技術の推進
近年は、CO₂回収・貯留(CCUS)や水素エネルギー、アンモニア燃料などの新技術開発にも力を入れています。 - グローバル展開
海外プロジェクト比率が高く、特にカタール、アブダビ、マレーシア、インドネシア、オーストラリアなどでの実績が豊富です。
最近の動向
- 水素・アンモニア事業の強化:脱炭素社会に向けた新技術開発を推進
- CCUS(CO₂回収・貯留)プロジェクト:CO₂を回収して再利用する技術の開発
- 再生可能エネルギー関連事業:バイオマス発電や再エネ関連インフラの建設

千代田化工建設は、石油・ガスプラントの設計、建設を行う会社です。また次世代のエネルギー技術にも積極的に参入し、脱炭素社会に貢献する企業でもあります。
CCUSとは何か
CCUS(カーボン・キャプチャー・ユーティライゼーション・アンド・ストレージ)は、二酸化炭素(CO₂)を回収し、利用または貯留する技術の総称です。主に温室効果ガスの排出削減を目的とし、脱炭素社会の実現に向けた重要な技術とされています。
CCUSの3つの要素
1. CO₂の回収(Capture)
工場や発電所などの排ガスからCO₂を分離・回収する技術。
- 化学吸収法(アミン溶液を使う)
- 物理吸収法(高圧や低温を利用)
- 膜分離法(特殊な膜でCO₂を分離)
2. CO₂の利用(Utilization)
回収したCO₂を有効活用する技術。
- 燃料・化学品への転換:合成燃料(メタノール、ジェット燃料)、プラスチック原料など
- コンクリートの強化:CO₂をコンクリートに吸収させ、強度を向上
- 農業利用:植物の光合成を促進
3. CO₂の貯留(Storage)
地中や海底に安全にCO₂を封じ込める技術。
- 地層貯留:枯渇した油田・ガス田や深層帯水層にCO₂を圧入
- 海洋貯留(研究段階):深海にCO₂を液体状態で貯留
CCUSのメリット
- 温室効果ガスの削減 → 気候変動対策に貢献
- 産業の持続可能性 → CO₂排出産業でもカーボンニュートラル化が可能
- 新産業の創出 → CO₂を資源として活用する新たなビジネスモデルが誕生
CCUSの課題
- コストが高い → 回収・輸送・貯留のコスト削減が必要
- 貯留場所の確保 → 地層や海底への安全な貯留技術の確立
- 法整備とインフラ → CO₂の輸送や国際的なルール作り
CCUSの世界的な動向
- 欧州:EUは「カーボンニュートラル」に向け、CCUS技術の研究・実証を強化
- 米国:炭素回収・貯留のインセンティブ制度を導入(45Q税額控除)
- 日本:「グリーン成長戦略」でCCUSを重点技術に位置づけ、実証実験を推進

CCUSは、二酸化炭素(CO₂)を回収し、利用または貯留する技術の総称です。気候変動対策において重要な技術であり、化石燃料を使う産業でもCO₂を削減する手段として注目されています。
CO2の貯蔵はどのように行われるのか
CO₂を貯蔵する方法にはいくつかの技術があり、地中貯留と海洋貯留が主流です。
1. 地中貯留(Geological Storage)
地中深くの適切な地層にCO₂を圧入し、長期間安定的に貯蔵する方法です。
① 枯渇した油田・ガス田への貯留
- 方法:石油や天然ガスを採掘した後の空間にCO₂を圧入し、閉じ込める
- メリット:
- 既存の油田・ガス田インフラを活用できる
- CO₂圧入によって**石油増進回収(EOR)**が可能(残存石油の採取率向上)
- 事例:
- ノルウェー「Sleipner(スレイプナー)プロジェクト」(世界初の大規模CCSプロジェクト)
- カナダ「Boundary Damプロジェクト」(石炭火力発電所でのCCS)
② 帯水層貯留(Saline Aquifer Storage)
- 方法:地下1,000m以上の塩水を含む多孔質岩層(帯水層)にCO₂を圧入
- メリット:
- 貯留可能な地層が広範囲に存在
- 油田・ガス田に依存せず、より多くのCO₂を貯留できる
- デメリット:
- 岩層の適性評価が必要(地震の影響や漏出リスクを評価)
- 事例:
- ノルウェー「Snøhvit(スノーヴィット)プロジェクト」(世界最大規模の帯水層貯留)
③ 石炭層貯留(Unmineable Coal Seams)
- 方法:石炭層の微細な隙間にCO₂を吸着させて貯留
- メリット:
- CO₂を圧入するとメタン(CH₄)を回収できる(ECBM:Enhanced Coal Bed Methane)
- デメリット:
- 石炭層の特性によって貯留量が制限される
2. 海洋貯留(Ocean Storage)
CO₂を海洋に貯留する方法ですが、環境影響の懸念から実用化は進んでいません。
① 深海貯留
- 方法:水深3,000m以上の深海にCO₂を液体の状態で沈める
- メリット:
- 圧力が高いためCO₂が安定しやすい
- デメリット:
- 海洋生態系への影響が不明(酸性化のリスク)
② 海底下貯留
- 方法:海底の帯水層や枯渇したガス田にCO₂を圧入
- メリット:
- 地中貯留と同じ仕組みで安定的に貯留可能
- 事例:
- ノルウェー「Sleipner CCS」(北海の海底下にCO₂を貯留)
3. 固体化(Mineralization)
CO₂を鉱物と反応させて、炭酸塩(CaCO₃など)として永久的に固定化する方法。
- 方法:CO₂をカルシウムやマグネシウムを含む岩石(玄武岩など)と反応させて鉱物化
- メリット:
- CO₂が化学的に固定され、漏出リスクがゼロ
- デメリット:
- 反応速度が遅く、コストが高い
- 事例:
- アイスランド「CarbFixプロジェクト」(CO₂を地下に圧入し、玄武岩と反応させて炭酸塩化)

貯蔵方法 | メリット | デメリット | 事例 |
---|---|---|---|
枯渇油田・ガス田 | 既存インフラ活用、石油増産 | 地質評価が必要 | Sleipner(ノルウェー) |
帯水層貯留 | 広範囲に適用可能 | 地震や漏出リスクの評価が必要 | Snøhvit(ノルウェー) |
石炭層貯留 | メタン回収が可能 | 貯留量が限定的 | ECBM技術 |
海洋貯留(深海) | 貯留量が大きい | 海洋生態系への影響が不明 | 研究段階 |
海底下貯留 | 地中貯留と同様に安定 | 施工コストが高い | Sleipner(北海) |
鉱物化(固体化) | 永久固定が可能 | 反応が遅くコスト高 | CarbFix(アイスランド) |
CO2の回収はどのように行われるのか
CO₂の回収方法にはいくつかの技術があり、主に燃焼後回収(Post-Combustion)、燃焼前回収(Pre-Combustion)、酸素燃焼回収(Oxy-Fuel Combustion)の3つのカテゴリーに分けられます。それぞれの方法と具体的な技術を詳しく解説します。
1. 燃焼後回収(Post-Combustion Capture)
工場や発電所などの排ガスからCO₂を分離・回収する方法で、既存の設備にも導入しやすい。
① 化学吸収法(Amine Scrubbing)
- 方法:アミン(MEA, MDEAなど)を含む溶液に排ガスを通し、CO₂を選択的に吸収。加熱してCO₂を分離・回収。
- メリット:
- 既存の火力発電所や工場に適用可能
- 高いCO₂回収率(90%以上)
- デメリット:
- エネルギー消費が大きい(再生時の加熱が必要)
- アミンの劣化や腐食リスク
② 物理吸収法(Physical Solvents)
- 方法:高圧下でCO₂を物理的に液体溶媒(Selexol, Rectisol)に吸収させる。減圧するとCO₂が分離。
- メリット:
- 高圧ガス(ガス化炉など)に適用しやすい
- 化学吸収よりも低エネルギーで回収可能
- デメリット:
- 低圧の排ガスには不向き
③ 膜分離法(Membrane Separation)
- 方法:特殊な膜を使い、CO₂と他のガスを選択的に分離。
- メリット:
- 連続運転が可能
- 小型設備に適している
- デメリット:
- 大量のガス処理には向かない(膜のコストが高い)
- 高純度のCO₂回収が難しい
④ 吸着法(Adsorption)
- 方法:ゼオライトや活性炭などの吸着剤にCO₂を付着させ、加熱や減圧で放出させる。
- PSA(圧力変化吸着):圧力を変えてCO₂を吸着・放出
- TSA(温度変化吸着):加熱してCO₂を脱離
- メリット:
- 繰り返し使用可能
- 低コストで運用しやすい
- デメリット:
- 吸着剤の劣化や性能低下
2. 燃焼前回収(Pre-Combustion Capture)
燃焼前に燃料(石炭、天然ガス)からCO₂を分離する方法。主にIGCC(石炭ガス化複合発電)などの発電システムで採用。
① 水性ガスシフト反応(Water-Gas Shift Reaction)
- 方法:燃料をガス化し、一酸化炭素(CO)と水(H₂O)を反応させてCO₂と水素(H₂)に変換。CO₂を分離し、水素を燃料として使用。
- メリット:
- CO₂の高純度回収が可能
- 水素エネルギーと組み合わせやすい
- デメリット:
- ガス化炉が必要で、設備コストが高い
- 既存の火力発電には導入が難しい
3. 酸素燃焼回収(Oxy-Fuel Combustion)
燃料を酸素(O₂)だけで燃焼させ、純粋なCO₂と水蒸気を生成し、CO₂を回収する方法。
① 酸素燃焼技術(Oxy-Fuel Combustion)
- 方法:通常の空気(O₂ 21%)ではなく**純酸素(O₂ 100%)**で燃焼させる。排ガスにはCO₂とH₂Oだけが含まれるため、簡単にCO₂を分離できる。
- メリット:
- CO₂の高純度回収が可能(分離工程が簡単)
- 排ガス処理が容易
- デメリット:
- 酸素の製造コストが高い(酸素分離装置が必要)
- 既存のボイラー・炉の改造が必要

回収技術の比較
技術 | 特徴 | メリット | デメリット | 適用先 |
---|---|---|---|---|
化学吸収(アミン法) | 化学反応でCO₂を吸収 | 高い回収率(90%以上) | エネルギー消費が大きい | 火力発電、工場 |
物理吸収(Selexolなど) | 物理的にCO₂を溶媒に吸収 | 低エネルギーで回収可能 | 低圧ガスには不向き | 高圧ガス設備(IGCCなど) |
膜分離 | 特殊膜でCO₂を選択分離 | 連続運転が可能 | コストが高い、大量処理に不向き | 小型設備 |
吸着(PSA, TSA) | ゼオライト等でCO₂を吸着 | 繰り返し使用可能 | 吸着剤の劣化 | 小規模施設 |
水性ガスシフト(燃焼前回収) | COをH₂とCO₂に分解 | 高純度CO₂回収 | 設備コストが高い | IGCC、水素製造 |
酸素燃焼 | O₂で燃焼し純CO₂を得る | 高純度CO₂回収 | 酸素製造コストが高い | 発電所、製鉄所 |
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