この記事で分かること
- 太陽電池の仕組み:半導体に光を当てて電子と正孔を作り、電位差を使ってそれを分離・移動させることで電流を発生させています。
- CIS太陽電池とは:銅、インジウム、セレン化合物を用いた太陽電池であり、薄膜でも高い効率を実現できるという特徴があります。
- 銅、インジウム、セレン化合物が使用される理由:太陽電池として理想的な光電変換特性、加工性、安定性を実現する半導体材料として極めて優れているためです。
日揮やPXPによるCIS太陽電池の実証実験
日揮やPXPは、横浜市内の施設屋根において,フィルム型カルコパイライト太陽電池(CIS太陽電池)を用いた大面積発電モジュールの実証実験を開始したことを発表しています。
https://optronics-media.com/news/20250515/100038/
この太陽電池は、薄く・軽く・曲げられる特性を持ち、従来のシリコン型太陽電池では設置が難しかった場所への導入が期待されています。
フイルム型CIS太陽電池とはなにか
フィルム型CIS太陽電池とは、CIS(Copper Indium Selenide:銅・インジウム・セレン化合物)を使った薄膜太陽電池の一種で、以下のような特徴があります。
■ CIS太陽電池とは
CIS太陽電池は、主に以下の元素から成る半導体を光吸収層に用いた太陽電池です。
C:銅 (Copper)
I:インジウム (Indium)
S:セレン (Selenium)
CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン)と呼ばれるバリエーションもあります(ガリウムを加えることで性能向上)。
■ フィルム型とは
「フィルム型」とは、柔軟で軽量な基板(たとえばポリイミドなどの樹脂)上にCIS層を形成した薄くてしなやかな構造を指します。
これにより:曲面や凹凸面にも貼り付け可能重量が小さく、構造物への負担が少ない携帯可能・折りたたみ可能な製品への応用も可能
■ 特徴
- エネルギー変換効率:シリコンにやや劣るが、薄膜型では比較的高効率(10〜20%台)
- 柔軟性:高い(設置自由度が高い)
- 軽量性:非常に軽い(シート状)
- 温度特性:高温でも性能劣化が少ない
- 製造コスト:シリコン系より安価になりうる(大面積化しやすい)
■ 用途例
建築物の屋根や壁駅ホームや橋梁などの構造物防災用電源
- 携帯電源
- ドローン・キャンプ用品

フィルム型CIS太陽電池とは銅、インジウム、セレン化合物を用いたフィルム状の太陽電池です。構造制限のある場所や、軽量さ・柔軟性が求められる用途に向いており、今後の再生可能エネルギー拡大において重要な役割を果たすと期待されています。
なぜ銅、インジウム、セレンを組み合わせるのか
銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を組み合わせてCIS太陽電池の材料とする理由は、この組成が太陽光を効率よく電気に変換できる半導体特性を持つからです。
1.適切なバンドギャップ(1.0〜1.1 eV)
太陽光のスペクトルの中で、最もエネルギー量の多い波長帯に対応する「バンドギャップ」を持ちます。
これにより、太陽光のエネルギーを効率的に電気に変換できる。
2. 高い光吸収係数
CISは非常に高い光吸収能力を持ち、わずか1〜2μmの厚さでも光を十分に吸収。シリコンのように数百μmの厚さが不要なため、材料の節約・軽量化が可能。
3. 良好なp型半導体特性
CISは自然にp型半導体になる性質があり、p-n接合を形成しやすく、太陽電池化が容易。
4. 化学的・熱的安定性
成膜後のCIS層は比較的安定で、高温や長期使用環境でも性能が持続しやすい。
各元素の役割元素
- 銅 (Cu) :電荷輸送に関与し、p型半導体としての特性を担う。
- インジウム (In) :主に結晶構造とバンドギャップ制御に寄与。
- セレン (Se): アニオンとして光吸収と結晶安定性に重要。

インジウム・セレンの組み合わせは、太陽電池として理想的な光電変換特性、加工性、安定性を実現する半導体材料として極めて優れており、それがCIS太陽電池として使われる理由です。
太陽電池の仕組みはどのようなものか
太陽電池(太陽光発電)の仕組みは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する「光電効果」を利用しています。
■ 太陽電池の基本構造
太陽電池は主に以下の構造をしています:n型半導体層(電子が多い層)p型半導体層(正孔=ホールが多い層)p-n接合(n型とp型が接した部分で電位差が生まれる)電極(外部に電流を取り出す)
■ 発電の仕組み
- 1. 光子が半導体に入射太陽光に含まれる「光子(photon)」が、太陽電池の表面に当たる。
- 2. 電子と正孔が生成される光子が半導体の価電子帯の電子にエネルギーを与え、電子が励起されて伝導帯に移動。この結果、電子(マイナス)と正孔(プラス)が発生。
- 3. p-n接合で電位差が働く電子はn型側に、正孔はp型側に引き寄せられ、内部電場によって分離される。
- 4. 外部回路で電流が流れる電子が外部回路を通ってp型に戻ることで、電流が発生。これが太陽光 → 電気エネルギーへの変換です。

半導体に光を当てて電子と正孔を作り、電位差を使ってそれを分離・移動させることで電流を発生させています。
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