この記事で分かること
- シスコシステムズとは:世界最大のネットワーク機器メーカーです。インターネットを支えるルーターやスイッチで圧倒的シェアを持ち、現在はAIインフラ、セキュリティ、ソフトウェア分野への転換を加速させているデジタル社会の最重要黒子企業です。
- なぜ売り上げ好調なのか:巨大IT企業によるAIインフラ構築向けの受注が爆発的に増えていることや企業による最新の通信規格(Wi-Fi 7等)への設備更新が活発なことが主な要因となっています。
- 株価の下落理由:AI向けの最新機器は部品原価が非常に高い一方、主な顧客である巨大IT企業からの値引き圧力が強力なため、利益率の先行きの弱さが見え、株価が下落しています。
シスコシステムズ、好調決算でも株価下落
シスコシステムズ(CSCO)の株価が、2026年度第2四半期の好決算を発表したにもかかわらず、時間外取引で一時急落(約5〜7%の下落)しています。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-02-11/TABEYBKJH6V500
AI需要で売上は絶好調だが、利益率の先行きの弱さが投資家を失望させたという、内容の伴わない成長」への懸念が要因です。
シスコはどんな企業なのか
シスコシステムズ(Cisco Systems)は「インターネットの裏側を支える世界最大のインフラ企業」です。
私たちが普段使っているWi-Fi、スマートフォンの通信、企業の社内ネットワークなど、データが流れる場所にはほぼ必ずと言っていいほどシスコの技術が関わっています。
1. 事業の柱:ネットワークの「道路」と「信号」
シスコのメインビジネスは、インターネット上のデータを目的地まで正確に運ぶためのハードウェアとソフトウェアの開発・販売です。
- ルーター(道案内): 異なるネットワークを繋ぎ、データがどの道を通ればいいか判断する機器。
- スイッチ(交通整理): 同じネットワーク内(オフィスビル内など)で、データを適切な端末に振り分ける機器。
- 世界シェア: これらの分野で圧倒的な世界シェアを誇っており、特に大企業や政府機関のネットワークインフラでは「標準」とされています。
2. 現在の変革:ハードから「ソフト・AI・セキュリティ」へ
かつては機械を売る会社でしたが、現在はサブスクリプション(定額課金)モデルへの移行を加速させています。
- セキュリティ: ネットワークの入り口から出口までを守るセキュリティソフトに注力しています。
- オブザーバビリティ(可視化): 2024年にSplunk(スプランク)という巨大データを分析する会社を約4兆円で買収。ネットワークのどこでトラブルが起きているかをAIで即座に特定する技術を強化しています。
- AIインフラ: データセンター内でAI(ChatGPTのようなモデル)を動かすための、超高速な通信用チップ(Silicon One)などを提供しています。
3. 投資家から見たシスコ
投資の世界では、派手さはないものの「キャッシュ創出力が非常に高く、配当をしっかり出す優良銘柄」と見なされてきました。
- 強固な顧客基盤: 一度シスコの製品でネットワークを組むと、他社への乗り換えが難しいため、安定した収益が見込めます。
- 株主還元: 利益の多くを配当や自社株買いに充てることで知られています。
シスコは、単なる「古いハードウェア会社」ではなく、「AIやクラウドが爆発的に普及する中で、その膨大なデータをどう安全・高速に運ぶか」という課題を解決する、デジタル社会の最重要黒子企業といえます。
今回の株価急落は、この「黒子」としての役割において、コスト増(利益率の低下)が一時的に懸念されたものですが、事業の根幹である「ネットワークの支配力」自体が揺らいでいるわけではありません。

シスコシステムズ(Cisco)は、世界最大のネットワーク機器メーカーです。インターネットを支えるルーターやスイッチで圧倒的シェアを持ち、現在はAIインフラ、セキュリティ、ソフトウェア分野への転換を加速させているデジタル社会の最重要黒子企業です。
なぜ売り上げ好調なのか
シスコの売上が絶好調(2026年度第2四半期で前年比10%増の153億ドル)な理由は、主に以下の3つの「追い風」が同時に吹いているからです。
1. AIインフラ需要の爆発(ハイパースケーラー向け)
Amazon (AWS)、Google、Microsoftなどの「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大IT企業が、AIを動かすためのデータセンター構築に巨額の投資をしています。
- 受注の加速: 今四半期だけでAI関連の受注が 21億ドル に達しました。これは、前四半期(13億ドル)から大幅に加速しており、前年1年分の受注額に匹敵する勢いです。
- 独自チップの成功: AI向けに開発した超高速チップ「Silicon One」が、他社製品よりも効率が良いと評価され、採用が広がっています。
2. 数兆円規模の「買い替えサイクル」の到来
企業や大学などの「キャンパスネットワーク(社内・構内LAN)」で、数年単位の機器買い替え時期(リフレッシュサイクル)が来ています。
- Wi-Fi 7 への移行: より高速で安定した通信が求められる中、最新規格(Wi-Fi 7)への対応や、古い機器のサポート終了に伴う大規模な更新需要が売上を押し上げました。
- ネットワーキング部門: この主要部門の売上は前年比で 21%増 と、非常に高い成長を記録しました。
3. 買収(Splunk)による収益の上乗せ
2024年に買収したデータ分析大手 Splunk(スプランク) の統合が進み、その売上が加算されていることも大きいです。
- これにより、一度契約すれば毎月収益が入る「サブスクリプション型」の売上が安定し、全体の業績を底上げしています。
「世界的なAIブーム」で巨大な注文が入り、同時に「一般企業の古い設備の更新時期」が重なったことで、製品が非常によく売れている状態です。

巨大IT企業によるAIインフラ構築向けの受注が爆発的に増えていることや企業による最新の通信規格(Wi-Fi 7等)への設備更新が活発なことが主な要因となっています。
利益が減少するとされたのはなぜか
利益率の低下が予想された理由は、主に以下の3点に集約されます。
- AI製品の構成比拡大(低利益率)現在売れ筋のAIインフラ向け製品は、従来の企業向けネットワーク機器に比べて利益率が低い傾向にあります。売上構成が「AIシフト」することで、全体の利益率が押し下げられています。
- 部品コストとサプライチェーンの負担AI向けの高性能メモリや高度な半導体部品の調達コストが上昇しています。また、地政学的な関税リスクによるコスト増をあらかじめ見通しに織り込んだことも要因です。
- 積極的な研究開発投資AI競争に勝ち残るため、次世代チップやソフトウェア開発への投資(R&D費用)を増やしており、それが短期的な利益を圧迫しています。
「AI需要で売上は増えるが、その分コストもかかり、利益率の低い製品が売れ筋になっているため、利益の減少が予想されています。
なぜAI製品の利益率が低いのか
AI製品の利益率が低い理由は、主に「原価の高さ」と「顧客とのパワーバランス」の2点にあります。
1. 部品代が高い
AIを動かすための機器には、従来のネットワーク製品よりもはるかに高価な部品が必要です。
- 高価なメモリ: AI処理には「HBM(広帯域メモリ)」などの特殊で高価なメモリが不可欠で、この調達コストが利益を削っています。
- 最先端半導体: AI製品に使われる最新チップ(Silicon Oneなど)は、製造コスト自体が非常に高く、従来の「枯れた技術」を使った製品ほど利益が乗りません。
2. 顧客とのパワーバランス(値引き圧力)
AI製品の主な買い手は、Amazon、Google、Microsoftなどの「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大企業です。
- 大量購入による値引き: 彼らは一度に数千億円規模の注文を出すため、非常に強い価格交渉力を持っています。シスコとしては、将来のシェアを確保するために利益を削ってでも安く売らざるを得ない側面があります。
- 競合との激しい争い: AI市場は成長が著しいため、エヌビディアやアリスタ・ネットワークスといった強力なライバルとの激しい価格競争が起きています。
3. ソフトウェア比率が(まだ)低い
シスコが本来得意とする「高利益なビジネス」は、セキュリティなどのソフトウェア(サブスク)です。
- 現在のAIブームはまず「ハードウェア(機械)の設置」から始まるため、どうしても利益率の低いハードウェア売上の割合が一時的に高まってしまい、会社全体の利益率を押し下げているのです。
「材料費が高い最新の機械を、買い叩く力の強い巨大企業に売っているため、売上は増えても手元に残る利益が少なくなっている」という状況です。

AI向け製品は高価なメモリや最新半導体などの部品原価が非常に高いことと、買い手が巨大IT企業であり、大量発注による値引き圧力が強いため利益率が低くなりがちです。

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