この記事で分かること
- CO2吸収コンクリートとは:製造時にCO2を吸収・固定する環境配慮型素材です。セメントの代わりに特殊な材料を用い、化学反応でCO2を内部に閉じ込めます。排出量を実質ゼロ以下にする「カーボンネガティブ」を実現し、脱炭素社会の切り札として期待されています。
- どのように二酸化炭素を閉じ込めるのか:CO2と反応しやすい性質を持つ「γ-C2S」を使用します。これは通常、水とは反応しにくいですが、CO2と触れると化学反応を起こし、安定した石灰石の成分(炭酸カルシウム)としてコンクリート内部にCO2を永続的に閉じ込めます。
- 連携協定の内容:市内のごみ焼却時に出るCO2を回収し、鹿島建設の技術でコンクリートに封じ込め、再び市内の道路や公園の資材として再利用する「地産地消型」の循環モデルを構築し、
横浜市と鹿島建設のCO2吸収コンクリートに関する連携協定
横浜市と鹿島建設は、2026年1月14日、ごみ焼却工場から発生する二酸化炭素(CO2)をコンクリートに吸収・固定させて再利用する「地産地消型」のモデル構築に向けた連携協定を締結しました。
今回の協定は、市内で発生するCO2を資源として捉え、建設材料として固定化することで、「CO2の地産地消」という新しい循環モデルを確立することを目的としています。
CO2吸収コンクリートとは何か
CO2吸収コンクリートとは、製造過程で二酸化炭素(CO2)を積極的に取り込み、内部に固定させる性質を持った環境配慮型のコンクリートです。
通常のコンクリートは、主原料であるセメントの製造時に大量のCO2を排出しますが、この技術は逆に「CO2を吸い込む」ことで、排出量を実質ゼロ、あるいはマイナスにする「カーボンネガティブ」を実現します。
1. なぜCO2を吸収できるのか
主に以下の3つのアプローチでCO2を削減・固定します。
- 炭酸化反応(炭酸化養生):コンクリートが固まる際、特殊な混和材(γ-C2Sなど)を混ぜ、高濃度のCO2ガスと接触させます。すると化学反応が起き、CO2が炭酸カルシウム(石灰石と同じ成分)としてコンクリートの中に安定した形で閉じ込められます。
- セメントの削減:セメントの代わりに、鉄鋼製造時の副産物である「高炉スラグ」や、火力発電所の灰「フライアッシュ」を活用します。セメントの使用量を減らすだけで、製造時の排出量を大幅にカットできます。
- バイオ炭などの混入:植物由来の炭(バイオ炭)を材料に混ぜることで、植物が吸収した炭素をコンクリートの中に長期間貯蔵する方法もあります。
2. 主なメリット
- 脱炭素への貢献:1m3の製造で、杉の木1本が1年間に吸収する量に匹敵するCO2を固定できるものもあります。
- 耐久性の向上:CO2を吸収して緻密化するため、通常のコンクリートよりも表面が硬くなり、酸性雨などにも強いという特徴があります。
- 環境への優しさ:通常のコンクリートは強アルカリ性ですが、CO2を吸収させることで中性に近づくため、周辺の生態系(植物や生物)への影響を抑えられます。
3. 現状の課題
- コスト: 一般的なコンクリートに比べて、現在は2〜3倍程度の価格がすることが多く、普及に向けたコストダウンが急務となっています。
- 鉄筋との相性: 中性化が進むと内部の鉄筋が錆びやすくなる性質があるため、現在は主に鉄筋を使わない「縁石」「ベンチ」「消波ブロック」などの製品(プレキャスト製品)を中心に活用されています。

CO2吸収コンクリートは、製造時にCO2を吸収・固定する環境配慮型素材です。セメントの代わりに特殊な材料を用い、化学反応でCO2を内部に閉じ込めます。排出量を実質ゼロ以下にする「カーボンネガティブ」を実現し、脱炭素社会の切り札として期待されています。
特殊な混和材とは何か、なぜ二酸化炭素が反応するのか
特殊な混和材の正体は、主に「γ-C2S(ガンマ・シーツーエス)」と呼ばれる物質です。
これがなぜ二酸化炭素(CO2)を吸収するのか、その仕組みと理由を解説します。
1. 特殊な混和材「γ-C2S」とは?
正式名称は「ダイカルシウムシリケートγ相」といいます。
通常、コンクリートを固める主役である「セメント」は水と反応して固まりますが、このγC2Sは水とはほとんど反応せず、CO2と激しく反応するという非常に珍しい性質を持っています。
2. なぜ二酸化炭素と反応するのか?(炭酸化反応)
この混和材を混ぜたコンクリートに高濃度のCO2ガスを吹き付けると、以下のような化学反応が起こります。
γ-2CaO・Sio2 + CO2 → CaCo3 + SiO2
- γ-2CaO・Sio2 : 特殊混和材
反応する理由
γ-C2Sに含まれるカルシウム成分が、CO2(炭酸ガス)と出会うと非常に安定した「石」の状態(炭酸カルシウム)に戻ろうとする強い性質を持っているためです。この反応が起きる際、CO2を物質内部に取り込みながら、結晶が成長してカチカチに固まります。
3. この「反応」がもたらすメリット
- CO2を永続的に閉じ込める: 一度炭酸カルシウム(石)になると、加熱して分解しない限り、CO2が再び大気中に漏れ出すことはありません。
- より強固になる: 反応によって作られる炭酸カルシウムがコンクリート内部の細かい隙間を埋め尽くすため、通常のコンクリートよりも密度が高く、非常に丈夫になります。
この技術は、もともと「コンクリートの寿命を延ばす研究」の中から、古い遺跡のコンクリートがCO2を吸って石のように固くなっていたことからヒントを得て開発されました。

特殊な混和材の代表は、CO2と反応しやすい性質を持つ「γ-C2S」です。これは通常、水とは反応しにくいですが、CO2と触れると化学反応を起こし、安定した石灰石の成分(炭酸カルシウム)としてコンクリート内部にCO2を永続的に閉じ込めます。
コンクリートに炭酸カルシウムが含有されても影響はないのか
コンクリートに炭酸カルシウムが含有されること自体は、コンクリートの強度や耐久性を高めるというポジティブな影響が大きいです。
しかし、構造物(鉄筋コンクリート)として使う場合には、無視できない「副作用」もあります。主
1. 強度と密度の向上
炭酸カルシウムは非常に安定した結晶です。コンクリート内部の微細な隙間(空隙)を埋めるように生成されるため、組織が緻密になり、強度が上がり、水や有害物質が浸透しにくくなるというメリットがあります。
2. 「中性化」による鉄筋の腐食
- 通常の状態: コンクリートは強い「アルカリ性」で、内部の鉄筋を錆から守っています。
- 炭酸カルシウムができると: CO2との反応により、アルカリ性が失われ「中性」に近づきます(これを中性化と呼びます)。
- 結果: 中性化が進むと、鉄筋を守っていた膜が壊れ、鉄筋が錆びやすくなります。
3. 使い分けによる対策
現在の「CO2吸収コンクリート」は、用途によって使い分けられています。
- 無筋コンクリート(鉄筋なし): 道路の縁石、歩道のブロック、消波ブロックなど。鉄筋がないため、中性化のデメリットを気にせず、高耐久な素材として活用できます。
- 鉄筋コンクリート(建物など): 鉄筋が錆びないよう、表面だけをCO2吸収層にしたり、錆びにくい鉄筋(エポキシ樹脂塗装など)を使用したりする技術開発が進んでいます。
コンクリート素材そのものにとっては「緻密になって強くなる」という良い影響がありますが、中に「鉄筋」が入っている場合は、防錆対策が必要になるという影響があります。

炭酸カルシウムが生成されると、組織が緻密になり強度は向上します。一方で、内部が中性化するため「鉄筋が錆びやすくなる」のが大きな影響です。そのため、現在は主に鉄筋のない縁石やブロック等に活用されています。
横浜市と鹿島建設の連携協定の内容は
横浜市と鹿島建設(および三菱重工業グループ)の連携協定は、世界に先駆けた「カーボンリサイクルによる地産地消型モデル」の構築を目指すものです。
1. ごみ焼却工場からのCO2回収
横浜市内のごみ焼却工場(鶴見資源化センターなど)の排ガスから、三菱重工業の技術を用いてCO2を分離・回収します。自治体が自ら排ガスからCO2を回収し、それを民間企業の製造に供給する仕組みは全国初です。
2. 「CO2-SUICOM」による製品化
回収したCO2を、鹿島建設が開発したコンクリート技術「CO2-SUICOM(シーオーツー・スイコム)」に供給します。製造過程でCO2を吸い込ませ、炭酸カルシウムとしてコンクリート内部に固定した環境配慮型製品を製造します。
3. 横浜市内での公共利用(地産地消)
完成した製品(歩道境界ブロック、ベンチ、基礎ブロックなど)を、横浜市内の道路工事や公園整備などの公共事業で優先的に活用します。
- カーボンオフセット: 工事で排出されるCO2を、その資材自体が吸収したCO2で相殺します。
- ショーケース化: 2027年開催の「GREEN×EXPO 2027」などを通じ、横浜市の脱炭素技術を世界に発信します。

市内のごみ焼却時に出るCO2を回収し、鹿島建設の技術でコンクリートに封じ込め、再び市内の道路や公園の資材として再利用する「地産地消型」の循環モデルを構築し、2050年の脱炭素社会実現を目指すものです。

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