この記事で分かること
- 冷却関連企業の株価低下理由:エヌビディアのファンCEOは次世代チップ「Rubin」搭載サーバーに関し、「水冷チラー(冷却機)なしで、室温程度の温水でも十分に冷却可能」と発言しました。これにより、高価な大規模冷却設備の需要減退が懸念され、世界的に冷却関連株が急落しました。
- 「Rubin」搭載サーバーがチラーなしで冷却できる理由:「熱処理の効率」と「耐熱設計」が飛躍的に向上したことで、、計算能力に対して発生する「無駄な熱」が抑制されています。
- エネルギー効率の改善方法:自社設計の「Olympus」CPUや次世代メモリ「HBM4」の採用で、計算性能を向上させつつ消費電力を抑制しました。さらに、サーバー間の通信を電気から「光」へ転換したことで、通信時の電力消費と発熱を劇的に低減しました。
データセンター冷却関連企業の株価低下
2026年1月、米ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でのエヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・ファンCEOの発言が、冷却関連企業の株価に大きな波紋を広げました。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-06/T8G80YKK3NY800?srnd=jp-technology
これまで投資家は「AIチップが高熱を発する → 大規模な水冷システムやチラーが必要になる → 冷却メーカーが儲かる」というシナリオを信じて関連株を買い進めていました。しかし、ファン氏の発言が「最新チップなら、そこまで大掛かりな冷却装置はいらなくなる」と受け取られたため、需要減退への懸念が一気に強まりました。
エヌビディアCEO発言の内容は
2026年1月6日、ラスベガスで開催されたCES 2026の基調講演において、ジェンスン・ファンCEOが放った「データセンターに、もはやチラー(冷却水循環装置)は必要ない」という趣旨の発言が市場に衝撃を与えました。
ジェンスン・ファンCEOの発言内容
ファン氏は、次世代GPUプラットフォーム「Vera Rubin(ヴェラ・ルービン)」の量産開始を発表する中で、データセンターの構造を劇的に変える設計について言及しました。
- 「チラー・レス(Chiller-less)」の実現これまでのAIサーバーは非常に高温になるため、外部から強力に冷やした水(チラーで冷却された水)を循環させる必要がありました。しかし、次世代の「Rubin NVL72」ラックは、45℃程度の「温水」を循環させるだけで十分に冷却できる設計になったと述べました。
- 100%液冷への完全移行新しいシステムは、ファン(扇風機)やチューブ、ケーブルを排除した「100%液冷」のシャーシ(筐体)を採用しています。これにより、設置時間が従来の2時間からわずか5分に短縮され、メンテナンス性も劇的に向上したと強調しました。
- エネルギー効率の劇的な向上チラーという巨大な冷却装置を稼働させる必要がなくなることで、データセンター全体のエネルギー消費を大幅に削減でき、「AIの運用コストを破壊的に下げる」と宣言しました。
なぜ株価が急落したのか?
市場がこの発言を「ネガティブ」に捉えた理由は、投資シナリオの逆転にあります。
- 「大規模設備の需要消滅」への懸念:これまで投資家は「AIが進化するほど、より巨大で高価な冷却装置(チラーなど)が必要になる」と考え、ジョンソン・コントロールズ(JCI)などの空調設備大手を「AI恩恵株」として買っていました。しかし、「チラー不要」と言われたことで、これら既存の巨大冷却ビジネスの需要がなくなるという恐怖が広がりました。
- ビジネスモデルのシフト:ファン氏の言葉は、冷却の主役が「部屋全体を冷やす空調設備(外付け設備)」から、「チップを直接冷やす液冷モジュール(サーバー内蔵設備)」へ完全に移行することを意味します。これにより、旧来の空調メーカーの取り分が減る可能性が意識されました。
発言の真意
ファン氏の意図は、冷却関連企業を攻撃することではなく、「AIインフラのコストとエネルギー問題を解決し、AIの普及をさらに加速させること」にあります。
実際には、チラーは不要になっても、温水を循環・放熱させるための「CDU(冷却水分配装置)」などの新しい機器は必要になります。
そのため、市場では現在、「どの冷却メーカーが『古い空調』から『新しい液冷システム』への転換に成功しているか」の選別が始まっています。

2026年1月のCESにて、エヌビディアのファンCEOは次世代チップ「Rubin」搭載サーバーに関し、「水冷チラー(冷却機)なしで、室温程度の温水でも十分に冷却可能」と発言しました。これにより、高価な大規模冷却設備の需要減退が懸念され、世界的に冷却関連株が急落しました。
Vera Rubinはなぜ発熱が小さいのか
「Vera Rubin(ヴェラ・ルービン)」が従来のチップに比べて「45℃の温水」でも冷却可能(=熱処理の効率が極めて高い)とされる理由は、主に以下の技術的進化に基づいています。
- エネルギー効率の劇的な向上Rubinアーキテクチャは、従来のBlackwell世代と比較して、単位電力あたりの性能が飛躍的に高められています。電力効率が改善されたことで、計算能力に対して発生する「無駄な熱」が抑制されています。
- 「100%液冷」前提の設計Rubinを搭載したサーバーラック(Rubin NVL72)は、最初から「100%液冷」を前提に設計されています。空気で冷やす「空冷」よりも熱伝導率が圧倒的に高い液体をチップに直接循環させるため、冷却水が多少温かくても(45℃程度でも)、効率的に熱を奪い去ることが可能です。
- チラーを介さない熱交換従来のシステムは水をキンキンに冷やすために「チラー(冷却機)」が必要でしたが、Rubin世代ではチップの耐熱設計と液冷効率の向上により、外気で冷やした程度の温水(Free Cooling)でも十分に安定動作できるようになりました。
つまり、「発熱そのものがゼロになった」というよりは、「高効率な設計と、熱を逃がす力の向上により、冷やすためのエネルギー(冷たい水)が少なくて済むようになった」というのが正確な背景です。
この技術革新により、データセンター全体の消費電力の約6%を占めていた冷却コストが削減できるとされています。

Vera Rubinが「45℃の温水でも冷却可能」とされる理由は、単に発熱が小さいからではなく、「熱処理の効率」と「耐熱設計」が飛躍的に向上したためです。「発熱量が減った」というよりは、「最新技術により、冷やすためのハードルが劇的に下がった」というのが正確です。
どのようにエネルギー効率を改善したのか
Vera Rubinがエネルギー効率を飛躍的に向上させ、結果として「温水でも冷やせる」ようになった理由は、単なる改良ではなく、「チップ、メモリ、通信、ラックすべてを一つのシステムとして再設計」したことにあります。
1. 「Vera CPU」の自社開発(脱・既製品)
これまでエヌビディアはArmの既製品設計をベースにしていましたが、Vera Rubinでは初めて「Olympus(オリンパス)」と呼ばれる完全自社設計のカスタムコアを採用しました。
- 効果: AI処理に不要な機能を削ぎ落とし、計算効率を最適化したことで、前世代(Grace)の2倍の性能を出しつつ、消費電力を大幅に抑制しています。
2. 次世代メモリ「HBM4」と「SOCAMM2」の採用
データ処理で最も電力を食うのは「データの移動」です。
- HBM4: 最新の積層メモリを採用し、帯域幅(データの通り道)を22 TB/s(Blackwellの約2.7倍)に拡大。少ない電力で大量のデータを高速移動させます。
- SOCAMM2: CPUのすぐそばに低消費電力のLPDDR5Xメモリを配置する新モジュールを採用。従来のサーバー用メモリ(DDR5)に比べ、電力を3分の1にまで削減しました。
3. 光通信技術(シリコンフォトニクス)の導入
サーバー間を繋ぐスイッチに、電気ではなく「光」で信号を送る「Spectrum-X Ethernet Photonics」を導入しました。
- 効果: 従来の電気信号に比べ、ネットワーク部分の電力効率が約5倍向上しました。通信時の発熱も大幅に抑えられます。
4. エクストリーム・コ・デザイン(統合設計)
チップ単体ではなく、ラック(棚)全体を一つの巨大な計算機として設計しています。
- NVFP4(新しい数値形式): より少ないビット数(精度)で高い推論能力を維持する新技術により、計算負荷を下げつつ、推論性能を5倍に高めました。
これらの技術により、「同じ計算をするのに必要な電力が前世代より40%も減った」ため、チップが従来ほど過酷な高熱を持たなくなりました。

自社設計の「Olympus」CPUや次世代メモリ「HBM4」の採用で、計算性能を向上させつつ消費電力を抑制しました。さらに、サーバー間の通信を電気から「光」へ転換したことで、通信時の電力消費と発熱を劇的に低減しました。

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