この記事で分かること
装飾性フィルムとは:意匠性と機能性を兼ね備えたフィルムです。
どのような物質が利用される:金属フィルムによるメタリックな質感や遮光性、断熱性の付与、エンボスフィルムによる表面に凹凸模様を施すことでの意匠性や滑り止め効果の付与などの例があります。
エンボス加工とは:視覚と触覚の両面から、素材に深み、複雑さ、そして独特の質感を加えることで、平坦な素材では得られない高級感や特別な風合いを生み出すことができます。
装飾性フィルム
富士キメラ総研によると、機能性フィルム市場は堅調な成長を見せる予想とされています。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00746076
2023年の市場規模は約282億4,000万米ドルで、2030年には476億4,000万米ドルに達すると見込まれており、年平均成長率(CAGR)は7.75%とする予想もあります。
今回は「装飾性」を持つフィルムについての記事となります。
装飾性フィルムとはなにか
装飾性を持つ機能性フィルムは、意匠性と機能性を兼ね備えたフィルムです。単に美観を高めるだけでなく、遮光、断熱、目隠し、UVカット、防汚、飛散防止などの機能も付加されています。具体例としては、以下のようなものがあります。
窓用装飾フィルム
フロスト調: ガラスにすりガラスのような効果を与え、プライバシーを保護しつつ、柔らかな光を取り込みます。
グラデーション: 透明から不透明へと徐々に変化するフィルムで、スタイリッシュな印象を与えながら、部分的な目隠し効果も得られます。
パターン柄: 幾何学模様、植物柄、和柄など、様々なデザインがあり、空間のアクセントになります。
ステンドグラス調: ガラスをステンドグラスのように彩り、華やかな雰囲気を演出します。
ミラー調: 外からの視線を遮り、プライバシーを守りながら、室内の明るさを保ちます。
UVカット機能付き: 紫外線による家具や床の日焼けを軽減する効果があります。
断熱機能付き: 夏は遮熱、冬は断熱効果を発揮し、冷暖房効率を高めます。
飛散防止機能付き: 地震や衝突などでガラスが割れた際に、破片の飛散を抑える効果があります。
家具・建具用装飾フィルム
木目調: 本物の木のような質感で、温かみのある空間を演出します。
レザー調: 高級感のあるレザーの質感を再現し、落ち着いた雰囲気を醸し出します。
メタリック調: 金属のような光沢感があり、モダンでシャープな印象を与えます。
抽象柄: アーティスティックなデザインで、個性的な空間を演出します。
防汚機能付き: 汚れがつきにくく、お手入れが簡単です。
抗菌機能付き: 菌の繁殖を抑え、衛生的な環境を保ちます。
その他
自動車用装飾フィルム: 車体のドレスアップだけでなく、遮熱効果やプライバシー保護にも役立ちます。
家電製品用装飾フィルム: 冷蔵庫や洗濯機などの外観をカスタマイズできます。
デジタルサイネージ用フィルム: デザイン性と視認性を両立させ、広告効果を高めます。

装飾性を持つ機能性フィルムは、住宅、オフィス、商業施設など、様々な場所で活用されています。手軽に空間のイメージを変えながら、快適性や安全性を向上させることができるため、近年注目が高まっています。
装飾性を得るために利用される素材にはどんなものがあるのか
装飾性フィルムには、様々な素材が利用されており、目的や用途、求められる機能によって使い分けられています。
1. 樹脂フィルム
- 塩化ビニル樹脂 (PVC): 柔軟性、加工性、印刷適性に優れ、比較的安価なため、幅広い用途で使われています。壁紙、家具シート、カッティングシートなどに利用されます。
- ポリエステル樹脂 (PET): 透明性、耐候性、耐薬品性、機械的強度に優れています。窓用フィルム、工業用フィルム、ラミネートフィルムなどに用いられます。3M™ ファサラ™ ガラスフィルムのベース材としても使用されています。
- ポリプロピレン樹脂 (PP): 耐熱性、耐薬品性、防湿性に優れています。食品包装、雑貨品の包装、ラミネートフィルムなどに使われます。エンボス加工を施したフィルムとしても利用されます。
- ポリエチレン樹脂 (PE): 耐水性、耐寒性、柔軟性に優れています。ゴミ袋、包装材、店内装飾用テープなどに利用されます。エンボス加工を施したフィルムとしても利用されます。
- ポリカーボネート樹脂 (PC): 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れています。OA機器、事務機器、光学フィルムなどに用いられます。
2. 特殊フィルム
- 金属フィルム: アルミニウムやステンレスなどの金属箔をフィルム状にしたもので、メタリックな質感や遮光性、断熱性を付与します。
- 和紙フィルム: 和紙の風合いを持ち、柔らかな光を取り込みます。
- ガラスフィルム: ガラスに特殊な加工を施したフィルムで、飛散防止、断熱、UVカットなどの機能を持たせることができます。
- エンボスフィルム: 表面に凹凸模様を施したフィルムで、意匠性や滑り止め効果を高めます。ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などが用いられます。
多くの場合、これらのフィルムを複数組み合わせることで、より高い機能性や意匠性を実現しています。

装飾性フィルムには、様々な素材が利用されており、樹脂フィルムや特殊フィルムを組み合わせることで、より高い機能性や意匠性を実現しています。
エンボス加工とは何か
エンボス加工(Embossing)とは、素材の表面に凹凸模様を施す加工技術のことです。日本語では「浮き出し加工」や「型押し加工」とも呼ばれます。
具体的には、凸型と凹型の金型(版)で素材を挟み込み、圧力を加えることによって、素材の表面を変形させ、立体的な模様や文字を表現します。
エンボス加工の目的
- 意匠性の向上: 平坦な素材に立体的な模様を与えることで、高級感や独特の風合いを演出し、デザイン性を高めます。
- 触感の付与: 表面に凹凸ができることで、触れた時の感触が変わり、滑り止め効果や識別性を高めることができます。
- 視認性の向上: 文字やロゴをエンボス加工することで、光の反射によって陰影ができ、視認性を高めることができます。
エンボス加工の対象となる素材
- 紙・フィルム: 壁紙、包装紙、カード、シール、皮革製品、布地、金属箔、プラスチックフィルムなど。
- 金属: 金属板、箔など。
- 皮革: バッグ、財布、靴など。
- 布地: 服飾品、インテリア製品など。
- プラスチック: 容器、シートなど。

装飾性フィルムにおいては、エンボス加工によって、木材、皮革、布地、和紙などの自然な風合いを再現したり、幾何学模様や抽象的なデザインを表現したりするために用いられます。
凹凸が高級感を演出できる理由
立体的な模様が素材に高級感や独特の風合いを演出できる理由は、主に以下の要素が複合的に作用するためと考えられます。
1. 視覚的な効果
- 陰影の創出: 立体的な凹凸は、光の当たり方によって陰影を生み出します。この陰影が、平坦な表面にはない奥行きや複雑さを感じさせ、視覚的な面白みと深みを与えます。これにより、素材が単調に見えるのを防ぎ、より凝った、手の込んだ印象を与えます。
- 素材感の強調: エンボス加工は、木材、皮革、布地などの自然素材の持つ質感をリアルに再現したり、強調したりする効果があります。例えば、木目調のエンボス加工は、本物の木のような立体感と温かみを視覚的に伝え、高級感を演出します。
- 装飾性の向上: 幾何学模様や抽象的なデザインをエンボス加工で表現することで、素材そのものが持つ以上の装飾性を付加できます。これにより、シンプルながらも洗練された、あるいは個性的な印象を与えることができます。
- 光沢感の変化: エンボス加工された表面は、光の反射を複雑にし、独特の光沢感を生み出すことがあります。特に、箔押しと組み合わせたエンボス加工では、金属的な輝きが加わり、豪華な雰囲気を高めます。
2. 触覚的な効果
- 質感の向上: 立体的な模様は、触れた時の感触を変化させます。この触覚的な要素が、視覚的な印象と結びつくことで、素材の質感に対する認識を深めます。例えば、革のようなエンボス加工を施したフィルムは、見た目だけでなく、手触りからも高級感を連想させます。
- 特別感の演出: 平滑な素材とは異なる、凹凸のある触感は、手に取った際に特別な印象を与えます。「何か違う」「凝っている」といった感覚が、製品の価値を高め、高級感につながることがあります。
3. 知覚心理的な効果
- 手の込んだ印象: 立体的な加工は、手間と時間をかけて作られたという印象を与え、それが製品の価値や品質の高さを連想させます。
- 希少性の感覚: 特に、複雑な模様や特殊な素材感を再現したエンボス加工は、ありふれたものではないという感覚を生み出し、希少性や特別感を演出します。

エンボス加工は、視覚と触覚の両面から、素材に深み、複雑さ、そして独特の質感を加えることで、平坦な素材では得られない高級感や特別な風合いを生み出すことができます。
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