この記事で分かること
- なぜNATO脱退を示唆しているのか:トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ、欧州諸国の防衛費負担不足を「タダ乗り」と批判しています。米国の負担軽減に加え、2026年現在のイラン情勢等で協力しない同盟国への牽制や、防衛増額を迫る交渉カードとして脱退を示唆しています。
- IHIはどんな防衛関連製品を製造しているのか:戦闘機や哨戒機、輸送機のエンジン開発・製造で国内首位のシェアを誇ります。また、子会社のIHIエアロスペースを通じて、ミサイル防衛や衛星打ち上げに不可欠な固体ロケット技術やブースターも手掛ける、航空宇宙防衛の中核企業です。
- 他に上昇した銘柄:防衛最大手の三菱重工業や潜水艦を担う川崎重工業がセクターを牽引し、年初来高値を更新しました。また、レーダー等精密機器の東京計器や、防衛ドローン等の新技術を持つTerra Droneなど、装備高度化に関連する銘柄にも買いが波及しています。
米国のNATO脱退示唆による防衛関連株の上昇
米国のNATO脱退示唆により、同盟国の自国防衛強化と軍事費増額の観測が強まりました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL0216C0S6A400C2000000/
それによって防衛装備やエンジンを手掛けるIHI等の関連株が、受注拡大を見込んだ買いが集中し、株価が上昇しています。
なぜアメリカはNATO脱退示唆をしているのか
トランプ大統領がNATO(北大西洋条約機構)脱退を示唆している背景には、単なる「防衛費の不満」を超えた、2026年現在の緊迫した地政学的対立と、彼の一貫した「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」戦略があります。
1. 同盟国の「ただ乗り」への強い反発
トランプ氏は長年、米国が欧州の安全保障を肩代わりしている現状を「不公平だ」と批判してきました。
彼は、加盟国が国防費を対GDP比2%にする合意すら守っていない(2026年の要求ではさらに高い5%を提示)ことに激怒しており、米国ばかりがコストを支払う「片道切符の同盟」は不要だと主張しています。
2. イラン紛争を巡る同盟国との決裂
現在(2026年4月)、米国・イスラエル連合とイランの間で続く軍事衝突において、多くのNATO加盟国が米国の軍事行動への参加や基地の使用を拒否しています。
これに対しトランプ氏は「米国が困っている時に助けない同盟に価値はない」と断じ、NATOを「紙の虎(見かけ倒し)」と呼んで、協力しないのであれば脱退も辞さないという姿勢を強めています。
3. ホルムズ海峡の封鎖とエネルギー問題
イラン情勢に伴うホルムズ海峡の封鎖により、世界的に原油価格が高騰しています。トランプ氏は、日本や欧州などの受益国が自力で石油輸送路を守ろうとしない現状を批判し、「自分の石油は自分で守れ」という論理を展開しています。
これも「米国のリソースを他国の利益のために使わない」という孤立主義的な外交方針の表れです。
現状と市場への影響
法的には、米議会の承認なしに大統領が独断で脱退するのは困難との見方もありますが、「米国が助けに来ないかもしれない」という疑念自体がNATOの抑止力を根底から揺るがしています。
これが、日本を含む各国の自国防衛意識を急激に高め、IHIなどの防衛関連株が買われる直接的な引き金となっています。

トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ、欧州諸国の防衛費負担不足(タダ乗り)を強く批判しています。米国の財政・軍事的負担を減らすとともに、同盟国に自律的な防衛強化を迫る強力な交渉カードとして脱退を示唆しています。
IHIはどんな防衛関連製品を製造しているのか
IHIは、日本の防衛産業において航空エンジンと宇宙・ミサイル関連の2分野で圧倒的な存在感を持っています。主な製品は以下の通りです。
1. 航空エンジン(国内シェアトップ)
- 戦闘機用エンジン: F-15やF-2などの主力戦闘機に加え、最新のF-35向けエンジンの整備・部品製造を担っています。
- XF9-1: 日本が主導する次世代戦闘機(GCAP)向けに開発された、世界最高水準の推力を誇るプロトタイプエンジンです。
- 哨戒機・輸送機用: P-1哨戒機(F7エンジン)やC-2輸送機向けのエンジンを自社開発・製造しています。
2. 宇宙・ミサイル防衛
- 固体ロケット: 子会社のIHIエアロスペースが、イプシロンロケットなどの固体燃料ロケットを製造しています。この技術は、弾道ミサイル対処や長距離誘導弾の推進装置に直結します。
- 防衛用ブースター: 各種ミサイルの加速用ブースターや、迎撃用エンジンのコンポーネントを供給しています。
3. その他・将来技術
- 艦艇用ガスタービン: 海上自衛隊の護衛艦向けに、米GE社製エンジンのライセンス生産やメンテナンスを行っています。
- 次世代装備: 電磁パルス(EMP)兵器やレーザー兵器などの将来装備の研究にも参画しています。

IHIは、戦闘機や哨戒機のエンジンで国内首位のシェアを誇ります。また、子会社を通じてミサイル防衛や衛星打ち上げに不可欠な固体ロケット技術を保有しており、航空・宇宙の両面から日本の国防を支える中核企業です。
他にどんな防衛関連株が上昇したのか
トランプ大統領のNATO脱退検討発言を受け、IHI以外にも日本の防衛関連株が軒並み急騰しています。2026年4月現在の市場で特に注目を集めている銘柄は以下の通りです。
1. 防衛「大手3社」の連れ高
- 三菱重工業: 国内防衛受注で群を抜く最大手です。次世代戦闘機(GCAP)の開発主導や、ミサイル防衛システムの中核を担っており、セクター全体のリーダーとして大幅続伸しています。
- 川崎重工業: 潜水艦や哨戒機、輸送機の製造を手掛けています。自国での防衛力強化という文脈で、海洋防衛と航空の両面から買いが入っています。
2. 精密機器・電子装備
- 東京計器: レーダーや航法装置などの防衛用精密機器を手掛けており、装備品の高度化・増産期待から反騰を加速させています。
- 日本無線: 通信インフラやレーダー技術で防衛省との繋がりが深く、関連銘柄として物色されています。
3. 次世代防衛・新興勢力
- Terra Drone(テラドローン / グロース市場): ドローン技術を用いた次世代防衛アセットの提供を強化しており、将来的な防衛基盤のデジタル化を見込んでストップ高(2026年4月2日時点)を記録するなど、投資マネーが集中しています。
4. 素材・資源関連
- 三菱マテリアル: 防衛装備に不可欠な重要鉱物(レアアース等)のリサイクルや供給網強靱化の観点から、防衛関連の裾野として関心が高まっています。

三菱重工業や川崎重工業といった大手3社がセクターを牽引し大幅続伸しました。また、レーダー装置の東京計器や、ドローン技術のTerra Droneなど、装備の高度化を担う銘柄にも「自国防衛」の思惑から買いが波及しています。
三菱重工業はどんな防衛関連製品を製造しているのか
三菱重工業(MHI)は、日本の防衛装備品の全カテゴリー(陸・海・空・宇宙)において中核を担う、国内最大手の防衛企業です。主な製造製品は以下の通りです。
1. 航空・宇宙(空の守り)
- 戦闘機: F-15のライセンス生産から、主力戦闘機F-2の製造まで一貫して手掛けています。現在は、日本・英国・イタリアが共同開発する次世代戦闘機(GCAP)の開発主体となっています。
- ヘリコプター: 自衛隊向けのSH-60K(哨戒ヘリ)やUH-60J(救難ヘリ)などを製造しています。
- ミサイルシステム: 地対空、空対空、地対艦など多岐にわたるミサイルを製造。特に12式地対艦誘導弾(能力向上型)など、反撃能力の要となる長射程ミサイルの開発・生産を担っています。
2. 艦艇(海の守り)
- 護衛艦: もがみ型護衛艦(FFM)などの最新鋭艦艇を建造。ステルス性能や無人化技術に強みを持ちます。
- 潜水艦: 川崎重工業と交代で建造しており、たいげい型潜水艦など、世界最高水準の静粛性とリチウムイオン電池による潜航能力を誇る潜水艦を供給しています。
3. 特殊車両(陸の守り)
- 戦車: 10式戦車や16式機動戦闘車など、陸上自衛隊の主力車両を製造。高い射撃精度と機動力を両立させる技術力を持っています。
4. 宇宙・統合防衛
- ロケット・衛星: H3ロケットの打ち上げ輸送サービスに加え、偵察衛星(情報収集衛星)の開発にも深く関与しています。
- ミサイル防衛(BMD): 日米共同開発の迎撃ミサイル(SM-3 Block IIA)など、日本の弾道ミサイル防衛の中核装備を担当しています。

三菱重工業は、次世代戦闘機や長射程ミサイル、最新鋭潜水艦、10式戦車など、陸海空すべての主力装備を製造する国内最大の防衛企業です。防衛予算増額に伴う「国策」の筆頭銘柄として、市場から極めて高い関心を集めています。

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