この記事で分かること
バイオポリカとは:石油由来のプラスチックであるポリカーボネートを植物由来の原料で合成した物質のことです。
どのように作られるのか:ポリカの原料であるビスフェノールA(BPA)とホスゲン(COCl₂)を植物由来の原料へ変更することで、環境負荷の小さいバイオポリカを作り出すことができます。
植物由来50%の意味:製品中の炭素の内、50%の炭素が植物に由来しているという意味です。
バイオポリカの開発
帝人が開発した植物由来のポリカーボネート(バイオポリカ)が、カメラ用交換レンズに採用されたことが報じられています 。
https://www.teijin.co.jp/news/2025/04/14/20250414_01.pdf
石油由来の製品を植物由来へと置き換えることで、環境負荷を低減する素材として注目されています。
ポリカーボネートとは何か
ポリカーボネート(PC)は、非常に強い、透明、耐熱性が高いプラスチックの一種で、以下のような特徴を持っています。
- 割れにくい:すごく衝撃に強いので、ガラスの代わりによく使われます。
- 透明性:光をよく通すので、レンズや窓材にも使われます。
- 耐熱性:高温にも比較的強いです(100℃以上でも形を保てることが多い)。
- 加工しやすい:射出成形(型に流し込んで作る)や押出成形ができるので、いろんな形にできる。
用途例
- メガネやサングラスのレンズ
- CD・DVDのディスク
- スマホケース
- 自動車のヘッドライトカバー
- 建築用の透明パネル など

ポリカーボネート(PC)プラスチックの一種で、非常に強い、透明、耐熱性が高いという特徴をもっています。
バイオポリカーボネートはどのように作られるのか
普通のポリカーボネートの作り方
ビスフェノールA(BPA)とホスゲン(COCl₂)という原料を反応させて合成しますが、どちらも石油由来の化学物質であり、環境負荷が高いという欠点があります。
バイオポリカの作り方
バイオポリカは原料を植物由来のものに置き換えることで合成されています。
① バイオ由来ビスフェノールを用意する
→ 石油からであなく、例えばサトウキビ、トウモロコシ、または植物油から得られる素材を使って、
ビスフェノールと似た構造の分子(例えばバイオベースBPA代替物)を作ります。
② 二酸化炭素由来のカーボネート原料を使うこともある
→ ホスゲンを使わず、代わりにCO₂とエポキシド(酸素を持った分子)を反応させる方法でホスゲンの代わりの原料を作り出しています。
③ これらを反応させてポリカーボネートを合成する
→ 合成されたポリカは、見た目も性能も普通のポリカとほぼ同じですが、「炭素の由来がバイオ」ということになります。
バイオポリカの特徴
- バイオポリカでも、透明性・強度・耐熱性はそのままキープできる。
- CO₂排出量が減る(カーボンニュートラルに貢献できる)。
- でも、コストや原料調達がまだ課題。

ポリカの原料であるビスフェノールA(BPA)とホスゲン(COCl₂)を植物由来の原料へ変更することで、環境負荷の小さいバイオポリカを作り出すことができます。
ホスゲンとは何か
ホスゲン(Phosgene, 化学式:COCl₂)とは、無色の気体ですが、有毒な化学物質です。ごく微量でも吸い込むと危険(肺にダメージを与える)であり、取り扱いには注意が必要な物質になっています。
ポリカーボネート樹脂やポリウレタンの原料、医薬品や農薬の中間体などに使われるなど、有用な工業原料ですが、第一次世界大戦で化学兵器としても使われた歴史があるほど有害な化学物質です。
そのため、危険なホスゲンを使わずにポリカーボネートを作る「ノンホスゲン法」も開発されています。

ホスゲンは産業上有用な原料ですが、毒性も強く、代替となる化学物質の検討が行われています。
植物由来の原料を50%使うという言葉の意味
「植物由来の原料を50%使う」というのは、製品に含まれている炭素のうち、半分が植物由来だという意味です。
ポイント
- プラスチック(ポリカーボネート)は炭素(C)をたくさん含んでいます。
- その炭素の供給源が、
石油(化石燃料)→「従来型」
植物(サトウキビ、トウモロコシなど)→「バイオベース」 - 「50%バイオ」というのは、全炭素量のうち50%が植物由来という意味です。
例:イメージで説明すると
仮にポリカ製品100gの中に、炭素が60g含まれているとする。その60gの炭素のうち、30gは植物(バイオマス)に由来するという意味のなります。
なんでこういう表現をするか?
- ポリカーボネートは炭素以外にも酸素(O)とか塩素(Cl)を含んでいます。
- 全体の重さで「何%バイオ」と言うと、原料に酸素や水素が入るからわかりにくくなります。
- そのため、炭素ベース(バイオカーボン比率)でバイオ度を測るのが一般的になっています。

植物由来の原料を50%使うとは、製品中の炭素の内、50%の炭素が植物に由来しているという意味です。炭素以外の原料を多く含むため、全体の重さではなく、炭素で測定する方法が一般的です。
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