ディスコの株価反発 反発の理由は?どんな装置を取り扱っているのか?

この記事で分かること

  • 反発の理由:第1四半期業績の上方修正や米半導体株の上昇、生成AI需要の好調などが挙げられています。
  • 取り扱っている装置:半導体や電子部品製造において、シリコンウェーハなどを「切る(ダイシングソー)」「削る(グラインダ)」「磨く(ポリッシャ)」精密加工装置と、それらの消耗品(加工ツール)を開発・製造・販売しています。
  • ダイシングソーの仕組み:高速回転する極細のダイヤモンドブレードを使い、半導体ウェーハを精密に削り取るように切断します。冷却水を供給しながら、縦横に正確に移動させることで、多数の小さなチップ(ダイス)に切り分けます。

ディスコの株価反発

 7月10日、ディスコの株価に大きな反発がみられています。

 https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202507100400

 株価上昇の要因には、第1四半期業績の上方修正や米半導体株の上昇、生成AI需要の好調などが挙げられています。

 半導体市場全体の動向、特に生成AI関連の需要動向に大きく左右されると言えます。直近の業績上方修正や好調な出荷実績はポジティブな材料ですが、引き続き市場全体のトレンドや為替動向にも注目が必要です。

ディスコはどんな装置を販売しているのか

 ディスコは、主に半導体や電子部品の製造工程における「切る・削る・磨く」という精密加工の装置と、それらの装置に用いられる消耗品(加工ツール)を製造・販売しています。これらの製品は、スマートフォン、PC、ICカード、自動車など、あらゆるデジタル製品の小型化・高性能化に不可欠な役割を担っています。

特に以下の3つの装置で世界トップクラスの市場シェアを誇っています。

ダイシングソー (Dicing Saw)

  • 役割: シリコンウェーハや化合物半導体ウェーハといった円盤状の基板から、1つ1つの小さなチップ(半導体デバイス)に切り分けるための切断装置です。
  • 特徴: µm(マイクロメートル)レベルの極めて高い精度で、割れや欠けを抑えて切断します。1辺が1mm以下の微細なチップも加工可能です。
  • シェア: 世界市場で7割〜8割程度の圧倒的なシェアを持っています。
  • 関連製品: レーザソー(砥石ではなくレーザーで切断する装置)も提供しています。

グラインダ (Grinder)

  • 役割: 半導体ウェーハなどの素材を薄く削り、平坦にするための研削装置です。
  • 特徴: 5µmレベルまで薄く削ることができ、かつウェーハ全体の厚さのばらつきを1.5µm以内に抑えるなど、高い平坦度を実現します。薄型化は、半導体の高機能化や多層化に不可欠です。
  • シェア: 世界市場で6割〜7割程度のシェアを持っています。
  • 技術: ウェーハの外周部分を残して内側だけを薄く削る「TAIKOプロセス」など、独自の技術も提供しています。これにより、薄型化によるウェーハの破損リスクを低減します。

ポリッシャ (Polisher)

  • 役割: グラインディングで生じるウェーハ裏面の微細な加工歪みや傷を除去し、鏡のように滑らかに研磨する装置です。
  • 特徴: ウェーハ表面を鏡面化することで、割れにくさを向上させ、信頼性の高い半導体デバイスの製造に貢献します。ストレスリリーフ(研磨による歪み除去)にも対応しています。

その他関連製品・サービス

  • 精密加工ツール(消耗品): 上記の装置で使用される、ダイシングブレード、グラインディングホイール、ドライポリッシングホイールなどの砥石や研磨材も自社で開発・製造・販売しており、これもディスコの強みの一つです。
  • ウェーハマウンタ: 薄化されたウェーハをダイシングテープにマウントする装置。
  • メンテナンスサービス: 装置のメンテナンスサービスや、オペレーション・メンテナンスに関する研修なども提供しています。

 ディスコの製品は、半導体の製造における「後工程(前工程で回路を形成したウェーハを個々のチップに加工する工程)」において、非常に重要な役割を担っており、特にデジタル製品の小型化、薄型化、高機能化を支える基盤技術を提供しています。

ディスコは、半導体や電子部品製造において、シリコンウェーハなどを「切る(ダイシングソー)」「削る(グラインダ)」「磨く(ポリッシャ)」精密加工装置と、それらの消耗品(加工ツール)を開発・製造・販売しています。

上方修正の理由は何か

 ディスコが第1四半期業績予想を上方修正した主な理由は、以下の点が挙げられます。

  • 機械製品の検収進捗が想定以上だったこと: これが収益改善に大きく貢献しました。
  • 個別売上・出荷速報の好調: 事前に発表されていた速報値が会社側の想定を上回る好結果だったことで、業績の上振れが意識されていました。

特に、半導体製造装置の需要が堅調に推移し、ディスコの主力製品であるダイシングソーやグラインダといった装置の引き渡し(検収)が順調に進んだことが、今回の業績上方修正の背景にあると考えられます。

米半導体株の上昇理由は何か

 米半導体株(SOX指数)が上昇している主な理由は、以下の要因が複合的に絡み合っているためです。

生成AI需要の爆発的な拡大

  • これが米半導体株上昇の最大の牽引役です。ChatGPTのような生成AIの普及により、その学習・推論に不可欠な高性能な半導体(特にNVIDIAのGPUなど)の需要が急増しています。
  • データセンターへの投資が活発化しており、AI向けの高性能サーバーや関連半導体の需要が引き続き旺盛です。

半導体市場の回復と成長予測

  • 2022年後半から2023年にかけて低迷していた半導体市場が、2024年には大幅な回復基調に入ると予測されています。特にメモリ半導体市場の回復が顕著です。
  • 世界半導体市場統計(WSTS)など複数の調査機関が、2024年以降の半導体市場について、AI需要を背景とした力強い成長を見込んでいます。

主要半導体企業の業績好調

  • NVIDIAをはじめとするAI関連半導体を手掛ける企業の業績が非常に好調で、市場予想を上回る決算を継続して発表しています。これが投資家心理を強く押し上げています。
  • TSMCのような最先端半導体の製造を担うファウンドリの動向も、市場全体の期待感を高めています。

供給網の改善と在庫調整の進展

  • 過去の半導体不足の問題が改善され、供給網が安定しつつあります。一部の分野では過剰在庫の調整も進み、収益性が改善している企業もあります。

技術革新と新たなアプリケーションの進展

  • AIだけでなく、5G、IoT、自動車の電装化(EVや自動運転)など、様々な分野で半導体の需要が拡大しています。これらの技術革新が半導体産業の長期的な成長を支えています。
  • 特に、AIが半導体設計や製造プロセスに活用されることで、さらなる効率化や性能向上が期待されています。

 これらの要因が重なり、投資家は半導体セクターの今後の成長性に対して非常に強気な見方をしており、それが米半導体株全体の上昇に繋がっています。ただし、半導体市場は「シリコンサイクル」と呼ばれる景気循環の影響を受けやすい特性もあるため、短期的な変動には注意が必要です。

米半導体株の上昇は、主に生成AI需要の爆発的拡大による半導体需要増、それに伴う主要企業の業績好調、そして半導体市場全体の回復と成長予測が背景にあります。

ダイシングソーはどうやってウエハを切断しているのか

 ディスコの主力であるダイシングソーは、主にブレードダイシングという方法でウェーハを切断しています。その仕組みは以下の通りです。

ウェーハの準備と固定

  • まず、回路が形成された円盤状の半導体ウェーハの裏面に、特殊な粘着テープ(ダイシングテープ)を貼り付け、フレームに固定します。これは、切断中にウェーハがバラバラになったり、移動したりするのを防ぐためです。

ブレードの高速回転

  • ダイシングソーの中核となるのは、非常に細いダイヤモンドブレード(砥石)です。このブレードは、ディスコが独自に開発・製造しているもので、工業用ダイヤモンドの粒子が樹脂などに埋め込まれて作られています。
  • このダイヤモンドブレードが、毎分数万回転という超高速で回転します。

冷却水の噴射

  • ブレードとウェーハが接触する際には、摩擦によってかなりの熱が発生します。また、切断によって微細な切削屑(切りくず)も発生します。
  • これらの熱や切削屑を除去し、切断品質を維持するために、冷却水(純水)が常にブレードの先端に噴射されながら切断が行われます。

精密な移動と切断:

  • 高速回転するブレードを、切断したいライン(半導体チップ間の境界線)に沿って、ウェーハに対して非常に高い精度で移動させます。
  • まずは縦方向にウェーハ全体を切断し、その後ウェーハを90度回転させて横方向に切断することで、ウェーハ上の多数のICが一つ一つの小さなチップ(ダイス)に切り分けられます。
  • この切断は、数マイクロメートル(μm)単位の精度で行われます。

ブレードダイシングの主な特徴

  • 物理的な切削: ダイヤモンドブレードで物理的にウェーハを削り取るように切断します。
  • 高精度: 極めて薄いブレードと精密な制御により、微細なチップも高い精度で切り出すことができます。
  • 冷却と洗浄: 冷却水の供給により、熱損傷を防ぎ、切削屑を除去して清潔な切断面を確保します。

 ディスコは、このブレードダイシング技術において世界トップクラスのシェアを誇っていますが、近年では、ブレードを使わずにレーザー光でウェーハを切断するレーザーダイシングなども手掛けています。

 レーザーダイシングには、切断幅をより狭くできる、熱や応力を抑えられる、ブレードの消耗がないといったメリットがあり、次世代の半導体製造で注目されています。

ダイシングソーは、高速回転する極細のダイヤモンドブレードを使い、半導体ウェーハを精密に削り取るように切断します。冷却水を供給しながら、縦横に正確に移動させることで、多数の小さなチップ(ダイス)に切り分けます。

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