この記事で分かること
- 車載向け電子シェードとは:電圧でガラスの透過率を変化させ、瞬時に「透明」と「遮光」を切り替える技術です。従来の物理的な布製シェードが不要になるため、車内の軽量化や開放感の向上、EVの電費改善に貢献します。
- どのように粒子を整列せているのか:粒子に電圧(電界)がかかると、粒子内でプラスとマイナスの電荷が両端に分かれる「分極」が起きます。この粒子が電気的な向きを持つことで、外からの電気の力に引き寄せられ、電界の方向に沿って一斉に整列します。
- なぜGHLCを採用したのか:車内内装と相性の良い「自然な黒」を再現でき、透明時の曇りも少ないからです。また、低電圧で駆動するため、EVの電費向上や安全性において自動車メーカーの要求に最適でした。
DNPの車載向け電子シェード
大日本印刷(DNP)が車載向け「電子シェード(調光フィルム)」の量産を検討し始めています。

DNPの車載電子シェードは、単なる「日よけ」ではなく、車内空間をプライベートな居住空間やオフィスへと変えるキーデバイスとして位置づけられています。
車載向け電子シェードとは何か
「車載向け電子シェード」とは、電気的な刺激によってガラスの透明度(透過率)を瞬時に変化させるフィルムやガラスのことです。
従来の車のように布やメッシュのカバーを物理的に動かすのではなく、ガラスそのものが「透明」から「不透明(スモーク状態)」に切り替わるハイテクな装備です。
仕組み:どうやって色が変わるのか
主に「液晶」や「特殊な粒子」を挟み込んだフィルムをガラスにラミネートしています。
- 電源OFF(遮光状態): 内部の分子や粒子がバラバラな方向を向いており、光を遮断・散乱させます。
- 電源ON(透明状態): 電圧をかけると分子が一定方向に整列し、光が通り抜けるようになります。
特にEV(電気自動車)や高級車において、以下の理由から採用が急増しています。
1. デザインと開放感の両立
従来のサンシェード(引き出し式)は、収納するためのスペース(厚み)が必要でした。電子シェードはフィルム一枚分(約0.1〜0.5mm)のため、天井を高くでき、パノラマルーフのような圧倒的な開放感を実現できます。
2. 航続距離(電費)の向上
遮光状態にすることで直射日光による車内温度の上昇を抑えられます。これによりエアコンの負荷が減り、バッテリー消費を抑えられるため、EVの航続距離を延ばす効果があります。
3. 次世代の「プライバシー保護」
スイッチ一つで瞬時に外からの視線を遮れるため、自動運転中のリラックスタイムや、車内でのWeb会議などのプライバシー確保に適しています。
主な方式の比較
現在、主に以下の2つの方式が主流です。
| 方式 | 特徴 | 主な採用例 |
| SPD方式 | 青みがかった色に変化。遮光性が非常に高い。 | メルセデス・ベンツ、キャデラックなど |
| 液晶(PDLC/GHLC)方式 | 白濁、またはDNPが推進する「黒」に変化。反応が非常に速い。 | トヨタ(クラウン、センチュリー)、レクサスなど |
電子シェードは、単なる「日よけ」の代わりではなく、「車の軽量化」「デザインの自由度」「プライバシー」を同時に解決するキーデバイスです。

車載向け電子シェードとは、電圧でガラスの透過率を変化させ、瞬時に「透明」と「遮光」を切り替える技術です。従来の物理的な布製シェードが不要になるため、車内の軽量化や開放感の向上、EVの電費改善に貢献します。
特殊な粒子とはどんな粒子なのか
電子シェードで使われる「特殊な粒子」とは、主に「光を吸収・遮断する性質を持った、ごく小さな物質(ナノ粒子)」を指します。
1. SPD方式で使われる粒子(光吸収粒子)
メルセデス・ベンツなどの高級車によく使われるSPD(Suspended Particle Device)方式では、フィルムの中の液体に「棒状のナノ粒子」が浮遊しています。
- 粒子の正体: ポリアイオダイド(多ヨウ化物)などの光吸収性を持つ化合物です。
- 動き: * 電圧OFF: 粒子がバラバラな方向を向いて光をブロック(真っ暗または濃い青)。
- 電圧ON: 粒子が一方向にきれいに整列し、その隙間を光が通る(透明)。
2. DNPなどが採用するGHLC方式の粒子(二色性色素)
大日本印刷(DNP)が推進するGHLC(Guest-Host Liquid Crystal)方式では、液晶分子の中に「二色性色素(色素分子)」という特殊な粒子が混ざっています。
- 粒子の正体: 特定の方向に並ぶと光を強く吸収し、別の方向だと光を通す性質を持つ色素です。
- 役割: 液晶分子(ホスト)が動くときに、色素(ゲスト)も一緒に動くことで、「自然な黒(ニュートラルブラック)」での遮光を実現しています。
3. その他(EC方式など)
- EC(エレクトロクロミック)方式: 酸化タングステンなどの金属酸化物粒子が使われます。電気化学反応によって粒子そのものの化学状態が変わり、色が濃くなったり透明になったりします(ボーイング787の窓などが有名です)。
これらの粒子は「電気の力で整列したり、性質を変えたりすることで、ブラインドの羽根のような役割を果たす超小型の物質」です。

電子シェードに使われる「特殊な粒子」とは、電圧で向きが変わる光吸収ナノ粒子や、液晶と連動する二色性色素を指します。電圧OFFで粒子が分散し光を遮断、ONで一列に整列し光を通すことで、色の変化を生み出します。
なぜ電流が流れると粒子が整列するのか
粒子が整列するのは、粒子が「分極(ぶんきょく)」という状態になり、電気の力に引き寄せられるからです。
仕組みのポイント
- 電気的な偏り: 粒子に電圧(電界)がかかると、粒子内のプラスとマイナスの電荷が両端に分かれ、電気的な「向き」が生まれます。
- 電界に沿った整列: 発生した電気の向きが、外からかけた電圧の方向に逆らわずに並ぼうとするため、バラバラだった粒子がピシッと一斉に同じ方向を向きます。
ブラインドに例えると
- 電圧OFF: ブラインドの羽根がバラバラに浮いている状態で、光を通しません。
- 電圧ON: 全ての羽根が電気に引っ張られて横向きに揃うため、その隙間を光が通り抜けられるようになります。
このように、粒子自体が「電気に反応して動く小さなシャッター」の役割を果たしているわけです。

粒子に電圧(電界)がかかると、粒子内でプラスとマイナスの電荷が両端に分かれる「分極」が起きます。この粒子が電気的な向きを持つことで、外からの電気の力に引き寄せられ、電界の方向に沿って一斉に整列します。
DNPがGHLCを採用したのはなぜか
DNPが数ある方式の中からGHLC(ゲストホスト液晶)方式を採用した最大の理由は、車内空間における「圧倒的な質感(黒さ)」と「使い勝手の良さ」を両立できるからです。
1. 高級感を演出する「自然な黒」
従来の方式(SPD方式など)は、遮光時にどうしても「青み」が強く出てしまう欠点がありました。DNPは印刷技術で培った色の制御ノウハウを活かし、GHLC方式で車内の内装に馴染む「ニュートラルな黒」を実現しました。これが自動車メーカーが求める高級感に合致したのです。
2. 視界の「ヘイズ(曇り)」が少ない
一般的な液晶方式(PDLC)は、遮光時に白く濁る(曇りガラス状になる)ため、外の景色が全く見えなくなります。一方、GHLC方式は光を「散乱」させるのではなく粒子で「吸収」するため、透明時のクリアさが非常に高く、サンルーフに最適でした。
3. 低電圧で「省エネ・安全」
GHLC方式は、数ボルトから数十ボルトという低電圧で駆動します。
- 安全性: 万が一の事故の際も高電圧によるリスクが低い。
- 低消費電力: バッテリー消費を極限まで抑えたいEV(電気自動車)との相性が抜群に良い。
DNPのGHLC方式の構造
DNPはこれに加え、フィルムを「細かく分割して制御する技術」を持っています。これにより、窓の一部だけを暗くしたり、グラデーションのように色を変えたりするデザイン性の高い演出が可能になっています。

DNPがGHLC方式を採用したのは、車内内装と相性の良い「自然な黒」を再現でき、透明時の曇りも少ないからです。また、低電圧で駆動するため、EVの電費向上や安全性において自動車メーカーの要求に最適でした。

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