この記事で分かること
e-メタンとは:水素(H₂)とCO₂(二酸化炭素)を化学反応させて合成されるメタン(CH₄)のことで、カーボンニュートラルを実現することの可能な技術として注目されています。
合成方法:グリーン水素の製造、CO₂の回収・供給、 メタン合成反応の3つの技術がe-メタン合成
課題:製造コストの高さや水素やCO₂の安定供給、再エネルギーとの連携などが課題です。
都市ガス業界のe-メタンの取り組み
都市ガス業界は2050年のカーボンニュートラル達成へ「e―メタン」の活用に力を入れています。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00747548
e-メタン(electro-methane)は、水素(H₂)とCO₂(二酸化炭素)を化学反応させて合成されるメタン(CH₄)のことで、CO₂は工場排ガスや大気から回収(CCU)することで実質的にカーボンニュートラルを実現することの可能な技術として注目されています。
e-メタンの特徴
e-メタンは都市ガスのカーボンニュートラル化に必要な技術であり、以下のような特徴があります。
■ e-メタンとは?
e-メタン(electro-methane)は、水素(H₂)とCO₂(二酸化炭素)を化学反応させて合成されるメタン(CH₄)のことです。
- 主な反応: CO2 + 4H2→CH4 + 2H2O
- 水素は再生可能エネルギー(太陽光・風力など)を使って水の電気分解で製造。
- CO₂は工場排ガスや大気から回収(CCU)することで実質的にカーボンニュートラル可能。
■ 都市ガスとの関係
現在、都市ガスの主成分は天然ガス(メタン)です。e-メタンは都市ガスと化学的に同じなので、インフラをそのまま使えるのが大きな利点です。
- 既存のガス管や家庭のガス機器(コンロ、給湯器など)を改修せずに使用可能。
- インフラ更新コストを抑えつつ、脱炭素を実現可能。
■ 脱炭素との関係・メリット
- カーボンニュートラル:排出したCO₂を再利用しているため、全体としてCO₂増加はゼロ。
- 再エネ活用の一環:再生可能電力の余剰分をe-メタンとして「燃料」として貯蔵可能。
- エネルギーセキュリティ向上:輸入に依存しない国産燃料の製造が可能。
■ 課題
- 製造コストが高く、まだ商業化には課題。
- 水素やCO₂の安定供給、再エネとの連携体制の構築が必要。
- e-メタンが燃焼時にCO₂を出すことから、厳密なカーボンニュートラル評価が求められる。

e-メタンは課題はあるものの、カーボンニュートラル化に加え、インフラをそのまま利用できる、輸入に依存しないエネルギー源となるなどの利点があります。
eメタンの合成にはどんな技術が必要か
e-メタンの合成には、以下の3つの主要技術が必要です。それぞれが高度な制御や設備を要し、技術開発の対象にもなっています。
1. グリーン水素の製造技術
- 技術名:水電解(Electrolysis)
- 方法:
- 再生可能エネルギーを用いて水(H₂O)を電気分解し、水素(H₂)を生成。
- 主な電解方式:
- アルカリ水電解(AWE)
- 固体高分子型(PEM)
- 高温固体酸化物型(SOEC)
- 課題:高効率化・装置の大型化・コスト削減
2. CO₂の回収・供給技術
- 技術名:CCU(Carbon Capture and Utilization)
- CO₂の供給源:
- 発電所・工場排ガスからの回収
- DAC(Direct Air Capture):大気中から直接CO₂を回収
- 課題:
- 分離・濃縮のエネルギー消費が高い
- 純度や供給安定性が重要
3. メタン合成反応技術(サバティエ反応)
- 反応式: CO2+4H2→CH4+2H2O
- 技術名:メタネーション(Methanation)
- 特徴:
- 300〜400℃程度の高温で行われる。
- 触媒(例:Ni系触媒)が必要。
- 発熱反応で、熱管理が重要。
- 反応装置の種類:
- 固定床反応器
- 流動床反応器
- マイクロリアクター(高効率)

グリーン水素の製造、CO₂の回収・供給、 メタン合成反応の3つの技術がe-メタン合成に必要となります。
製造コストが高い要因とどれくらい高いのか
e-メタンの製造コストが高い理由と、その具体的なコストは以下の通りです。
1. 水素製造コストが高い
- 水の電気分解で作る「グリーン水素」は、再エネ電力と高性能な電解装置が必要。
- 1kgあたりの水素製造コストは300〜600円程度(再エネ価格に強く依存)。
2. CO₂回収コスト
- 工場排ガスならまだしも、大気中からのCO₂回収(DAC)は1トンあたり数万円かかることも。
- CO₂の濃度が低いため、多くのエネルギーが必要。
3. メタネーション設備コストと運転管理
- 高温・高圧で安定的に反応させるため、触媒・反応器・熱管理などの設備が高価。
- 反応の安定性確保のための運転制御や保守費用も必要。
4. 再エネコストの高さと変動性
- 再エネ由来の電気代が高い場合、e-メタンのコストも跳ね上がる。
- 再エネは不安定で、製造の連続性が課題になることも。
5.従来とのコスト差
項目 | コスト(概算) | 備考 |
---|---|---|
e-メタン製造コスト | 約30〜100円/Nm³ | 再エネコストや設備条件による |
都市ガス(LNG)価格(参考) | 約10〜15円/Nm³ | 2020年代の日本のLNG平均価格 |
差額 | 3〜10倍程度 | 現時点では大きなコスト差あり |
■ コスト削減の見通し
将来的には以下の取り組みによりコスト低下が期待されます。
- 再エネ価格の低下
- 水電解装置の量産化
- 高効率触媒や反応器開発
- 余剰電力活用による操業コストの抑制
経産省や東京ガスなどは2040年ごろに都市ガスと同等程度のコストに近づけることを目標としています。

現状の都市ガスと比較すると3〜10倍程度のコストですが、2040年ごろに同等とすることが目標とされています。
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